軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第520話 地竜

俺達がカオスドラゴンを討伐してから1日、かなりの深層まで進んで来た。正直こんなに深いとは思っていなかったが、もうここまで来たからには後戻りはできない。

「正直ここまで深いとは思いませんでした」

「じゃのう…というよりも人間風情がここまで潜って来て良かったのか不安になるわい」

「まあ来れちゃったので良いんじゃないでしょうか?」

「50階層以上あるとは思わなんだ」

「ですね。次の層で60層ですか」

「じゃな」

俺達はあれから1日かけて59層まで降りてきていた。どちらかというと魔物が大量にいた層はカオスドラゴンがいた30層まで。そこからの層は単体で強い魔物が数十匹程度の数で襲ってきた。恐らく強い魔物が他の生存を許さないのだと思う。

「とりあえず通路の中腹まで降りて様子をみましょう」

「それがいいかのう」

運転席にはマリアがそして俺達はガントラックの荷台に乗っていた。ファントムとシャーミリアがガントラックの両脇を護衛として歩いている。俺達は59階層と60階層を繋ぐ通路をガントラックで下っていった。

「ご主人様!」

シャーミリアの叫びと共に通路の下から、通路一杯に広がった炎が迫って来た。マリアが咄嗟にバックしトラックを戻す。しかしながら炎の進みの方が早く、俺達のトラックを一気に飲み込んでしまったのだった。

「まずい!」

それでもトラックはバックし続け、59階層の出口辺りで止まってしまう。トラックの荷台の上から炎が降り注いできた。

ゴオオオオ

一瞬視界が炎に包まれる!

「先生!」

「わしは大丈夫じゃ!大丈夫じゃが!」

どうやらゴーグが咄嗟に狼形態になってモーリス先生に覆いかぶさったらしい。ゴーグの背中が焼けて皮膚がずるずるになってしまっていた。

「ファントム!エリクサー!」

ファントムが俺のところに駆けつけて、エリクサーを手のひらの上に出した。俺はそれを掴んでゴーグの背中にかけると、シュウシュウと音を立てて皮膚と毛並みが回復していく。

「マリア!」

俺がダッシュで運転席に行くと、どうやらマリアは無事なようだった。防弾ガラスはしっかりとマリアを守ってくれていたようだが、ぐったりしている。俺がドアにズボっと手を突っ込んでドアごと引っこ抜くと、ドアは後ろに向かって飛んで行った。

「マリア!」

俺はすぐさまマリアを運転席から引っ張り出して、59階へと走る。

「ら、ラウル様」

マリアが目をあける。

「大丈夫か?」

「あまりの暑さに気を失ってしまいました」

「咄嗟にバックしてくれてたすかった!」

「いえ」

「ファントム!ハイポーション!」

すぐさまファントムが俺の隣に来て手のひらにハイポーションを呼び出し、俺は走りながら抱いているマリアにそれを渡す。

「ラウル!」

モーリス先生が呼ぶ。

ゴーグがモーリス先生を背に乗せキリヤを咥えてやって来た。その後ろからカララとルフラを纏ったカトリーヌが走り寄り、シャーミリアがガントラックを下に向かう通路に蹴っ飛ばして穴をふさぐようにした。

「キリヤ君はどうなってる?」

「あちこち火傷していますが、どうやら土魔法で防いだようですね」

「カティ!回復魔法を!」

「ハイヒール!」

キリヤがたちまち治って目を覚ました。

「あれ?」

「魔力切れじゃないか?」

「咄嗟に思いっきり岩の障壁をはってしまいました」

「わしも咄嗟に結界を張ったのじゃが、急すぎて間に合わんかったわい…すまぬ」

「先生のせいではありません」

「俺は大丈夫です」

ゴーグが言う。

そもそもあんな巨大な炎が出て来るなんて想像もしていなかった。

「ご主人様!お怪我は?」

「魔導鎧のおかげで無傷だ」

「すみません、トラックを穴塞ぎに使いました」

「おお、使え使え」

とりあえず全員が無事で怪我も回復することができた。

「いったいなんだ?」

「調べてまいります」

「まてシャーミリア!」

「はい」

60階層に何がいるのか?とりあえず俺達が来るのを待ち構えて、炎を吐くくらいの知能はあるようだ。ガントラックと皆のとっさの判断のおかげで黒焦げにならずに済んだ。

「ひとまず下に何がいるのか調べる」

俺は地雷撤去用のドローンを召喚する。それを地下へと潜らせていく。しばらく俺達はドローンのコントロール画面を見つめていた。60層からゆっくりと入り込んで中にカメラを向けた瞬間に、何かが映った!

しかし次の瞬間映像は途絶えてしまった。

「焼かれましたね」

「じゃが見えたぞ」

「先生は分かるのですか?」

「実際に見たのは初めてじゃが、あれは地竜じゃな」

「地竜ですか?」

「ふむ、文献の絵でしか見たことないがのう、あれは間違いなく地竜じゃ」

「地竜…」

ドラゴンじゃないか!

「そうじゃな」

「いずれにせよあの炎は厄介ですね。地上なら飛んでどうにかなるものも、この洞窟の中ではどうしたものか悩みます」

「ラウル様、ここはいつもの」

カララが言う。

「だな」

いつものとはもちろん、俺とカララの合わせ技の糸遠隔攻撃の事である。こういう危険な時はまず相手の体力を削らなければならない、そのためにこの59階層から下の階を攻撃する事を考える。

「やるか」

「はい」

俺とカララが出口付近に近づくと、下の方に黒焦げになったガントラックが見える。この通路に入って行けば逃げ場がないが、ここならすぐに退避する事が出来るだろう。

「流します」

「たのむ」

カララがさらさらと糸を流し込んでいく。聖都より広さは無いので十分にいきわたるまでそれほど時間がかからなかった。

「地竜はまだ気が付いていません」

「そうか」

「かなり大きいですね」

「火薬でイケるかな?」

俺はカララの糸の先にイメージをかためてTNT火薬を出す。

「あっ!」

「どうした?」

「飛びあがって逃げました!以外に俊敏なようです!」

「デカいのに?」

「はい」

「反則だな」

「どうしましょう」

「ちょっと待て…」

俊敏か…なら逃げ場なくやっちゃうしかないんじゃないかな。

「カララ、地面だけじゃなく空中にも網をはろう。その後で俺と神経を繋げ」

「よろしいのですか?」

「ちょっとまて」

《ヴァルキリー、鎧から出してくれ》

《はい、我が主》

ガパン

俺はヴァルキリーを出てカララの隣に立つ。

「少々お待ちを」

どうやらカララが60階層に蜘蛛の糸を張り巡らせているようだった。

「終わりました」

「ふう…じゃあ繋いでくれ」

カララが糸で俺の神経に自分の神経を繋ぐ。

「ヒギギッ!」

体中に何とも言えない痛みが走る。

「ラウル様!」

「大丈夫だ!」

神経を繋ぐと俺はカララの糸の操作系を引き継ぐ事が出来た。

「おお!いるいる」

「はい」

「マジでデカいな」

「そのようです」

「じゃやるか」

次の瞬間に俺は糸で見える地竜の周辺へと、3トンのTNT火薬を囲むように出現させる。地竜は咄嗟にその場を飛び去ろうとするが、体の上に張っていた糸にひっかかる。

ズドゴォォォンン

地竜の至近距離で3トンのTNT火薬が爆発した。

ドズン!

飛びあがろうとしていた地竜が地面に落ちる。体中から血を噴き上げてのたうち回っているが、どうやらまだ元気に動けるようだった。あばらも出ているので相当なダメージを受けているのは間違いない。

「よっ」

俺は地竜の側に糸で浮かべるようにM777榴弾砲を召喚した。空中にM777榴弾砲が浮かび上がって地竜に向かい狙いを定める。

ズドン!

至近距離から155mm榴弾砲の直撃を受けた地竜は内臓を垂れ流して、ドチャっと地面にひれ伏した。

「よし。神経を外してくれ」

「はい」

「ううっ」

どうもカララの糸で神経を繋ぐのは慣れない。簡単に感覚を辿るならここまで強烈につなぐことはないのだが、操作系を完全に支配する時はつなぎ方が強い。シャーミリアとの意識の共有の方はなんともないが、カララとのこれだけは痛いのなんのって仕方がない。

「とりあえずかなりの損害を与えた」

「そのようです」

《シャーミリア!みんなを連れて来てくれ!》

シャーミリアがみんなを連れて来る。

「ここからは車両を変える」

「「「「「は!」」」」」

俺はM1126 ストライカー装甲車を召喚した。これなら天井から炎が入り込むことはないので、いきなり焼け死ぬことはない。

「シャーミリアとファントムは引き続き車両の護衛を」

「かしこまりました」

「……」

《ヴァルキリーはそのまま後ろをついてこい!》

《はい我が主!》

俺達はストライカー装甲車の操縦席へと乗り込んだ。

「先生とみんなは後部へ」

「うむ」

「「「「はい」」」」

俺は皆をストライカー装甲車の後ろに乗せて出発する。

《ファントム、あのガントラックをどけろ》

ファントムが先行してガントラックを殴り飛ばした。俺は空いた道をそのまま突き進んで行く。

「あの火は大丈夫なんですか?」

「ああ、キリヤ君。恐らくは大丈夫だ」

「わかりました」

そして俺達が60層へと侵入していくと、中央付近に地竜の残骸が落ちていた。

《死んでいます》

《了解》

シャーミリアからの報告に、俺はそのままストライカー装甲車を地竜の側へと寄せた。

「みんな降りても大丈夫ですよ」

俺の掛け声でみんなが外に出て地竜の死骸を見る。

「派手にやったのう」

「どれだけやったらいいのか分からず、徹底的にやりました」

「うむ。これでは魔石がそのまま残っておらんかもな」

「魔石ですか?」

「相当な大きさの魔石を内包しておるはずじゃ」

「じゃあ持って行けるものは全て持って行きます」

「うむ」

「ファントム!こいつから魔石を取り出して食え!」

「……」

ファントムが地竜の残骸にずぶずぶと体を鎮めていく。しばらくするとどろどろになったファントムが、地竜の死骸から外に出て来た。

「うわぁ…」

地竜の残骸から出て来たファントムは、血と脂でどろどろになってしまった。恐らく持って来れるだけの魔石は取り出してきたに違いない。

「水が欲しい所じゃのう」

「ここには無いようです」

「じゃな」

「とにかくこのまま先に進むしかないですね」

どろどろになったファントムを見てうんざり気味に言う。

「ご主人様?」

「なんだ?ミリア?」

「気になるのであれば燃やしてしまえばよろしいのでは?」

「燃やす?」

シャーミリアがいきなり訳の分からない事を言いだした。

「何を?」

「ウスノロを」

「ファントムを燃やす!?」

「ダメでしょうか?」

「なんでわざわざ!」

「こやつは燃やしたくらいでは死にませんが?再生も容易です」

・・・・・・・

「服がダメになるぞ」

「服など必要ございません」

いやいや。ファントムに必要が無くても俺達にはあるんだよ。

「分かった服は俺が出そう。でもさすがに火炎放射器の炎で焼くのは」

「それでしたら、私が」

マリアが名乗りを上げる。マリアは火属性の魔法使いだから加減も出来そうだ。

「じゃあマリアやってくれ」

「はい」

マリアがファントムの側に立って手をかざすと、淡い炎が全身を囲うように回って行く。

パチパチパチ

ファントムにこびりついた血や脂が焼けていくと…

「なんかうまそうな匂いがする」

焼き肉店の外にいる時のような香ばしい匂いがしてきた。

「先生!ひょっとして…地竜って食べれるんじゃないですかね?」

「もちろん肉は食べれるらしいのじゃ」

「なら食いましょう」

「ふぉっ?」

「ご主人様!それでは私が用意いたします!」

シャーミリアが意気揚々と地竜を捌きはじめるのだった。魔獣の解体担当の本領発揮で、あっというまに焼き肉のようにさばかれていく地竜。俺達の目の前には地竜の骨に乗せられた肉が並んでいく。

そのわきでファントムがマリアから丁寧に焼かれているのだった。