軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第517話 アグラニ迷宮

ダンジョン

それはある意味ロマンだった。小さな頃に父や先生から聞いた冒険譚には必ずダンジョンの話が出てきた。夢にまで見た事のある、あのダンジョンにいま来ているのだ。

「みんな行くぞ!」

俺はまるで冒険者パーティーリーダーのように掛け声をかける。そう!俺は憧れの冒険譚の1ページを開いたのだった。

ダンジョン攻略の始まりだ!

ババババババババ

ガガガガガガガガ

キュィィィィィィ

パラララララララ

…と胸踊ったのが、10分前。

俺たちの銃火器が一斉に魔獣の大群に向かって射出されているが…明らかにオーバーキル。もともと系譜に連なる魔人と兵器たちは、デモン達も簡単に粉砕してしまうほど強くなってしまっている。ザコ魔獣をまるで紙屑のように吹き飛ばしていた。

毒鼠もファングラビットもスライムも跡形すら残らない。

「あっ」

ダダダダダダダダ

「うひっ」

パラララララ

「はうっ」

ダンダンダンダン

「うはぁ」

そして攻撃開始当初から、射撃音に混ざって聞こえているおかしな奇声。その声の主はどうやらカトリーヌのようだった。俺は一旦攻撃をやめてカトリーヌに近づく。

「どうしたカティ?」

「私ではありません、あふぅ」

なんかまた怪しい声がでた。

「てことはルフラか?」

「すっすみません!弱いスライムが飛び散るのを見ていられなくて」

どうやら超進化したスライムのルフラが、発生したばかりのスライムが粉砕されていくのを見て奇声をあげていたようだ。

「辛いのか?」

「し、仕方ないのはわかります!なんともうしますか、目の前て赤子が飛び散るのをみているとつい」

なるほど。人間がハイハイしてくる大量の赤ん坊に機銃掃射してるようなものか。そりゃ辛い。辛いとは思うが襲ってくる以上は仕方がなかった。

「すまんが先に進まなきゃならんし、あいつら毒ある奴いるって言うしな」

「いえ!けっしてやめてほしいと言ってる訳ではないんです。大丈夫です!あひっ」

目を背けた。

「じゃあお前はみるな」

「見るなと言われましても、私は目で見ている訳ではないものです。わあっ!」

だがそんな会話をしているうちに銃声が止まった。

「ご主人様!あらかた片付けました。これで恩師様もマリアも安心して進めましょう」

シャーミリアが俺達の微妙な会話を知らずに、淡々と戦闘終了の報告を入れてくる。100万は居ようかと思えた魔獣たちはあっという間にいなくなってしまったようだ。

「よし!ご苦労さん!一階層を手分けして人がいないか探して来てくれ。ルフラとカトリーヌは残っていい。モーリス先生もマリアも私のそばにいてください」

「うむ」

「はい」

「でもルフラには辛い戦闘だったな」

「いえ、いいのです。我々の目的もありますし、初めてスライムを狩る場面を見たというだけですので」

「まあ俺達がここを立ち去ればまた増えると思う」

「はい」

うーむ。よくよく考えるとルフラはあった時にはすでに人間の形をしていたけどなんでだろ?

「ルフラは俺と出会った時は人間の形してたよな」

「ルゼミア王に憧れてましたのでそれでしょうか?」

「追いかけるように進化したって事か」

「今となってはそうかなと思えます」

なんか複雑だ。

《ご主人様。どうやらこの階層には人間はおりませんでした》

《了解》

「先生。どうやらこの階には人間はいなかったようで、更に奥に進もうと思うのですがどうされます?」

「ふぉっ?確かにここの魔獣はすっかり間引かれて、復活するまでに相当時間がかかるじゃろうな。ここで待っているのは安全であろうが、この先に結界が張ってないともかぎらんじゃろ」

「ではご一緒に」

「ふむ」

そして再び俺達は下の階層に向かって歩いて行くのだった。明かりが無いのでモーリス先生が洞窟内を照らして歩いている。杖の光も道の先を照らしているようだった。

まあ魔人達には必要ないけど。

「次の層が見えてきました」

「通路にはあまり魔獣はおらなんだ」

「きっとまた広間のようなところにあつまっているのでしょう」

「先ほどの階層のように、大量に魔獣が出たのでは人間などひとたまりもないわい。わしの魔力でも尽きて餌になっておったろうな」

「昔はそういう感じではなかったのですか?」

「もっと冒険者がたくさんおったよ。ひっきりなしに冒険者がやってきて魔獣を狩っておった」

「そうなのですね」

「じゃがラウルの兵器と魔人の力をもってすれば、恐ろしいダンジョンが楽に感じるわい」

「自分の能力に感謝したいと思います」

「そうじゃな」

「しかし広いですね」

「そうじゃな。ここはまるで巨大な蟻の巣のような場所じゃからのう、入り組んでおるのじゃよ。時折魔獣がおらん場所もあるのじゃが、そこで冒険者は見張りを立てて休憩をとるようにしておる」

「なるほど。でも今はそんな場所があるかは分かりません」

「じゃな」

そして俺達が下の階層につくとどうやら魔獣のような声がしてきた。アリの巣のようになっていて途中途中に大きな広間のようなところがあるが、そこに大量に巣くっているようだ。岩場の陰から向こうを覗いて見る。

「どうやらさっきとあまり変わらないですね」

「ふむじゃがファングラビットとスライムがおらんようじゃ」

「毒鼠と…あれはなんでしょう?」

地面にはびっしりと毒鼠がいるようだが、天井付近には何かがぶら下がっているように見える。

「ブラッディバットじゃ」

「ああ、グラドラム周辺にも住んでいるらしいです」

「あいつらは音で飛び回り、鋭い爪で攻撃を仕掛けてくるのじゃ。暗い所で目が見えてなくても正確にこちらの場所を突き止めて来る。捕まれば血を吸われるぞ」

じゃあ余裕。しかも洞窟だからおもいきり音が反響しそうだ。

「一度通路に戻ります」

「ふむ」

「みんな集まれ!」

そして俺の下にみんなが集まって来たので、 耳栓(バトルプラグ) を召喚して渡した。

「みんな!これを耳に!」

「「「「「は!」」」」」

「カトリーヌの耳は私が守ります」

「ああルフラ頼む」

「お!声は聞こえるのう」

「はい、指示の声とかは聞こえると思います」

そして俺達は再び下層へ向かって歩いて行く。既に弾丸の補給は終わっており、いつでも戦闘可能な状態になっていた。

先ほど見た下層の部屋の前に来て、俺は音響兵器のLRAD長距離音響発生装置を召喚する。

「皆!かまえろ!」

ザッ

全員が銃を構えて待機する。

「3,2,1ゴー!」

入り口に全員が並ぶと、俺達に気が付いた魔獣が鳴きはじめる。しかしここにも!えらい数の魔獣がいる。一斉にこっちに向かってきた、天井のブラッディバットも凄い勢いでこちらに向かい始める。

俺はLRADのスピーカーを洞窟の先に向けて、音量をMAXに警告音を鳴らした。

キュイキュイキュイキュイ

ボトボトボトボトボト!!!

こちらに向かって飛んでいたやつや天井にぶら下がっていたブラッディバットが、一気に地面に落ちてきた。

「撃て」

ダダダダダダダダダダ

バラララララララララ

キュィィィィィィィィ

一斉に火を吹く銃火器。あっという間に地面に転がった魔獣たちが消えていく。

《うん、俺がイメージしていたダンジョン攻略とは全然違うけどこの方がてっとり早くていい。》

2層目の魔獣たちも20分くらいで一掃されたみたいだった。数十万の魔獣たちはあっという間にハチの巣になって死んでしまった。俺はLRADの音を切って2層目に人間がいないかを調査させる。

「ご主人様。どうやら人間はいないようです」

「そうか…」

「あの子たちのお父さんはもっと深くに潜ったんでしょうか?」

「普通の人間には1層ですら突破できると思えないんだよな…」

「まあ確かにそうですね」

「骨も残らんかったか…」

「かもしれませんが、そもそもあんなに魔獣がいるのに中に入りますかね?」

俺とカトリーヌ、マリアとモーリス先生の頭にもはてなが浮かんでいた。

「しかし…この洞窟に入ってから半刻(1時間半)もたっておらぬのに既に2層を攻略とはな。というよりも全てを壊滅させて進むもんじゃないんじゃが」

「えっ?違うんですか?」

「ある程度奥に進めるようなら普通は進むのじゃ。あとから来る冒険者もおるし、戻ってくる冒険者もおるしな。さらに魔獣はそのうちまたどこからともなくでてくるからのう」

「きりがないって事ですか?」

「じゃが、お前達の戦い方なら帰りが楽じゃろうな。こんなきれいさっぱり駆除してしまうなんて普通の冒険者なら考えられんわい」

「そういうものなんですね」

そして俺達はさらに下の層へと進んでいく。ドバが行った事のある3階層という事だが、ここには昆虫型の魔獣がいると聞いている。なぜ階層ごとに住んでいる魔獣が違うのかは分からないが、きっと棲み分けとかあるのかもしれない。

洞窟をさらに潜って行くとやはり同じように、通路の先に広い場所が広がっているようだ。通路自体も広いと思うが、広場の大きさは龍が羽を伸ばしても数匹入れそうだ。何というかもっと複雑なダンジョンを想像していたんだが、それほど迷うような構造にはなっていないようだ。

「少し涼しくなってきましたね」

「うむ。まだこのあたりは大丈夫じゃが、先に進めば防寒も必要になる」

「それは大丈夫です。私が出します」

「まったく…ラウルはこの世界の冒険の常識が通用せんわい。寝る時はテント、危険な時は車、寒い時は防寒で、食料が必要な時は缶詰。わしらが頑張って冒険して来たのがアホらしいのう」

「すみません」

「何を謝っておる!わしは快適な冒険を所望する!」

「あ、ならよかったです」

「なるべく快適にしておくれ」

「はい!」

そして俺達が岩陰からその広場を除くと、やはりそこには虫系の魔物が住んでいそうだった。カサカサと音がして大量繁殖しているようだ。あの砂漠の巨大酸サソリがいたら厄介だが、ここには昆虫の魔物と蜘蛛しかいないと言っていたから大丈夫なはずだ。

「しかし、細かくて大量にいますね」

「あれが厄介じゃぞ。蜘蛛は糸で人の動きを止めてきおる、蜂の魔物は毒針を撃ってくるから防御が大事じゃ。キリヤの岩壁がいいとおもうのじゃが」

「こちらに近寄らせなければいいのですよね?」

「まあそうじゃがあの数じゃぞ」

「考えがあります」

そして俺はまた念話で魔人達を集める。

「よし、みんな集まったか?」

「「「「「は!」」」」」

「シャーミリアとファントムは必要ないな。ルフラも必要ないだろうけど、カトリーヌがヤバいか…あとゴーグは人形態にもどれ」

「はい」

「どうするのです?」

マリアが聞いて来る。

「いま召喚する」

そして俺は俺と、モーリス先生、ゴーグ、マリア、カララ、カトリーヌ、キリヤの為に酸素ボンベとマスクを召喚した。

「先生これをつけてください!みんなも」

皆がおもむろにマスクをつけ始める。先生やキリヤが慣れていないので付けた事のある人がつけてあげた。

「よし!キリヤはここに土壁でバリケードを作ってくれ」

「はい」

キリヤが土に手を付けて周りを囲うようにバリケードを作った。

「モーリス先生とマリア、カトリーヌ、キリヤはここに入って」

「ふむ」

「はい」

「わかりました」

「は、はい!」

「カララがここを防衛しろ」

「かしこまりました」

「ルフラは一度カトリーヌから抜けてくれ」

「はい」

ズズズズズズ

「あふぅ」

カトリーヌが少しおかしな声を出すが、みんなが聞かないふりをする。

「よし!」

俺は皆の目の前に大量のM9火炎放射器を召喚した。

「全員装備しろ」

俺、シャーミリア、ファントム、ゴーグ、ルフラがM9火炎放射器を手にする。

「さて虫の駆除をするぞ!燃やし尽くせ!」

シャーミリアとファントムを除いて全員が酸素ボンベをつけるのを確認する。そして俺達は虫たちの方向に向けて一斉に火を放射しはじめるのだった。ゴウゴウと燃える虫たち。燃えながらもこちらに向かってくる奴は、ヴァルキリーの肩に着いたM134ミニガンの餌食になって行く。洞窟の中なので炎を延焼させれば空気が無くなってしまう為、酸素マスクを着けているのだった。

百万もいるかと思えた、壁や天井にもいた虫たちはあっという間に黒焦げになって死んでいくのだった。