軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16 地下六階

「次の小部屋に敵影五」

「了解です」

俺は迷宮のゴツゴツした壁伝いに移動し、通路から小部屋に入る地点で身を隠すようにして中を覗き込んだ。

「ブルーデビルが五体だな」

「よりにもよって最後に一番厄介な布陣ですか」

「まあ良いだろ。卒業試験って事で。目指すは完全勝利だ」

「承知しました」

ズーグの手斧を買ってから、二週間程が経過していた。

俺達は地下六階を主戦場にしつつ鍛錬を積んでいる。

【ステータス画面】

名前:サイトウ・リョウ

年齢:25

性別:男

職業:才能の器(37)

スキル:斥候(5)、片手武器(3)、理力魔法(5)、鑑定(5)、神聖魔法(4)、魂魄魔法(4)、看破(5)、体術(2)、並列思考(2)、射撃(2)(SP残0)

【ステータス画面】

名前:ズーグ・ガルトムート

年齢:58

性別:男

職業:戦士(22)

スキル:両手武器(7)、竜魔法(2)、槍使い(8)、片手武器(4)、投擲(1)(SP残0)

俺の方は魔法技能の成長は無い。いつもながら時間が掛かっているように思えるが、そもそもが周囲と比較してもありえないくらい早いので、不満を持っては駄目だろう。

また斥候レベルが5になり並列思考のレベル上昇もあって新たにSPを手に入れた。横伸ばしが極まってきているが、徐々に戦闘系の取るべきスキルが減ってきているので次の取得は考えないといけない。○○使い系は近接戦闘をあまりやらない俺にとってそこまで有用じゃないからな。

ちなみに新たに取得したのは射撃のスキルである。

別に弓を使おうと言う訳ではないが、射撃系の魔法(マジックボルトとか)の命中精度が上がっているので助かっている。

並列思考のお陰でアイスランスのような威力のある魔法も複数同時に扱えるようになってきてはいるが、その分狙いは適当になってしまうからな。「ホーミングマジックとエクステンドマジック」「並列思考と射撃」の組み合わせは互換している性能だが、前者は確実性、後者は魔力のコスパと言う点で差別化できている。両方使えば更に性能が上がるので、複数化と命中力を別途用意できるようになったのは大きかったと思う。

一方ズーグは片手武器がちょっと伸びて、投擲もレベルが上がった。

多少だが目に見えて六階の強敵と渡り合えるようになっているので、そろそろ次の階に挑戦するのも良さそうだ。

「旦那、仕掛けはどうします?」

「ヘタな範囲魔法は止めておこう。一体ずつ確実に仕留める。あの青色どもにも慣れてきたし、今ならできるだろ」

小部屋に居る次の敵、ブルーデビルは青いのっぺりした人型の魔物だ。首が無く頭のてっぺんから肩までが一直線に繋がっている。そして三日月形の目と口が笑ったような形で配置された非常に不気味なやつである。

こいつは基本的な魔法抵抗が高く、力も素早さもあると言う全てが高水準のモンスターだ。

物理方面は打撃には強い反面、斬撃と刺突にはやや弱いようなのでズーグの攻撃が有効……と言いたいところだが、実際には近接戦闘技術がそれなりにあるらしい。俺の魔法的補助と身体強化を全部使ってようやく一体と互角と言ったところだ。

片腕片目でなければ話は違うだろうが、無いものねだりをしても仕方がない。

「って事で、俺がエクステンドマジック、ホーミングマジック込みの全力アイスランスを打ち込む。お前は注意がこっちに向いたら躍り出て投擲を。その後近接に移ったら隙を見てパラライズ撃つから見逃すなよ?」

「お任せください」

「じゃ、補助掛け直したら突撃だ」

キーンエッジを始めとした補助を掛け直し、戦闘開始だ。

「 魔法拡大(エクステンドマジック) 、 魔法誘導(ホーミングマジック) ……いけっ 氷槍(アイスランス) ッ!!」

大型化させた二本の氷槍を放つ。

集中していて数秒意識から外れていたが、魔法の気配に気付いたブルーデビルどもがこちらに向かってきている。

ズーグの投擲は外れ。しかし注意がズーグに一瞬ずれ、その直後に氷槍が着弾した。

「マ˝ッア˝ア˝ア˝!!」

「ベァア˝ッ!」

気持ちの悪い声を上げて、二体のブルーデビルが崩れ落ちる。

射撃スキルと魔法誘導によって極太アイスランスに脳天ぶち抜かれたんだから当然だな。

これで二対三。

「おおおおおっ!」

ズーグが一体に躍りかかって一閃。それは剣先が掠めただけに留まったが、返す刀で別の一体に切りつける。

これで二体の注意が引きつけられれば良いが。

……よし、問題無いな。

一体はこちらに来ているが、俺は既に三発分のショックの準備に移っている。

並列思考でパラライズも準備を進め、ショックのスペルを 投射(キャスト) 。

そして着弾確認後、

「パラライズッ!」

光が弾け一瞬だけブルーデビルの動きが止まる。

その隙を逃さず、ズーグの剣が閃いた。

僅かな一瞬に二方向のブルーデビルに致命傷を与える事は難しかったのか、ズーグは一体の腕を斬り飛ばした後、もう一体の脳天を唐竹割りにしたようだ。

これで更に一体撃破。結果は十分だ。あいつの方はもう大丈夫だろう。

後は俺に向かってくる奴をやるだけだ。

「 魔法爆雷(アーケインマイン) !」

並列思考込み込みでばら撒けるだけばら撒く。

奴は宙に浮かぶ爆雷の群れに一瞬躊躇したが、自身の魔法耐性と比較して脅威ではないと判断したか、そのまま突っ込んできた。

だが、その間にも俺は魔法を準備している。

後ろ向きに下がっても凹凸に躓いたりしないのは体術スキルのお陰だろう。集中を切らさないで済むから地味にありがたい。

「 火葬(クリメイション) 、はっ」

手のひらの上に留めたクリメイションを、近付いてきたブルーデビルに当てるため牽制で剣を振る。ズーグでようやく倒せる相手なので、ガチンコで近接戦闘したら負ける自信があるが、今は関係の無い話だ。

「ほいっと」

そして相手の突撃に合わせて放り投げたクリメイションが着弾し、青い体を真っ赤に燃え上がらせたのだった。

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「よし、上々だな」

「旦那、大丈夫でしたか」

「おう。そっちも終わったみたいだな」

ブルーデビルの魔石を拾いながらズーグと合流する。

こいつの方も問題無く終わったようだ。傷も無いようだし、完勝と言って良いだろう。

「これで次に進めますね」

「まあ、次はできたら魔法のレベルが上がってからにしたいけどな。装備も整えたいし」

「そうですか」

「とにかく一旦帰ろう。いつの間にかまあまあいい時間になってるし」

外は夕焼けで真っ赤になっているのではないだろうか。

そんな時間帯である。と言うか迷宮出たら日が沈んでそうだな。

で、およそ一時間くらいかけて一直線に戻ってきた。

その後組合に向かい、魔石を精算する。

今日はブルーデビル祭りみたいな感じでヤツらとの連戦だったので、青色魔石が貯まっていつもの水道局の依頼が達成できた。そのため受け取る報酬はいつもよりちょっと多めだ。

「順調そうですね」

「え? ええ、まあ」

ゴルド硬貨を渡された時にマルティナさんに話し掛けられた。

最近更に人が増えてきて忙しそうだったので、久々である。

と言うか今も後ろに並んでる人いるんだけど良いのだろうか。

「地下七階へはそろそろ挑戦する感じですか?」

「あ、はい。そうですね。そろそろ次に行こうと考えてます」

今日まさにズーグとその話をしていたところだったので、言い当てられて驚いた。

この人はアレか? 探索頻度と魔石の納品具合から進捗を読み取れる技能を有している、とか言うつもりか?

いやでもありそうだしあえて触れるつもりも無いが……監視されてるみたいでちょっと怖いぜ。相手がマルティナさんだけに余計にな。

「でしたら、バーランド師範には一度話を聞くのが良いと思いますよ。地下七階からはまた難易度が変わるらしいので」

「へえ。でも最近バーランドさん居ないですよね? 竜殺しとかなんとかの話もまだ聞けてないし」

「それも併せて聞くと良いでしょうね。竜殺しは八階の話ですから」

なるほどね、俺達が深部への挑戦をしようと考えていると見抜かれているのか。でもまあ嫌味な人だけど仕事はしっかりするのがマルティナさんクオリティだ。助言はありがたく頂戴しておこう。

「分かりました。時間を作って話を聞こうと思います。明日朝に一度伺ってもいいですか?」

「ええ。私の方からも一言添えておきましょう。長くは無理でしょうが、時間を取ってくれるはずです」

流石の有能。言えばちゃんとやってくれる。

毒舌が怖いから言うまでのハードルが高いのが難点だが。

そういう訳で、その場はひとまず退散とし、俺達は宿へと戻ってきた。

体を拭いたりした後、晩飯である。

テーブルに着いて出された料理をかっこむ。

今日も塩気多めに炭水化物とタンパク質マシマシのボリューミー。

箸休めにピクルス(のような何か)を挟みつつ、完食すれば大変満足だ。

「はーっ、食った食った」

「今日もご馳走様でした」

ズーグは俺の分も食器を片付け、洗い場の方へ下げに行った。

奴隷っぽい奴隷扱いはしてないがこれくらいの上下関係は良いだろう。俺も楽ができて助かる。

「さて……今日はちょっと酒でも飲むか」

「どうしたんです、突然」

「突然でもないだろ、ブルーデビル五体に完勝したんだ。鍛錬の成果も出てきてる訳だし、ちょっとした祝杯だ」

言ってはみたが、本当は俺が飲みたい気分になっただけだ。

本当になんとなくである。

ちなみにギールさんに勧められて初めて酒を飲んで以来、食事の時にちょくちょく酒を飲んではいる。

ただ飲むとしても一食につき一杯くらいだし、ズーグは当然飲まない。と言うかヤツは勧めても断る。わざわざ宣言する事もこれまで無かったので、ズーグも不思議に思った事だろう。

「今日は珍しく飲みたい気分なんだ。お前も付き合えよ」

「いえ、私は奴隷なので……」

「いいからいいから。親父さーん!」

ツマミと酒をボトルで頼み、ズーグと差し向い酌を交わす。

その後、俺とズーグは迷宮だけでない、下らない話に花を咲かせ盛り上がった。

俺の元の世界の話題もできたし、ズーグの武勇伝も聞いてて面白い。

他にはエイラが絡みに来て酌をしてもらったり、ギールさんからツマミの差し入れがあったりと楽しい夜になった。

こちとら休まず働いてるんだからたまには良かろう。

明日も頑張らないといけないな。