軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第491話 残敵掃討作戦始動

ファートリア聖都内のがれき撤去及び魔法陣罠の本格的な調査が始まった。エミル達が連れて来た40人の精鋭部隊と生き残ったファートリアの冒険者達が、サイナス枢機卿の指示の下で作業を行っていく事になった。カーライルも故郷の為に一緒になって泥にまみれになって作業をするらしい。

「何かがあった場合の為に、魔人兵も駐屯地を拡充しながら待機しております。デモンや兵士がここに転移してきたら急いで市壁の外に避難してきてください。」

「わかったのじゃ。」

枢機卿が真剣に答えている。

「サイナス枢機卿は都市の奥までは入らずに、兵士たちに任せるようにしてください。」

「そうするのじゃ。」

「サイナス枢機卿は出来れば市壁の上から、LRADスピーカーを使って市街地に指示を出してください。」

「うむ、なるべくそうする。」

「何かがあっても、すぐに門に待機している魔人が拠点までお連れしますからね。」

「うん、うん‥‥。」

「あとは――」

「もうわかったのじゃ!ラウルは心配性じゃのう!そんなにガチガチにしとったら、わしも仕事にならんぞ!」

「枢機卿!その油断が命取りですよ!」

「わし油断などしとらんよ!」

「とにかく!代わりはいないんですから!」

「う、うむ。十分注意するから。」

サイナス枢機卿もモーリス先生と同じ人種で、好奇心のオバケだからいきなり何をしでかすか分からない。念には念を入れて言っておかないと俺が不安で仕方がないのだった。

「まあ、ラウルよ。サイナスのじじいもそう言うておる。そのあたりで勘弁してやったらどうじゃ?」

モーリス先生が言う。

「まあ、”じじい”は余計じゃが、モーリスの言う事も聞いておくれ。」

「わかりました。とにかく私たちはファートリア国内にいる残敵を掃討せねばなりません。私と主力がここを離れますので十分に注意なされるようお願いします。まあオージェがいるので問題は無いと思いますが。」

「おぬしの方こそ気を付けるのじゃぞ。」

「私は何とかなります。枢機卿が――」

「もうええて。」

モーリス先生に窘められる。どうやら俺はサイナス枢機卿の身を心配するばかりに、過敏になっていたらしい。

「分かりました…」

「サイナス様は本当にラウル様に心配されているのですわ。それだけ重要人物だという事なのです。」

「そう!聖女リシェルの言う通りです!ケイシー神父とは違うんです。」

「えっラウルさん!僕はどうでもいいって事ですか?」

ケイシーが俺に詰め寄る。

実際の所はケイシー神父の代わりはいくらでもいるかもしれない。いや…こいつのマイペースぶりは神かかっているから、やっぱり代わりはいないかな。

「ケイシーの代わりもいないよ。」

「そ、それならよかったです。」

ケイシーは納得いったのかいかないのか微妙な表情で腕組みをしている。だがとにかくこいつはいい奴なので、死んでしまったら寝覚めが悪い、もちろん自分の命最優先にしてほしいと思う。

「もうひとつの問題は逃がしたニホンジンの魔法使い部隊や、デモンがこの地にやってくる事よのう。」

「はい先生。おそらくは聖都が陥落したことを知らないと思うのです。もしかしたらノコノコやってくるかもしれませんので、魔人達を聖都周辺にくまなく配置し侵入者の警戒を続けます。」

「そうじゃな。じゃがニホンジン魔法使いのやつらが来たところで、こちらには冒険者もおるし、何より魔人とあの人間の精鋭部隊がおるじゃろ。わしが結界を解除してしまえば敵ではないのでは?」

まあ先生の言う通りではあるが、イショウキリヤの結界はとても厄介だった。モーリス先生は簡単に結界を解除してみせたが、あれを展開されるとこちらの兵器がゼロ距離からしか通用しない。

「先生を常に前線で戦わせるのは得策ではありません。」

「いやいや、ゴーグを置いて行ってくれるのじゃろ?わしなら大丈夫じゃぞ。」

「いいえ!先生。先生に万が一の事があったら――」

「わかった!わかったのじゃ!ラウルよ、わしももちろん無理はせん!気兼ねなく残敵掃討の任にいってこい。」

「とにかく無理はしないでくださいね。」

「うむ!」

《ラーズ!ゴーグ!来い!》

しばらくするとラーズとゴーグが、拠点での作業を止めて俺達の下へとやって来た。

「お呼びでしょうか?」

「なんでしょうか?」

「お前たちは、このお二方を絶対に守り通す事!俺がいない時はラーズが枢機卿から離れるな!ゴーグは常に先生といるんだ。二人は責任重大だぞ。」

「御意。」

「はい!」

「護衛も常に5名づつな。」

「は!」

「わかりました!」

俺が二人に言うと、すぐさま枢機卿とモーリス先生の隣に立つのだった。

「やれやれじゃな。」

「まったくラウルは過保護すぎるのじゃ。」

いやいや!おじいちゃんたちが、めっちゃ活動的過ぎるので心配なんですけど。

「とにかくお願いしますね。聖女リシェルもケイシーもなるべくお二人の側にいてください。」

「大丈夫です。私はそうするつもりです。」

「僕は…。」

ケイシーが口ごもる。だが二人も護衛対象になっているのだ、好き勝手に動き回ってもらうわけにはいかない。

「僕はなんだ?」

俺が殺気を乗せてぎろりと睨む。

「はい、先生と一緒に居るようにします。」

「頼んだぞ。」

「わかりました。」

さぼり癖のあるケイシーが渋々頷いた。

「じゃあ私は掃討作戦に移ります。」

「うむ。気をつけてな。」

「おぬしこそ無理はするでないぞ。」

「はい。」

そして俺はオージェに向かって言う。

「オージェとトライトンも都市内の現場監督を任せるけど、安全第一でやってくれ。」

「もちろんだラウル。俺も復興支援なら前の世界で嫌と言うほどやって来たからな、抜かりはない。」

「ああ。」

「ワイも力仕事ならバッチリですわ。」

「頼む。」

そして俺はセイラにも伝える。

「ここの人間達はかなりストレスがかかるはずだ、セイラが癒してあげる事でかなり能率も上がるだろう、休むときなどは安らかに休めるようにしてあげてくれよ。」

「かしこまりました。人間達が気分良く働けるように心がけます。」

「頼む。」

そして俺は再び先生とサイナス枢機卿に振り向く。

「では行ってまいります。」

「うむ。」

「どうか無事でな。」

俺はそのまま既に召喚してあったCH-53K キングスタリオンに向けて歩き出す。エミルとケイナは操縦席におり、スタリオンのハッチの前では俺が来るのを魔人達とグレースとオンジが待っていた。

「お待たせした。」

「ラウルさん…挨拶が長い気がします。」

ちょっと不満げに七色の髪の毛の美少女風グレースが言う。

「はは、すまんグレース。どうしてもあの二人が心配でな。」

「オージェさんがいるんです。大船に乗った気持ちで良いと思いますけど。」

「銃火器も十分すぎるほど駐屯地の倉庫に入れてあるし、戦闘車両も50両ほど召喚して配備してある。それにオージェ達がいれば問題ないか‥‥そうだな。」

「ええ、まったく。心配性すぎるんですラウルさん。」

「そうか。」

そしてグレースとオンジ、シャーミリア ファントム、カララ、マキーナ、アナミスが俺の後に続いてキングスタリオンへと搭乗していくのだった。

「エミル!出してくれ!」

「了解。隊長。」

ヒュンヒュンヒュンヒュン

ローターを回しながらキングスタリオンが上昇していくのだった。

「まずは東に向けて飛んでくれ。」

「はいよ。」

そしてキングスタリオンはゆっくりと東に頭を向けて、ファートリア聖都から飛び立っていくのだった。

「シャーミリアとカララは、敵及びデモンの気配がしたら教えてくれ。」

「は!」

「わかりました。」

俺の手にはサイナス枢機卿達に書いてもらった、ざっくりしたファートリア国内の都市の地図が広げられていた。そんなに緻密な地図ではないが、だいたいの方角と位置はあっているらしい。

「ラウルさん。既に国内の魔人達は動いているのですか?」

「ギレザムたちが各拠点を回って視察している。各自の判断で動くようにしてはいるが、いざという時は念話で連絡が来る。」

「わかりました。」

それから1時間ほど飛び続けると中規模都市が見えて来た。聖都の3分の1ほどの大きさだが町は壊れているようには見えなかった。

「敵の気配は?」

「生き物の気配はありません。もぬけの殻かと思われます。」

シャーミリアが言う。

「なるほど。とりあえず着陸して調べてみよう。エミル!ヘリを離れたところに降ろしてくれるか!」

「了解。」

そしてキングスタリオンはその都市の西、1キロあたりに着陸した。全員がヘリの外に降りて調査の準備に移る。

「エミルは直ぐに飛び立てるように待機しててくれ。」

「わかった。」

「グレースとオンジはここに残り、カララとアナミスがヘリの護衛につけ。」

「わかりました。」

「どうかご無事で。」

「かしこまりました。」

「はい。」

「グレースは魔導鎧を出してくれ。」

「はい。」

グレースの目の前にヴァルキリーが出現した。外骨格やバーニアはつけていないそのままのヴァージョンだ。俺はそのままヴァルキリーに意識を繋いで装着した。

《我が主。作戦ですか?》

《ああヴァルキリー。これから無人都市の調査に向かう。》

《大まかに分かっています。》

《ん?ちょっと聞きたいんだけどグレースの保管庫の中にいる時ってどうなってんだ?》

《おそらくは時が止まっているかと。しかし私の思考は動いたままです。もちろん我が主の意識は常に感じております。》

《えっ!そうなの?辛くない?》

《辛い?どうしてです。》

そうか、こいつには退屈とか暇とか、そう言う感覚は無いのかもしれないな。

《いや、苦痛じゃないならそれでいい。》

《苦痛という概念は分かりますが、我には無縁のようです。》

《わかった。》

6人を置いて、ヴァルキリーを着た俺とシャーミリアと、ファントム、マキーナが無人都市に向けて歩き出した。

都市に近づいても動く者は無く、シャーミリアも気配を感じる事は無いと言っていた。

「鏡面薬を投げろ。」

ファントムは体内から鏡面薬を取り出して、蓋を開けて門から内部に向けて放り投げた。鏡面薬が地面に落ちても光る事はなく、どうやらここには魔法陣が設置されてはいないようだ。

「入るぞ。」

「ファントム!先に行ってご主人様の安全を確保しなさい。」

「‥‥‥。」

シャーミリアに指示されて、ファントムが低めの市壁に取り付けてある門の中に入っていく。俺達はファントムを追うようにして都市内に潜入するのだった。

「やはり誰もいないか…。」

「待ってください。なにかの香りがいたします。」

シャーミリアが何かに気が付いた。

「兵器を装備しろ。」

俺はファントムにM134ミニガンとバックパック、シャーミリアとマキーナにはM240中機関銃とバックパックを召喚する。俺達が警戒しながら進むと、シャーミリアがある建物の前で立ち止まった。

「ご主人様。こちらの中から臭いがします。」

「どんな?」

「焦げたような臭いでしょうか。」

「わかった。」

俺はその建物の扉を開けて、室内に鏡面薬を放り投げた。床は反応することなく魔法陣が仕掛けられている様子は無さそうだった。

「はいるぞ。」

「は!」

俺達が家の中に入っていくと、俺でも気が付く異変があった。

「生活臭がするぞ。」

それに気づき、奥まで入っていくとキッチンの竈門に炭の燃えカスがあった。そしてその竈門の上には使ったであろう鍋が置いてある。

カパッ

鍋を開くと中には食べ物のこびりついた跡がある。

「これ腐ってないぞ。」

「ご主人様。恐らく生活している者がいるかと思われます。」

「どういうことだ?」

「恐らく都市の外、東に動く者がおります。」

「人間か?」

「恐らくは。」

シャーミリアの気配感知はいつもながら凄い。結構広めの都市の外に動いている人間がいるのが分かるらしい。

「よし、その身柄を確保するか?」

「都市の中に入ってきました。」

「とすると、ここに戻ってくるか…。全員ここにいた痕跡を消して周辺の建物の屋根に。」

「は!」

「はい。」

「‥‥‥。」

俺達は家をそっと出てドアを閉め、周辺の建物の屋根に上る。

こちらに向かう者はいったい何者なのか?もぬけの殻になった都市でいったい何をしているのか?

俺達は息を殺して待つのだった。