軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第842話 拠点確保

俺達が占拠した都市は、モエニタで二番目に大きいルーデドルフと言う名の都市だった。これだけ派手にやれば、敵の矛先は間違いなく俺達に向く。これでオージェ達が襲われる危険性は低くなったはずだ。その為に領主家族も逃して、敵に伝わるようにしたのだ。

更にこの都市内をくまなく調査した結果、転移魔法陣及びインフェルノ魔法陣の設置は確認されなかった。だが転移魔法陣は都市から離れた森の中に設置してあったらしく、増援はその転移魔法陣を利用して来たらしい。マキーナ達が全てを排除してくれた。

俺の側にシャーミリアが来る。

「ご主人様。数体ほど適当なものがおりましたので、作成いたしました」

「そんなにおっきくはないんだね?」

「素体と吸収させた魂の量が違います」

シャーミリアの後ろに、ちびファントムが三体ほどたっている。だが、俺的にはファントムよりずっとカッコ悪く見える。

「ファントムとは形が違うけど」

「恐れ入りますが、ご主人様の血が必要となります」

「そうかそうか、じゃあやろう」

「よろしいのですか?」

「俺の血が入るとどうなるの?」

「もちろん強化されます」

「ならやろう」

「では、暗所へ」

「はいはい」

俺はシャーミリアと一緒に、領主邸の地下室へと下りていく。地下には牢屋のような物があり、壁に鎖などが付いた手枷がある。

「なんか物騒な場所だな」

「何をしていたのでしょう?」

「拷問? かもね」

「血の匂いは致します」

シャーミリアが立ち止まったので俺はその後ろに立つ。

「恐れ入ります。血を」

俺が手のひらをコンバットナイフで無造作に斬ると、血がしたたり落ちる。その隙にシャーミリアがズボズボと、グールの胸に穴をあけた。俺の血を見たシャーミリアが紅潮した顔でそれを見つめている。

「ではお願いします。はぁはぁ」

血が滴る手をグールの胸に突っ込むと、ずるすると吸われるように血が抜けた。

ドガ!

シャーミリアがそのグールにハイキックを浴びせて吹き飛ばす。

「いつまで飲んでるんだい!」

「びっくりした」

「申し訳ございません。まだ出来上がったばかりで加減が分からないようです」

「いいよいいよ。じゃあ次行こう」

「は!」

俺が三体のグールに自分の血を入れると、もぞもぞと見た目が変わっていく。だがそれでもファントムのような見た目にならなかった。

「これで完成?」

「はぁはあ…はい…申し訳ございません。なかなか理想的な素体に会えることが無いのです」

「まあ、泥棒髭や河童よりずいぶんいいか」

「ああ、あれは急場しのぎの出来損ないです。あれよりはかなり性能は良いかと」

「ありがとう。シャーミリアも飲む?」

「そ、そんな。よろしいのですか?」

「いいよ」

シャーミリアはしゃがみ込んで、俺の手から滴る血をぺちゃぺちゃとなめとった。

何か知らんけど、背徳感というかなんというか…悪い事をしているようだ。

「ハァハァ…あ、ありがとうございます」

シャーミリアが綺麗に血を舐めとってくれた手に、ポケットからとったポーションをかけた。

「じゃあ、こいつらは俺の言う事を聞くのかな?」

「左様でございます」

俺が三体に向かって号令をかけると、三体はシャキッと立ち上がって俺の前に立った。シャーミリアに蹴られてちぎれそうだった首も既に繋がっている。

「これでどんな感じ?」

「ナンバーズより使えるはずです」

「オッケ」

そして俺達は地下室から出た。モーリス先生たちを迎え入れる前にやる事があるからだ。自分達の居住区は、領主邸にはせずに別の場所を考えている。

地上に出ると配下達が俺を待っていた。

「ギレザム。この都市の人間を、アウロラの信者に変える準備をする」

「はい」

そう。俺は都市内の各所にマイクロ波兵器を設置し、都市の人間をアトム神の信者に洗脳する予定だった。この都市の人間ぐらいが寝返ったところで、火神が弱るのかは知らないが全部もらっちゃおうと思う。

マイクロ波兵器とは頭蓋骨へ音波を照射し、脳内に直接声を届かせる兵器である。これを定期的に市民の脳に照射し、アトム神への信仰者を増やすつもりだ。

「じゃ、さっさとやっちまおうぜ」

「「「「「「「「「は!」」」」」」」」」

俺がマイクロ波兵器を召喚して、それを手際よく魔人達が都市内へと分布させていく。角度や人口密度を考えながら、俺達が住居にしようとしている大きな邸宅には当たらないようにした。

もちろんその大きな邸宅にも人間は住んでいたようだが、彼らは領主邸に移ってもらう予定だ。その家の持ち主は豪商で、お金周りが良いらしく素晴らしい豪邸だった。領主邸も素晴らしかったが、いきなり敵が来たら真っ先に襲われると思うのでこっちにしたのだ。

全てのマイクロ波兵器を設置し、皆が俺のもとへと戻って来た。

「後は適当に市街地を視察して、何かあったら報告をしてくれ」

「「「「「は!」」」」」

「さて。あとは原稿を書いてアウロラに読んでもらわないと」

「はい」

俺はヘリにいるティラに念話を繋ぐ。

《ティラ》

《はい》

《ヘリを、都市の正門付近に降ろすように伝えて》

《わかりました》

伝えてしばらくすると、ヘリ部隊が都市の正門前に着陸する。俺とシャーミリアとファントム、そしてちびファントム三体で出迎える。俺が後部ハッチの前に立つと、モーリス先生が腰を叩きながら降りて来た。

「待ちくたびれたぞい」

「すみません。多少手間を取りました」

「なんぞ、デモンでもおったのかの?」

「いえ。いろいろと雑務をこなしておりました」

「ふむ。それでどうする?」

「この都市を拠点にいたします。既に兵は処分し、都市に居た冒険者を仲間に引き入れました」

「なるほどのう…、恐ろしいのじゃ。手際が良すぎる」

「すみません。慣れてしまいました」

「戦い慣れか、致し方あるまいがの」

俺とモーリス先生が話をしていると、イオナたちも降りて来る。イオナが俺の後に目を向けた。

「なんだか…見慣れない人が三人いるわ」

「ああ。ちびファントムだよ」

「ちび…って…」

確かにチビってほどチビじゃない。むしろ厳ついし、見た目もまあまあおっかない。どう考えても生きている人間じゃない事が分かる。

「おっかない見た目だけど大丈夫。シャーミリアが俺にプレゼントしてくれたんだ」

「プレゼントねえ…」

「まあ、細かい事は気にしないで。とにかくこれから住居に案内するから」

「わかったわ」

俺はすぐさまサーバル装甲車を十台召喚する。こんなデカい装甲車でずらずらと入り込んだら、市民たちも恐れて手出しをしてくる奴はいないだろう。

「ナンバーズ! 車の運転を頼むぞ!」

は!

ナンバーズたちが車両に乗り込んでいき、皆がばらけて車に乗り込んでいく。先頭の車に俺達が乗り込み、全車両が都市の内部に向けて走り出すのだった。既に豪商の家族はアナミスに洗脳されて領主邸に移った頃だ。俺達は空き家になった邸宅の前に到着した。

車から降りて来たデイジーが半笑いで言った。

「なんとも随分立派な邸宅じゃのう」

「はい。別館もあるようで、そこにはナンバーズたちに住んでもらおうと思っています」

「戦利品というわけか。中の人らはどこに?」

「領主邸に移ってもらいました。喜んで引っ越していきましたよ」

「怖いのう…」

「えっ?」

「まあええ。とりあえず久しぶりにゆっくりと出来るわけじゃな」

「はい! お風呂もありますよ!」

そう俺が言うと、カトリーヌやホウジョウマコらが色めき立つ。ここまでまともな風呂などにも入れなかったので、ようやく風呂にありつける事を喜んでいた。

そして俺がマリアに言う。

「物資も豊富にある。今日は贅沢にしてもいいんじゃないか?」

「はい。それでは美味しい料理をお作りします」

「よろしく」

豪商だけあって、かなり大量の物資が貯蔵してあった。本来は売り物なので、都市に流通させるべきなのだろうが俺はそれを自分達で消化しようと考えている。余ったら全部グレースの収納に仕舞う予定だ。

そして俺はアウロラとイオナとカトリーヌを呼んだ。

「アウロラ! おいで」

「はい」

「あと母さんとカトリーヌ」

「ええ」

「はい」

皆がぞろぞろと建屋に入る中で、俺は三人を二階の執務室へと連れて来た。ファントムとちびファントムたちもぞろぞろと付いて来る。そして俺はこれからやるべき事を説明する。

「えーと。アウロラはアトム神を受体しているが、まだまだ信者の数は少ない。先読みの力をもっと強くするために、この都市の人間を信者に変えようと思っているんだ」

「この都市の人をアウロラの信者にするのね? いいわやりましょう」

イオナが即答した。流石はナスタリア家の血。人を自分たちの信者にする事については、全く抵抗がないようだ。

「じゃあ、アウロラに読んでもらう原稿を、母さんとカトリーヌで考えてほしいんだ。なるべく信者になれば幸せが訪れ、信者にならないと不幸になるような内容が良いな」

するとカトリーヌが言う。

「得意です。魔法学校でも論文を書いた事もありますから、アウロラを仰ぎ奉るように持って行けばいいのでしょう?」

「そう言う事」

むしろ二人の話を聞いて、中身が女子高生のアウロラが微妙な顔をしている。もちろん日本人の感覚からすれば、人を洗脳して自分の信者にするなどモラルに反していると思うだろう。だがイオナもカトリーヌも貴族、更にナスタリア家の血筋である。そんな事に躊躇するような人間ではない。

「じゃあ、よろしく。俺は皆の様子を見てくるよ」

「まかせて」

「ああ」

そして俺が廊下に出ると、ファントムとちびファントムたちもぞろぞろついて来る。まるでカルガモ一家のお引越しだ。

そして俺はエドハイラたちを探した。すると階段の踊り場で、日本人の五人組が固まってあれやこれやと話をしていた。

「ハイラ」

「ラウル様!」

「どうしたの?」

「部屋割についてです」

「なるほど、どうしたいの?」

「女性陣と男性陣が同じ階層の近い部屋と言うのは、ちょっと問題があるという話をしていました」

「じゃあ分けよう。キリヤとハルトはギレザム達と同じ一階に、ハイラたちはマリア達と一緒でいいんじゃない? キリヤとハルトは一階に行ってくれ」

「「はい」」

「ハイラは、マリアや聖女リシェル達と同じ棟へ。部屋割は彼女らと相談して」

「「「はい」」」

キリヤとハルトが階段を降りていき、ハイラとカナデとマコが二階の奥の方へと歩いて行った。俺が再び歩き出すと、ファントムとちびファントムがぞろぞろと付いて来る。まるで前世でやったRPGゲームのように、俺の後をきっちりと付いて来るのだった。

そのまま一階に降りキッチンへ向かうと、マリアとミーシャとミゼッタがせわしなく動いている。そしてせわしなく動いているのは三人だけじゃなかった。シャーミリアとマキーナ、カララ、アナミス、ルピアも手伝っている。

「お! シャーミリアやってるね!」

「教えてもらっておりました」

「いいことだ。今日はアナミスとルピアも一緒かい?」

「はい。私も人間の料理を覚えようと」

「私もです!」

いつの間にか、配下の魔人たちが人間よりになっている。マリアとミーシャがあれこれと魔人たちに指示を出しているのが微笑ましかった。

「マリアよろしくね」

「はい。久しぶりにこんな立派な厨房に立てて嬉しいです」

「よかったよ」

俺がキッチンから出て広間へ行くと、エミルとケイナ、グレースとオンジ、デメールとアンジュ、が集まって話をしていた。

「随分、意気投合したようだね」

俺がアンジュに尋ねると、アンジュがバツが悪そうな顔で言った。

「みんないろいろ苦労しているんだなって、神のお付きの人達と話をする事なんて無かったから」

するとオンジが笑って言った。

「皆、波乱に満ちた人生を送ってきているのですよ。境遇もとても似ており、意気投合したのです」

「良かった。俺のお付きは話が出来ないから」

そう言ってファントムとちびファントムたちを見る。彼らは全く何処を見ているのか分からない。俺達の方も見ていない。

なんか、みんなのお付きの人が羨ましくなってくるのだった。