軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第508話 源泉かけ流しと魔王子

この都市はリュート王国までの地域において重要な拠点となるだろう。そのため捕えて魂核を書き換えた人間兵と魔人兵の混成部隊を、こちらに向かわせるよう指示をだした。部隊は剣の達人となったクレと、カゲヨシ将軍からうどんの作り方と戦術を教わったナタに率いてもらう事にした。

「クレとナタが部隊を率いて来る」

「はい」

「総勢500の人間と30の魔人だ」

「クレとナタであれば問題はないでしょう」

シャーミリアもクレナタに対しては評価が高いようだった。ひとまずここの拠点を盤石にしてさらに東へと進む必要がある。人と魔人の混成部隊が到着次第、残党の捜索と東の国境までの安全を確保するつもりだった。

「こんなところで二人で話すなんて滅多にないから新鮮だな」

目の前にはシャーミリア一人がいた。

「はい!私奴もご主人様と二人きりでいられることは、この上ない幸せにございます」

俺とシャーミリアは廃屋になったカフェテリアのテラスで話をしている。秘書なので十分に俺の考えを理解してもらい、俺の代わりにたくさん動いてもらう事にしたのだ。ギレザムが総司令という地位を与えたことで驚異的な進化をしたのを見て、シャーミリアには参謀という重要な役割を与えようと考えたのだ。

「ここからは俺達が、聖都からはギレザム率いる魔人部隊を派兵する。もちろんモーリス先生と護衛のラーズ、ゴーグに来てもらう事になるだろう。人間も連れて来ているので回復要員として、カトリーヌとルフラにも来てもらう」

聖都の魔人の指揮にはマカについてもらう事にする。サイナス枢機卿とカーライル、グレースとオンジも残ってもらい聖都の復興を継続してもらう予定だ。

「では北東からはオージェ様がいらっしゃると言う事でしょうか?」

「その通りだ。オージェ、トライトン、ガザム、セイラにダークエルフ隊を引き連れてきてもらうつもりだ」

「拠点の指揮はそのままミノスが行うわけでしょうか?」

「そう言う事だ」

「かしこまりました」

東部の攻略についてもかなりの戦力を投入する事になるが、デモンや敵兵の対策だけでは無い。リュート王国の状況が分からない為、じっくりラインを作って押し上げていくことになる。

「あとはアスモデウスだな」

「既に動かしているようですが…」

「そうだ。先にリュート王国に潜入して状況を探ってもらっている」

「大丈夫でしょうか?」

「一人で心配ないだろう。消滅する事はないはずだ、もし脅威が現れたら情報だけをとって戻ってくるように言ってある」

アスモデウスは人間と一緒に行動させることが難しい為、部隊と一緒に居させるわけにいかなかった。そのため単独行動で先行し未開の土地の情報を集めさせるようにさせていた。

「連絡はありましたか?」

「まだない。リュート西部の村々はもぬけの空のようだが、転移魔法陣やデモンなどの存在は確認できていないそうだ。かなりの広い範囲を一人で調査しているから、時間がかかるだろうと思う」

「デモンも使いようによっては役にたつようですね」

「そういうことだ」

今魔人達には、この都市の周りに魔法陣などの罠が仕掛けられていないか調査をしてもらっていた。二カルスの魔獣は既にティラが追い払っているため、人間達でも十分に活動する事が出来るはずだ。問題があるとすれば転移魔法陣かインフェルノだ。

「では私奴はそれを踏まえて、どうすべきかを考えご主人様に助言をするという事で良かったでしょうか?」

「そのとおりだ。最初は上手くいかないかもしれないが、失敗を恐れずにどんどん助言をしてほしいんだ。どんなことでもいい、気が付いた事があったらすぐに俺に教えてほしい」

「かしこまりました。最善を尽くすように努力いたします」

俺達が話をしていると、誰かがこちらに歩いて来るのが見えた。

「ラウル様。」

「どうしたマリア」

俺の下に来たのはマリアとファントムだった。ファントムに命じてマリアの護衛をさせているため、ピッタリ寄り添うようについている。

「この先の森に川が流れていたのですが、その川が一部暖かいのです」

「暖かい?」

「はい」

「そりゃなんだ?」

「ルピアが言うには温泉ではないかと」

「温泉!うそ!」

「私もそうかと思います。硫黄の臭いがしたように思うのです」

マリアも言うなら間違いないかもしれない。

「連れて行ってくれ!」

俺とシャーミリアは、マリアとファントムについて行く事にした。マリアに言われた場所につくと確かに湯気が立っている。臭いからすると間違いなく硫黄泉がここにあるように思う。どうやら自然の温泉がわき出しているようだ。

「えっとミリア!キリヤ君を連れて来てくれ」

「は!」

バシュ

シャーミリアが消えるように飛んで行った。そしてすぐにキリヤを連れて飛んで戻ってくる。

「な、どうしました!」

キリヤはシャーミリアの急激な加速にふらふらしながらも言う。

「キリヤ君!ちょっとこの臭いを嗅いでみてくれ!」

「これは…温泉じゃないですか?」

「そうだ!温泉だ!」

「天然温泉ですね!」

「そういうことだ。この温泉が湧き出ている場所を探そうと思う。君は土魔法が得意だったね?地面を掘ったりもできるのかい?」

「容易い事です!」

「よし!探すぞ!」

「ご主人様。そういう事でしたらカララが適任であるとおもいます。温度の高い部分を糸で探り当て吹き出している場所を突き止めるでしょう」

「そうか!」

《カララ!すぐきて!》

《は!》

少し待っているとカララがやって来た。

「どうしました?」

「なんかさ温泉が湧いてるみたいでさ、源泉を探してほしいんだ」

「御安い御用です」

カララがニッコリ笑って糸を風に乗せるように周りに漂わせていく。ほんの少しの時間で見つけたようだ。

「こちらです」

全員がカララについて行くと、お湯が噴出しているところにたどり着いた。

「すげ!ホントに温泉だ!」

「本当ですね!」

俺とマリアのテンションが上がると、シャーミリアとカララも嬉しそうに笑う。

「よし!キリヤ君!この源泉からお湯を引くように岩で囲って流してくれ」

「はい!」

キリヤが地面に手を当てて魔法を発動させると、源泉から一気に下までお湯が通る道が出来ていく。雨風が入らないようにその道に岩をかぶせてくれているようだ。

「そのまま都市の脇まで!」

「はい!」

そしてキリヤがそのお湯の道を引っ張って行く、都市まではかなりの距離があったが彼は額に汗して岩を加工していくのだった。

「ふうふう、はあはあ…」

キリヤがだいぶ疲れてきたようだが、都市の市壁まではまだだいぶ距離がある。どうやらキリヤは連日の作業で魔力が欠乏しているらしい。

「ファントム!魔石」

ファントムの手から魔石が出て来た。

「キリヤ君!俺の魔力を注ぐからこの魔石を持ってくれないか?」

俺は触媒にするための魔石をキリヤに持たせて、そこに魔力を注ぎこんだ。

「おお!」

魔石が光ると俺の魔力が一気にキリヤの魔法に注ぎ込まれる。

ズド!

一気に都市の内部まで土で作られたお湯の道が突き通って行く。

「やった!」

「ラウル様!ありがとうございます!」

「いやいやキリヤ君の土魔法のおかげだよ!」

「素晴らしい魔力ですね!」

キリヤの手にあった魔石は割れてしまっていた。俺の魔力に耐えられずに破壊されてしまったらしい。

「あとキリヤ君!あの小川から水をひきたいんだが同じことをやってくれるかい?もちろん俺の魔力の補助を加えるから」

「わ、わかりました!」

キリヤはふらふらになりながらも再び森に向かって歩いて行くのだった。

「おい!」

キリヤに声をかける。

「はい!」

「これを飲め!」

そして俺はキリヤにハイポーションを投げてやる。

「ありがとうございます。」

キリヤはふたを開けてポーションを一気に飲み干した。魔力は回復しないが体力は何とかなるだろう。しかしそれでもふらふらしながら歩いている。

「うーん…ファントム、キリヤ君を運んでやれ」

ファントムが片手でキリヤを持ち上げ、そのまま森の中へと進んでいくのだった。そして小川の近くにたどり着く。

「では」

キリヤが額に汗をかきながら地面に手を当てる。

「よし!ファントム!魔石をだせ!」

ファントムの腹からレッドベアーからとれた大きな魔石がでてきた。それをキリヤに渡すのだった。

「はい!」

「じゃあ魔力を注ぐ」

ズド!

一気に小川の側が掘られて水道が出来上がっていく。しかし魔石が割れてしまったので俺は新しい魔石を渡すのだった。

「ほれ!もう少しだ」

「はあはあ…ちょっと待ってください…」

どうやらフラフラだ。

「この虫けらが!ご主人様が頑張れと言ってくださっているのに、ちょっと待てとは何事か!」

シャーミリアは手を振り上げる。

「だめだめだめだめ!だからダメだって!」

俺はシャーミリアを慌てて止めた。

「はっ!申し訳ございませんでした」

また頑張っているキリヤを即死させるところだった。なんかシャーミリアってカーライルといいキリヤといい、イケメンにはめっちゃ厳しいように感じるが気のせいだろうか?生理的に受け付けないってオーラがビンビンと出ている。

「シャーミリア様の言う通り、私が甘えておりました!魔石に魔力をお願いいたします!」

キリヤに気合が入る。

「わ、わかった」

そして俺は再びキリヤの持つ魔石に魔力を注ぐ。

ズド!

「よし!一気に都市に入ったぞ!キリヤ君ありがとう!」

「‥‥‥」

「キリヤ君?」

「ラウル様。気を失っております。完全な魔力切れだと思われます」

マリアに言われキリヤを見ると白目をむいて泡を吹いていた。どうやら気絶してしまったらしい。

「ファントム!こいつを町に連れて行って適当な屋敷のベッドに眠らせてやれ」

「‥‥‥」

ファントムは無言でキリヤを連れて行ってしまった。

そして俺はマリアを顔を見合わせる。

「温泉に!」

「入れますね!」

めっちゃテンションが上がってしまった。俺は温泉道と水道の先に自衛隊式浴場 野外入浴セット2型を召喚した。

「カララ、お湯と水をうまく混ざるように木を加工して注ぎたいんだが」

「はい」

カララが森に戻りしばらくすると竹を何本か糸で浮かせながら持ってきた。それを糸で二つに割り中をくりぬいてお湯と水が出ている場所へと設置してくれる。

ザー

お湯と水が混ざって自衛隊式浴場 野外入浴セット2型ふ降り注いでいく。

《アナミス!ルピア!マキーナ!ティラ!タピ!みんな戻っておいで!》

俺は念話で配下全員を呼び寄せた。森や荒野で調査作業を行っていた魔人達は30分ほどして皆戻って来た。

「ラウル様!どうされました?」

アナミスが言う。

「凄いだろ!温泉作っちゃったんだ!」

「あら?本当ですね」

「入りたいだろ!先に女性陣が入っていいぞ!」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

シャーミリア、カララ、アナミス、ルピア、マキーナ、ティラがいきなり無言になった。

「ん?どうした?温泉は嫌いか?」

「いえ!出来ましたらご主人様が先にお入りいただけましたらと思います」

「そうですわ!ラウル様が先です!」

「私もそう思います」

「同じく」

「私など一番最後で」

「私もラウル様が一番だと思う!」

「そ、そう?」

「「「「「「はい!」」」」」」

全員が返事をした。

「じゃあ悪いけど先に入らせてもらうよ」

皆がコクコクと頷いている。

なんだか…悪いな。皆が仕事で大変だと思って先にって言ったのに。とにかく俺が入らないと皆が入れないからな先に入らせてもらうとしよう。そして俺が先にテントに入り、服を脱いで浴室に入ると硫黄泉の臭いがプンと鼻をついた。浴槽に手を入れてみる。

「おー!あっつい!でもなれると丁度いいぞ!」

キリヤは本当に役に立つ事が分かった。失神するほど魔力を枯渇させてしまったのは申し訳ないが、きっとそのうち魔人の影響を受けて魔力も増えるだろう。そしたら戦力として防御に特化してもらえそうだ。

「失礼します」

「えっ?」

「すみません」

「は?」

「恐れ入ります」

マリア、シャーミリア、カララ、アナミス、ルピア、マキーナ、ティラが浴室の中に入って来たのだった。もちろん全員が全裸で…

やられた。彼女らはこれが目的で俺を先に入らせたらしい…

「お体を洗って差し上げたいと皆が」

マリアが恥ずかしそうに言う。

そう。これはルゼミア母さんが言っていた、魔王子がやるべき事の一つだった。俺は6人の美魔人とメイドに囲まれて、ゆったりと温泉を堪能する事になったのだった。

あっ!そこは!

ハフゥ…

言われてみればこの風呂の営みも久しぶりだ。あまりにも久しぶりで、なんだか女性陣の目が怖い。でも気にしない!だって魔王子の務めなんだから。