軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1125.始まる審判

「思わぬ形で、負けられない戦いになったな」

「んっふふ、まったくだねェ」

白の月光に照らされた、ヴァルガデーナの町。

サグワの無事と居場所を確認しにきたスキアとクルデリスの前に立ち塞がったのは、対立クエストを受けた魔導士。

樹氷の魔女だった。

ここでの勝敗は、そのままサグワの救出の成否に関わる可能性がある。

よって、負けることは絶対に避けたい。

必然的に増す緊張感。しかし。

二人は、一歩ずつ前に出る。

「我が名はスキア。闇を継ぐ魔導士」

「僕はクルデリス。闇を継ぐ双剣士」

「汝、我らの前に立ち塞がるのであれば」

「断罪の刃が、夜闇に閃くこととなる」

見事な名乗りを見せたスキアとクルデリスは、引くことなく武器を構える。

「切り裂け【氷のイバラ】――ッ!」

「「ッ!!」」

すると『闇を継ぐ』の部分に目を鋭くした樹氷の魔女は、容赦なく攻撃を開始。

猛烈な勢いで地面を伸びる氷の枝から、鋭い氷刃が生える。

「【フリップジャンプ】!」

クルデリスは、跳躍スキルでこれを回避。

「ちっ」

一方スキアは直撃こそ避けたが、逃げ切れず脚を斬られてダメージを受けた。

「【三連射】【アイシクルエッジ】」

すぐさま続く、氷刃の連射。

着地後に駆け出そうとしたクルデリスの足を止める。

「【凶弾】【凶弾】【凶弾】」

一方スキアは、溜めなしの軽打を連射。

「【降魔砲】」

続けざまに魔力砲を放つことで、魔法攻撃を畳みかける。

しかし樹氷の魔女は、これを上手な足運びで回避。

「うまい」

「【白氷花】!」

すぐさま、氷砲弾で反撃。

飛来した砲弾の形状は、つぼみを思わせる。

炸裂した瞬間に白刃の花びらを展開させ、エフェクトが花のように広がった。

「くっ……!」

二段階で攻撃判定を放つ魔法に慌てて防御するも、再び斬られてダメージ。

「もらった」

だがこの時クルデリスは、回り込むようなラインで疾走。

そのまま【フリップジャンプ】で跳躍し、樹氷の魔女の右側上部から飛び掛かるような形で攻撃に入る。

「さあいくぞォォォォ! 【残光蓮華】だァァァァァァ!!」

妖しい笑みと共に、二本の短剣を振るう。しかし。

「杖を持つ魔導士だから――――近接ができないと思ったか?」

樹氷の魔女はその目を妖しく輝かせながら、かつてのベリアルのような言葉をつぶやいた。

「【魔氷刃】」

「ッ!?」

杖から生まれた氷の刃は、距離を詰めれば有利と踏んでいたクルデリスには的確。

【知力】の1/4が威力に上乗せされる【魔氷刃】は、白の美しい軌跡を描いて直撃した。

斬り裂かれて転がったところで、スキアとクルデリスはわずかに笑みを浮かべる。

「魔導士だからと回避を捨てていない上に、近接の攻撃もいとわないか」

「ベリアルを思わせるねェ」

「……っ」

二人は『戦い上手な魔導士』という意味で発言するも、樹氷の魔女には『同じ組織であるレンのことを知ったように語るヤツら』に見えて、頬をピキピキと引きつらせる。

「顕現せよ! 冷徹なる零度の白牢【臨界氷樹】!」

すぐさまの追撃。

渦巻く冷気が、二人の中心に集まっていく。

そして急速に降りる霜が、一気に氷の大樹を生み出した。

「全力だ! 全力で走れ!」

スキアは叫び、クルデリスと共に疾走。

直後の冷気爆発は、中央で巻き込まれれば凍結を取られるというスキル。

白煙が、猛スピードで地を駆けていく。

「あっぶない。スキアは無事だよねェ?」

「どうにかな」

足先を飾る氷片に苦笑いを浮かべながらも、大技をかわした二人はすでに反撃の体勢。

「【悪鬼羅刹斬】」

先行したのは、クルデリス。

駆け出して近接に持ち込むのではなく、二刀による大型斬撃を二連発。

硬直終わりの樹氷の魔女は、一撃目をギリギリで回避すると二撃目は回避し切れず腕を斬られた。

「【万魔の眼光】」

「っ!」

先にクルデリスが攻撃したのは、魔導士には回避が難しすぎる範囲攻撃を、より良いタイミングで放つため。

樹氷の魔女は続けて防御を選択し、ダメージを軽減。

そうなればいよいよ、接近戦への流れができる。

「【殺到】!」

鋭い高速移動で駆け込んできたクルデリスは、短剣を突き刺しにいく。

「……っ!」

当然選択は防御。

しかし【殺到】の強みは、不動型のスキルがなければそのまま相手を押し出せること。

クルデリスは、短剣を突き刺したまま前進。

そのまま樹氷の魔女を壁に叩きつけると、大きな衝突音が鳴り響く。

直後、民家の壁が崩れ落ちてきた。

ここでクルデリスは、下がって距離を取る。

見事な連携。

二つの飛び道具からの速い接近には、対応が難しい。

「……なかなかやる。だが」

巻き上がる砂煙の中に立つ樹氷の魔女は、レンのように杖を振り、構えを取り直す。

「あの方の隣に立つのなら、これくらいはやってもらわなくては困る」

防御で受けた【殺到】のダメージはそこそこ。

壁への激突も『衝突』としての加算ゆえに、慌てる必要はない。

「んっふふ。でもさあ、こっちも負けられないんだよねェ」

「勝って、ベリアルの元に戻るぞ」

「当然だよねェ」

「…………」

見せるのは、レンたちと共に組織として戦う意思。

その結束の雰囲気に、樹氷の魔女はついに頬を大きめに膨らませる。

「それじゃあ、ベリアル並の回避と援護をお願いしようかなァ」

「善処しよう」

「ッ!」

そう言って笑う二人に、樹氷の魔女が杖を向ける。

「【白氷花】!」

飛来した氷の砲弾は、炸裂した瞬間に白刃の花びらを展開。

「【降魔連砲】」

これを横っ飛びからの転がりで回避する。

反撃に放つのは、五連射の魔力光線。

「単純な攻撃なら、二度目は回避も難しくない」

樹氷の魔女は、これをしっかり見てやり過ごす。

「ベリアルみたいだねェ」

「まったくだ」

「【三連射】【アイシクルエッジ】ッ!」

放たれる氷刃。

クルデリスがこれを避けたところに続けて、樹氷の魔女が追撃を放つ。

「切り裂けっ! 【氷のイバラ】っ!」

手前の氷刃を避けたことで、続く足元からの攻撃への回避が遅れる。

クルデリスは、脚を斬られてダメージ。

それを見たスキアが、笑みを浮かべる。

「ベリアルのように、使用スキルから『その狙い』を予想することが必要だな」

「アバドンの時みたいな形だねェ」

「そこまでだああああ――――っ!!」

自分の知らない冒険を自慢されているような感じに思わず大きな声を上げた樹氷の魔女が、杖を強く振り下ろす。

「咲き狂え、雪花の刃! 【凍花白華】!」

冷気によって白みがかった空間に現れた、大量の氷花。

「くっ!」

「こいつは、厳しいねェ……!」

何が「そこまでだ」なのか分からない二人はわずかに首を傾げながら、大人しく防御を選択。

氷花は次々に砕け散り、生まれた無数の氷花が全身を切り刻む。

「鬼気迫るといったところか……」

その理由が自分たちの会話だと気づかない二人は、白い息をつく。

「何を言っている? 本当の戦いは、ここからだ」

樹氷の魔女は、鋭い視線でつぶやく。

「二対一という状況に、疑問は抱かなかったのか?」

そしてゆっくり右手を上げると、地面に召喚陣が描かれた。

「敵対者のいるクエストでは、不利はある程度調節される場合もあるが……」

「おいおい、向こうさんもコンビでの戦いになるってことかァ」

二人の疑問に答えるかのように、樹氷の魔女は解説を始める。

「かつてこの町にいた狂気の錬金術師。多くのおぞましい化物をこの地に残したが……最後は自らをその実験台にした」

それに合わせるかのように、魔法陣が怪しい黄金の輝きを強めていく。

「来たれ――――ヘルメス」