作品タイトル不明
1043.祝勝の時
暗天に立ち昇る光の柱が、粒子になって消えていく。
メイの一撃は見事に、変貌の王・グィンドラを打ち倒した。
「やったわね! これであとは封印だけよ!」
「お願いします!」
「で、できるだけ早めにお願いしますっ!」
レンたちはすぐに、『鍵』の青年に視線を向ける。
するとあらためて魔力を溜め直した青年が、力を解放。
水鏡のような『封』が、ゼティアの門に張られていく。
再び、異世界へのゲートは閉じられた。
「……どうだ!? 新しい敵が来たりはしないのか!?」
「別の王が、この世界にまた気づいたなんてことはないよな!?」
当然の疑問に、誰もが息を飲む。
じっとゼティアの門を見つめていた『鍵』の青年は、ゆっくりと振り返った。
そして広がる大量の木の根に軽くつまづいた後、静かに首を縦に振る。
「『封』は再び閉じられた。新たな異世界の王の気配もなし。赤月の夜が……終わりを迎える」
青年が視線をあげると、天に輝いていた赤い月が消えた。
渦巻いていた雲が千切れ、白い月光が差し込んでくる。
「ありがとう。世界は……守られました」
そう言って青年は、穏やかな笑みを向けた。
「やったああああああ――っ!!」
「やったわね!」
「やりました!」
「す、すごいですっ!」
歓喜の声を上げるメイに、駆けつけてきたレンたちが抱き着く。
三人に力強く抱きしめられたメイも、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「うおおおおおおーっ! 勝ったぞォォォォ!」
「すげえ……っ! メイちゃんたち本当にラスボスを倒しちまった!」
「最後は地面を突き上げるし、動物たちと一緒に戦うし、陸海空の王をけしかけるし……本物の野生の王者だったな!」
この戦いを見ていた参戦者たちも、興奮せずにはいられない。
「さあ、やれやれっ! 後衛部隊はここが見せ場だぞ!」
その言葉に、皆一斉に杖や弓を天に向ける。
「まかせろォォォォ!! 【ホーリーエクスプロード】!!」
「【雷閃砲】!」
「【連続撃ち】【ダイナマイトアロー】!!」
次々に打ち上げられる爆発系スキル。
集まったたくさんのプレイヤーが一斉に放つ大量の炎が、雷光が、聖なる輝きが夜空を彩る。
これまで星屑内で見られたどの花火よりも派手なエフェクトが、メイたちの勝利を祝福する。
「すごーい!」
その光景には、メイも思わず尻尾をブンブンと震わせる。
「みなさんっ! 一緒に戦ってくれてありがとうございましたっ!」
戦いの後半、大物ばかりになってきた後も地道にまき続けていた種は、完璧な密林を生み出した。
レベルが高い者は戦い、低い者は密林作りの準備を進める。
全員が忙しく駆け回る戦いは、見事な勝利を引き寄せた。
メイが感謝を伝えれば、参戦者たちはさらに盛り上がってスキルを撃ちまくり、さらに歓声と拍手が巻き起こる。
「やったなメイ!」
喜びの中、四天王を打倒したトップの面々も集まってきた。
最初に駆けつけてきたのは、聖騎士アルトリッテ。
「最後は圧倒的だったな! 異世界の王ですら、この密林に囲まれては形無しだ!」
「……文句なしの勝利だった」
小さなマリーカも、こくこくとうなずく。
「ありがとーっ!」
二人を抱きしめると、そこにやって来たのはグラムたち。
「やはりメイを倒すのは、この私以外に――」
「グラムちゃーん!」
「お、おい! 急に抱き着いてくるな!」
「形無しなのは、グラムも一緒だね」
「まったくだな」
メイの容赦ない抱き着きに慌てるグラム、それを見たローランと金糸雀が笑う。
「まさか異世界の王まで倒してしまうなんてね……闇を超えた者の力、確かに見せてもらったよ」
「ナイトメア、恐ろしい魔導士となったな」
「世界の危機を救ったことに関しては、認めなくてはなりませんわね」
すぐさま集まってくる使徒たちに、レンは一瞬硬直するが――。
「今日に関しては、何も言えないわ」
ボスたちの打倒に、大きく貢献してくれた使徒たち。
さらに背後に控える使徒志望者たちに魔力を提供してもらったこともあり、今回だけはグッとツッコミを我慢。
「目指すのは混沌。この程度――――通過点に過ぎないわ」
「やはり、これぞナイトメア……!」
サービスの言葉にすぐさま目を輝かせるリズたちを見て、レンは苦笑いを浮かべた。
「お疲れ様、すごかったね!」
「まったくですな。やはり実物のツバメ殿はひと味違いますぞ!」
シオールやなーにゃも、興奮気味に祝福しにやって来た。
「小さくなったマリーカ殿も含めた可愛いパーティ夢想が、はかどってしまいますな!」
「ぜひスワローさんにも、ひよこちゃんMk-2の実装を……」
早くもやる気十分のなーにゃに、ツバメもダブルひよこちゃんというおかしな要望を提案。
偉業の直後だというのに、二人は相変わらずだ。
「ねえねえ、今度はバニーちゃんのお手伝いに来てよ!」
「わ、私ですかっ!?」
一方まもりは予想以上の盛り上がりにビビって、そっと隅に隠れてたところを見つかり、勧誘を受けていた。
「いいのっ!? そんなのありなんだったら、七新星に来てよっ!」
するとそれを聞きつけたココも登場。
二人に腕を取られるまもり。さらに。
「盾子ちゃんが手伝いに来てくれるとかあるのか!? いくぞ! 掲示板組の総力を持ってお迎えするんだ!」
「「「おう!」」」
さらに掲示板組も、その『運搬力』でまもりを運び出そうと気合を入れる。
「ど、どどどどうしましょうっ!」
こうして引っ張りだこ状態になったまもりは盾に隠れ、その場を逃げ出していくのだった。
「……楽しかったぽよ」
「本当ですねぇ……」
「やはり使徒長との共闘は、何度あってもいい」
夜空を飾り続ける魔法や矢の輝きの中、楽しそうにしている四人を眺めるスライムたち。
星屑初の偉業に、盛り上がりは続く。
そしてエンディングは、メイたちが『鍵』の青年に声をかけにいかなければ始まらない。
しかも『指定の立ち位置』に木があったため、青年は枝を避けるために首を大きく傾げた体勢のまま、メイたちが来るのを待つのだった。