軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第868話 ダンジョンが生まれ変わる

ダンジョンに潜り、人間の手が入った一階層を過ぎてすぐに気が付いた。ダンジョン構成が、この前来た時とは全く違っているのだ。まずは通路を潔く取っ払ったところが大きく評価できる。前に見た感じの分かりやすい迷路をウロウロしたところで、大して面白くはないのだ。言って見れば、しょっぱなの階層からボス部屋選び階層のような構成になっている。

「さて、どう変わったか楽しみだ。シャーミリアはアンデッド使役返しを使うな」

「かしこまりました」

かなりの下層までアンデッドしかいないのは分かっている。シャーミリアがフルで能力を使ったら、このダンジョンが成り立たない事も分かっていた。

デメールは言っていた。おそらくこのダンジョンにシダーシェン(大十神)のどれかがいるが、納得しないとそいつはついては来ないという。分体や代わりの神も連れてきていないので相手を満足させるしかない。そこで俺は最低限シャーミリアのアンデッド使役を封じる。

大きな部屋には五つのドアがあり、そのどれかを選ぶようになっていた。

「どうする?」

俺が聞くと皆が一斉に一番右のドアを指さした。

こればっかりは仕方がなかった。シャーミリアに限らずとも、魔人はある程度の気配感知が出来る。結果、魔人たちは一番大きな気配のあるドアを指さしたのだった。これが人間だけであったなら選ぶのに迷うところだろう。

「じゃあ行こう」

俺達がその部屋に入ると、うじゃうじゃとスケルトンがいた。普通のスケルトンが部屋いっぱいにいてこちらを睨んでいる。

ゴーグが言う。

「ラウル様! 魔石は壊さないようにするんですよね?」

「ああ、あればあっただけ利用価値はあるからな。極力無傷で回収する方向で」

「わかりました!」

するとマリアも言った。

「私も参戦してよろしいですよね?」

「いいけど、気を付けてね」

「久しぶりにハンドガンで戦えます」

なるほど。ここは訓練にはもってこいかもしれない。

「じゃあ、行こう」

魔人達が銃を撃ちながら進んでいく。パコんと頭を吹き飛ばしてもスケルトンは動き続ける。だが頭を飛ばすと、敵の方向が分からなくなるらしくウロウロと彷徨い始めた。

「簡単には死なないぞ」

俺が言うと皆が戦い方を変える。まずは頭を破壊してウロウロしているスケルトンのあばらを砕き、そこから直接手を突っ込んで魔石を取る。そうする事で無傷で魔石を手に入れる事が出来た。いくつか魔石が溜まるとファントムの前に置いて行く作業が始まった。

ファントムは目の前に置かれた魔石をどんどん吸収していく。あっという間にスケルトンがいなくなった。

「ラウル様。この部屋は終わりました」

「ああ、ギレザム。まずは小手調べだ。前のダンジョンみたいに、通路にぽつぽつモンスターを置いているより楽しめる。まあ人間にとっては一階層からハードモードかもしれないけど、まどろっこしさが無くてとてもいい」

俺達が更に奥に進むと、扉が自動的に開いてくれた。

これもいい感じ! 達成したって感じがする。入り口から入って入り口から出るのはホントつまらないし、やっぱり本命の道にボスやモンスターを置くべきだし、入り口から入って敵を倒し奥の扉が出口となって開くほうが全然いい。

前の作りだと五つから選ぶのは同じだが、当たりのドアにはモンスターがいなかった。それだと本当に運のいい奴は実力以上に深入りしてしまって、取り返しがつかない状況になる事もあるだろう。魔石くらいしか素材が取れないのに、運試しの要素で楽しませようとしたんだろうが間違いだ。

「次行こう」

俺達がその扉から先に進むと階段が下に続いていた。そしてその階段の中腹の壁に何らかの空間が設けられている。

「なんだこれ?」

「入ってみますか?」

「ああ、クソみたいな罠じゃない事を祈るけどな」

扉は自分らで開けるようで、入ってみるとそこは石で出来たテーブルと椅子があった。

「なんだこれ?」

するとマリアが言った。

「ラウル様。もしかしたらこれは休憩所ではないでしょうか?」

「なんかの罠じゃないのかな?」

「どうでしょう?」

俺達がその部屋に何もしないでいるが、特に何事も起きなかった。マリアの言うとおりに休憩所が設けられているらしい。

「面白いな。ここで治癒したり装備を整えたり出来るって訳か」

ギレザムが言う。

「必要でしょうか?」

「人間にはな」

「なるほど」

俺達は部屋を出て下の階層に降りた。するとそこにまた広い部屋があり、五つの扉が用意されていた。なるほど作りとしてはこんな感じか、正解を選ぶと下の階層に降りれるがそこに強いモンスターがいる。皆は既に気配感知でわかっているようだ。

「次はもちろん真ん中か?」

「でしょうね」

皆が満場一致で真ん中の部屋を選ぶ。他の部屋にもちらほら気配はあるのだが、一番気配の強い扉を選んだ。これならばある程度の手練れならば 正解の部屋を選ぶ事が出来るだろう。そして腕に自信のない奴は弱い部屋で戦えばいい。

「考えたな。前よりだいぶ改善されている、無駄に深く潜る必要もない」

俺達が次の当たり部屋に進むと、そこにはスライムとスケルトンの混合部隊が群れを成していた。

今の所モンスターのバリエーションは乏しい。もしかしたらそれしか用意出来ないのかもしれない。

そしてそこにはなんと、遮蔽物が設けられていたのだ。これだとモンスターに直接射線が通らず、接近戦をするしか方法がない。スライムもいるのでなかなかに厄介だろう。

するとカララが言った。

「ラウル様は、スライムがいるからルフラを連れて来なかったのですね」

「まあね。同族殺しみたいな感じになるのかと思ってさ」

「全くの別物でございますが」

「まあ俺の気分的にね」

配下達は遮蔽物を横切り、その後ろにいるスケルトンやスライムを討伐し始めるがスライムの討伐に手こずっていた。銃ではなかなか対処しずらいようでマリアが言って来る。

「ラウル様。スライムの魔石は壊してもよろしいでしょうか?」

「いいよ。みんなスライムに手を突っ込みたくないもんね」

「みんな! スライムは私に任せて」

マリアが言うと皆が頷いた。マリアは腰につけたマガジンから違うマガジンを取り出して、ハンドガンに装填する。

バン! バン!

スライムに潜った弾丸は真っすぐに魔石を撃ちぬく。するとスライムは形を保てなくなり、地面に吸い込まれるように消えた。あとには弾丸がめり込んだ魔石が転がっており、念のため皆がそれを拾う。

俺も一つ拾ってすぐにわかった。

「徹甲弾を使ったんだ」

「スライムだと絡めとられるんじゃないかと思いまして」

「恐らくそれで正解だろうね」

俺達がその階層のモンスターを討伐し終えると、また奥の扉が開いた。

「今の部屋は魔法使いには優しくない仕様だったな。遠距離からの支援がしずらく作っている」

「なるほどでございます」

「ちゃんと工夫してて偉い」

俺達が下って行くと、なんとその階段の中腹にも休憩所が作られていた。俺達に休憩の必要は無いので、更に下っていく。

すると今度は今までとは違う風景が広がった。

「ここ地下…だよね」

「はい」

なんとそこには草原のような場所が広がっていた。俺達が足を踏み入れると空のような物も見える。

「良いんじゃない? めっちゃ工夫してる!」

「はい」

そして先に進んでいくと、廃墟の村のような場所があった。

「良く作ったな」

「手がこんでますね」

その村に足を踏み入れると、建物の陰から突然スケルトンの騎士が剣で斬りつけてきた。だが魔人達は難なくそれらを片付ける。

するとシャーミリアが言う。

「どうしたのでしょう? 村の中に点々と気配はありますがかかってきません」

「たぶん隠れてるんだよね?」

ギレザムが笑って言う。

「まるで知恵があるかの如き振る舞い。対人戦のような感覚ですね」

「おもろい」

全く同じような構成が続くようだったら、めっちゃ飽きが来たと思う。だがそうしないように、違う環境を用意しアンデッドを人間のようにふるまわせることで模擬対人戦をさせる。素材が無い代わりに考えた作りになっていた。

「まあアンデッド以外のモンスターは期待薄かもしれんけどな」

「用意できる物で楽しませるという事なのでしょうか?」

「涙ぐましいね」

結構な広さのある、廃墟を模倣した村を片っ端から掃除した。そして一番奥にある石の祠を見ると、その奥には階段が続いているようだった。

「雰囲気のある祠だ」

「まるで、古代の神殿のような佇まいです」

そこを降りていくがそこには休憩所が用意されていなかった。恐らくは先ほどの廃墟の階層は休憩ステージなのかもしれない。

次の階層に降りると後ろの扉が閉まる。

「お? 真っ暗じゃん」

「あえて壁を光らせていないようですね」

「光魔法を使う奴がいないと厳しいか」

「そのようです」

俺は発煙筒を召喚して、その辺にばら撒いて行った。すると暗闇にぼうっと亡霊のような影が見える。どうやらここにはレイスが設置されているようで、暗闇ならば容易に近づかれてしまうだろう。

皆が銃を使ってレイスを撃つが、弾丸はそれを素通りして通り抜けてしまった。

「弾が当たりませんね」

するとシャーミリアが言う。

「私の力で」

「いやまて。それじゃあダンジョンマスターとの約束が履行されない」

突然レイス達が飛びかかって来たので、俺は一旦下がる指示しようとした時だった。

ギレザムが言う。

「ラウル様。我の力を使っても?」

「いいよ」

「は!」

シャーミリアに使役返しを封じているので、他の手立てを使うしかなかった。ギレザムの体が、パリパリと帯電しはじめレイスに向かってデザートイーグルを撃ち込んだ。電撃の線を引いてレイスに到達すると、一気に電撃がプラズマのように走りレイスは消えてしまった。

「ではこの部屋は我が」

デザートイーグルを両手に構え、あちこちにプラズマを放出させながらギレザムが進んでいく。俺達はレイスの居なくなった部屋を何もせず進んだ。

「あれが最後のやつです」

ギレザムが最後のレイスを撃った時。ぱあっと壁に明かりがともり、四方が見渡せるようになった。

「なるほどね。さっきは魔法使いに不利な部屋があったけど、ここは魔法使いがいないと絶対攻略できない部屋だ。考えたもんだ」

すると奥の扉が開いた。

そこに行って見ると更に下に続く階段があった。

「いい感じ! めっさ考えてんじゃん!」

デメールが昔ながらのダンジョンを作ってなんとかって言ってたけど、そこそこ工夫されてて同じモンスターでも十分楽しめる。なんとなくだが、相手もこれはこれで満足なんじゃないだろうか?

それからもそこそこ考えられた仕掛けをクリアし、休憩をはさまずに下に降りていくと大袈裟な扉がそびえたっていた。

「雰囲気あるね! 今何階層だっけ?」

「十階層にございます」

「キリが良い」

その扉を開けると、その中は大理石のような白いつるつるの部屋になっていた。ドゴーンと後ろで大きな扉が閉まる。

「中ボス部屋じゃん? 十階層でくるのはちょうどいいんじゃない? そこそこ命の危険もありながらダラダラとせずに、力量によってクリアできるか出来ないかのギリギリの設定をしているみたいだな」

「ラウル様。楽しそうですね」

「うん。よく考えられているよ。前の状態とは全く違う」

どうやらここのダンジョンマスターである神は、とてもまじめな性格をしているらしい。いい加減なことはせずに、楽しめるような構成を最大限に考えてくれたようだ。

そして俺達の前に大きな石碑が立っていた。

「えっとこれはどうするんだろ?」

俺が石碑に触れると、石碑が光り輝いて沈んでいく。ゴゴゴゴゴゴと音をたてて床が開いて、そこから巨大なスケルトンドラゴンが出現したのだった。

「合格!」

俺はすっかりダンジョンを堪能していた。そしてすぐにM777榴弾砲を召喚するのだった。