軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話:暗殺者

「…………つけられてるな」

城からギルドへ向かう途中、普段ならば気にならない注視した視線が多く気になり、歓楽街から入った路地で確信を得る。

(人数は8人……ちょっと多いな……)

距離は取ってる……すぐに襲って来るという訳では無さそうだけど、何が目的だ?

「えっと……君が〝ホウショウ〟で間違いないかな?」

(子供? いや、それよりも上手に隠しているけど凄い殺気だ……)

思わず無手で身構える、この狭い路地じゃ剣は不利になる。ナイフも相手が籠手を着けているので簡単に防がれるだろう。

「えっと……誰かな? 俺の知り合いにはそんな殺気を放つ奴なんて居ないんだけどさ……」

「へぇ、良い殺気だ……あっ、周囲の奴は気にしなくて良いよ、君を逃がさない為に配置してるだけだから……さぁ!」

いきなり踏み込まれ飛んで来る手刀、咄嗟に手首を掴み捻り上げる。

「——くっ……速い!」

「良い反応だねぇ! 咄嗟に手首を抑えるのも優秀だ! だけど、そんなのは意味無いかなぁ!!」

――ゴキンッ!

「肩の関節をはずしっ!? うぐっ!」

肩の関節を外したまま相手がぐるりと回った所で視界が揺れる。頭の上から衝撃が響きよろめく、どうやら蹴られたらしい。

「いやぁ、今のは首を狙ったんだけど……さすがぁ!」

距離を取りニタニタと笑いながら外した肩を入れ直す。一方俺は蹴られた所を触るとべったりと血が付いている。

「何が目的……って俺の命だろうな……」

「正解! でも、タダ殺すんじゃつまらないからね! 私は強い奴を屈服させて殺したいんだよ!」

「だったら、自由連合国の闘技場に行きなよ、殺し合いは出来ないけど強い奴は多いからさ、案内状くらいは書いてあげるよ!」

突き出される手刀を避け、今度は投げ飛ばす。

「そんな、命のやり取りの無い戦いなんてつまらないじゃん!!」

距離を取ったのに相変わらずの素早さで攻撃が飛んで来る、蛇みたいに腕を伸ばす攻撃を咄嗟に出したナイフで切りつけるが刃が折られ弾かれる。

(攻撃が重い! それにこいつ細腕に見えて本物の蛇みたいに筋肉の密度が途轍もない!)

狭い路地内、剣を振り回すには狭すぎる、今は躱したり打ち落としてるけど、速度が速まると捌き切れないだろう。

「あぁ! あぁ!! 最高だ君は!!」

「ぐぅ……」

攻撃の速度が増す、腕や足の一部が手刀で切りつけられる。

(早すぎるし変則的過ぎる、こっちも限界が近い。だったら……一か八かの賭けだ!)

「くそっ!!」

「限界みたいだね! 獲ったぁ!!」

わざとふらつき攻撃を誘う、仕掛けられた攻撃を滑らせその隙を逃さず詰め寄るが、手刀が深々と左肩から首までを抉り取られる。だがこちらも致命傷を避けた分するりと懐に入り、当て身で壁に叩き付ける。

「はぁ!!」

「なっ……ぐがっ!?」

強くしなやかさのある筋肉でも、内臓はそうもいかない。成人男性の体重が乗れば怯ませられるだろう。

「悪いな、寝てろっ!」

肘で顎をかち上げ頭を揺らし、オマケに後頭部を壁に強打させ気絶させる。

「ふぅ……さて他の連中は……殺る気満々ですか……」

囲んでいた連中が幅広の大きなナイフを抜きじりじりと近づいて来る。構えを取った瞬間視界が赤く染まる。

(まずいな……アイツ爪に毒塗ってやがったのか……)

血も止まらず赤く染まった視界が定まらない、膝も笑い寒気も出て来た。

「ホウショウ!!」

聞きなれた声と共に幾つもの足音が響く。

「あっ、クソ待てぇ!! おい!だいじょう……ヤバいだろこれ!!」

その声と共に視界いっぱいに地面が迫り、鈍い音と共に暗転した。

◇◆◇◆◇◆◇◆

◇蒼井 奏side◇

「夕刻の鐘ですネ、本日はここまでにしましょウ」

街に響く鐘が鳴り、ミラさんが終わりの号令をして私は顔を上げる。

「「はい、ありがとうございます!」」

「凄いですネ、1週間ほどでここまで覚えれるなんテ」

ミラさんが驚いた顔で私達の勉強の進み具合を見る。

「いえ、貸してもらった本が覚えやすい物だったので助かってます」

「うんうん、こっちの絵本も文字が覚えやすいのがあって助かりました」

恵ちゃんがうんうんと頷きながら私に合わせる、私達の返答にほころんだミラさんが席を立つ。

「さテ、私は少し受付業務を手伝ってきますのデ、お二方はお茶でも飲んで待ってて下さイ」

そう言うとミラさんが呪文を唱えお茶を淹れてくれる。さりげない事をしているが旦那様より聞いた魔法の事を考えると、お茶にあった温度のお湯を出せるのが凄いとわかる。

「「ありがとうございます」」

「それでハ、ごゆっくりどうゾ~」

開かれた扉の向こうから聞こえてくる夕刻の喧騒にミラさんは混ざりに行った、旦那様が迎えに来るまでのわずかな時間、こうして待つのが日課になっていた。

「さて、私は少し復習しちゃおうかな~旦那様、頑張れば褒めてくれるし~」

「私も、もう少し頑張る!」

紅茶を片手に恵ちゃんと共に文法の練習にとりかかる、早く言葉を覚えて旦那様の負担を減らしたいのもあるので頑張ろう。

気合を入れながら、文字練習用の砂へ書いては消してを繰り返すのだった。