軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第481話 二日酔い解消と光柱の考察

俺がテントから外に出ると、既に太陽は高いところに昇っていた。

聖都奪還の祝賀会は”盛大に?”終わった。というか物凄い会となってしまったが、あれはあれで嫌な事を全部忘れさせてくれると思えば良かったのかもしれない。

「ご主人様。お加減はいかがでしょうか?」

シャーミリアがやってきて気を使ってくれる。

「ミリア…頭は痛いが気分は最高だ。」

「それならよろしかったです。」

「そんなにひどい顔をしているか?」

「は、い…いいえ。ご主人様はいつも凛々しくておられます。」

「お世辞はいいよ。」

「では…どうぞお水を。」

シャーミリアが盃についだ水を渡してくれる。

ぐびぐびぐび

「ふう。助かる。」

「もう一杯いかがですか?」

「ああ。」

そして次に注がれた水も一気に飲み干した。

「ありがとう。」

「いえ。」

するとマリアとカトリーヌがこちらに歩いて来る。

「ラウル様。今、回復の魔法を。」

「助かる。」

カトリーヌが俺に手をかざして魔法をかけた。

ふわぁぁぁぁ

みるみる体が軽くなっていく。

「カティ、これは何だい?」

「解毒魔法の一種です。」

「すごい楽だ。」

「今、聖女リシェルがサイナス枢機卿とモーリス先生、ケイシー神父たちに回復魔法をかけに行ってます。」

「それは助かるな。」

「なんで皆さんそんなにお飲みになったんです?」

カトリーヌはふわりとした金髪を揺らし、碧眼を真っすぐに俺に向けて言って来る。女神のような綺麗な顔立ちで聞いて来るが、真剣に言っているのだろうか?

俺はふとマリアを見た。

「私はカトリーヌ様に治していただきました。」

いやマリア…そんなことは聞いていない。

「えーっとカティ。昨日の事はどこまで覚えてる?」

「えっと…皆さんで会食をしましたよね。気がついたら自分のテントで寝ておりました。」

「そ、そうか。ならいいんだ。」

「はい?」

「とにかくみんなの所に行こう。」

「はい。」

俺とシャーミリア、カトリーヌ、マリアが歩きだす。

「フッ!ハッ!シュッ!」

広い草原の方から声が聞こえるので見てみると、カーライルとオンジがオージェとトライトンから稽古をつけてもらっていた。

「おーい!オージェ―!」

俺が手を振る。

すると向こうも爽やかに手を振っていた。俺達は稽古をしている彼らに近づいて行く。

「オージェ、大丈夫だったか?」

「何がだ?」

「酒だよ。」

「もちろんだ。そもそもあれくらいでは次の日に残らないさ。」

オージェが皆川だった前世でも酒はめっぽう強かった。

「今世でも酒強いのなお前。」

「大したことは無い。」

俺はカーライルとオンジを見る。

「二人は大丈夫なの?」

「稽古ですっかり抜けました。やはり体を酷使する事は良い事です。」

カーライルが言う。

「おかげさまで私もぬけました。」

オンジも言う。

「凄いね。」

「それほどでも。」

「ですな。」

この二人はそういう部分でも鍛え方が違うらしい。

「トライトンは?」

「わいも問題ないですわ。」

「さすが。」

「いえいえ。」

「じゃあどうぞ稽古を続けてくれ。」

俺はその場から再び離れて歩いて行く。深酒した次の日にハードな稽古とかって…彼らは鍛え方が違う。

しばらく歩いて行くと、今度はテントからゾンビのように手が出て来た。

「う、うううう。」

グレースが這い出ようとしているのだった。

「グレース!大丈夫か?」

「う、うううう。」

「おい!」

すると脱兎のごとく走り出し、草むらに頭を突っ込んだ。

「ぅおぇぇぇええええ!」

「シャーミリア。水。」

「はい、ご主人様。」

シャーミリアが再び水瓶から盃に水を汲んで俺に渡す。

「グレース!とりあえず水飲め。」

「ら、ラウルさんどう…おぇぇぇぇぇぇ。」

俺はグレースが落ち着くのをしばらく待った。

「はぁはぁはぁ。」

「よし、飲め。」

ゴクゴクゴクゴク

グレースは一気に飲み干した。

「カトリーヌ!解毒魔法を。」

「はい。」

カトリーヌがグレースに手をかざして魔法をかけた。

「あれ?ああースッキリ!」

「よかったよかった。」

「カトリーヌさんありがとう。」

「どういたしまして。」

グレースが一気に治ったようで、シャキッとし始めた。

「服よれよれだから、収納からキレイなのを出した方がいいな。」

「そうします。」

グレースは再びテントに戻って行った。

そして俺達はエミルの様子を見に行く。するとエミルとケイナは既に復活していたようで、拠点のテント村の周辺に下級精霊を呼び出していた。

「エミル大丈夫か?」

「はは、精霊に力を借りたさ。」

「そんなこともできんのか?」

「水の精霊に頼んで、体から余計なものを抜いて綺麗な水を入れた。」

「そりゃまた凄いな。」

「精霊の力だ。」

「それで、今は何をやっているんだ?」

「土の下級精霊にこのあたりの不浄な流れをキレイにしてもらっている。」

「やはり何かあるのか?」

「恐らくは大量のデモンのせいだろう、瘴気のようなものが渦巻いていた。今は土の精霊たちの力でこのあたりも落ち着いて来たよ。地面に染みついたものは少しずつ綺麗にするしかないな。」

「そうか…。」

どうやら大量デモン達がこのあたりを支配していたせいで、悪い物がたまっているんだろう…

「えっと、エミル。」

「なんだ?」

「デモンに精霊の加護はあり得るかな?」

「やったことないから分からん。」

「だよな。」

「…あのデモンにって事か?」

もちろんアスモデウスの事だ。

「ああ、あいつは物凄い瘴気を出していて、みんなと一緒に居る事が出来ないんだ。」

「上級精霊でもどうかわからんぞ。というより万が一なにかあったら責任が取れん。」

「そういう事か…。」

アスモデウスの瘴気を精霊の加護で押さえる事が出来ないかと思ったけど、そもそも水と油みたいなもんで相容れないだろうな。

「ラウルさん。しばらくは魔人さん達もここで作業をされるのですよね?」

ケイナが言う。

「そうなる。」

「私達が不浄の土地を綺麗にして、皆さんが活動しやすいようにします。」

「ああ、それは助かる。魔人よりもサイナス枢機卿やモーリス先生、カトリーヌや聖女リシェルが大変だからな。」

「元々人間達の為にしておりますので。」

「そうかそうか。」

そもそも魔人は魔力だまりのような場所で生きて来た種族だから、これくらいの場所はかえって力になる。しかし人間の体には強すぎで害悪しかないかもしれない。

彼ら人間の体調に気を使ってやってくれているようだ。俺が何も言わなくてもやってくれるエミルは本当に気が利く。これは前世からそうだった、俺が足りないものを埋めてくれるのがエミルだ。

「じゃあ引き続き頼むよ。」

「ああ。」

「はい。」

二人をそこに残して最後にモーリス先生と枢機卿の下へと向かった。

「おお、ラウルよ!」

「先生、大丈夫でしたか?」

「リシェルのおかげでこの通りじゃよ。」

「枢機卿も。」

「もちろんじゃ、むしろ快調なくらいじゃよ。」

「それはよかったです。」

そしてリシェルが水がめと盃を二つ持ってやってくる。

「ああ、ラウル様。目覚められたのですね?」

「俺が一番遅かったみたいですまない。」

「いえいえ。こちらのお二方もそれはそれは酷い有様でしたから。」

「酷いありさまって。」

「リシェルよそれはいささか…。」

「いえ、第一飲みすぎなんです。私はどうやらすぐに寝てしまったようで記憶が無いのですが、目覚めて見ればお二人は飲みすぎで、ノびていらっしゃったじゃないですか!まったくいいお年なんですから、いくら祝い酒とはいえ節制していただかないとお体に触ります。とにかくお水をお飲みください。」

二人に盃を渡して水瓶から水を灌ぐ。

「‥‥‥。」

「‥‥‥。」

くぴ

くぴり

おじいちゃんたちは黙って申し訳なさそうに水を飲む。

ふわりとした柔らかい雰囲気の聖女リシェルが、まったく!プンプン!っといった可愛らしい感じで怒っている。

飲ませたのはあんただ。

「まったくですわ。先生もそんなに無理をして飲んで、お体に触ったらどうするんです!」

カトリーヌがこれまたプンプン!という感じでモーリスを怒っている。

お前も共犯だ。

だが俺はそれを口にすることは無かった。

めっちゃ酒が強い上に、記憶を完全に飛ばして自分たちが元凶であることも分かっていない。それでいてめちゃくちゃ美人だから手に負えない。

「なるほど…こういうキャラだったのね。」

俺が思わずポツリと言ってしまう。

「ん?きゃら…ですか?」

カトリーヌが聞いて来る。

「なんでもない。」

そして俺は先生達に目配せをした。

「ふむ。調査の話じゃな。」

「はい。遅いですが朝食をとりながらでも。」

「そうじゃな。」

「ふむ。」

そして俺と先生とサイナス枢機卿が向かうのは、一番大きな司令部として作ったテントだった。

テントに入るとルフラとアナミスが食事の準備をしてくれていた。

「ラウル様。準備は出来ております。」

「ありがとう。ルフラ。」

「はい。」

「アナミスもありがとう。」

「ありがとうございます。」

そして俺達はテントに入って、ブレックファストミーティングを始めるのだった。

「枢機卿には都市内の詳細を聞いていく事になります。そしてあの光の柱…あれが何かを突き止めたいと思っているのです。」

「ああ、モーリスに聞いとるが、わしらの知っている魔法とは違うものらしいのう。」

「そうらしいです。」

俺がモーリス先生を見る。

「これなんじゃが。」

俺がモーリス先生に渡していた魔石粒を先生がバックから取り出した。

「ほれ。」

モーリス先生が魔力を注ぐが反応はしなかった。

「魔石…ではないという事かの?」

「魔石から生まれたというから、そうかと思うたら違うようじゃ。」

「これが巨大な魔石から生まれたものじゃと。」

「はい。私たちが潜った聖都の最下層に巨大な魔石があり、そこからこれが生まれたのです。」

「実物を見なければ分からんが、そんな魔石の存在など聞いた事がないわい。」

サイナス枢機卿が言う。

「そうなのですね。」

「ふむ。そもそもその地下の存在は教皇が代々引き継ぐもの。枢機卿にはその詳細は伝えられることはなかったからのう。ましてやわしは左遷されておった身じゃしの。」

「しかし、その聖都を戦闘で灰にしてしまった…地下の謎が分かる文献なども残ってはいないでしょうね。」

「じゃな。」

するとモーリス先生が言う。

「教皇の甥である、ケイシーはどうじゃろ。」

「ふむ。ケイシーか、次期教皇と神輿に乗せられた事もあるからのう。もしかして知っとるかもしれん。」

「ミリア!ケイシー神父は?」

俺が言うと…

「すっ!すみません!遅くなりました!」

ケイシー神父が物凄い寝癖をつけてテントに入って来た。

「遅いですよケイシー。」

聖女リシェルがぴしゃりという。

「す、すみません。リシェル様に二日酔いを取り除いてもらったら、物凄く寝やすくなっちゃって二度寝してました。」

「まったく…。」

「そもそも!聖女リシェルが‥」

ケイシーが良からぬ事を言いそうだ。

「ケイシー!それはもういいんだ。」

俺が言う。

「えっ?」

「もう終わったからいいんだ。」

「わ、わかりました。」

ケイシーをとにかく黙らせる。リシェル本人が全く記憶が無いのだからそっとしておくのが一番だ。

「ところでケイシー神父。」

サイナス枢機卿が話す。

「なんでしょう。」

「聖都の最下層について何か聞いたことはあるか?」

「最下層ですか?いいえ、聞いたことはありません。」

「そうか…。」

やはり教皇以外には知らされない情報だったらしい。

「でも…」

ケイシー神父が続ける。

「いたずらして入り込んだことはありますよ。」

えっ!?いたずらで入り込めるような場所なの?

「なんじゃと?」

枢機卿が険しい顔で言う。

「す、すみません。勉強が嫌だったのでよく地下に潜って探検をしていたものですから。」

「ケイシー神父よ。その時地下には巨大な魔石はあったか?」

「いえ、そんなものはありませんでしたよ。」

「そうか…。」

「ただ、大きな魔法陣が刻まれているのを見ました。」

「なに!」

皆がケイシーを見る。

何も知らないと思っていたら…まさかの情報を持っていた。

「ケイシー!その魔法陣が何か分かるか?」

「いえ、まったく。」

ガクッ

期待した俺達がバカだった。

「僕には魔力が無いので何も反応しませんし。だけど人が簡単に入れるようには、なっておらず厳重に管理されておりました。」

「そんな厳重なものを、どうやって見た。」

「あ…。」

サイナス枢機卿がもっと怖い顔でケイシーを見る。

「は、はい。」

ケイシーが観念したように言う。

「鍵をこっそりと盗み出しました。」

「どこから。」

「教皇の部屋から。」

「なるほどのう。やはり教皇の部屋に何かの謎があったのやもしれんな。」

サイナス枢機卿が言う。

「教皇が生きていれば何か知っているかもしれませんね。」

「ふむ。」

しかし教皇の行方は未だに分かっていない。状況から考えると死んでいる可能性の方が高いが、生きているなら何らかの情報を聞き出せるだろう。

ケイシーが悲しい顔をする。

「すまんケイシー。」

「いえ、いいんです。」

やはり直接潜って調べないといけなそうだ。俺達は魔人達が地下の通路の安全確認を終えるのをただひたすら待つのだった。

「あとは…。もう一度日本人にでも聞いてみますかね?」

俺がシャーミリアに目配せをすると、彼女は音もなく消えた。

それから間もなく日本人達がテントにやってくるのだった。