軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第728話 おとり魔獣

俺達待ち伏せ部隊は襲撃に失敗し、村にほど近い森の中に潜伏していた。俺とシャーミリア、アナミス、ガザム、ルフラが塹壕を掘ってその中で話をしている。深夜の森の中なので全く灯りが無いが、俺達魔人には全く支障はなかった。

「まさかあんなのが来るとはね」

「はい」

敵は俺達から人間を奪われないように対策をしてきたようだ。恐らくは北大陸で、俺達から人間を奪われた失態をふまえ改善してきたのだろう。まあ敵も馬鹿じゃないって事だ。

「しかし、なんだろうなあれ?」

「ゴーレムのようですが、より人間に近いようです」

「だな、まるで人形のようだった」

敵地からやって来た商隊を護衛していたゴーレムは、より人間に近い形をしていた。グレースが命を吹き込んだゴーレムはデカくて岩のようだったが、あれはより繊細でしなやかな動きをする人形だった。人形は村にも滞在しており、商隊を迎え入れると村の中に消えて行った。

「高台にいるギレザムからの報告では、村には灯りが灯っているようだ」

「人間が自らデモンに従っているのか、強制されているのかが分かりませんね」

至近距離まで近づけば分かるだろうが、通りすがりではアナミスでも、魅了を受けていない事を確認するのが精一杯だった。なんとかデモンに気づかれずに、商人に接触を図りたいところだったのだが、商人も敵だった場合は俺達の存在が敵にバレて危険になる。あの人形たちには恐らく魅了が効かないだろうから、接触したらすぐにバレるはずだ。

アウェイだから慎重に動かねば…

「ご主人様、ひとつご提案が御座います」

シャーミリアが何かを思いついたらしい。

「なんだい?ミリア?」

「敵が人形を使うのなら、私奴がキチョウカナデを連れてまいりましょう」

「キチョウカナデを?何をするんだ?」

「魔獣を使役させて村を襲わせます」

「…人間がいるんだが」

「もちろん。人には危害を加えぬようにさせましょう」

「魔獣を使った陽動か」

「はい」

なるほど、村付近で魔獣を適当に暴れさせて敵の出方を見るか。このままじゃ全く手出しが出来ないし、ありっちゃありだな。

「よし、ミリアがキチョウカナデを連れてくるまでどのくらいかかる?」

「一時間ほど」

えっと、それはシャーミリアのスピードでってことだよな?俺なら耐えられるけど、キチョウカナデにそれをやったら死ぬぞ…

「ちょっとまて、それならこれを持って行ってくれ」

俺はパイロットスーツとヘルメット、そして酸素ボンベをシャーミリアに渡した。

「これを着せればよろしいのですね?」

「そうだ、ボンベの取り付けはミーシャにさせてくれ。シャーミリアは、どう飛ぼうと思ってたんだ?」

「基地まで十五分、帰りで四十五分と」

「えっと、それじゃあキチョウカナデは死ぬ。行きで十五分、帰りは二時間半かけて戻れ。ゆっくり飛ばねば普通の人間は死ぬぞ」

「かしこまりました」

「行け」

「は!」

ドシュッ

シャーミリアはすぐさま基地に向けて飛んだ。今から飛べば、夜が明ける前にここに戻ってくるだろう。それまでに俺達も準備をしておこう。

「よし、戻り時間までに魔獣を探すぞ」

「「「は!」」」

《ハイ》

「一旦拠点に戻って相談だ」

そして俺達は森の中を走り出した。拠点のギレザム達には既に念話で報告を済ませている。拠点に到着すると、まだ皆が起きてきた。カトリーヌとマリアは休んでもらわねばならない。

「カティとマリアは明け方まで休んでくれ」

「ですが…」

「魔人達がいるから大丈夫だ。そして今はまだ敵に気づかれていない、それよりもやる事が出来たんだ」

「なにをされるのです?」

「ああカティ。ちょっと魔獣探しに行こうと思う」

「魔獣を?」

「そうだ、もう魔人達には伝わっているが魔獣を使って村を襲わせる。もちろん人間には危害を加えない」

「わかりました」

「とにかく二人は休め」

「「はい」」

そしてカトリーヌとマリアは、一台のRG-33L装甲車に乗って行った。

「よし!これから二時間で大型魔獣を無傷で捕えるぞ。捕獲メンバーは俺とギレザム、ゴーグ、カララ、ファントムだ。残りはここで待機」

「「「「「は!」」」」」

ルフラとアナミス、マキーナ、ガザムは、村の監視とカトリーヌ達の護衛の為にここに残していく。

「とにかく下の森には大型の魔獣は居なかった。山脈に入って魔獣を捕獲しよう」

「「「は!」」」

《ハイ》

そして、すぐさま魔獣を探すために山脈に入るのだった。

「どこにいるかな?」

「先に洞窟を見つけましょう」

ギレザムがすぐに答えた。魔獣がいる目星がついているようだ。

「ラウル様!俺の鼻ですぐ見つかりますよ!」

ゴーグが鼻をスンスンとさせる。

「よし!」

山脈を更に奥に入って行くと、皆の息が白くなってきた。どうやらかなり気温が下がっているらしい。俺だけはヴァルキリーに入っているため、外の気温は関係なく快適だった。

「寒いか?」

「まったく問題ございません」

ギレザムが言うと、ゴーグとカララも頷いた。彼らにとってはこれくらいなんてことは無いのだ。

「あの辺りに洞窟があります」

ギレザムが指さした。ギレザムはグラドラムに居た時、単独で山脈などを探索したりしていたので、感覚的に場所がつかめるようだ。そしてゴーグがスンスンと鼻を鳴らす。

「ギル!あそこに魔獣は居ない」

「そうか、なら他をあたろう」

なるほど。二人は魔獣の狩も慣れているようで、すっかりコンビネーションが出来上がっていた。昔から一緒だったから阿吽の呼吸が出来上がっているらしい。それから三十分ほど魔獣が居そうな所を探し、再びギレザムが洞窟を発見したのだった。

「どうだ?」

「うん、あそこに何かいるよ」

ギレザムが聞くと、ゴーグが鼻を効かせて中に何かいる事を告げてくる。

「よし、このあたりの生態は全く分かっていないからな。どんな奴が出てくるか分からん、全員警戒を怠るなよ」

俺が指示を出す。

「「「は!」」」

そして俺達が洞窟の入り口に到着した。

「どうだゴーグ」

「奥にいます」

ゴーグは確信を持っているようだ。するとカララが俺達の前にスッと立つ。

「それでは糸で内部を探り、どんなものがいるのかを探ります」

カララの指先が銀に輝き始める。大量の糸を洞窟に流し込んで、中の魔獣が何なのかを探査するのだ。しばらく俺達はカララの返事を待った。

「えっ?これは…」

「どうしたカララ」

「魔獣ではありません…」

「何がいる?」

「オークがおります」

「なんだって!?」

こんな山脈の危ないところに魔人が居た。どうやらここはオークが住みかにしている洞窟らしかった。

「どうします?」

ギレザムが聞いてくる。

「魔人がいるなら接触を試みるべきだろ」

「はい」

「だが敵か味方かわからんからな、もし敵対してきたら絶対殺すな。そのまま退却しよう」

「「「はい」」」

俺達はそのままゆっくりと洞窟内部に侵入していく。まさか同族がいるなんて想像もしていなかった。ユークリットの西山脈にもゴブリンが居たが、あの時は言葉が通じるような相手じゃなかった。今回はどうだろう?

「臭っさい」

ゴーグが鼻をつまむ。ギレザムもカララも顔をしかめているので、洞窟内は相当臭いらしい。ファントムだけは変わらず無表情だった。

「おります」

カララが暗闇の中を見ながらそう言った。確かに奥に何かがいるようだ。俺達は完全に気配を断っているので、相手はまだこちらに気が付いていない。

《とりあえず一人攫うか》

《かしこまりました》

カララに指示をだして、糸をあやつり一人誘拐してもらう事にする。

《捕えました》

《よし》

そしてカララの糸に体をぐるぐる巻きにされたオークが、静かに空中を待って運ばれてきた。叫ばれないようにしっかりと口を塞がれている。

《連れて行こう》

《はい》

そして俺達は捕らえたオークを洞窟の外へと連れ出すのだった。

「尋問してみる」

俺はライトを召喚し、こちらが見えないようにオークを照らしてみる。

「えっ?裸?」

ライトで照らされてオークは服を着ていなかった。

「どうやら中の者達は服を着ておらぬようでした」

「…なんでかな?寝る時は裸で寝る的な?」

「わかりません」

カララも首をかしげている。魔人国の魔人は全て服を着ていたので、何故このオークが裸なのか分からないようだ。

「いいか?叫ぶなよ」

俺はオークにそう告げて、カララに目配せをした。カララが口の糸を解いた瞬間だった。

「&#%$#’&$@!!」

いきなり訳の分からない言葉で叫び始める。カララが慌てて糸で口を塞ぐのだった。

「おい!叫ぶなといったろ!」

「……」

大人しくなったかな?俺は再びカララに目配せをして、糸を解くように指示する。

「&’$&#’&@#%」

「!!!!!」

糸を解くと叫んでしまう。そのためカララが再び糸で口を塞いだ。どうやら俺の言葉が全く通じていないらしい。どういうことだ?丸裸だし、言葉は通じないし。

「ラウル様。恐らくは、このオークは我々とは違うようです。種族は同じですが、まるで魔獣のようですね」

ギレザムが言った。まあ前世でも文明と接触したことのない人間が居たりしたな。恐らくこのオークは人間と接触したことが無いのだろう。

「いかがなさいます?」

「こいつを戻してくれカララ。彼らの生活を壊してはいけない」

「かしこまりました」

オークはスッと空中に浮かんで、再び洞窟の中へと戻されていくのだった。

「なぜあんな状態なんだろ?」

ゴーグが不思議そうに首を傾げた。自分らの仲間との違いに理解が及ばないらしい。

「ゴーグ。あれはきっと長い時間をかけて、野生化してしまったオークだと思う。彼らは人から逃れて、こんな危険な場所で生き続けてきたんだよ。そっとしておいてやろう」

「はい」

「ラウル様。オークを戻しました」

「次行ってみよう!」

「「「は!」」」

《ハイ》

俺達は気を取り直して、更に山脈の奥へと入って行くのだった。俺達が居た洞窟の入り口あたりから多数の気配が出てきたが、恐らくは戻したオークが仲間を連れて出てきたのだろう。彼らは彼らなりに生活をしているのだから邪魔をしてはいけない。

「洞窟を発見しました」

ギレザムが指をさす。

「いる」

ゴーグが鼻をスンスンさせた。

「今度はなんだ?」

「分かりません。さっきも魔獣の臭いだと思ったのに、オークだったんです」

ゴーグの鼻でも、魔人と魔獣の差が確認できないようだった。

「調べるしかないよな」

「「「は!」」」

俺達は再び洞窟の前に来る。そしてカララが糸で内部を調べるのだった。

「今度は間違いなく魔獣ですね」

「よし!何がいる?」

「双頭の大蛇のようです」

ビンゴ!ようやく魔獣に会えた!

「捕まえられるか?」

「問題なく」

そして今度はカララの糸でぐるぐる巻きにされた、双頭の大蛇が出てきた。口も目もすっかり糸で封印されており、手も足も出ないといった様子だった。

手も足も無いけど。

「よし、連れて行こう」

「「「はい!」」」

《ハイ》

これでオークの原住民の脅威も無くなるだろう。こんなおっかない大蛇が居たら怯えて暮らさなければいけない。糸で浮かんだ大蛇をつれて、俺達は山脈を降りて行くのだった。これならばかなりの脅威となるだろう。俺達は拠点に戻ってシャーミリア達の到着を待つことにした。