軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1130.闇堕ちの顛末

【呪術福音】によって【敏捷】【技量】を下げられたワイルドたち。

それでもスワローの機転によって、反撃を決めることに成功した。

すると黒翼を開いた闇堕ち聖女は、低空の位置から反撃を開始。

「【黒死の羽】」

迫る大量の羽が、突風に舞う砂のように迫り来る。

「【コンティニューガード】【地壁の盾】!」

【敏捷】低下での回避は難しい。

しかし近い距離に集まっていた四人は、シールドの背後の隠れることでこれを防御。

すさまじい勢いで炸裂する黒羽に、思わず息を飲む。

「【バンビステップ】」

「【加速】」

攻撃の終わりと同時に駆け出し、ワイルドとスワローは攻撃体勢に。

しかし【敏捷】の低下が、効いてくる。

「【魔浄】」

「またそれ……っ!」

円形に広がる、邪悪な浄化の奇跡。

こちらの接近を制止し、魔法攻撃も打ち消すやっかいな攻撃に悔しそうにするベリアル。しかし。

「【ターザンロープ】」

「「「っ!?」」」

ワイルドはここで、まさかのロープ投擲。

浄化の聖域は確かに、風が吹いているわけでも炎が燃え盛っているわけでもはない。

ロープは見事に、闇堕ち聖女にかかった。

「ゆくぞ……!」

そしてそのままクールに力をこめて、回転を開始。

聖女をブンブンと振り回したところで、不意に振り返った。

ベリアル、すぐに『リーシャをこのまま力任せに叩きつける』ことへの「どうしよう」だと気づく。

堕ちているとはいえ聖女。

石畳に頭から叩きつけるのは、さすがに気が引ける。

「衝突ダメージだし、転がせば大丈夫! 絵面はちょっと……あれだけど!」

「りょうかいした……はあっ!」

安堵と共に、クールを作り直したワイルド。

地面をバウンドさせるような投じ方を選択。

ボス級との戦いとは思えない軟着陸で、闇堕ち聖女は転がっていった。

ベリアルは安堵してるワイルドに、ちょっと笑いながら追撃に入る。

「【魔砲術】【フリーズストライク】!」

放たれた氷砲弾は直撃し、白煙をあげた。

鐘の音が消え、【呪術福音】の効果もなくなる。

下がった【敏捷】と【技量】が、ここで元の数値に戻った。

ゆっくりと、立ち上がる聖女。

「もう要らない……要らないっ! こんな世界ッ!!」

その右手は、赤く輝く左の目を抑えている。

「それっぽいポーズ取るのは控えて! 影響を受けちゃう子がいるから!」

思わず叫ぶベリアル。

すると闇堕ち聖女は、赤く輝く目を解放。

「こんな世界、滅びちゃえばいいんだ――ッ! 【魔神の祝福】!」

その髪が、にわかに光を帯びる。

【魔神の祝福】は、使用者の攻撃を威力範囲ともに大きく向上させるスキル。

【飛行】による、急接近に備えるワイルドとスワロー。

その中心に右足をついた闇堕ち聖女は、右手を振るう。

「【洗礼】」

「「っ!?」」

跳ねる飛沫は、散弾銃の様。

ワイルドとスワローは、即座に回避を諦め防御に回る。

するとわずかな助走から、すぐさま再飛行した聖女は一直線にベリアルの方へ。

「【妖炎転舞】」

「【かばう】【天雲の盾】!」

シールドはすぐさまベリアルの前に割り込み、盾による防御を仕掛ける。

回転によって生まれる炎の輪は、【魔神の祝福】によって爆炎に変わる。

「きゃああああっ!」

「これまでとは火力が違うわ!」

普通の防御スキルで問題なかった攻撃が、【不動】なしでは吹き飛ばされるほどの威力に上昇。

ワイルドが防御を余儀なくされ、シールドの盾が突破される。

「効果は火力に加えて範囲の向上! そういうことね!」

ベリアルは気づく。

稀にRPGで見られる『敵の無双時間』に対して、全員で防御姿勢を強いられる状態。

現状はそれなのだと。

よって無理に戦わず、『嵐が去るのを待つ』ことが必要だ。

しかし、シールドの防御はすでに離された状態。

「【カースフレア】」

「しまった!」

振り返った闇堕ち聖女が放つのは、火力を上げた上位上級魔法。

その火力と範囲を考えれば、ベリアルに回避は不可能だ。

防御すら、大ダメージを免れないだろう。しかし。

「【装備変更】【裸足の女神】!」

ここで走り出したのはワイルド。

「せーのっ! それええええええ――――っ!!」

【魔断の棍棒】の振り回しはなんと、黒炎球が弾ける直前にヒット。

普通ならば怖くてできない、上位上級魔法の打ち返し。

ワイルドは見事に、危機を反撃の好機に変えた。

「あっ、ちょっと高いかもっ!」

闇堕ち聖女の頭上をかすめた黒炎球は、そのまま後方で炸裂。

巻き起こる盛大な爆発は、数軒の民家を消し飛ばした。

吹き荒れる風の中、生まれた空白。

闇堕ち聖女はその目を見開き、叫びをあげる。

「みんな、みんな死んじゃえ――――ッ! 【邪神降臨】!」

現れた巨大な化物は、四本の角を持つ邪悪な邪神。

人型だが、幽霊のように腰から下が消えている。

それにもかかわらずその灰色の肉体は、三階建ての建築物を超えるほど。

この世界のものではない巨大な邪神は、長い白髪に隠れた赤眼を輝かせた。

実はこのスキルを【魔神の祝福】による強化状態で見ることになるのは、不運。

「くる……っ!」

「【不動】【クイックガード】【地壁の盾】!」

振り回す右の剛腕を、シールドが盾を斜めに構えて軌道を変える。

吹き荒れる暴風に、ベリアルが体勢を崩した。

すると邪神はそのまま左腕を上げ、両手を頭上で組んだ。

そのまま叩き下ろしにくる一撃は、直撃でなくともパーティを崩壊に追い込む驚異の一撃。

風を斬る轟音と共に、炸裂。

「【地壁の盾】っ!」

しかしシールドが続けざまに、完璧な防御を決めた。

巻き起こる衝撃波。

「【加速】」

スワローは暴風にあおられながらも、盾に止められた腕と地面の間にできた隙間を抜け出す。

狙いは、後方の闇堕ち聖女。

しかし邪神の召喚後の隙は決して長くなく、スワローを見つけた闇堕ち聖女は【飛行】を開始。

消えていく邪神。

一気に距離を詰め、得意の翼による回転撃を狙いにくる。

「【妖炎転舞】」

「【リブースト】!」

「っ!?」

まさかの超加速での突進に、ベリアルが驚く。

【魔神の祝福】で強化された一撃を喰らえば、大ダメージは避けられない。

しかしスワローはなんと、炎のエフェクトが発生する直前に距離を詰めて見せた。

「【スライディング】!」

さらに地を滑ることで、黒翼の下を潜りぬける。

翼にも判定はあり。

HPを若干削られたものの、爆炎ほどではない。

「【反転】!」

燃えあがる紅蓮の炎の内側。

そして闇堕ち聖女の背後を取ったスワローは、振り返る。

「スワローの肉を切らせての姿勢……本当にすごいわね……」

「【分身】【狐火虚像】!」

強化【妖炎転舞】の炎が消えると、そこには200体のスワロー。

「【加速】」

走り出せば、止めようなどない。

次々に巻き起こる爆発が、一つの爆炎となって炸裂。さらに。

「【溜め防御】【チャリオット】【コンティニューガード】【天雲の盾】!」

シールドが吹き荒れる炎の中に突入。

「【フレアバースト】!」

【マジックイーター】によって封じた魔法を解放する。

「あと3割弱!」

残りHPは絶妙なところ。

全員がここからの戦い方を思案する。

敵ステータスの上下によって、難しくなった戦い。

その中でもしっかりと、聖女のHPを調整する意識はあり。

「お、おねがいしますっ!」

「りょうかいした」

ここで【チャリオット】で進むシールドの背後についていたワイルドが、さらに前へ。

強者相手にHPの調整を狙うのなら、ワイルドに任せるのがベストだ。

「【キャットパンチ】」

クールに放つ一撃が、見事にヒット。

この初撃で、残りHPと攻撃の威力をつかむ。

「パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチ」

ここからは、クールな顔つきで連打。

せいぜいネコの種類が三毛からアメリカンショートヘアになったくらいだが、本人比のクールな打撃が炸裂する。

そして残りHPが2割強になったところで、大きく手を引いた。

「目を覚ますのだ、聖女リーシャ! 【虎爪拳】!」

最後の一撃が、闇堕ち聖女を弾き飛ばした。

残りHPは見事、1割弱。

倒れたリーシャは、ゆっくりと顔を上げる。

「う、ううっ。わ、私は……ああっ」

輝く赤い瞳。

リーシャは内なる何かを抑えるように、唇を噛む。

「狂化の波動と戦っているのかしら」

「が、がんばってください!」

思わずシールドが拳を握る。

するとリーシャを中心に巻き起こっていた、闇の波動が霧散した。

どうやら見事、狂化を解くことに成功したようだ。

ワイルドは思わず駆け出し、すぐさまリーシャのもとへ。

「リーシャちゃん!」

そして聖女が無事だと分かったところで、自分が闇を継ぐ者であること思い出す。

「――――無事であるか?」

これにはさすがに、ベリアルも笑ってしまったのだった。