軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【ノベル4巻発売記念SS】なりたい自分

身長が高くてかっこいい大人の女になりたい。

ナイスバディでスタイル抜群な女になりたい。

それは私の中で強い憧れとして形作られていたひとつの願いだった。

なぜそんな風に思うのか。

決まっている。

私には手の届かないものである感じがするからだ。

今月十六歳になった私は、一向に伸びない身長に危機感を募らせていた。

魔術学院に入った十二歳の頃は、平均より少し小さいくらいだったはずなのに。

迎えた成長期で、私の身長は驚くほど伸びなかった。

すさまじい速度で大きくなるクラスメイトたち。

何より、腹立たしいのは一番のライバルであるルークの身長がぐんぐんと伸びていることだ。

前は私と同じくらいだったのに。

ちょっと背伸びすれば勝てるから実質私の勝ちってことで心の中で勝ち誇って良い気持ちになることができたのに。

『わ、私だってこれから成長期が来るはず……! 遅れてきた分、他の人よりもめちゃくちゃすごいのが、きっと……!』

そういう風に少し前までは思っていた。

だけど、そんな希望も現実の前に儚く消えてしまいつつあるように感じられる。

(そういえば、お母さんも身長低い……)

ある学者の人が書いているところによると、身長は遺伝によって影響されるものらしい。

私の身長は伸びないのではないか。

そして、胸もこのまま男の子みたいな大きさから成長しないのではないか。

私は危機感を募らせた。

身体を成長させるためには、たくさん寝た方がいいと本に書いてたから、夜更かしをやめてたくさん寝るようになった。

効果はまったくなかった。

私は追い詰められた。

そんなときに見たのが、魔法研究雑誌に載っていた記事だった。

『なりたい自分になれる。美容魔法薬のススメ』

なりたい自分を、作ることができる。

その事実が私にもたらした衝撃は大きかった。

お化粧とかはめんどくさくて、あんまり興味がない私だけど、大好きな魔法で身長とスタイルを理想の自分に変えられるなら、こんなに魅力的なことはない。

しかし、残念ながら記事に書いていたのは肌とお化粧と髪についてのことだけ。

図書館で調べてみたのだけど、身体を理想の状態に変化させて長期的に保つ魔法や魔法薬は難度が高く一般には流通していないとのこと。

(つまり、簡単なやり方を発見すれば私がパイオニア……)

その響きは私をいたく興奮させた。

世界初の偉業を達成したとなると、間違いなく私の評価はうなぎ登り。

有名人になって、取材とかされちゃったりするかもしれない。

『今日来てくださったのは、美の巨人と言われる天才魔法使い、ノエル・スプリングフィールドさんです!』

みんなにちやほやされる未来を想像して頬をゆるめる。

(これしかない! やるぞ……!)

私は張り切って魔法薬の研究を開始した。

「全然うまくいかない……」

二週間後、私は図書館で机に突っ伏してうなだれていた。

調合した変身薬は、一時的にスタイルを変えてはくれたけれど、持続効果に関してはまったくダメ。

理想の自分は、おとぎ話の魔法のドレスみたいに時間制限付きで、今は研究用に魔導式映写機で撮った写真の中にしかない。

「なにしてんの?」

知っている声がして顔を上げる。

ライバルであり、親友であるルーク。

前より背が高くなったその顔を恨みがましく見上げる。

「実験が全然うまくいかなくてさ。一時的には完璧な自分になれるんだけど持続させるのが難しくて」

私は理想の自分が映った写真をルークに見せる。

「どう? めちゃくちゃセクシーで綺麗でしょ」

「……バランスが特殊すぎて気持ち悪い」

「は? 戦争だぞ」

「いや、このスタイルは人間として絶対間違ってる」

真面目な顔でそんなことを言う。

言われてみればたしかに、足が長すぎるし胸も大きすぎるかも……。

(最初からやり直しか……)

うなだれる私に、ルークはぽつりと言った。

「そのままでも十分かわいいのに」

言って、自分の言葉にびっくりしたみたいに顔を押さえる。

「なんでもない」

ぎこちない動きで背を向けたルークを、『美的センスないのか?』と思いつつ見送る。

こんな私に、十分かわいいなんてそんなこと……

そんなこと……

「………………」

(十分かわいいのかな)

ゆるんだ頬を手で覆って隠した。