軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1124.審判する者

「我らが、サグワの様子を見に向かおう」

そう言い出したのはスキア。

「サグワはクエストの目的だが、我らとの関りはやや浅い。対して聖女に関しては、特別な展開が含まれそうな気がする」

これにはベリアルも、うなずく。

リーシャは『聖女』という大きな特性を持つ上に、この状況下でも正気を保ち、さらに町を助けたいという思いを持っている。

何か特殊な展開を持っていそうだ。

それなら、ワイルドを中心としたメンバーで当たるのが良いだろう。

「サグワに関しては、安否と自宅にいるのかどうかを確定しておくだけでも意味があるだろう。無理はせず、先行して様子を見ておくという形でどうだ?」

「ええ、それでお願い」

ここでスキアとクルデリスは、町の西端目指して動き出す。

二人だけゆえに、無理な戦いはしない方向だ。

「んっふふ。それじゃあまた後で」

こんな状況下でも軽いクルデリスが先行し、駆け出す二人。

「それじゃあこっちも、フルーネの捜索に入りましょう」

「よろしくお願いします……っ!」

この町には、流れつくような形でやってきた聖女リーシャ。

ずっと一緒だった小竜の行方を、かなり気にしているようだ。

「どう? 居場所は分かる?」

すでに【自然の友達】で、ヴァルガデーナ付近の動物たちを集めていたワイルドにたずねる。

「……どうしてだろう。分からないみたい」

しかし意外にも、いつも探し人などに強い動物たちが動き出さない。

「どういうことかしら」

「魔法陣の影響なども、あるのではないでしょうか」

「そ、そうですね! そうだと思いますっ!」

スワローは動物たちが小竜を見つけられない理由の中でも『最悪』のパターンは口にせず、魔法陣が邪魔になっている可能性を告げておく。

「そうね。とにかく今は探してみましょう」

「は、はひっ」

そして四人は聖女を連れ、小竜探しに駆ける。

町は広く、決して大きくない小竜の発見には少し手間取りそうだ。

「【凶弾】」

クルデリスが引きつけた狂化町人に、魔力弾がぶつかり体勢を崩す。

「【スラッシュ】」

放つ攻撃は、火力の低い基礎スキル。

これを肩に受けた狂化町人は、そのまま転倒した。

その隙を突き、二人は迫る狂化町人たちの隙間を縫って走る。

そこに迫るのは、狂犬型の魔獣。

「【光刃】【闇刃】」

クルデリスは前に出ると、伸ばした魔力の刃で華麗に攻撃。

「【降魔連砲】」

そこに互いを追い抜き合って進む、五連続の魔力光線が炸裂。

魔物には、一切の容赦もなしだ。

「狂化町人は倒さず、魔物は打倒。簡単そうにやっていたが……」

当たり前のように『倒さず通る』をやってのけていたワイルドたちを思い出し、浮かぶ苦笑い。

二人は『町人たちは倒さない』というルールを、ここでも継続しながら駆けて行く。

そして、町の西端にあるサグワの家へ。

何が始まるか分からないため、ドアは開かず外から内部を確認する。

「さァーて、どうなってるかなァ?」

クルデリスが窓からのぞき込むと、サグワは部屋の奥に寄りかかっていた。

まるで病気にでもかかっているかのように息を荒くしているが、狂化特有の目の輝きはない。

「あれは、狂化から身を守るための魔法陣か?」

スキアの予想は正解だ。

サグワは自ら護りの魔法陣を張り、狂化を防いでいるようだ。

図書館での勉強は、こういう展開を予想しての予習だったのだろう。

「様子を見る限り、サグワは時間に追われている感じがない。ここで待って合流という形でも良さそうだが……」

合図は『この場に残る』なら【降魔砲】、ワイルドたちに『合流する』形なら【降魔連砲】を空に向けて放つという取り決めをしてある。

「そう簡単には、いかないみたいだねェ」

クルデリスが、短剣を手にそうつぶやいた。

どうやらドアを開かずとも、この場まで来れば戦いの流れが始まってしまうようだ。

ヴァルガデーナではすでに、ワイルドたちの『逆』を行くルートがいくつか解放されている。

そして敵対するルートのプレイヤーがいた場合、本来ここで立ちはだかる予定だったNPCに代わり、サグワのもとに来た者を打倒するよう命じられる。

「――――これは僥倖」

サグワの自宅の前には、おあつらえ向きの広い道。

それを挟んだ向こう側の建物の屋根に、優雅に腰を下ろした黒い魔導士の姿がある。

見上げれば、真っ白な月明かり。

それはどこか、寒々しさを覚える。

「まさかこの場に来るのが、我が狙いである魔導士たちとはな」

「何者だ」

スキアの問いに、黒の魔導士は冷たい視線を向けてきた。

「審判者、とでもしておこうか」

「審判だと……?」

ここまでのクエストからは少し外れた雰囲気を見せる存在に、二人は互いを見合わせる。

すると風が吹き、月明かりがその魔導士の顔を照らし出した。

「「っ!」」

ワイルドたちの戦い、そしてベリアルの動きを広報誌や動画で見ていたスキアとクルデリスは、その正体に気づく。

「ゼティアの戦いで、見た顔だ」

「んっふふ、また強敵かァ。楽しくなってきちゃったねェ」

「光の使徒を率いる者に、闇の使徒を駆る黒鎧。そして、異世界の王との戦いを生き抜いた魔導士。まったくこのクエストは……おもしろい」

二人が思わず笑みを浮かべると、魔導士は悠然と立ち上がった。

「お前たちが『相応しい』か否か、その力……見せてもらおうか」

そして、華麗に屋根より落下。

直地と同時に、悠然と杖を構えた。

「ゆくぞ、闇を継ぐ者よ。我は世界を凍てつく白霜へと変える者――――樹氷の魔女である」