軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ブリザード

リザードマンたちを倒し、さらに奥に進むと溶岩地帯の割合も増えた。

そのせいで洞窟内の温度は比較的上昇しており、ドンドンと暑くなっている。

俺は氷魔法で冷気を常に纏うこととアイテムで難を逃れているが、それらがない状態での行軍は考えたくもないくらい。

重装備の冒険者は鎧を着ていたら蒸れるだろうし大変だろうな。軽装な魔法使いスタイルでよかったと心の底から思う。

頂上部に向かう距離は直線距離だとそれほど遠くないが、物理的に迂回せざるを得ない道が多くなったり、マグマに潜む魔物もいるので進む速度は緩慢なものになる。

先に続くルートが見えているのに、突っ切って行くことができないのは少しもどかしい。

その代わり多少温度が高い程度の地表であれば、フリーズをかければ道として使うことができる。

さすがにマグマを冷やして、その上を渡るなんてリスキーなことをする度胸はないが、これができるだけでも十分近道をできて楽だな。

そんな風に環境の厳しさの割に色々な意味で涼しい思いをしている俺だが、小まめに水分補給はしておく。

涼しいからといって水分を補給しないでいると熱中症になる可能性もあるしな。前世でも真夏に家にこもっていた老人が熱中症で倒れたというのはよく聞く話だ。

喉が渇いていなくても適宜補給しておかないとな。

湧き水筒で喉を潤し、少量の塩を舐めておく。

湧き水筒は時間が経過すれば、本当に水が増えていた。

小刻みに水を飲んでいるが、時間が経過する度に増えて満タンになっている。

がぶ飲みをしない限り、補給量が足りないという事態には陥らないだろう。

マジックバッグで大量の水を常備しているが、尽きることのない水があるというのは心強いことだ。

「アイスボール」

水分補給を終えると、氷魔法で小さな丸い氷を手の平に作り出す。

それを口に放り込むだけで、冷たくてとても心地いい。

火山地帯において氷魔法はこれ以上なく心強い魔法だな。

氷を口に含みながら洞窟の中を進んでいく。近くにあるマグマだまりでは、ぐつぐつと鍋が煮えたぎるようにマグマが流動している。

そういえば、長時間のプレイで熱くなったゲーム機の上では、目玉焼きができるという話を聞いたことがあった。

それと同様にこのように熱い場所でなら、食材を焼き上げることができるのではないだろうか。

「ちょっとエリンギでも焼いてみよう」

自分でもバカなチャレンジだとわかっているが、好奇心を刺激されたので行動に移してみる。

マジックバッグからエリンギを取り出し、串に刺して炙ってみる。

すると、程なくしてエリンギがしおれてきて炙られている感じがした。キノコの焼けるいい匂いが漂う。

さらに好奇心が湧いて徐々にマグマの方に近付けていくと……。

「うわっ、一瞬で燃えた!」

エリンギにボッと火がついて燃え上がり、一瞬の内に串もろとも炭化した。

俺は慌ててマグマから距離をとる。

そりゃ、そうだよな。数千度のマグマに近付いていけば、その余熱だけで十分に燃え尽きるよな。

熱くなったゲーム機とマグマを一緒にするもんじゃない。

マグマで遊ぶのは危険過ぎるのでこれ以上はやめておこう。

遊ぶのをやめて魔石で調査をすると、マグマの中に魔物の反応が複数あった。

視界では小魚のようなシルエットが浮かび上がっており、まるでマグマを海のように泳いでいる。

エリンギの焼ける匂いで寄ってきたとかじゃないよな?

【マグマレス 危険度B】

溶岩の中を自在に泳ぎ回る魚系の魔物。体内に蓄えた溶岩を球状にして発射してくる。

とても慎重な性格をしており、遠距離から攻撃してくることが多い。

鑑定してみると、どうやらマグマクラブのようにマグマの中で自在に行動できる魔物ようだ。

マグマの中を泳げる魚とは本当に常識が通じないな。だからこそ、面白いといえるのだが。

しかし、マグマを球状にして発射してくるとは質が悪い。そっちはなんてことないものでもこっちは当たれば大惨事だ。

炎の指輪があっても軽減できるかは怪しい。

マグマにはできるだけ近付かないように進むが、マグマレスは顔を出してマグマを吐き出してきた。

オレンジ色に輝く熱物質がこちらに向かって飛んでくる。

調査でしっかりと感知していたので不意を打たれることなく避けたのだが、地面に当たったマグマがバシャッと弾けた。

それが俺の方に微かに飛んできたらしくジュウッと音がする。

「うわっ!?」

咄嗟に後方にジャンプして身体を確かめてみるが、特に焼けた様子はない。

しかし、周囲に纏うフリーズが冷気を強く吐き出していた。

多分、僅かに飛来したマグマをフリーズが防いでくれたのだろう。

「冷気を身に纏っていてよかった……」

またもや氷魔法に助けられた。これがなかったら衣服に穴が空いて重い火傷をしていてもおかしくはない。

マグマを吐き出してくることの危険性を甘く見ていた。

マグマの跳弾を意識して大きく避けるか、跳弾は冷気を強めることで防ぐ、あるいは氷魔法で冷やして撃墜する必要があるな。

警戒レベルを上げていると、マグマレスがまたもやマグマを吐き出してくる。しかも、今度は複数体が一気に。

交差するように飛んでくるマグマを大きく跳躍することで避ける。

マグマ球の威力こそは絶大だが、射出される速度はそれほど速くないのが救いだ。

「フリーズ!」

遅れてやってきたマグマには、氷魔法で対処をしてみる。

しかし、並の魔力では高い熱量を誇るマグマを完全に凍らせることはできない。

だから、俺はフリーズよりもさらに威力の高い氷魔法を行使する。

「ブリザード!」

すると、俺の周囲にあるものの全てが凍り付いた。

飛来してくるマグマは勿論、洞窟内に流れるマグマそのものも。

フェルミ村でブルーグリズリーを相手に使ったフリーズを遥かに超える、広さと強度で周囲のものが凍っていた。

まるでここだけ氷河期が到来したようだ。

「まさか、マグマまで凍らせることができるとは……」

マグマまで凍らせることができるとは思っておらず、自分で引き起こした現象にも関わらずドン引きだ。

マグマの中を泳いでいたマグマレスも凍り付いてしまっている。

魔法の効果範囲から離れた場所では、超低温の氷と超高温のマグマがひしめき合って湯気を上げていた。

マグマを凍らせることができたのも恐ろしいが、これほどの威力のある魔法を使っても魔力に余裕があることが恐ろしい。まったく、俺の身体にはどれほどの魔力があるというのか。

「ヴォルケノスに襲われたら、いざという時は使おうと思っていたんだけどな……」

最悪、足止めにできるかな? と思っていたが、これでは成体ごと氷漬けにしてしまいそうだ。

飛んでくるマグマを凍らせようとしただけで、この様だ。

的確に足だけを凍り付かせるように調節するには、まだまだ練習が足りないな。

とはいえ、ブリザードを使えば、マグマでさえも凍り付かせることができるとわかったのは大きな収穫だ。

試しに凍らせたマグマの上を歩いてみるが、何の問題もない。ただ普通に氷の上を歩いているような感覚だ。

「しばらくは、こんな風にマグマを凍らせて練習するのが一番だな」

俺は凍らせたマグマの上を歩いて先に進むことにした。