軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第548話 最深部からの来訪者

俺達人間のダンジョン攻略は60層あたりが限界だった。そもそも60層辺りに居た電気蛇が47層付近に上がってきていたのだが、90層付近に居た巨大酸ムカデが60層辺りに上がってきていたのだ。前にダンジョンに潜った時のムカデよりもだいぶ小さいのだが、その赤ちゃんなのか1メートルくらいのムカデがうじゃうじゃいたのだった。

「これは危ないです」

「ふむ。あの強烈な酸と甲殻では刃物の攻撃では歯が立たぬであろう。わしの火魔法と氷魔法ではどうにもならんようじゃ」

「ええ。これ以上危険を冒しても仕方がないですね。酸対策をしてこないと難しいでしょう」

「ふむ。いくらエリクサーがあるとしても、わしらの体を欠損させて迄やるものでもあるまい」

「はい」

「ラウル様。どうして魔物が上に上がってきているのでしょうか?」

マリアが不思議そうに首をひねる。

「ん?マリア。心当たりがあるとすれば一つだけだよ」

「それは?」

「アスモデウスが深層にいるって事じゃないかな?恐らく魔物が寄りつかないんだと思うけど」

「そういうものですか?」

「俺達がファートリアに潜入してるときに気が付いたんだが、龍神のオージェがいると魔獣が近隣にいなくなるんだよ。恐らくはそれと同じ原理じゃないかな思う」

「わかりました」

《みんな!ここからは銃火器を使用して掃討して行こう。銃を取りに来てくれ》

「「「「「「「は!」」」」」」」

俺が魔人達に号令をかけると、周りに一斉に直属の部下が出現した。

「これからは銃火器を使ってこの洞窟内を一掃する予定だ。下層の魔物の素材はとても珍しいと思うので、皆は回収しやすいように一か所に集めていってくれ」

「「「「「「「は!」」」」」」」

そして俺はM240中機関銃とバックパック、M134携帯ミニガンとバックパック、SIG SAUER338マシンガン、IMIウージ―サブマシンガン、PGMヘカートII狙撃銃、魔人全員にデザートイーグルとフルのマガジンを3本ずつ召喚した。

飛べる魔人にはM240中機関銃、ファントムとミノスとラーズにはM134ミニガン、 他の魔人にはSIG SAUER338マシンガン、ティラとタピにはIMIウージ―サブマシンガンを、マリアにはPGMヘカートII狙撃銃を装備させる。

「全員装備!」

ガチャガチャガチャ。すべての魔人が兵器を装備した。

「散開!」

ザッ!

これで遠距離からの攻撃で道を開く事が出来る。15人の精鋭部隊が重火器を使う事で60階層は10分で制圧する事が出来た。以前来た時とは桁違いに攻略スピードが違った。

《ご主人様!60階層の安全は確保いたしました》

《ご苦労さん》

「先生。この階層の安全確保が終わりました」

「早すぎじゃな…さすがは精鋭部隊と言ったところか」

「そうですね。彼らならむしろ当たり前のことかと」

「まあそうじゃな。今までもそうじゃったから、別段驚く事でもないがの」

「ですね」

魔人達があっという間に洞窟内の安全を確保してくれたので、そのまま60階層を過ぎて更に深層に進む。次の層も魔人達が先行して先を進み、魔物を掃討しながら安全を確保してくれていた。

「魔物がいなくなってきました‥」

「そのようじゃ」

なんと80階層に到達する頃には一切の魔物がいなくなってしまったのである。

「80階層で、きれいさっぱりいなくなるものですね」

「ふむ…ラウルよ。このことで気になる事があるのじゃが…」

「なんです?」

「これ、本当にアスモデウスの影響かの?」

「ええ。先行してここの魔物を間引きをさせていましたからね」

「じゃが…ここの魔物がデモンを避けるものじゃろうか?」

「え?どういうことです?」

「先ほどラウルが言うておった、魔物が寄り付かぬといった話じゃがの…あれは龍神だからではないのかと思うのじゃ」

「アスモデウスの圧の問題じゃないと?」

「何とも言えんがのう…魔物とデモンの相性が悪いとは思えん」

「分かりました」

《アスモデウス》

先生の疑念を晴らすために、俺はすぐさまアスモデウスに念話を繋げた。

《なんでございましょう。君主様》

《お前最下層にいるんだよな?》

《いいえ。君主様の恩師や大切な方達がいらっしゃるという事で、ダンジョンより外に出て待機しております》

《えっ!マジ!》

《ま、マジです》

《なんで?》

《ですから。恩師様などもいらっしゃいますので》

《わかった!お前はマナウ周辺で待機していろ》

《おおせのままに》

「えっと…先生ちょっといいですか?」

「なんじゃ」

俺は先生をこちらに引き寄せてこっそりと話をする。

「すみません。先生の懸念されていた通りでした。実はアスモデウスはこの洞窟にいないそうです」

「ふむ。やはりわしの推測通りじゃったか」

「では、なぜ強い魔物が上に上がってきているのでしょう?」

「それがわからんのじゃ」

「引き返した方が良さそうじゃないですか?」

「じゃな。深層で何かが起きている可能性も否定できん」

「わかりました」

《全員集合!》

俺が念話で伝えると一斉に俺の下へと戻ってくるのだった。

「みんな!ちょっとこの洞窟に異変が起きているかもしれない。俺が潜入させていたと思っていたアスモデウスは、どうやらこの洞窟内にはいないそうだ」

「ご主人様?それではこの魔物たちは何故に上に?」

「それが…わからない」

「かしこまりました。それではどのように?」

「ああ。念のため一時撤退しようかと思う」

「はい」

魔人達が頷いた。

「では上層に戻るから、ミノス、シャーミリア、マキーナ、ルピア、アナミス、ガザム、は先行してくれ。殿はファントム、ラーズ、ドラン、ギレザム、カララに頼む。タピとティラは俺達と、ルフラはカトリーヌを守れ。ゴーグは先生を乗せて先頭部隊の後部へ、俺は魔導鎧を着て進むことにする。マリアとエドハイラは俺の側から離れるな」

「「「「「「は!」」」」」」

ここまでは安全に降りて来たものの異変を察知したため、警戒態勢を取ってダンジョンを脱出せざるを得なくなってしまった。もし再調査するにしても、人間は全員都市に置いてこなければならない。調査隊を出すとすれば魔人の絞り込みが必要だ。強いて言えばファントム、シャーミリア、カララ、ルフラ、ギレザム、ミノス、ラーズと魔導鎧を着た俺で再編してくるべきだろう。もちろん防御力重視のメンバーだ。

「念のため周囲への警戒を怠るな!」

「「「「「「は!」」」」」」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「な、なんだ!?」

凄い震度で洞窟が揺れ始めた。

「ラウルよ。急ぐが良い!」

「はい」

俺達が急いで進み始めるが、足元がかなり揺れるために通常よりペースが遅い。

「まだ76階層だ!とにかく慎重に急げ!」

すると…ゴァァァァァァァァ

洞窟の奥底から何か恐ろしい咆哮が鳴り響いたのだった。俺達はたまらず耳を塞いだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「ラウル様!何か上がってきます!」

ギレザムが叫ぶ。

「に、逃げろ!急げ」

俺達が走り始める。急いで次の階層に上がろうとした時には…時すでに遅し。何と深部から上がって来た恐ろしい奴に追いつかれてしまったのである。

「ご主人様!こ、これは!」

「なんだ?」

「龍神様のご気配!」

「えっ?」

俺が振り向くと、数百メートルの洞窟の幅いっぱいに47階層から顔を出して来たのは…

「レヴィアサン…」

俺がつぶやいた次の瞬間だった。

「ラウルッゥツ!!」

恐ろしく大きな声で俺の名が呼ばれた。

「は、はいいいいぃぃぃ!」

「やはりここに来ていたのか!待っていたぞ!」

「待っ…待っていてくださったのでありますですか!!」

「なんだその言葉遣い!」

「えっと、何で我々が来ることを知っていたのでありますですか!!!」

俺はバカでかい龍の顔に対して話しかけていた。洞窟の半分以上が顔で埋め尽くされているが、どうやら深層から一気にここに上がって来て顔をだしているのだ。

「とにかくその言葉遣いヤメロ!オージェだ!俺だ!」

「えっ?オージェ!分体使えるようになったのか!?」

「そうだ!」

「うっそ!すげえじゃん!」

「そんなことはどうでもいい。俺は母さんと念波で話をして、この周辺にラウルがいる事を聞いて来たんだ。ここで待っていれば必ず来ると思っていたが、銃声が聞こえたので一気に上がって来た!」

「そう言う事だったのか。で、何でこんなところにいるんだよ」

「迎えに来たんだよ!南で戦闘が始まったんだが人手が足りなすぎるんだ!お前がいないと対処できない状態だ!」

「なんだって!?それはどういうことだ?」

「とにかくこの深層の最地下部は裏口になっている。とにかくそこまで降りてきてくれるか?」

「わかった。すぐに車両を召喚する」

「頼んだぞ!俺は最深部で待っている」

「ああ」

ズズズズズズ

レヴィアサンが地下へと消えて行った。

「みんな!聞いたか…ん?大丈夫かハイラ?」

「あう、あうあう」

エドハイラの頭の周りには星が回っていた。

ぷわーん

さらに何やらツーンとした臭いが漂ってきた。

《これは‥‥》

「マリア!カトリーヌ!ルフラ!エドハイラさんを向こうに連れて行って綺麗にしてやってほしい」

ハイラはふらふらになりながら、マリアとカトリーヌに支えられて洞窟の奥へと向かう。どうやらあまりにビックリして失禁してしまったらしいのだ。無理もない、あんなバカでかい龍の顔が飛び出てきたら俺でも失禁もする。俺達は全員あれを見ていたから無事だったと言ってもいい。

「ふむ。どうやら龍神は覚醒して分体を出現させられるようになったという事じゃな」

このじいさんは冷静だ。

「そ、そのようです」

「カゲヨシ将軍たちを連れて行った先で、大事がおきたとみて間違いないじゃろ」

「はい。とにかく急ぎ地下へと進むことにします」

俺はストライカー装甲車を3台召喚し皆がそれに乗り込むことにした。

「俺は魔導鎧を着て先に行く。全員武器は破壊してこの場所に投棄しろ、終わったら装甲車に乗りこめ!」

「「「「「「は!」」」」」」

エドハイラも、マリアとカトリーヌに支えられて戻って来たので、そのまま装甲車の中に乗せる。まだ放心状態が続いているようだが、そんな簡単にショックから立ち直れるわけがない。

「行くぞ!」

俺とヴァルキリーが先行して地下に進むと、3台のストライカー装甲車が後ろをついて進み始めるのだった。レヴィアサンの通った洞窟には魔物のまの字もなく、しかもレヴィアサンが通ったおかげでロードローラーが地ならししたようになっていた。

「まるでトンネルだ…」

俺はぽつりとつぶやく。レヴィアサンが通った洞窟は、前世のトンネルのように地面も壁も鳴らされていたのである。まるでアスファルトの壁のように整備されてしまったのだった。