軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話 ダークエルフの狩り

地下基地2階層目はダークエルフのテリトリーだった。

ダークエルフの大隊長は一人で、ウルドという名前だった。副隊長はダラムバという男だ。ダークエルフは浅黒い肌をもち耳はエルフのように尖っていた。だれもが均整がとれた顔つきでイケメンしかいなかった。全員が若いように見えるがものすごく年をとっているらしい。

「アルガルド様。ウルドです。」

「アルガルドだ。よろしく。」

「こちらこそよろしくお願いいたします。」

「俺がルゼミア王の子供だからといって、手加減しないでくれ。鍛えたことにならん。」

「承知いたしました。しかしお怪我をなされてしまっては・・。」

「いいんだ、多少の怪我は陛下が治してくれる手はずになっている。」

「では、こころしてかかります。」

ダークエルフってエルフみたいな見た目だけど何が違うのかな?

「あの聞いてもいいかい?」

「はい。」

「ダークエルフはエルフとはどのあたりが違うんだい?」

するとウルドはニンマリと怖い笑みを浮かべて言った。

「あんな青っ白いもやしと我々では比べ物になりませんよ!奴らは多少魔法が使えるようですが、我々の身体能力や武技には遠く及びません。」

「そうか、頼もしいな・・・」

「エルフとの違いを教えて差し上げましょう。」

うーむ・・なんか変な地雷を踏んだ気がするが、フラグかな?どうしよう・・先に謝っちゃうかな。でもこれは訓練だ、グッと我慢をして謝るのを止めよう。

「では何をする?」

「はい、力量を見せていただきたいので、組手をよろしいですか?」

「やろう。」

はじめてすぐにわかった。ゴブリンとは桁が違う・・これで第2階層なのか・・

《ギレザム・・いいせん行くっていってたのに。》

当たり前だがゴブリンに比べてパワーが段違いに違う、ミノスやラーズやオーガ達に比べればパワーは落ちるが、それでも人間とは比較にならないほどの力がある。そしてさらに注視するべきはそのスピードである。ゴブリンよりはるかに速い。ゴブリンの隊長たちは錯覚を使って目をくらまして、速く見せていたが、ダークエルフは単純に早いのだ。跳躍力が凄いというのだろうか、体のバネがすごい。

「ま、まいった。」

「す、すみません・・エルフとの違いをお見せするのに力が入りすぎました。」

「いや・・いいんだ!そうでなければだめなんだよ。」

だが・・そうだな。ミノスやギレザム、ガザム、ゴーグほどの強さはない。あいつらと特訓をやっても身につかないものがけっこうある。俺に丁度いいとまでは言わないが、それでも手が届きそうな何かは感じる。

「ではまずは何かしたい事ありますか?」

「得意な武器とかはあるの?」

「剣と弓でしょうか?」

「戦うときは両方で?」

「ええ、どちらもいる混合部隊となります。」

そりゃすげえ。ダークエルフはチーム戦をするんだ。なら俺は彼らの一員となって戦いを覚える方がいいな。

「じゃあ、俺の訓練はみなと混ざってダークエルフのひとりとして訓練をしたい。」

「わかりました。では我々の仕事である狩りを一緒にいかがでしょう。」

「おお、願ったりかなったりだよ。」

「では早速今日からまいりましょう。」

俺はグラウスの南東に位置する山脈にダークエルフと共にいた。この山脈はグラウス国の一番南東にあり、唯一の深い森林地帯となっている。俺も弓と槍を渡されてダークエルフと同じ装備で来ている。このダークエルフの強弓は普通の人間にはひくこともできないそうだ。もう季節は春になっていたが、グラウスは春といっても大陸の冬くらい寒い。しかしそれほど吹雪く事もなく活動はしやすかった。俺だけ白迷彩の戦闘服なのだが、ダークエルフより身体能力の劣る俺は、獲物を狙うとき体を動かさずにじっとしていると凍えてしまうから仕方なかった。

「狩りか、ファングラビットを狩っていた経験があるから少しは役にたつかな?」

俺達が狩りに来たのはビッグホーンディアーだ。5メートルくらいある尖がった大きい角を持つシカだ。この角は気をつけなければあっというまに体に穴をあけられてしまうらしい。今日の目標は5匹だと伝えられている。

するとウルドが俺に手を上げて、前方を指さす。

《ん?なにもいないけど。あ・・確かに気配はするか。しかし視界には入らない、どこだ・・》

左側の木の上を猿のようにダークエルフたちが前方に移動していく。ビッグホーンディアの後ろに回り込むつもりらしい。あっというまにダークエルフたちが視界から消えていく。

《すごいな・・》

しばらくするとピー!!っと口笛が鳴らされた。

ドドドドドド

ドドドドドド

ドドドドドド

奥から数匹こちらに向かって走ってきた。ビッグホーンディアだった!

《てか、凄い早い!》

しかしすでに仲間のダークエルフの強弓が放たれていた。こちら側では20名のダークエルフが待ち構えていて、その矢がビッグホーンディアに向かって飛んでいく。俺は矢をひいて放つが・・ビッグホーンディアのずいぶん手前に落ちてしまった。弓を引く力が足りないのだ。

《おそらく検証どおりだ。俺は自分の召喚武器を使っていない時は人間の力しかない。召喚武器が魔人化のトリガーになっていると思って間違いない。》

ガコン!

ズシュ!

ドスッ!

頭にあたった弓は刺さることなくはじかれた、肩にあたったものは斜めに刺さったが致命傷にならないだろう。数本が正面から首に深く刺さり一匹のビッグホーンディアが、その場で弓矢を振り払うように暴れ始める。

《やっぱり・・ダークエルフは魔法が使えないから、弓矢の精度が悪いんだ。パワーがあるから当たり所が良ければ深く刺さるみたいだな。》

後の数匹は矢が刺さりながらも俺達を通り過ぎて行ってしまった。

「いけ!」

ダークエルフが数人、槍を構えて暴れているビッグホーンディアに突撃する。周りを囲んでビッグホーンディアを突き始める。

グゥウウウン

ビッグホーンディアが角で周りのダークエルフを突こうとするが、全くかすりもしない。すると徐々にビッグホーンディアの力が失われていく・・

ドゥウンン!

ビッグホーンディアが倒れ込んだ。

グモーン

ビッグホーンディアは力なく叫ぶがそのまま動かなくなってしまった。ウルドが動脈を剣で斬ってとどめをさした。まだ心臓が動いてるため、勢いよく血が抜ける。

「アルガルド様!お怪我はありませんか?」

「いや・・俺は何もしてないよ・・」

「あ・・とにかくこれがビッグホーンディアの狩りです。」

俺とウルドが話してる間にも、ビッグホーンディアの腹が裂かれ内臓が取りだされる。腹が空っぽになった死体に雪がかけられた。かまくらのように雪が積みあがった。

「これは何をしてるんだい?」

「血抜きと内臓を取り出し、肉を冷やします。」

「なるほど、それでどうするんだ?」

「心臓と肝臓は肉と一緒に冷やします。あとは土に埋めて大地にかえします。」

「そうなんだ、すぐにやってしまうんだな。」

「はい、こうすれば肉も臭くなくなりますし、臭いが消せるので他の魔獣を寄せ付けません。」

「そうか、だからこんなに手早くするんだ。」

「はい。」

ダークエルフは手早くビッグホーンディアを処理してしまった。俺は…なんの訓練にもなっていない・・処理の手伝いも出来なかった。

「俺も役に立ちたいな。ただ・・弓がひけないんだよ。」

「それでは、こうしましょう。」

ピュイ!とウルドは口笛を鳴らした。するとまもなく小さい体のダークエルフが来た。

「はい。」

小さいダークエルフは返事をした。

「マリス、悪いがお前の弓をアルガルド様に貸してくれ。」

「わかりました。」

俺は小さめの弓をマリスから受け取った。

「いいのか?」

マリスに聞くと、ただコクリと頷いた。そして背中から同じような弓を取り出す。どうやら予備の弓を持っていたようだった。

「マリスはまだ子供だったのですが、今年から狩りに参加するようになったのです。いって見ればアルガルド様と同じような立場におります。」

「マリス、アルガルドだ。よろしくな」

「はい」

小さい弓は俺でも十分にひく事ができた。おそらく威力は弱いだろうが、威嚇くらいには使えるかもしれない。まずは訓練の一環としてこれを使ってやってみようと思う。

さっきと同じように森の奥にすすむ。

するとまた全体が止まった。誰も動かなかった。

ウルドが手を上げて合図を送ると、また木の上の部隊が奥へと進んでいく。凄いスピードで木から木へと飛んでいく。さっきと同じだ。

ドドドドドド

奥から2匹のビッグホーンディアが走ってきた。

「今度こそ!」

矢をひいて待ち構える。今度は魔法の発動イメージを使って狙ってみることにする。頭や体には俺の矢は通らないだろう。ならば!

ズド!

コン!

ジュシャ!

ダークエルフの矢に混ざって、一匹の目に俺の矢が直撃した。

グオォオォォ

また振り払うように暴れだす。逃げようとするところにダークエルフの矢が刺さっていく。

「行くぞ!」

10人のダークエルフが槍を構えて、ビッグホーンディアに近づいて行く。俺も一緒に近づいてみたが・・デカいし、滅茶苦茶迫力があって怖い!

「アルガルド様、角と後ろ脚に注意してください!」

「おう!」

ダークエルフに混ざってビッグホーンディアに槍を突き刺す。しかし俺の槍は・・ビッグホーンディアの毛皮を貫くことが出来なかった。

《ち・・力無ぇ・・・俺》

ドオオオオン

ビッグホーンディアが倒れて動かなくなった。またウルドが剣で動脈を斬って血抜きをする。皆で腹を斬って内臓を出し、死体を雪に埋めた。俺も一緒に心臓と肝臓以外の内臓を土に埋める。

「なるほどな・・」

狩猟は毎回命がけだった。特に暴れるビッグホーンディアの体力を削るための、槍での攻撃が危ない。槍の長さ分離れているのと、ダークエルフの俊敏性があるから可能な狩猟だ。おそらくこの大きさの魔獣では前世の麻酔銃も効かないだろうから、毎回効率よく数頭狩るならこの方法しかなさそうだ。

「いちいち罠なんてかけてられないだろうしな。」

「アルガルド様、狩猟はいかがですか?」

「ああ、楽しいよ。でも危険なんだな。」

「ええ、我々もこの狩猟でだいぶ鍛えられています、もちろん死ぬ場合もありますが、この100年で1人でした。」

「そうか・・100年で、何百年もやってるのか?」

「私は1200歳になりますが、不慣れで血気盛んな若者がやられました。」

「わかった。俺も十分注意してことにあたるよ。これから毎回参加させてもらう。」

「は!」

ビッグホーンディアの狩猟に毎回参加させてもらい、彼らの一員として役立つ動きが出来るまで続けようと思う。

「筋肉が足りないか・・。」

毎日の日課に有酸素運動と筋トレをプラスしていこうと思うのだった。