軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第507話 魔法の橋と都市の奪還

ミラクル岩塩をかけた白身魚をたらふく食った後、俺達は川を越える事にする。川幅は100メートルはありそうだが、飛べる魔人が全員を輸送する事を考えた。搭乗してきた車は川に沈める予定となっている。

「じゃあ沈めるか」

俺が言う。

「お待ちください!」

声をかけて来たのはイショウキリヤだった。

「なんだね?キリヤ君」

「私は土魔法が得意であります!」

「ああ知ってる。壁を作ったり土弾を飛ばしたりするんだろ?」

「そうです!」

「それがどうした?」

「川に橋を架けたことがあります!」

「なんだって!?」

「このくらいの距離ならばギリギリ私の魔力が間に合うかと!せっかくのお車がもったいなく思います!」

「凄いじゃないか!キリヤ君!」

「ありがとうございます!」

「ちょっとやってみてくれるか?」

「はい!」

イショウキリヤがいきなり自分から提案して来た。もしかしたら車中でのティラとの会話を気にしているのかもしれない。魂核をきちんと書き換えているので、俺の役に立とうと真剣に考えているのが伝わってくる。

川べりに立って両手を川の方に向けた

ズッズズズッズズズズズ

「おお!やるね!」

「ありがとうございます。」

川縁から少しずつ岩の板が斜め上に向かい生えていく。対岸までは100メートルくらいあるので、全部繋げる事が出来れば相当な魔力量である事が分かる。しばらく見ているとキリヤは額に汗をかき始めた、だいぶ無理をしているようにも見えるがもう少しで対岸につく。

「よし!もう少しだキリヤ君!頑張れ!」

「は、はい!」

そして見事に対岸まで岩の橋が渡った。なだらかな山を描いた立派な橋だ。

「これなら普通に渡れそうだな。厚さも申し分ないようだ」

「ありがとうございます」

「じゃあ飛べるみんなは対岸で待っててくれ」

「「「「はい」」」」

シャーミリア、マキーナ、アナミス、ルピアが対岸に向かって飛んで行った。

「よし!みんな乗って乗って!」

俺が言うとマリア、タピ、ティラ、キリヤが車に乗った。キリヤは魔力をだいぶ消費したためかなりふらふらになっている…。そんな無理しなくてもよかったのに。

「では私たちは念のため周辺の護衛をしながらついてまいります」

カララが車を護衛しながらついて来てくれるらしい。

「悪いね、じゃあファントムも護衛にまわれ!」

「‥‥‥」

《よしヴァルキリーも後をついてこい!》

《は!我が主!》

俺達の車がしばらく先を進み、ヴァルキリーが岩の橋に上がった時だった。

バリッ!バリバリバリバリ!

「えっ?」

「はい?」

「なにが?」

「どうして?」

俺達の車が橋の中腹に差し掛かる前に、橋のたもとからバリバリと割れて来たのだった。

「ヤバイ!」

ブオオオオオオオン

タピがアクセルを全開にして橋を渡り始めた。

「急げ!」

中腹あたりを越えて急加速で走り抜けて行くが、橋は後ろからドンドン崩れて来るのだった。

「あと半分だ!」

猛スピードで石の橋を走り、渡りきろうかというその時だった。

ザッブーン

いきなり車が水中に落ちてしまった。

「やばい!流される!ドア空くか?」

「開きません!」

マリアが言う。

「天井ハッチから出ろ!」

「「「「はい!」」」」

マリアを先にしてタピ、ティラがハッチから外に出ていく。

「ラウル様からお先に!」

「いいからオマエがでろ!」

俺はキリヤをハッチから押し出すが、既に車内には水が入り込んで来ていた。水陸両用車にしておきゃ良かったと後悔する。そして俺が最後に出ると天井部分から水が入り込みそうになって来た。

「ヤベ!」

でっかいピラニアとかいる川なのに!

俺が焦って屋根に上ると、スッ!と誰かが引き上げてくれた。慌てた顔をしたシャーミリアだった。そのままシャーミリアに連れられて対岸へと到着する。カララとファントムは後ろを歩いていたため川に落ちたようだが、俺が対岸へ着くと同時に上から降り立ってきた。川の中からジャンプして飛びあがってきたらしい。

「助かった!」

俺が尻餅をついて川を見ているとある事に気が付く。

「あれ?ヴァルキリーがついて来てない」

「鎧ならば川に落ちたようです」

カララが言う。

「マジ?」

「もうしわけございません。あの鎧は我々では持ち上げられません…」

《ヴァルキリー!》

《はい》

川辺にヴァルキリーの頭が出て来た。どうやら川底を普通に歩いて来たらしかった。

《流されたかと思った》

《もうしわけありません。我の重量に耐え切れず土の橋が崩壊してしまったようです。飛びのこうとしたらさらに崩壊を進めてしまいました》

《お前の中に水は入ってないの?》

《全く浸水しておりません》

《なら、おまえを着て渡ればよかったよ》

《先には誰も気が付かぬこともあります》

《まあしかたないか》

《はい》

パァン

ゴロゴロゴロゴロ

俺の後ろからすっごい音が聞こえて来た。

「えっ!」

俺が後ろを見るとシャーミリアからキリヤ君が思いっきり平手を食らって、50メートルくらい転がって行くのが見えた。

「おいおいおい!」

俺がダッシュでキリヤに近寄ると。

死んでいた。

慌ててエリクサー注射針を首元にぶち込んでやる。

「スゥ!ハアハアハアハア!」

キリヤが息を吹き返す。

「大丈夫か?キリヤ君!」

「は、はい!今何が起きたのでしょうか?」

「なんでもない。きっと溺れかけたんだろう」

「いえ、マキーナ様に連れられて渡り切ったと思ったのですが」

「あれ?そうだった?とにかく大丈夫そうで何よりだ!」

「はい」

《えっと、シャーミリア…むやみに殺しちゃダメだって》

《こやつは、ご主人様を危険な目にあわせました!》

《いや、むしろ俺の不注意だから》

《も、申し訳ございません。次は…ご主人様の意向を聞いて折檻するようにいたします》

《そうしてくれ》

せっかくキリヤ君が自主的に土の橋をかけてくれたんだ。ヴァルキリーさえ渡らなかったらお手柄だったはず。それを死んで詫びさせるとかさすがにブラックすぎて笑えない。

「とにかくキリヤ君のおかげで無事に渡れたよ!車は当初の予定通り水中に沈んじゃったけどね」

「残念です。私の橋の強度が足らず申し訳ございません」

「いいんだ、これにめげずにいろいろ提案してみてくれ」

「はい!」

残念な事になってしまったが、キリヤの魔法は使える事が分かった。むしろ今のは本当に俺の不注意なので、これにめげずに次も頑張ってほしいものだ。魔人達の建設の補助として足場などに使えるかもしれない。

「よ!」

俺は再び装甲輸送車を召喚した。

AAV7A1水陸両用装軌車だ。これならば水のある場所でも進むことも出来るし、キャタピラの為に悪路でもぬかるむことは無い。25名の兵員を輸送する事が出来るので全員が乗り込むことができる。

「すばらしい!」

キリヤ君がめっちゃ感動している。俺の召喚をほとんど見たことが無いので、魔人達よりも感動しているようだった。

「引き続き周辺の魔法陣を捜索しつつ、警戒態勢を取りながら進む!」

「「「「「「は!」」」」」」

俺達は再び東に向かって前進し始めるのだった。それから1日は魔法陣も見つけることができずに、順調に進むことができた。川もあったが水陸両用なのでそのまま通過する事が出来、キリヤ君もビンタで死ぬことも無かった。

《ラウル様。そろそろ子どもたちを助けた街へと到着します。》

《了解だ。一度集まろう》

車両周辺に魔人達を集める。

「この先の街には魔獣がいると思う。だがわざわざ殺す事もないだろう、ティラが追い返してタピがまた使役出来そうなやつを見つけると言う事でどうだろう?」

「異議はございません」

シャーミリアが言うと皆がコクリと頷いた。

「タピが使役してくれたブラックドッグは今ごろ、聖都についている頃だろうけどクレ、マカ、ナタに任せて大丈夫なんだよな?」

「問題ありません。魔人の言う事を聞くように教えています」

タピが答える。

「聖都の人間達はさぞ驚くだろうね」

「まあゴーグと一緒ですし、皆も大概の事には慣れたのではないでしょうか?」

マリアが言う。

「まあそうかもね、だけど冒険者だったらめっちゃ驚くはずだぞ」

「確かに。二カルスの魔獣ですからね」

「死んだ!とか思うんじゃない?」

「かもしれません。それでも先生が上手く説明をしてくれるはずです」

「まあそうだな」

辺りは既に陽が落ちて暗くなっていた。恐らくはそのあたりをブラックドッグが徘徊していてもおかしくない時間帯だ。むしろ餌がなくなっていなくなったかもしれないが、とにかくティラ達に任せる事にした。

「じゃあそういうわけだから!行くぞ!」

そして俺達は再び子供達を助けた都市へと向かうのだった。都市に入る前にシャーミリアが俺に伝えて来た。

「やはりいるようです」

「いるか?」

「はい」

「よし!まずはティラとタピが潜入してやってみてくれ!万が一危険な場合は全員で処理するようにしよう。危険なのでマリアとキリヤ君は水陸両用装軌車の中に居てくれ」

「「はい」」

「アナミスも二人の護衛の為にここに居てくれるか?」

「かしこまりました」

そして俺も外に出てヴァルキリーを装着した。

《我が主、またここに来ましたね》

《ああ、やっぱり魔獣は徘徊しているみたいだな》

《はい。ですが前回とは人員が違いますので対応も変わるわけですね》

《そういうことだ。無益な殺生は避けた方が良いからな、二カルス大森林だって弱肉強食の関係があるから、ブラックドッグを極端に減らしてしまうと生態系が変わる可能性がある。帰せるものは速やかに返してやった方がいいのさ》

《そこまでお考えですか》

《実はな俺の前世で、それを壊しまくったのが人間なんだよ。それで結局、自分たちが困っているというおかしな状況になっているのさ》

《この世界はそうはしないと?》

《ああ、俺の兵器が30日しか存在できなくて良かったと思っている》

《ですが我が主。既に主の技術はこの世界に来ました》

《まあいずれ魔人国から流出してしまう事もあるだろうさ。だが俺とオージェ、エミル、グレースはどうやら神の関係者らしいからな、世界を壊さぬ方向に向かって行けるんじゃないかと思っている》

《出来ると思います》

《そうだな。まあやってみるさ》

そして俺はヴァルキリーを着たまま、都市の市壁の上へと降り立った。都市の中では既にティラとタピが活動を開始しているようだった。ブラックドッグの数は依然と変わらず都市内を我が物顔で歩いているようだ。

《ラウル様。どうやら追い返せそうです》

ティラからだった。

《そうか!》

《ラウル様》

《どうだタピ?》

《申し訳ございません。今回は賢い個体がいないようです》

《まあそうそういるもんじゃないだろ。南を移動したときはかなりの数をみたんだろうからな》

《はい。また次回に期待したいと思います》

しばらくすると都市内からブラックドッグの気配は消えていた。ティラが森に返してしまったらしかった。

《よし!全員!今回は出番が無かったな。今日はこの都市に泊まる事にする。どこか破損の少ない建物を見つけてそこに泊まろう。護衛はファントム一人で足りそうだ》

《《《《《《は!》》》》》》

《アナミス、マリアに言って車両を都市内に入れるように言ってくれ》

《かしこまりました》

俺はこの都市を東の拠点にしようと考えていた。魔人と聖都に送った騎士と魔導士を300人ほど連れてこようと考えている。周辺にゾンビが進出してくる可能性もあるため、ここで歯止めをかけなければいけないからだ。

夜にその作戦のために必要な事を皆で話して、早速ギレザムに念話を飛ばそうと思うのだった。