軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第547話 攻略本とアイテム

俺がパーティーに入った事で前衛が二人となり、かなり安定してダンジョンを進むことができていた。俺自身も常日頃のシャーミリアとカララからの特訓で、かなりの戦闘力を身に付けている事が確認できた。今までは銃火器で楽に対処してきたが、やはりパーティーの連携で戦うのは楽しい。逆に自分の力をセーブして戦う事で新たな発見がたくさんあった。

「では47階層いきますか」

「うむ。それでは二人に防御結界を施す」

「はい」

「ありがとうございます」

モーリス先生が俺達に杖をかざすと体の表面に薄い結界が出来た。これでかなり防御力が上がるらしい。技巧的で繊細な魔法だが、大賢者であるモーリス先生のオリジナルらしい。

「私が身体強化魔法をかけます」

カトリーヌが俺とマリアに身体強化魔法をかける。体が赤い光の被膜に包まれたと思ったら、それが落ち着いて消える。

「最後に毒耐性魔法を」

すると体が緑色の光の被膜に覆われてそれが消えた。

「ありがとう」

「ありがとうございます」

そして俺たちのパーティーは47階層へと進んでいくのだった。アスモデウスに間引かれているとは言えかなり強い魔物が出る。気を引き締めてかからないと危険だった。だがこのピリついた感覚は否応なしにアドレナリンを分泌させるようだ。気分がかなり高揚している。

《まるでサバゲをやっている時みたいだ》

「魔物がいるな…」

俺が魔物を探知する。

「そのようです」

するとモーリス先生が前方に光魔法を撃ちあげて、あたりを明るく照らした。俺達の視界に飛び込んできたのは、あの巨大電気蛇の小さい版の奴がうねうねとうねっている様子だった。

「いくぞ!」

「はい!」

俺とマリアはその蛇たちの中に踊り出る。蛇は鎌首を上げて俺達に飛んできた。

シュッ

スパ!スパ!スパ!

数匹の電気蛇が地面に落ちるが、首を切られてもバタバタいっている。

「ラウルよ!結界が切れる前に仕留めた方がよい!」

「はい!」

俺とマリアは体術を駆使して飛びかかってくる電気蛇を次々と落としていく。

「上です!」

ハイラが叫んだ。

俺とマリアがバッっとその場から飛びのくと、そこに大量の電気蛇が落ちて来たのだった。

「どくのじゃ!」

モーリス先生が言うので俺とマリアが射線を開けた。すると俺とマリアが飛びのいた間をモーリス先生の火球魔法が飛んでいく。物凄くタイミングバッチリで、俺達に群がって来ていた電気蛇の塊の中心で燃え広がる。一気に大量の電気蛇が焼け死んだ。

「マリア!」

「はい!」

俺とマリアが更に先に進むと、また電気蛇が数匹周りから飛びかかってくる。

「攻撃が来ます!」

ハイラが叫ぶので俺達はまた後ろに飛びのいた。俺とマリアは、まるでシンクロするように動いている。

パリパリパリパリ!

俺達がいた場所に電気が走った。この電気蛇は電気を発してからしばらくは帯電するらしく、次の攻撃まで時間が空く。その隙をついて俺とマリアが再び突入する。

スパ!

シャッ!

数匹の電気蛇の頭が地面に落ちる。俺達は舞うようにその電気蛇の首を狩り続けた。しかしそうしているうちにエドハイラの指示が遅れた。

「あぶな!」

パリッ

俺の耳元で電気の音が聞こえる。

《ヤベ!》

パリパリパリパリ!

「くっ」

ビリビリビリ

電気を食らってしまった。モーリス先生の結界が俺を守ってくれたものの、防御のため咄嗟にあげた右腕がだらりと下がり麻痺しているようだ。肩から手の先までの感覚が無い。

「マリア!下がろう」

「はい」

俺とマリアが下がると、そこにモーリス先生が氷の壁を張った。電気蛇はその氷の壁で怯んだのか、俺達を追撃してくる事は無かった。

「ラウル様」

カトリーヌが俺に向けて手を差し伸べる。

「パラリゼラリベラション」

舌を噛みそうな聞いた事のない言葉だが、どうやら魔法の呪文らしい。すると俺の肩から右手にかけての麻痺が瞬く間に解けるのだった。

「む?ラウルよ!あ奴らは氷に弱いようじゃ!」

モーリス先生が言う先を見ると電気蛇の動きが悪くなっていた。

「動きが鈍ってますね」

「ラウルは動けるかの?」

「問題なく!」

「ふむ」

するとモーリス先生がまた杖をかざした。すると杖から光が発せられ瞬く間に一面に氷が広がる。ピキピキピキといいながら辺りに冷気が広がって行く。

「マリア!行こう!」

「はい!」

軽く凍り付いた電気蛇は動きも鈍く、電気を発する前にかなりの数の首を刎ねる事が出来た。

「一度戻るがよい!」

俺とマリアが戻る。

「二人の結界を張り直すとしよう」

「はい」

「身体強化をかけ直します」

「たのむ」

そして俺とマリアは再び先生とカトリーヌに魔法をかけられる。体が軽くなり疲れが飛ぶように消えていく。

「それじゃあ、わしが氷魔法で止めるのじゃ!その間に討伐しておくれ」

「はい!」

モーリス先生が氷魔法で動きを止めて俺とマリアが斬る戦法が確立してからは、かなり楽に電気蛇を倒す事が出来るようになってきた。これならモーリス先生の魔力もセーブしつつ無駄なく倒す事が出来る。そのまま47層の攻略は大きなけがをすることなく終える事が出来た。俺とマリア、モーリス先生、カトリーヌ、ハイラが集まって休んでいるところに、魔人達が集まって来た。

パチパチパチパチ

いきなりみんなに拍手をされた。

「素晴らしいですわ!ご主人様の動きはとても素晴らしい、何度もあの電気を避けて華麗に殺しておりましたね」

「マリアも凄いな!なんかガザムの攻撃を見てるみたいだぞ」

「いやギレザムよ。技はもしかすればマリアの方が上かもしれん」

「恩師様の的確な魔法は凄くかっこいいです」

「ふぉっ!ゴーグちゃんに言われると嬉しいのう」

「カトリーヌ様の補助魔法のおかげで、ラウル様もマリアも素晴らしい動きでした」

「カララ。私はそんなにたいそうな事はしていないわ」

「でも。あのビリビリは効いた。あれが全身なら魔物に食われてしまうんだろうな。えっとなんだっけ、カティのあの…舌を噛みそうなあの…」

「パラリゼラリベラション」

「そう!そのパラなんとかのおかげで、電気を恐れずにやれたよ!」

「ありがとうございます」

俺達は魔人達に俺達の動きを検証してもらうように、客観的に見てもらっていたのだ。どういう状況なら危ないか?階層によって特定の魔法の属性が必要となるか?どういう危険性が潜んでいるのか?対応するパーティーの動きが適正か?装備で必要なものは何か?他にも様々な角度から見てもらっている。

「とりあえず。47階層の攻略は暫定的にわかりそうか?」

「やはり一番の留意点は氷魔法でしょう」

「そうか。なら水属性が使える魔法使いがいるといいな、あとはデイジーさんの氷手榴弾の簡易版のような物を高額で売りつける事にしよう。作ってもらわないといけない」

「いい考えです」

「あとは電気の対策ですね」

確かにそうだ。この世界にゴムは存在していなかった。どうやって電気を防ぐかはこれからの研究材料となるだろう。魔物の素材を持って帰ってデイジーとミーシャに研究してもらう事にする。そんなことを考えていると、俺達の後ろでちょっと気配を感じた。俺が振り向くとエドハイラがジト目で俺達の事を見ていた。

《ヤベ!夢中になってた!ミノス!ドラン!エドハイラを褒めろ!》

《《御意!》》

「しかし!ハイラ嬢!あなたのあの危機察知能力はとてもすばらしい!あのような御業を我は見た事ないですぞ!」

ミノスが大きな声で言う。世紀末の拳法家の長男のような男が迫力満点でサムズアップした。

「うむ。ミノスの言うとおりであるな!あれは神の力と見紛う、魔法で無いとしたらまさに神の御業なのであろうな!」

ドランがおっかない反社のような顔で言う。

「え…そうですか?それならよかったのですが」

「そうだって!ハイラさん!俺とマリアが何度助けられたかわかんないよ。そうでなかったら今ごろエリクサーの御用になっていたはずさ」

「本当にそうですね。ハイラさん、おかげで助かりましたありがとうございます」

俺とマリアがハイラにお礼を言う。

「ならよかったです!私もお役に立てたようでなによりです!」

どうやらハイラは褒めて伸びる子らしい。さっきとはがぜんテンションが違う。だが俺達の言う事は嘘ではない、彼女の危機察知能力は恐ろしく高かった。おかげで俺達は全身ビリビリを免れている。おそらくこの世界に来た時に、神官を悪だとすぐに察知できたのは間違いなくこの能力だろう。

「タピ!だいたい書いたか?」

「問題ありません!」

「タピが文字を書けるようになって助かっているよ!」

「イオナ様のおかげです」

「母さんが教えたんだよなぁ」

「はい」

タピが羊皮紙に羽ペンで今の議事録を取っていた。上階からこの階層までずっとポイントを押さえながら、書き続けてきたのだった。

「ダンジョン虎の巻も高く売れるだろうからな。まあいつも同じ魔物がそこにいるとも限らないし、刻々と状況は変わるだろうけど魔物の特性や攻略方法は役に立つだろうからな」

「はい!」

「あと攻略のために必要な武具や素材の開発研究にもなる。その情報をグラドラムに持ち帰って作ってもらうんだ。売ってもよさそうなものならダンジョン限定で売りさばこうと思う」

「楽しそうですね」

カトリーヌがめっちゃテンション高く言った。

「ああ。まあカトリーヌが助言してくれたおかげで、いろいろと効率よく物事を進める事が出来ているよ。いろんな事を結び付けて考えてくれたおかげで点と点が繋がったよ」

「よかったです。何事も無駄な事はありませんから」

「肝に銘じておく」

「はい」

ダンジョンを最大限に利益化するために、俺達が戦いそれを魔人達が細かく見るようにし始めたのだ。やはりこういう事は実際に潜ってみないと分からないもので、上級冒険者の為の虎の巻を作ろうという事になる。そしてそれをやっているうちに、いろんなところに利益が潜んでいる事に気が付き始めたのだった。

「では先生。次の層にまいりましょう」

「そうじゃな。じゃがもうちょっと慎重に進んだ方が良いじゃろうな。次の層からはわしの魔法を属性ごとに試してみてからの方が良いじゃろ」

「はい!」

「わかりました」

「ではハイラさんもよろしくおねがいしますね」

「ええ、カトリーヌさん。お役に立てるように頑張ります!」

俺達は48層に向けて進み始めるのだった。

《なーんか。やっと異世界って感じの事やってんなあ…すっげえ面白いんだけど!まんまRPGやってるみたいで、今度オージェとエミルとグレースも連れて来てやんねえとな!》

《ふふ。ご主人様、龍神様も精霊神様も虹蛇様もお喜びになりそうですね》

《ああ、絶対に喜ぶ》

《またのお楽しみでございますね!》

《だな!》

この世界に来てからマジの戦いばかりで、彼らも飽き飽きしているかもしれない。さらに物凄い力を持っているので、縛りプレイでやったら面白いって事を教えてやろうと思う。

そして俺達が面白いと思えば思うほど、冒険者たちも面白がってくれるはずだ。たださすがにこのあたりの階層になってくると、普通の人間がやったら無理ゲーになってしまうだろう。それを補助する攻略本や特製の武具や薬を用意して、存分に楽しめるようにしようと思うのだった。

「マリア!行くぞ!」

「はい!」

楽しい…そして儲けが出そうなのが更に楽しい。