軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第490話 特殊部隊

CH-47 チヌークがタンデムローターを回転させ上空にホバリングしている。あたりに風がおき雑草が四方に広がって倒れていた。

「なんで降りてこないんだ?」

「なんででしょうね?」

俺とグレースがヘリを見ながら言う。

「あ、ハッチが開いたようですよ。」

「本当だ。」

するとそこから両サイドにスルスルとロープが降りて来た。

まさか…

素早い動作で、そのロープをつたい兵士たちが降下して来たのだった。

「おいおい。」

「すごっ!」

どうやらルタン町から連れて来られた兵士たちが、オージェの指示でロープを伝って降りてきているらしい。常時このような状態にしようというオージェの意図が見えるが…

「普通に下りてくりゃいいのに。」

「ですねぇ。」

次々にロープを伝ってヘリから降りて来る兵士達。さすがにエミルのホバリング技術は優れていて、チヌークは安定して上空に留まっていた。恐らく風の精霊の力も使っているのだろう。

降りて来た人間から順に、ビシィっと整列を始める。

「仕込まれてる…。」

「ですねぇ。」

40名ほどの兵士が降りると、その後からトライトンが飛びおりて来た。もちろんロープなどは使わなくて大丈夫なようだ。その後からオージェがセイラをお姫様だっこして飛びおりて来た。ふわりと地面に着地しセイラを下ろす。

「なんで普通に降りてこねえかな。」

「ですねぇ。」

次にハッチから出てきたのはアナミスとマキーナだった。空を飛んで俺のそばに降り立って跪く。

「ご苦労さん。」

「ありがとうございます。」

「もったいないお言葉。」

「いや、あいつらの護衛は疲れたんじゃないかと思ってな。」

「皆、それぞれの業務をきちんと遂行しておりました。」

「私は山脈通過の時しか仕事が御座いませんでした。」

「それならいいんだ。」

皆を下ろすとチヌークは草原の方に飛び去って行った。草原に出来つつある駐屯地のヘリポートに降ろすためだ。

「エミルとケイナは普通に降りるんだな。」

「そりゃそうですよ。」

「だな。」

すると俺達の前では、オージェが整列している兵士たちに何か号令をかけていた。

「まだまだ遅い!もっと早く降りねば敵にやられてしまうぞ!」

「「「「「「は!!」」」」」」

兵士たちはびしっと休めの姿勢をしてオージェに答える。

「お前たちはこれからまだまだ強くなる!俺がさらに強くしてみせる!一人の脱落者も無いように精進するんだ!」

「「「「「「はい!!」」」」」

「よし!長旅ご苦労だった。ひとまず皆には休みをとらせる、食材は魔人に頼んであるからお前たちは自分達で自炊するんだ!」

「「「「「「は!」」」」」」

「では!トライトン!彼らを駐屯地の宿舎まで連れて行ってくれ。」

「わかりました。」

荷物を持った兵士たちが一人一人歩いて行こうとする。

「駆けあああああし!」

オージェの怒号が飛ぶ。

ざっざっざっざっざっ

整列して駆けだしていくのだった。

どうやら大マジで彼らの事を鍛えているらしい。兵士たちを送り出したオージェが俺の下に歩いて来る。

「ラウル!すこし遅くなったな。」

「いや、こちらもまだまだ対応するべきことがあったから問題ない。」

「3000人全員組手をして資質を見る必要があったからな。その後で選別し200人の候補を選抜して、俺のしごきに耐えられたものは100人。それから全員にルタン町にあった剣を渡し、レッドベアーを狩って来るように指示した。怪我をした者もいたがエリクサーで治したよ。」

「ちょっちょっちょっ!魔法使いもいないのにレッドベアーを狩らせたのか?」

「ああ8メートル級だ。」

鬼だ。コイツは人の皮をかぶった鬼だ…。いや龍か。

「それで?」

「2頭狩って来た。だがそこで怪我をした者は脱落した。60人が残ったので最後のサバイバル訓練だ。」

「さ、サバイバル訓練って?」

「一人一人が単独で森で2晩を生き抜くだけだ。もちろん彼らの判断で協力し合ってもいい。」

「えっ!夜の森を2晩も?そいつはいくらなんでも…。」

この世界の夜の森と言えば魔獣の世界だ。そんな場所で夜を過ごす人間なんているわけがない。

「だが、簡単じゃサバイバル訓練にならんだろう?」

え、お前何言ってんの?みたいにいうな、俺の方が言いたいくらいだ。

「食料とかは?」

「ない。そして武器はショートソードのみだ。」

「えっと‥‥少しは死んだんじゃない?」

「もちろんトライトンとマキーナさんに頼んで見守っていたさ。怪我をした者もギリギリまで戦ったが、さすがにヤバいのは救助してエリクサーを与えた。手足が取られてしまってどうしようも無かったからな。」

「お前は行かなかったんだ。」

「俺がいったら魔獣が逃げるだろうが。」

「確かに…。」

「それにルタンの飯は美味いんだ。」

「‥‥‥。」

そう言えばルタンの飯めっちゃ気に入ってたな。こいつは兵士たちにサバイバル訓練をさせながらも美味い飯を食っていたとみえる。

「それで残ったのがあの40名だ。一人で森を走破できる強者たちだぞ。」

「えっと彼らは人間なんだよな?」

「まあそうだな。ちょっと俺も意外だったんだ。」

オージェが腕を組んで頭を傾ける。

「何が?」

「彼らは以前、俺が鍛えていた頃よりも数段強くなっていた。」

「それはアレだよ…魔人達と生活を共にして狩りをしてしていたからさ。恐らくは深く魔人の影響を受けたと思う。」

「納得だ。」

とにかくえらいことだ。あの人間たちは単独でこの世界の森を走破できるらしい…魔人でもゴブリンや、一般兵のダークエルフ、オークあたりなら無理かもしれないというのに。

「そこであれを精鋭部隊としたわけだ。」

「そうだ。」

「ならオージェ。彼らに部隊名かコードネームでも付けたらいいんじゃないか?」

「部隊名か‥‥。」

「だって既に特殊部隊クラスじゃん。」

前世の特殊部隊など比べ物にならないほど屈強な気がするが…

「確かにな。だがそんな名前思いつかんぞ。あいつらはレンジャーというクラスで良いかね?」

「レンジャー持ちね…。いや…もっとカッコいいのにしようぜ。」

俺がオージェに言っているとグレースも寄って来た。いつの間にかエミルも駐屯地からここに来ていたようだ。

「なんですなんです?すっごい面白そうな事話してませんでした?」

「そうだな。俺も詳しく聞きたい。」

二人も首を突っ込んで来た。

「まあ…とにかくお疲れ様!まずは飲み物でも飲みながらにしないか?」

俺が言う。

「いいねえ。」

「そうしますか?」

「グレースが出してくれるのか?」

グレースが保管庫から水瓶と盃を出した。そして俺達は魔人達の作業の邪魔にならないように少し離れたところに移り、俺が召喚したテントに座り込む。

「その水瓶は?」

「なんか入ってたんです。」

パカッ

「おお!エミルこれは!?」

「ね、ネクターじゃないか!」

「いつのか分からないですが。」

「大丈夫だ、虹蛇の保管庫は時間が止まっている。」

「ですよね。」

「飲もう飲もう。」

オージェが言うと早速グレースが盃にネクターを注ぎ始める。

「なんかルタンのパトス町長が、ネクターに興味を示してたぞ。」

エミルが言う。

「これはエルフの里でしか作られないんだよな?」

「ああ。」

「そうなんだ、何かもったいねえな。」

‥‥‥。

エミルは、エルフの上位にいる上位精霊の、元締めの精霊神なんだよな。と言う事はコイツの裁量次第で門外不出のネクターを流通させることもできるんじゃないのか?

っと俺が思っていたら。

「エミルさん!これめっちゃ高額で売れると思いますよ!」

グレースに先を越された。

「えっ?」

「だってこんなにおいしいんだもの!」

「う、売れるかな?」

「もちろんレシピとかは出しませんよ。エルフの里限定で作って僕が流通させるんです。保管庫は腐る事も無いですし。ラウルさんのヘリを使えば流通が可能になるんじゃないですかね?」

「なるほど。」

グレースがエミルを口説きだした。おそらくそう遠くない未来に、金持ちにネクターが流通するに違いない。

「で、さっきの話だけどよ。」

俺が口火を切る。

「ああ、レンジャーじゃダメなんだよな?」

オージェが言う。

「ダメ!」

「ダメダメ!」

「なんか地味。」

「地味とか…俺は元レンジャー持ちなんだがな。」

「かっこいい名前が良いよ。」

「じゃあ特殊部隊の名前を挙げて行きましょうよ。」

「だな。」

俺達はネクターを飲みながらいきなり特殊部隊の名前を言い始める。

「グリーンベレー」

「べただな、じゃあネイビーシールズ」

「スペツナズ。」

「ならアルファ部隊。」

「SAS」

「SBS」

次々と全世の特殊部隊の名前が挙がっていくのだった。しばらくは特殊部隊の話で盛り上がっていた。やっぱこの4人とは話のネタが尽きない。

「で、そろそろ名前を決めないか。」

「うーむ、レンジャー部隊じゃダメなら、ブラボー隊か?」

「オージェ、それも安直な気がするぞ。」

「NOKとかどうです?」

「何の略だグレース。」

「Night of Knightですよ。」

「ナイトオブナイツね…まあカッコよすぎないか?」

「ダメですかね?」

「鎧の色をグリーンに塗って、グリーンメイルとかどうだ?」

「悪くない!」

いや…グリーン〇イルとか言う映画あったな。ちょっと微妙かも…

俺達が話をしていると、シャーミリアとファントムが近づいて来た。

「ご主人様。」

「どうした?」

「このウスノロ…ファントムなのですが、都市内の撤去作業にも参加できず、建築などの細かい作業も出来ないものですから、さすがに持て余しておりまして。」

「じゃあファントム!お前は俺の護衛についてろ。」

「‥‥‥。」

とりあえず答える事は無いが、俺のそばに近づいて立ち始める。

「では私奴は皆の食料確保の為、マキーナと魔獣狩りに行ってまいります。」

「よろしく頼む。」

「かしこまりました。」

バシュッ

シャーミリアが消えた。

「ラウルさん!ファントムっていいですよね?」

「ファントム?」

「ファントムナイツって言うのはどうです?」

グレースがそう言うとエミルとオージェが答える。

「いいね!それ。」

「なんか良い響きだ。」

「なるほど…ファントムナイツね。幻影騎士って感じか?」

「日本語でもカッコイイですよね。」

「じゃあ、ファントムナイツで決まりで良いんじゃないか?」

「だな。」

「賛成。」

「いい感じですね。」

というわけで、あの選りすぐりを集めた特殊部隊はファントムナイツという、ちょっと厨二的な名前に落ち着いたのだった。いやだいぶ厨二か…

「というわけで、ファントムナイツには、明日から都市内の撤去作業や魔法陣探索の作業に入ってもらう。」

「かなり組織的に動けるようになっているから使えるはずだ。」

「頼もしい。」

「俺とトライトンも一緒に中に入るつもりだ。」

「じゃあ僕のゴーレムも100体出しますので連れて行ってください。」

「わかった。」

明日から一気に都市内の探索と除去が進みそうだ。そうなれば俺も国内の残敵掃討の指示を出すために、各地を回って武器弾薬の補充をしなければならない。

《ラウル様。》

アナミスが念話でこっそり伝えて来る。

《どうしたアナミス。》

《ルタン兵についてでございますが、長い魔人達との暮らしと作業の影響で、私が植え付けた記憶や洗脳状態がさらに根強く入っておりました。》

《そうか。オージェはそれに気が付いたかな?》

《いえ。なんかすごく気持ちが強くなったな!とおっしゃっていました。》

なるほど、騎士たちはオージェのしごきの後、アナミスの洗脳をうけ、更に魔人達との強制労働にて完全に別人になってしまったらしい。そしてこれから特殊部隊はファントムナイツとしてオージェに鍛えられ続けていくわけか‥‥

彼らの親兄弟や子供とかには悪いが…死んだと思ってもらうしかなさそうだ。

《わかった。とりあえずお前は何もしなかったんだな?》

《はい。何もする必要はありませんでした。》

《お疲れ様。》

《ありがとうございます。》

どうやら兵士たちは完全に記憶を失っているらしい。しかもオージェはその事に気が回っていない。

《まあ別にわざわざ教える必要も無いか。目の前ではオージェが、あの兵士達についてエミルとグレースに生き生きと話しているし、問題は無さそうだ。》

人間には本当にいろいろな利用価値があると、つくづく思うのだった。