軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

126 発動3

「 極大魔力破(マキシマイズ・エーテルフレア) 」

この魔法は、術式から見れば 究極熱量転換(パーフェクトコンバージョン) と同じような多段階の構造をしている。

弾頭となる部分、射出に関する部分、誘導に関する部分。

それらが主な区分けだが、弾頭だけとっても威力の核となる部分の他に、起爆に関する部分があったりと複雑だ。

更にこの魔法は、それらの術式区分それぞれに多大な思考力を費やさなければならないほど、高密度の術式で構成されている。

それはつまりどういうことかと言うと、俺の「並列思考」による思考力の全てを、単一の魔法に費やさなければならないということだ。

魔法の複数同時行使。

あるいは魔法の先行発動による滞留と、それによる疑似的な即時発動。

これまでの戦いでは、そう言ったものに並列思考を用いてきた。

たくさんの腕で、たくさんの武器を持つ、というのが並列思考の役割だった。

もちろん、それはそれで強力な使い方と言えるだろう。

しかし一方で、下位の並列思考では弱い魔法しか使えないため、思考力の一部が遊んでいることも多かった。

下位の並列思考での下らない 思考(つぶやき) は、俺が戦闘中に一定の余裕を持てる要因でもあったが、並列思考というスキルが能力を余らせてしまっているのは事実だった。

そこで師匠が考え付いたのが、この魔法、と言うわけである。

先の例を踏まえれば「たくさんの腕で大きな一つの武器を扱う」というイメージの魔法となる。

「……」

息を吸って、吐く。

この魔法は呪文を口にしてから現出するまで数秒必要のようだ。

俺は右手に保持した弾頭部分から、弓を引きしぼるように左手で射出・誘導部分を引っ張った。

こうして魔法を現出させた後に、効果を発揮させるまでの操作があるのもこの魔法の特徴だ。アイスランスを手の上に浮かべて投げ飛ばすのと少し似ている。

「いくぞ」

小さく呟いて、俺は左手の制御を手放し、先ほどとは別の耐魔石の標的に そ(・) れ(・) を放った。

この魔法の弾頭には、アルメリア謹製の魔法であることから分かる通り、変数術式が用いられている。

つまり魔力を込めるほど、高い威力を発揮できるということである。

俺は最初だからと、かなり抑えて魔法を発動させたつもりだった。

それでも弾頭と射出・誘導部分が現出した段階で、ごっそりと上位魔力が持っていかれた。

これで威力が低ければ、かなり燃費の悪い魔法ということになるだろう。

しかし。

俺の懸念に反して、着弾点から爆発的に広がった魔力球によって、標的はこの世から塵も残さずに消失することになった。

「……こ、これは?」

アトラさんの反応はイマイチだ。

効果範囲は 小転移消滅(ポータルバニッシュメント) よりも広く、標的を含めた床を少々抉り取っている。着弾から爆発までの時間も短い。ただ、呪文を口にしてから結果までの時間には先の魔法と比べて遥かに遅かった。

呪文を唱えた瞬間に効果を発揮するポータルバニッシュメントの威力と比べれば、迫力が無いのは確かだろう。

一方で、開発者二人は結果を注視している。

二人とも威力が可変の魔法であることを知っているので、この結果がどの程度の魔力量で発揮されたものか気になっているんだろうな。

「今のがおおよそ最小単位だと思う。それでもポータルバニッシュメントと比べてかなり消費は重いみたいだけど……」

「なるほど……」

理論上、ポゼッションで得た上位魔力全てを弾頭に注ぎ込むことだってできる。

果たしてそうした時の威力はいかほどか。

「射出と制御の術式に使用する魔力はこれ以上大きく増えることは無いから、魔力を込めて威力を上げるほどに費用対効果は上がっていくはずだよ。問題はそれを試して威力を確かめるのが難しいってところだろうね」

アルメリアの言の通り、現時点で耐魔石を消し飛ばせるという結果はポータルバニッシュメントと同じ内容だ。

過程としては「抵抗を抜けば防御無視」という変化球な フェリシアの魔法(ポータルバニッシュメント) に対し、「魔力を込めて正面からぶっ飛ばす」な アルメリアの魔法(マキシマイズ・エーテルフレア) と、かなり対照的ではあるが。

これだけ威力があると、単体性能が高い敵にぶつけてみるのもあまり意味は無さそうだ。

俺の経験の中で言えば白竜だと思うが、きっと結果は同じことだろう。

「後は迷宮壁そのものにぶつけてみるくらいか? やったところで、どれだけのことが分かるか良く分からんが」

「分からないかもしれないけど、やる意味はあるだろう。それよりも、戦闘中に使用することを想定した訓練の方が先かもしれないね」

この威力で誤爆なんてしたら目も当てられないからな。

俺も同じ気持ちだったので、アルメリアと苦笑を交わした。

「とりあえず発動は確認できたし、研究室に戻らない? 私はいいけど、貴方たちは立って長話はしたくないでしょ?」

フェリシアの言いようは、つまり次に長話が待っているということに他ならない。

発動した魔法の結果についてもそうだが、もちろん主としては邪神の眷族の情報についてだろう。

アトラさんに詳細を調べてもらうために話しておかないといけないしな。

まだ概要しか分かってないが、腰を据えて話す必要があるのは事実である。

俺たちは消滅させた標的について係りの人に伝えた後(耐魔石の破壊ということでかなり驚かれた)、アルメリアの居室に戻ることにした。