軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

硬魔石の採取

目的地である地下四階にたどり着くと、発光石があちこちにあり坑道がうっすらと照らされている。

まるで東の森あった発光キノコのような優しい灯り。これだけの光量があれば、ライトボールで道を照らす必要はなさそうだな。

ライトボールの灯りを消して歩き出そうとしたところで、お腹が鳴った。

「そろそろ昼食にするか」

そういえば、朝早くに出発してから何も口にしていなかったな。

魔石調査をしてみると周囲に魔物の反応はない。

ちょうど開けた場所についたことだし、ここで昼食をとることにする。

マジックバックの中にはいくつもの保存食や弁当などが入っているが、せっかくなので作る過程も楽しみたい気分だ。

マジックバックがあるから手軽に済ませてしまえばいいと思うかもしれないが、マジックバックがあるからこそ外でも料理をしたい。

前世では仕事や家事、人間関係などと様々なものに煩われていたので時間が不足しがちだったが、今はその時に比べるとたくさんの時間があるしな。

少しくらい料理にチャレンジして楽しんでみたいと思う。

せっかくスキレットを買ったのだし、スキレットの使える料理がいい。

ここは定番のアヒージョでも作ることにしよう。

そう決めた俺はマジックバックからアヒージョに必要な材料や調理器具を取り出す。

オリーブオイル、塩、胡椒、パセリ、ニンニク、唐辛子、ミニトマト、ウインナー、マッシュルーム。そして、カマンベールチーズだ。

これは冒険者の酒場で提供されている特製アヒージョ。

スキレットの中央にデカデカと乗ったチーズをバケットにつけて食べる冒険者の姿がとても美味しそうだったので、いつか作ってやろうと思って材料だけは揃えていたのだ。

まずはニンニクの皮を取ってやる。それから薄切りにしたいところであるが、ニンニクの芽は焦げやすいので串を使って取り除いてやる。

それが終わると薄切りだ。ただニンニクを焦げやすいので気持ち厚めに。

それから唐辛子のヘタを落とし、マッシュルームの汚れを取ってからこちらもスライス。

今回の材料は火が通りやすいものばかりなので、そちらに合わせる。

次に食べやすいサイズにウインナーを切り、大きなカマンベールチーズを六等分にする。

これで下ごしらえは完了だ。

魔道コンロの火をつけて、そこにお気に入りのスキレットを乗せる。

スライスしたニンニクと唐辛子を入れたら、オリーブオイルを注ぐ。

ニンニクの香りが移りやすいように弱火で煮ていくと、ニンニクのいい香りが漂い出した。

「はぁー、ニンニクの香りはどうしてこんなに胃袋を刺激するのか」

こんなにいい匂いを出したら魔物も寄ってくるんじゃないか? 思わず心配になって魔石調査をしてみるも、魔物の姿はなかった。

嬉しいけど、この香りのよさに気付かないとは魔物も残念な子たちだ。

オリーブオイルがじゅわじゅわ音を立てるようになると、火の通りにくいマッシュルームを投入だ。

マッシュルームに火が通ると、中央にデカデカとしたカマンベールチーズを投入。オリーブオイルの海に新大陸が出現したような衝撃だな。

それからウインナーやミニトマトを入れてやり、塩胡椒で味付けし、パセリをふりかけてやれば冒険者酒場風、カマンベールチーズアヒージョの完成だ。

ずっと火をつけたままにすると、チーズが溶けてしまうので火はすぐに切っておく。

バケットをスライスしてやれば、いざ実食だ。

当然、まず食べるべきはカマンベールチーズ。フォークで持ち上げると、絶妙な蕩け加減。

それをバケットに擦り付けて、マッシュルーム、ミニトマト、ウインナーも載せてやる。

「それじゃあ早速……美味いっ!」

濃厚なチーズがバケットに絡むだけで美味しいのに、そこにトマトも加わっているのだから最強だ。やはり、チーズとトマトの相性は鉄板だな。

オリーブオイルをよく吸っているマッシュルームや、ジューシーなウインナーもいい仕事をしていて飽きることのない味だ。

具材を載せず、オリーブオイルにつけて食べるだけでも十分なごちそうだ。

スキレットの中にはまだデカデカとカマンベールチーズが残っている。それを全部一人で食べるなんて、すごい贅沢だな。

デミオ鉱山の地下四階で一人アヒージョを作って食べる。中々男の一人飯レベルが高いのではないだろうか。

森のように景色がいいとはいえないが、幻想的な光が灯る中、静かな空間で食べる料理も悪くないな。

チーズアヒージョによってお腹を満たした俺は、やる気を漲らせて坑道の中を進んでいく。

目的はツルハシを作るのに必要な硬魔石。

この階層にあると聞いていたので、俺は早速探すことにする。

「硬魔石、調査」

スキルを発動させると、地中にある硬魔石が視界で表示された。

「おっ、あるある!」

その色は青から赤。ランクにムラがあるのは、魔力による硬度が関係しているのではないかと思われる。

俺がドロガンの工房で魔力を込めた極硬魔石は金色に輝いていたし。

とはいえ、今回採取するものは低品質でなければ問題はないだろう。ドロガンによると、持ち帰ったものに少し魔力を注ぎ硬度を上げる。

それをドロガンがツルハシにして形になったものに、さらに俺が魔力を込めて硬度を上げるからだ。

さすがに現状では極硬魔石をそのまま加工する方法を思いつかないらしい。だって、あのデカいハンマーでも弾かれるんだものな。加工のしようがないだろう。

そんなわけで視界に表示される硬魔石のところに向かう――が、その前に魔石調査で魔物の警戒だ。

魔石で調査をしてみると、意外と近くにカマキリのようなシルエットをした魔物がいた。

あれは多分、ラビスがいっていたマンティスという魔物だろう。

異様に発達した刃を振るって襲ってくるのだとか。狭い坑道内でそんなものを振り回されて躱し続ける自信はない。

俺は即座に迂回して硬魔石のある安全地帯に避難した。

改めて魔石調査をしてみるが、周辺に魔物の姿はない。

「よし、ここで掘るか」

マジックバックからドロガンから貰ったツルハシを取り出し、地中に埋まっている硬魔石目掛けてツルハシを振るう。

ラッゾに教えてもらったように大振りはせず、ツルハシの金具の自重を生かすようにコンパクトに打ち付ける。

大して力を込めていないのに、ツルハシの先端が突き刺さる度にボロボロと壁が崩れていく。

たくさん壁が崩れると掘っているこちらも楽しいな。

ラッゾに掘り方を教えてもらったこと以前に、やはりこのツルハシの性能がいいのがわかる。軽くて振りやすいのにしっかりと掘れるのだ。このツルハシを使っているだけで、ドロガンが作ってくれる物に期待ができるな。

角度や力の入れ具合を調整すると、多く削れたり、あまり削れなかったりするのも含めて採掘というのは奥が深いものだ。

採掘の達人はその時に合わせて角度や力加減を調整しているものなのだろうか。

工房に戻ったらドロガンかロスカに聞いてみよう。

硬魔石の近くまで掘ることができたら、ロックハンマーやタガネで丁寧に掘っていく。

露出した硬魔石をできるだけ傷つけないように。

最後の仕上げともいえる作業は結構地味だが、これはこれで俺は好きだ。

可愛い素材ほど手がかかるものだしな。

そうやって作業を進めると、硬魔石の塊を無事に三つほど採取することができた。

「硬魔石の採取完了!」

淡い青色をした鉱石を掲げて俺は叫ぶ。

ツルハシを作るには十分な量を獲得したが、今後他の武器や防具に使えるしな。

「もう少し採掘してから帰ることにしよう」

そう決めて、俺は視界に表示される硬魔石のところに移動するのであった。