軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話:目覚める少女

俺が目覚め、星辰宮での治療を初めて二日、なんとか体の調子が戻って来た。

「膝までは問題無く動くようになったな……よっとと……」

バランスを崩して

「あぁ、旦那様大丈夫ですか!?」

「回復早いわねぇ……」

「そうですねぇ……ほら、服脱いで」

セレフィーネとカトレアに肩を貸してもらいながら、恵に服を脱がされる。至れり尽くせりの状態で今日もマナの泉に浸される。

「ゆっくりおろすよー、カトレアさんセレフィーネさんよろしくお願いします」

「は、はい!」「えぇ、任せて」

「あぁ、頼む……うぅ、冷たい……」

見えちゃうと色々と大変な事になる(なった)ので、今は目隠しをしている。

(見えない分、諸々の感覚が敏感になって伝わるから不味いんだよな!)

目の神経にも泉の魔力が回るから結構気持ちいいし、段々と眠気が……。

「Zzz……」

◇◆◇◆

「うぅ……回復に行ってるのに、何だか疲れて帰ってる気がする……」

つやつやしている二人と、申し訳無さそうに……でも同じ様につやつやしているセレフィーネ。そして、相反して足がふらふらな俺、馬車に乗せられて検査の為にルルネさんの居る療養所へ向かう。

いやまぁ、ルルネさんの言説だと、魔力の循環がされてるから俺みたいな魔力神経にダメージを受けている人だと〝そっちのが良い〟らしい。

「毎度毎度、ホウショウ様は元気ですね」

「いや、これを見て元気といえるのなら、妹さんに目の治療をしてもらって下さい……」

「いえ、元気なのは……じーっ……」

「どこ見てるんだこのエロメイド!!」

「バレましたか……流石は夜の覇王ですね、聖剣へ向けられる視線には敏感ですね」

「誰が覇王だ! というか、二人も訂正してよ!?」

振り返って言うが、二人共目を逸らして苦笑いをする。

「いやぁ、流石に私らから襲ってるとはいえ……」

「何故か毎回私達が負けるのよね……」

「ご、ごめんなさい……」

味方は居なかった……。

昨日聞いた話なのだが、エルフは元々性欲が人に比べて少な目で、数年に一度発情期とも言われる次期が来るとの事らしい。だけど、ルルカさん達はハーフエルフなので比較的性欲が強いとの事だ。

(要はフラストレーションが溜まってて、発散の仕方に問題があるってエルメガリオス様が言ってたけど……止める気配が全く無いのはどうなんだろうな……)

「あ、そうだ。忘れてました……ティティア様、目を覚まされました」

「「「「!?」」」」

しれっと何か重要な事を言い放つ駄メイド、というかそう言う事は先に言うべきじゃ!?

「いえ、目を覚まされましたが、今現在は特定の人以外の接触は禁止ですので……」

「俺達も駄目なのか?」

「はい、夜の覇王であるホウショウ様でしたら手を出しかねないので……」

「出さないよ!?」

「まぁ、それは冗談として。今現在治療している場所は治療棟にある重要区画……毒や貴重な薬が大量に置いてある区画ですので一般人の立ち入りを禁止しいるのです」

「そういうことね、びっくりした……」

「はい、でもよかったですね!」

「でも、目を覚ましたと聞けたのは良かったじゃない」

「そうだね、カトレアの治療も順調だしいいこと尽くめだな」

それから、ティティアちゃんの経過次第だが、3日程経ったら一般治療区画に移せるという事も聞いたので、その時期に合わせて面会に行こうという流れになった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

それから3日後、杖は必要だが一人で歩けるようになって用意された自室へ戻った頃、俺達はティティアちゃんの元へ向かった。

「へぇ、それじゃあアラテシア様も治療薬の作成に力を貸してたんですね」

「うん、とはいっても調合に使われる魔力を出す係だったり、ティティアのお世話が主だったけどね」

二人きり、かつ対面に座るアラテシア様は目の下に隈を作り目尻を赤くしている、こっちに来てから食事の時間以外見かけなかったのはそう言う事だったようだ。

(こうして見ると、アラテシア様が俺達を裏切るなんて思えないんだけどねぇ……)

師匠の言っていた言葉が胸に引っかかりつつもアラテシア様をぼーっと見ていると、恥ずかしそうに身体をよじらせる。

「さ、流石に酷い顔してるから……」

「えっ? あぁいえ! アラテシア様、頑張ったんだなぁとおもいまして……」

考えていたのは別の事だけど、取り繕うように言うと、赤くなっていた顔が更に赤くなり顔を背ける。

「お、お願いだから……今は見ないで……」

か細い声に言われ、視線を外へ向ける。ゆっくりと進む馬車から景色を眺めていると豪奢な建物が目に入る。一般治療区画と呼ばれてはいるが、明らかに貴族向けの治療院に併設された所へ向かっている。

◇◆◇◆

アラテシア様との無言の空間が馬車の到着により終わり告げる。それから治療院の内部を奥へと進む、道中アラテシア様が手助けしてくれたので淀みなく進んで来れた。

「あ、旦那様いらっしゃいませ、お待ちしておりましたわ」

「遅かったじゃない、お陰で準備はつつがなく終わったから良いけどね」

「大丈夫ですか? お支えしましょうか?」

奏達がにこやかに向か入れてくれる、先に向かった3人だがどうやらティティアちゃんのおめかしをしていたらしい。

「流石に頬も痩せちゃってたりするからね、最低限のお化粧とかはしないと……」

「アラテシア様が日々身体を清めて下さっておりましたが、流石にお風呂は久々でしたので」

「髪も毒でかなり傷んでたからねぇ……」

「でも、お陰で可愛らしくはなりましたよ」

そうして送り出された俺とアラテシア様、部屋の前で一瞬躊躇ってしまうアラテシア様に頷いてから扉を開ける。

(あ、あれ?)

室内には見知らぬ少女が一人、窓の外を見ていた。そしてこちらを向くと快活な笑顔を浮かべる。

「あ、ホウショウ様! アラテシア様!!」

「へっ?」

想定外の声が聞えて唖然としてしまう。今、聞き間違えでなければ目の前の子からティティアちゃんの声が……って、今喋ったよね?

「久しぶりティティア……ごめんね……」

近付いてティティアちゃんを抱きしめ涙混じりに謝罪をするアラテシア様、その姿にティティアちゃんがおろおろとする。

「いえ、これは影武者の宿命ですから……自分の命が終わる感覚は凄く怖かったですけど、それと同時に大切な友達が無事で凄く嬉しかったんです!」

「でも、僕が我が儘を言わなければ……」

「そのお陰で御身が無事でしたので!」

「でもぉ……でもぉ……!」

おろおろするティティアちゃんと号泣して謝罪を繰り返すアラテシア様、そしてそれを眺める俺。

(なんだろう、凄く蚊帳の外だ……)

暫くしてアラテシア様が泣き止むと、糸が切れたように眠りについてしまった。

「えっと……確認なんだけど……君がティティアちゃん?」

「はい、今は魔法の効果が切れてしまってますので初対面とは見た目が違いますが、間違いなく貴方様の婚約者であるティティアですよ」

「婚約者というのは大いに訂正したいけど……まずは、ティティアちゃんが回復して良かった。それで、差し支えなければティティアちゃんが何で影武者が出来てたの?」

姿形を変える魔法なんて聞いた事が無い、いや……第一騎士団長のシグルズさんだけだ。

「えっと、そうですね私の魔法……というより私の母の血筋である固有魔法は『変身』姿を変化させる魔法ですわ。勇者の血筋なのですが兄様や姉様には発現はしておりませんのです」

話を聞くと、どうやらイブキ公爵家は親から子供に固有魔法が受け継がれるらしいのだが、歴代の婚姻で血が薄まったのもあり一部の変身しか出来ない筈だった。だがそれが変化したのはティティアちゃんのお兄さんが生まれた時らしい。

「兄様には『変身』の力は発現しませんでした、同様に姉様にもです。ですが私は運がいいのか悪いのか、こうして発現したのです」

完璧な形として発現したティティアちゃんだが未熟な事もあり一部分での『変身』しか出来なったそうだ。そこで背格好が似ていて同じ様に存在を秘匿する必要のあったアラテシア様の影武者に落ち着いたらしい。

「そうだったんだな……でも何で喋らなかったんだ?」

「それは……私が未熟なせいか声だけは『変身』できなかったんです。それに不用意に喋ってしまい変身している本人と違うと見破られますと『変身』が解けてしまうのです」

「成程、声が出せないのはそういう事か……」

「はい、ちなみにこれはアラテシア様に言わせると国家機密という物らしいので。聞いた相手は責任を取る必要があるそうです♪」

そう言って目を細めて笑うティティアちゃん、今なんか不穏な言葉を聞いたんだけど……。