軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シュウの出張店

解凍したゲイノースはダークエルフの戦士たちによって解体されることになった。

「シュウ、ゲイノースの素材で価値が高いのはどこかわかるか?」

ゲイノースは特殊な生態から知っている者がいない。すると、どこが価値の高い素材で、どういった処理が必要なのかわからない。

そういうわけで解体作業はしないものの俺は監督役として傍にいた。

レイルーシカに尋ねられて改めて調査スキルを発動。

すると、部位ごとに色が変わり、素材の希少価値を表してくれた。

「皮、牙、毒袋、眼球ですね。特に皮の価値がとてつもなく高いみたいなので、綺麗に採取できる部分は確保をお願いします」

「わかった。ちなみにこれは食べられるのか?」

そう言われて改めて鑑定してみる。

【ゲイノース】

毒袋を綺麗に取り除けば、食用可能。

白身魚のような淡泊な味をしている。臭みがなく非常に食べやすい。

滋養強壮効果がとても高い。

「どうやら毒袋を綺麗に取れば食べられるみたいです。栄養も豊富なようで」

「おお、そうか! では、しっかり血抜きもしてしまおう!」

レイルーシカの一声を聞いて、ダークエルフたちがゲイノースの頭を落とし、血抜き作業に入る。

落とした頭は戦果を誇るかのように台座に乗せられる。

頭だけとはいえ、実際に動いていた姿を見ていたのでソワソワとしてしまう。

今にも動き出すんじゃないだろうか? なんて思ったりも。

「ゲイノースの素材はどのような使い道があるのでしょう?」

頭を眺めているとルミアがわくわくとした面持ちで尋ねてくる。

早速と素材の使い道を考えているらしい。

【ゲイノースの擬態皮】

周囲の光景に溶け込むことのできる皮。錬金術でアイテムとして加工すると、擬態効果が得られる。希少価値がとても高い。

【ゲイノースの牙】

ゲイノースの鋭く発達した牙。鉄や鋼を容易く砕き、毒を注入することができる。

武器に加工することができ、凶悪な毒効果を付与できる。

【ゲイノースの猛毒袋】

ゲイノースの体内にある猛毒袋。

七種類もの複合毒があり、数滴で人間を十回は殺せるくらいの強い毒を持っている。

【ゲイノースの眼球】

美しい虹彩を宿したゲイノースの眼球。特化回復ポーション、特化解毒ポーション、万能薬などの様々な触媒に適している。

素材ごとに鑑定してみると、このような情報が出てきた。

「皮はアイテムとして加工すれば、擬態効果が得られるみたいですね」

「本当ですか!? それはすごいですね! マントなんかにすれば、いつでも隠れることができますね!」

「それは非常に便利ですね! グランテルに帰ったら是非加工をお願いします!」

「はい! 任せてください!」

俺が頼むとルミアは快く頷いてくれた。

擬態できるマントとか便利過ぎる。

特に採取に集中したい俺からすれば、かなり嬉しいアイテムだ。

それが完成すれば、マントで擬態して魔物との接敵を避け、ますます採取に集中できることだろう。とても嬉しい。

他にも牙、猛毒袋、眼球についての概要を説明していく。

素材の活用方法について知れるのが嬉しいのか、ルミアは聞く度に表情を豊かに変化させていた。

普段は物腰が柔らかく、落ち着いた彼女であるが、素材のことになるととても饒舌だ。

そんな一面が微笑ましい。

「しかし、困りましたね」

「なにがでしょう?」

「他の素材は複数ありますが、ゲイノースの眼球は一つしかありません」

「あっ、確かに……」

ゲイノースの左目は俺が最初の攻撃で貫いてしまっておりダメになっている。

残っているのは右目だけであり、どうやって分配したものか。

「マジックバッグがあるので眼球を半分に切断して、持ち帰ることができますが……」

「眼球はとても鮮度が落ちやすく、一度傷つけるとかなり劣化してしまうものが多いのであまりそれは良くないかと……」

ルミアに言われて眼球についての詳細を見てみると、その通りだった。

魔力液に保存し、加工する直前まで傷つけないのがいいのだとか。

「眼球ならシュウとルミアが持って帰ってくれ」

「いや、それは……」

元はといえば、俺が潰してしまったんだし、もう片方を得る権利はレイルーシカにあると思う。

「うちの集落には加工する道具もないし、ルミアほどの技術を持った者もいない。きちんとした使い道があって加工できるのであれば、できる者に使ってもらう方がいいだろう」

「わかりました。お言葉に甘えて頂こうと思います。その代わりといっては、なんですが俺が持っている食材や日用品と交換にしませんか?」

ゲイノースの眼球は金の希少価値を持つ素材だ。換金すれば、金貨数十枚から数百枚にもなる。そんなものを無料で受け取るのは気が引けた。

なので、代わりにここでは手に入りづらい食料や日用品なんかを代わりに渡したいと思う。

「食材や日用品って、そんなものがどこに――ああ、マジックバッグか!」

「はい。俺のバッグの中にはいざという時に備えて食料や日用品をかなり収納してますので」

特に食料や水、お酒などはトン単位で所有している。

その気になれば、この集落全員分をしばらく食べさせることだって可能だ。

「それはありがたい! 集落の者たちも喜ぶ!」

「ところで、結構大事な交渉をしているのですが、ゲイルさんに許可をとらなくてもいいのですか?」

「それについては問題ない。私はゲイルの娘であり、次期長だ。このぐらいの決定権は私にもある」

「あっ、そうだったんですね」

レイルーシカの指示に素直に従っていたのは、頼りになる戦士というわけではなかったのだな。

「意外だったか?」

「いえ、信頼の厚さを見ていて納得しました。本当にすごいですね」

「そ、そうか」

前世の企業で働いていた俺にだって後輩という存在はいた。

たった数人の育成をしながら自分の業務をこなすのが大変だというのに、レイルーシカは数百という規模の者を従えているのだ。

その重圧や責任感ときたら、最早俺なんかには想像もできない領域だ。

そんな立場に立っているレイルーシカを俺は素直に尊敬した。

「シュウ、早速貰える食料や日用品を見せてくれないだろうか?」

「わかりました」

唐突な話題転換は照れ臭さを隠すためだろう。

それがわかっていつつも、俺は指摘することなく素直に応じることにした。

少し離れた広場らしき場所に陣取ると、俺は大きなシートを取り出して敷く。

その上にダークエルフたちが貰って喜びそうな食料や日用品の数々を取り出していく。

塩漬け肉やリンドブルムの塩漬け魚、乾燥させたキノコやドライフルーツといった保存食から、グランテルの市場で買っては保存していた新鮮な野菜や果物の数々。

日用品では普段使いしやすい服やズボン。

後は便利なアイテムを少々と武具、蒸留酒などのお酒だ。

子供が喜びそうな玩具や雑貨などを置いた。

「最早、ちょっとした店のようだな」

「お金に困ったらこういう稼ぎ方も悪くないですね」

たくさんの物を並べ出すと、ダークエルフの女性や子供がたくさん集まってきた。

ここでは手に入れることの難しい物や、作ることのできない物が多いだけあって、とても興味を示しているらしい。

そんな中、女性の一人がレイルーシカに耳打ちをする。

「シュウ、わがままを言うようで申し訳ないが糸や布はないだろうか?」

おずおずと申し出るレイルーシカや女性たちの服装を見ると、とても衣装が綺麗で凝った装飾をしているのがわかる。

恐らく、ここのダークエルフたちは裁縫が得意なのだろう。

「勿論、ありますよ」

そう言って、たくさんの色の糸や布を取り出してみせると、女性たちの表情が華やいだ。

グランテル、リンドブルム、エルドといくつもの大きな街で買い集めているだけあって、糸や布の種類はたくさんあるからね。

「他にも欲しいものがあったら遠慮なく言ってみてください」

そう言ってみせると、遠慮気味だったダークエルフたちから様々な声が上がり、応えられる範囲の品物を出してあげた。