軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第730話 大蛇の襲撃

キチョウカナデは前世で、チアリーディング部だったらしい。

ぽいぽいっ!それっぽい!そう言われてみると、カナデはそういう風にしか見えない!そのおかげで双頭の大蛇が、バトントワリング出来るようになっちゃったし!

「いや、今はそんなことはどうでもいいか」

「どうされました?」

ギレザムが俺の独り言に気づく。

「うん。なんでもない」

「そうですか」

俺達は双頭の大蛇を率い、村近隣の森に潜伏していた。まだ薄暗いので朝日が昇るのを待っているのだ。暗いところで村の周りをウロウロしても感づかれないかもしれない、やっぱり明るいところでじゃないと村人たちもビビらないだろうと思ったからだ。

「カナデ。この蛇なんだけど、やる事はだいたい分かってるんだよな?」

「もちろんです」

「そろそろ行くぞ」

「はい」

俺は召喚していたドローンを村の方へ飛ばしてやる。それと同時に双頭の大蛇が、村の方へとずるずる動き出した。キチョウカナデが何も言っていないのに、勝手に動き出したのだった。

「言葉はいらないのか?」

「はい、ある程度は私の思いを読み取ります」

どうやらキチョウカナデは念話のようなもので、双頭の大蛇を使役しているようだ。以前、俺がキチョウカナデの操るドラゴンと戦った時、周辺に人の気配がしなかったのはこのためだ。リモートコントロールで巨大魔獣が操れるとなると、今後の作戦でいろいろと役立ちそうだ。

「ご主人様。以前、デモンのダンタリオンも魔獣をグール化して使役しておりました。キチョウカナデは生きている物を操作できるのですね」

「そのようだな」

キチョウカナデは魔獣をコントロールでき、そしてホウジョウマコは人間をコントロールしていた。転生してきた異世界人にもそんなやつが居たが、こいつらの深層心理には支配欲求があるのか?向こうの世界でこの能力を使われたら危険すぎる。いや、こちらの世界でも十分危険だろう。

「カナデは魔獣だけを使役できるのか?」

「そうです」

「元々、動物が好きだった?」

「はい」

「なるほどね」

つくづく魂核をいじって良かったと思う。

ドローンが村に到着し周辺を映し出していた、そこに、のそりのそりと双頭の大蛇がやって来る。少しずつ空が明るくなってきたので、そろそろ村人たちも起きだすだろう。上手く見つけてくれればいいのだが…

「村人に動きがありますね」

モニターを覗きながらギレザムが言う。今回の作戦では俺とキチョウカナデの他に、シャーミリアとギレザムとアナミスが同行した。万が一デモンが大量発生したりしたら、少人数の方が退却しやすいと考え、この三人なら問題なく逃げられるからだ。

「そろそろ人が、村の外に出てくれるといいんだが」

「昨日届いた物資は既に売れたでしょうから、商隊が村を出るとすれば今日ではないでしょうか?」

「確かにそうだな」

「噂をすればです」

俺のドローンは、村の中に居たスレイプニルを映し出していたのだが、その周辺にバタバタと人が集まり出し、何やら準備をしているようだった。村人たちはスレイプニルに荷馬車を括り付け始めた。

「動いたか」

「他の村人達も家の外に出てきたようです」

「いい感じだ」

その村人の間を、スレイプニルが馬車をひいて進んでいく。するとスレイプニルは、昨日ドローンで確認していた、人の出入りが無かった家の前で止まった。俺達が静かにそれを見守っていると、家からぞろぞろと何かが出てきたのだった。

「ご主人様。あの人形でございます」

「だな。だとすれば、あの家がデモンの住みかか?」

「間違いございません。気配はあそこから発しているようです」

「よし」

デモンの位置が確認できた。そしてスレイプニルは再び、人形に囲まれて村の中を進んでいくのだった。

「門の所に向かっている、そろそろ大蛇をスタンバイさせよう」

キチョウカナデに伝える。

「はい」

双頭の大蛇はずるずると村の門の前に移動していく。スレイプニルの馬車隊も門の内側へとやって来た。まもなく門が開こうとしているのだった。

「ご対面」

門が開く。そしてぞろぞろと人形が出て来た。

「よし!鎌首を上げさせろ」

「はい」

上がってきた日光に照らされて、巨大な双頭の大蛇が鎌首を上げる。すると人形たちのほうに動きがあった。更に大量の人形が門から出てきたのだった。

「あんなにいるのか?」

「そのようです」

ギレザムが答える。

「どう出るかな?」

モニター越しに見ると、人形たちは手に何かを持っているようだった。

「何を持ってる?」

「あれは、剣ですね。両手に持っているようです」

「大蛇相手に剣で戦うのか?」

「そのようです」

そういえば俺の武器を使う前のギレザムたちは、剣でレッドヴェノムバイパーと戦ってたっけ。あの人形たちは、当時の彼らのような戦いが出来るというのだろうか?

「どうします?」

キチョウカナデが聞いてくる。

「人形なら攻撃しちゃっていいよ」

「はい」

双頭の大蛇が人形たちの方向に向かう。

「では」

キチョウカナデが言うと、モニターの中の大蛇がいきなり何かを吐き出した。それが人形たちのもとへと飛ぶと、辺り一面に何かが広がった。

「えっ!今なにしたの?」

「ブレスを吐きました。この子は火炎と冷気を吐きます」

「えっ?そんなもん吐き出すの?」

「はい」

そんな特殊能力を持っているとは思わなかった。俺はてっきり尻尾で薙ぎ払ったり、押しつぶしたりするもんだと思っていた。それがいきなり火炎を吐き出したのだ。モニターの中では数体の人形が火炎に巻き込まれて燃えていた。しかし攻撃された事をきっかけに、他の人形たちが剣を振りかざして双頭の大蛇に飛びかかって来たのだった。大蛇は飛びかかる人形に、火炎と冷気を吐き出して応戦し始める。人形もただ食らうだけではなく、それを避けて大蛇に押し迫って来た。

「取りつかれたぞ」

刀を持った人形が、大蛇の胴体にまとわりついた。

「振り払います」

大蛇がブンブンと体を揺らす。だが人形が離れる事は無いようだった。どうやら剣を胴体に差し込んで掴まっているらしい。

「取りついた奴にはかまうな、飛びかかってくる奴に集中させろ」

「はい」

モニター越しに見ても、人形は恐怖心を抱いているようには見えない。あれはやはりゴーレムなのだろう。誰かが操っているか、命を吹き込んでいるのかは分からんが。

「村人も騒ぎ出しているようだな」

「そのようですね」

モニター越しに村の中も騒がしくなっていることが分かる。村の外で人形たちが戦っている音で気が付いたらしい。門の方へと走って行く人間の姿が見えた。

「村の外にも人間が出てきたな、人に被害が出るといけないので大蛇を退却させよう」

「わかりました」

「くっついてる人形は胴体を転がせば、潰れるぞ」

「なるほど」

モニターの中で大蛇がのたうち回るように転がった。そのおかげで、くっついていた人形が離れる。そして双頭の大蛇は森の中へと逃げていくのだった。

「追いかけてはこないようだな」

「撃退したと思っているのでしょう」

「なるほど」

俺達は双頭の大蛇を森に逃がして、一旦様子を見る事にした。

「ギレザム、大蛇の所に行ってエリクサーをかけて来てくれ」

「は!」

「敵が追跡してくる可能性もあるから、治癒したらすぐに離れろ」

「わかりました」

そしてギレザムが俺から数本のエリクサーを受け取り、森の中へ消えて行った。もちろん大蛇は俺達がいる方向へは逃がしていない。敵がこちらに来るのを防ぐためだ。

「スレイプニルを引っ込めたな」

モニター越しに、人形もスレイプニルも村の中に入って行ったようだった。

「再度の襲撃に備えているのかと思われます」

「なるほどね」

「シャーミリアは、アレをどう見る?」

「あの人形は使役されているのではないように思われます」

「という事は、グレースのゴーレムに近いと?」

「はい、命を吹き込まれているような気がします」

「そうか」

すると今度はマキーナが話し出した。

「シャーミリア様のおっしゃる通り、組織的な動きが出来ておりました。あれは自分で思考して動いているのだと思われます」

マキーナの分析が始まった。

「もっと聞かせてくれ」

「はい。あの強さは恐らく進化する前のオーガ並です。そして修復が可能なものであると推測します。あの人形が出てきた家にデモンがいたようですが、他にも数体いると思われます」

「どうしてだ?」

「門の外に出てきた数と時間から推測しても、複数の拠点があります。そしてあの人形は一つの形をしておりませんでした。種類があるように思われるのですが、それがデモンの特徴を現しているように思えるのです」

「あの一瞬でそこまで見ていたか」

「あくまでも推測でございますので、はっきりそうだとは断定できませんが」

「十分だ、てことは昨日ドローンで確認した三か所に、デモンが潜んでいると思って間違いないな」

「妥当かと。炙り出せますでしょうか?」

「どうかな…騒ぎを起こしても出てこなかった」

「そうですね」

マキーナの分析にシャーミリアは満足げな顔をする。マキーナが活躍すると、シャーミリアが喜ぶという構図が出来上がっているようだ。そしてそこにギレザムが戻ってきた。

「ラウル様、刺さっていた剣ですが」

「どうした?」

「抜いて捨ててきました。すぐに双頭の大蛇を移動させてください」

「なぜだ?」

「あの剣を追跡されます」

「マジ?」

「…マジです」

「カナデ!すぐに大蛇の場所を移してくれ」

「はい」

キチョウカナデが何かを念じるようにしている。

「ギレザム、今回の敵はかなり慎重だな」

「そうですね」

「今の大蛇の襲撃で俺達の存在に気が付いただろうか?」

「どうでしょう?魔獣が人間の住む村を襲撃する事は珍しくありませんが」

「そうか」

ドローンから送られてくる映像には、まだ村が映っていた。

「門が閉まったな」

「はい」

村の門は固く閉ざされ、村の内部では人形が門の所に集結し襲撃に備えているようだった。人間達は姿を消している、恐らく建物の中に避難してしまったのだろう。

「あ!数体の人形が門を出ました」

映像には門を飛び出していく、五体ほどの人形が映し出されている。

「追撃か」

「恐らくは先ほど差し込んだ剣の場所に行くのでしょう」

「ギレザムも、良くあの剣が追跡されていると分かったな」

「ええ、なんというのでしょうか?思念というか、残光がありそこに思念が絡まっているように感じられたのです」

「それは感覚的なものか?」

「そうです」

理詰めで考えるマキーナに対し勘で対応するギレザム。対照的ではあるが、これからの俺の作戦には必要不可欠な二人だった。そして村の攻略方法も朧気に見えてきた。短期決戦で行くか時間をかけるかが悩みどころだ。

さてと…

俺は次の行動に向けて思考し始めるのだった。