軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第79話 秘めた思い

俺は毎日忙しかった。

俺の日課は、大陸から一緒に来た人間の仲間達がグラウス国で生きていく為に、存在意義をあげることが最優先だった。ルーティーンワークにして毎日続けている。そして時間を見ながら自分の身体強化と戦闘訓練、そして魔人組との戦闘時のチームワークや戦略の立案が主だ。考えた戦略から戦術に落とし込んだ場合、どういった戦闘をするべきか?優先順位は何なのかを落とし込んでいくのだった。

大変だが超楽しかった。

大陸から来た人間組もそれぞれ頑張っている。イオナの献身的なシロの世話、ミーシャとミゼッタの料理教室、マリアの魔人達との戦闘訓練。魔人達の評判も上々だ。

「シャーミリア。どうだ?魔人達の俺達に対する心象は?」

「はい、かなりの好印象でございます。」

「そうか、生の声が聞けたらなお嬉しいんだけどな。」

「生の声でございますか?」

「ああ。逆にさ、魔人側に人間に対しての不満はないか?人間から他にして欲しいことはないか?一緒に出来る事はないか?そんなことを知りたいんだ。」

「かしこまりました。では時を見てさりげなく、お夜食などを食べながら話せる機会を設けさせていただきます。」

いまではすっかりシャーミリアは俺の秘書になっていた。マキーナは秘書兼ヒアリング担当として各方面から情報収集に励んでいる。日中の日の高い時以外はシャーミリアは俺のそばにいた。俺から受けた指示をマキーナに共有をかけているのだった。

「あと、魔人達への召喚武器の使用方法も、会合を開いて話したいと思っているんだがあれはどうなってるかな?」

「はい、ラウル様配下の者とルゼミア陛下の配下で参加意思のあるものには、日時と場所を伝えております。予定通りで問題ないかと思われます。」

「わかった。標的にするべき対象物の用意はできてるかな?」

「木偶でございますね。ドワーフたちに準備させております。当日の2日前までには間に合わせるとの事でした。試験も兼ねて調整できるかと思われます。」

「今日調整すべきところはそんなところか?」

俺が伝えていたことはだいたいこんなところだと思う。

「はい。それとグラドラムへの視察の件でございますが、こちらの同行者の選出はいかがなさいましょう。」

「ああ、それはバランスを考えてお前が調整してくれ。人間側はマリアだけを連れていく。」

「承知いたしました。」

そう言うと、シャーミリアは部屋の陰の方に下がって消えた。彼女とはだいぶツーカーの中になってしまった。意識の共有がかかっているため彼女には伝達が早く、逆に彼女も俺の意志を理解するのが早い。

さてと・・そろそろ鍛錬して風呂入って寝るかな。

俺は寝る前にトレーニングをしてから風呂に入るのをルーティーンにしていた。休みなく毎日続けている。トレーニングの相手は毎日変えていた、今日はミノスが相手だった。ミノスは頭が牛の強靭な肉体を持つ魔人だ。スピードパワーどれをとってもハンパない。

闘技場に向かって歩いて行くと、マリアが廊下の途中で待っていた。

「ラウル様!よろしければ私もミノスとの鍛錬を見させていただいていいですか?」

「いいよ。」

「邪魔にならなければいいのですが。」

「じゃあ、見てるだけじゃなくて二人で相手してもらおうか?」

「いいんですか?」

「やろう。」

二人が闘技場につくと、ミノスが中央に立って待っていた。傍らにはギレザムもいた。

「待たせたね。」

「いいえ、待ってなどおりません。ラウル様の御成長をぜひ見せてください!」

「あの・・今日はマリアと一緒に相手してもらいたいんだけどいいかな?」

「かまいません。」

ミノスは斧ではなく長い木の棒をもっていた。俺達は逆に真剣を持っている。それでもミノスに歯が立つものではなかったが、そうでもしなければ全く相手にならないのだ。

「マリア久しぶりだね。」

「ええ、二人で訓練なんてサナリア以来ですね。」

ミノスと向き合って構える。

「どこからでも。」

ミノスが言うので、俺達は二人同時に左右から斬りかかる、ミノスがスッとひいて軽く二人の剣がかわされる。そのまま俺はマリアと肩をくっつけるようにし、二人で支え合うように反動で体を止め、二人で突きの連撃を上下に分けて繰り出す。ミノスは棒で上を突いた俺の剣を受け流し、下のマリアの剣はダン!という音とともに踏み落とされた。その間に俺はそらされた突きの方向に逆らわずに、円を描いてコマのように回った。先にはマリアの背中があったが、彼女が腰を折るようにしてその剣をかわすと、ミノスがすぐ前にいた。

「ふぅっ!」

ミノスが意表を突かれたようで、2歩ほど後ろに下がった。すると足を外された剣をマリアが拾って下から上に円を描いて斬りあげた。ミノスはその巨体に似合わず反対方向に飛んで逃げる。そこに俺が蹴りを繰り出していた。

トン!

ミノスの肘で受けられてしまった。体重の無い俺の渾身の蹴りなど蚊がさしたほどにも感じないミノスが、腕の振るいでブン!と俺を吹き飛ばした。俺が倒れそうになったところに、マリアが上になり手を差し伸べ俺はその手を握る。自分を中心に振り回すように、俺を元に戻した。マリアはそのまま倒れ込んだが反動で俺がコマのように回り、ミノスの脇から剣を振るった。

カン!

棒で俺の剣が受け流されるが、また下からマリアが剣を突き上げた。喉元に向けた剣先はミノスのスウェイによってかわされる。しかしミノスがほんの少しバランスを崩したので、俺がそのまま体当たりをくらわせる。

ガシ!

安定したミノスの下半身はハンパなかった。俺はがっちり受け止められ動きを止められる。しかしミノスの動きはそれによって止まった!そこにマリアが上段から頭のてっぺんに剣を振り下ろした。しかし身長が違う為、ミノスの顔の真正面だった。

パキァツ!

ミノスが棒で受け流し剣はそらされるが、ミノスの棒が斜めに切り落とされた。すると俺から手を離したミノスはマリアの手首を狙って軽く手刀をつきだす。するとポンっという音とともに剣を手放してしまった。

カラァアン!

マリアが剣を落とした。俺の剣を持つ方の腕もミノスに握られて動けなかった。

「ま・・まいりました!」

俺が言うとミノスは手を離した。

「いや!ラウル様!すばらしいです。マリアとの連携をいつ練習していたのですか?」

ミノスが聞いてきた。俺は素直に答える。

「練習はしてないよ。ただ昔何年も二人で森で訓練をしていたんだよ。その時から俺とマリアは二人で攻撃する練習ばかりしていたから、その時の名残りかな。」

「ラウル様との訓練は久しぶりで出来るか不安でしたが、昔と変わらない動きが出来てうれしかったです。銃と剣ではなかなか勝手が違いますから、でも割とうまくいった気がするんです。」

ミノスだけじゃなくギレザムも驚いたように言う。

「そういえば、我も初めて二人の連携での剣技などみました。とても初めての連携とはおもえませんでしたね。」

「そうか。俺はマリアの成長が著しいのでビックリしているよ。」

「そんな・・ありがとうございます。」

マリアが赤くなってお礼を言っている。

「じゃあ、ミノスまた最初からおねがいするよ。」

「わかりました。」

ミノスはとても楽しそうだった。俺とマリアの成長がうれしいようで、ワクワクしているのが伝わってくる。それから俺達はミノスとギレザムと交代をしながら相手をしてもらい、1刻(3時間)ほどしっかりと汗を流した。

「ミノス、ありがとう!」

「私も訓練に入れていただいて嬉しかったわ。」

「私も楽しかったですよ。素晴らしい連携でした。」

「我もまさかこれほどとは思いませんでした。素晴らしかったです。」

ミノスとギレザムから賛辞の言葉をもらう。

「うれしいな。じゃあ俺は明日いよいよ洞窟の基地の第2階層に挑戦だな。いいとこまでいけるだろうか?」

「勝てるとは言いませんが、ある程度は通用すると思います。頑張ってください。」

「楽しみだ。」

俺とマリアが闘技場を出た。

闘技場から部屋までは少し離れていた。二人で今日の訓練のあれこれを話ながら歩いているとマリアが俺に言う。

「懐かしい感じがしました。」

「俺もだ。楽しかったー」

「そうですね、ファングラビットを追いかけまわしていた頃のサナリアを思い出しました。」

「うん、俺もだよ。」

「あの時、こんなことになるとは思いもしませんでしたね・・」

「そうだな・・」

二人でサナリアの地を思い出しながら歩く。

「戻りたいな。」

「ええ、戻りたいです。」

「戻ろう・・」

「はい。」

二人でただ前を向いて歩いていた。それは懐かしいサナリアの道を二人で歩いているような気持だった。ふとあの時感じた風を思い出した。

「ラウル様。」

「ん?」

するとマリアが俺を後ろから抱きしめてきた。

「ありがとうございます・・私たちをここまで守り続けて来てくれて、ラウル様の努力はみんな知っているんです。私たちは少しでも恩返しがしたいと思っているんです。」

「恩返しなんかいらないよ。俺はマリアと母さん、ミーシャとミゼッタと一緒にサナリアに帰りたいだけなんだ。必ずサナリアを取り戻すと約束するよ。」

「・・・・」

「マリア・・」

マリアはどうやら泣いているようだった。うれし涙か悔し涙かはわからないが、ただ黙って抱きしめていた。

「俺が連れてくよ。」

俺がそういうと、マリアは俺の前にまわってきた。

「でも・・無理だけはしないでください。ラウル様が好きなんです。」

「!」

えっと俺は絶句してしまった。マリアは俺の乳母代わりの人だ、その人に言われた好きが変なニュアンスだったので、身内として好きなのか異性として好きなのか分からなかった。たぶん・・いや!もちろん身内としての好きだろう。

「俺も大好きだよ。」

そう答えてみると、マリアは俺に抱きついてきた。

「ありがとうございます。」

「じ、じゃあお風呂に入ってくるよ。」

「えっ!は・・はい、では先にどうぞ。」

えっと、どっちだ?どっちなんだ?パねえ。とにかくだ!このことは秘密にしよう、誰にも言えない。

ザッブーン!

俺は振り払うように風呂に飛び込んだのだった。

この日のお風呂は疲れをとるより、興奮の心拍があがり余計に疲れた気がする。

そのおかげで夜はぐっすりと眠る事が出来たのだった。