軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海中での自衛

【プチプチタケ】

長さが二メートルから五メートルに成長し、直立する茎に粒状の小枝が発生する。

プチプチとした食感が特徴的な海藻。

岩礁に生えていた海藻を採取する。

海ブドウのような海藻で葉っぱの部分が粒状になっていた。

きっとそのまま食べても、醤油のようなソースにつけても美味しいのだろう。

はぁ、この世界にも醤油のような調味料はないのだろうか。これだけ醤油に合う海産物があると、どうしても醤油が恋しくなってしまうものだな。

なんて考えていると、目の前を魚が漂ってきた。

「おっ、可愛い魚だな」

つぶらな瞳をしており丸っこい体には小さな棘が生えている。丸っこいフグのようだ。

左右についている小さなヒレを懸命に動かしているのがとても微笑ましい。

なんという魚なのだろうか?

【バルーンニードル】

丸っこい体に斑点模様のある魚。

身に危険が迫ると海水を一気に体内に取り込み、体表にある棘を勢いよく噴射する。

小さな棘には軽度の神経毒が含まれており、刺さるとしばらく動けなくなる。

鑑定スキルでバルーンニードルという物騒な名前と、説明を目にした俺は伸ばしかけた手を引っ込めて、岩陰に隠れた。

それと同時バルーンニードルは海水を一気に取り込んで風船のように膨らみ、小さな棘を発射した。

無差別に発射された棘は周囲を漂う魚や岩を抉った。

岩陰から顔を出してみると、バルーンニードルはすっかりと体を萎ませて、水流に身を任せるように去っていった。

「危なかったな」

近くに自分が隠れられるほどの岩陰があって助かった。

あのような攻撃を受ければ、アイテムによって生成されている膜も破られていただろう。

バルーンニードルは致死性の毒こそ持っていないようだが、刺さってしまえばしばらくは満足に身動きが取れなかったことだろう。

解毒ポーションは所持しているが、普段よりも動きが不自由な海の中でそのような状態に陥るのはゴメンだ。

それに突然海水に見舞われて、そのような冷静な判断ができるかどうかも怪しいものだ。

美しい海の世界と未知の素材にはしゃいでしまっていたが、ここは海の中なのだ。

人間が生息することのできない厳しい環境であるということ頭に置いておかなければいけない。今の出来事は興奮した俺の頭を冷やさせるものだった。

さすがに広大な海の中で魔物との戦闘を避け切る自信はないから。

「素材採取の前に少し自衛の練習をしていた方がいいな」

まず、基本的な動きだがそれは既に把握している。

水流という障害があって、機敏に動き回ることはできないが、それなりに動くことはできる。先程のようにある程度危険を察知できれば、身を隠すくらいの動きは可能だ。

問題はこちら側の攻撃だ。

海の中である以上、勿論火魔法を使うことは難しい。

多分、俺の魔力でゴリ押しをすれば海の中でも使うことはできるだろうが、多大な魔力が必要な上に大きく威力が削がれることになるだろう。

他にあるのは土魔法、水魔法、氷魔法、風魔法など。

一番使い慣れているのは氷魔法であるが、水中での発動はどうだろうか。

「アイスピラー」

海水をそのまま凍らせるイメージでやってみると問題なく生成でき、発射してみると岩を穿った。

「うん、使う分には問題ないね」

というより、周囲にある海水を利用してお陰か比較的スムーズな気がする。

ゼロから作るのと周囲にあるものを利用するのとでは効率が違うのだろう。

もう一度生成して今度は海水の中を真っ直ぐ、できるだけ遠くに飛ばしてみる。

すると、氷柱は二十メートルほどで左に逸れて失速した。

長距離の発射になると水流の影響を受けてしまうようだ。

試しに推進力を上げるために氷柱に回転を加えてみると、先程よりも遠くに真っ直ぐ進んでくれた。

「これなら実戦でも問題なく使えそうだ」

多少、工程と魔力は必要であるが、これくらいの調整であれば問題はない。

「フリーズ」

周囲に冷気を振り撒いて、無差別に凍らすこともできるようだ。

これでひとまずの攻撃は何とかなりそうだ。

他にも使えそうな魔法を模索していると、風魔法のエアカッターというのが使えそうだった。風の刃を飛ばす初級魔法で、水流の影響を受けてしまうのだが使い勝手がいい。

土魔法は岩や土を利用すればいいのだが、海底にいないと使いづらい。

水魔法は海水を操作して水流を使ったり、相手を押し退けたりすることができる。他にも海水を目の前に集めて水障壁として使ったりと万能な感じだ。

基本的に氷魔法と風魔法を攻撃で使い、水魔法を補助で使っていくのが自分には良さそうだ。

これまでであれば一通り検証をして満足だったのだが、今の俺はそうはいかない。

ここのところ森でレッドドラゴンに襲われ、鉱山でドボルザークと遭遇してしまっている。

特に討伐することを狙っていないというのに、このような凶悪な魔物と戦うハメになっていた。

考えたくはないが今回の海でも、それなりの魔物と遭遇してしまうのではないかという懸念がある。

そのために、きっちりと動けるように実戦は積んでおかなければいけない。

前方には頭が大きく出っ張ったサメっぽいのが泳いでいる。

【ハンマーシャーク 危険度C】

頭部がハンマー型になっているサメ型の魔物。発達した頭部は岩をも砕く。突進には注意。

神経質な性格で気にくわない者を排除しようとする。すり身にして食べると美味しい。

先程鱗を拾った時に表示された魔物だ。

どうやら異様に発達した頭部で攻撃してくる魔物らしい。

相手は自由自在に泳ぎ回れるだろうし、勢いをつけて突進をされたらとても厄介だ。

だが、それはこのアイテムと魔法が使えなければの話だ。今の俺ならば真正面から戦っても問題はない。

俺は優雅に泳いでいるハンマーシャークに威力を弱めたアイスピラーを放つ。

攻撃に気付いたハンマーシャークは機微にそれを避け、こちらを確認すると泳ぐ速度を上げた。

どうやらちょっかいをかけられたと感じ、排除することに決めたようだ。

縦横無尽に水の中を泳ぐハンマーシャーク。

その速度はかなりのもので俺は目で追いかけるだけで精一杯。

ハンマーシャークは俺の後ろ側に回り込むと、そのまま勢いを付けて突進してくる。

まともに食らってしまえば、そのまま岩場にでも縫い留められて身体の骨が折れてしまうだろうな。

だが、そんなのゴメンなので水魔法を使って、身体の前に水流を作ってやる。

突撃してきたハンマーシャークは見事にそれに乗って、俺の斜め後方へと流れていた。

後ろを向くと岩を破砕して砂煙を上げていた。

「アイスピラー」

その場に氷柱を叩き込むと、ハンマーシャークは機敏に泳いで離脱する。

しかし、氷柱の一本がヒレを掠ったらしく、明らかにバランスが崩れていた。

「エアカッター」

ハンマーシャークの泳ぐ先を予想して、速度重視の風魔法を放つと真っ二つとなって沈んだ。

一応、鱗は素材になるし、すり身にすると美味しいらしいので死体を回収する。

海の中でも使いやすい魔法を使ってみたが、相手がそれを上回る速度だったな。

俺としては最初の氷魔法で仕留めるつもりであったが、相手が予想以上の加速を見せたために逃れられてしまった。

俺が思っている以上に魚系の魔物は泳ぐのが速いのだな。

甲殻系の魔物以外はそれ程防御力が高いようではないので、海中では速度を重視した魔法の方がいいかもしれないな。

そんなことを考えながら、俺は次の魔物を探して歩いた。