作品タイトル不明
第482話 光の柱の前情報
ナガセハルト、キチョウカナデ、ホウジョウマコの3人を呼んで事情聴取を始める。俺はこの世界の出来事ではなく、切り口を変えた質問をしてみる事にした。
「お前たちがこの世界に呼ばれたのは全員一緒だったんだよな?」
「はい。」
「そうっす。」
「ええ。」
3人は素直に答える。
「そしてリョウジってやつと、キリヤってやつ。そしてエドハイラってのが呼ばれたと。」
殺した奴と魔法使いと、石に閉じ込められてるやつ。
「そうなります。」
「呼ばれたときの事を覚えているか?」
「はい。えっとこの地下に呼ばれたときの事ですか?」
「違う。こっちに来る前の話だ。」
「前の話っすね?」
キチョウカナデが言う。
「そうだ。お前たちは前世では知り合いだったのか?」
「えっと私は顔見知り程度っす。」
「カナデは皆をどこで知った?」
「良く行くクラブっす。ハルトとリョウジはクラブのスタッフ?入り口で警備してたっす。キリヤとマコも常連客っすね。私もだけど。」
「エドハイラは?」
「私は知らないっす。こっちに来て初めて見た気がします。」
「そうか。」
なるほど前の世界ではどっちかというと陽キャだったらしいな。まあこっちでもそんな感じだけど。
「ハルトは?」
「こっちに来る前、俺はチンピラでした。組にも入れてもらえずいわゆるパシリってやつっすね。」
「みんなを知ってたか?」
「死んだリョウジは、俺と良くつるんでいた武闘派のボクサー崩れです。」
「どうしてクラブに?」
「紹介でボディーガードの仕事をもらってました。」
「紹介?」
「知り合いに組員がいてオーナーに紹介してもらいました。」
そうか…こいつは反社だったのか。でも一応仕事してたんだから問題はないな。
「他の奴は?」
「キリヤとカナデとマコは常連っすかね。何をやっている人間かまでは知りません。本当に顔見知りと言った感じです。」
「そうか。」
「エドハイラは?」
「こっちに来てから知りました。」
「なるほど。」
そして俺はホウジョウマコを見る。
「はい、私は…なんというかパパ活をしてました。お小遣いを稼いだりご飯を食べさせてもらったり。クラブもそういう相手を探すために行ってた感じで、カナデとは顔見知りでキリヤは、私の相手していたうちの一人です。」
「パパ?って事?」
「パパってほどじゃないですけど、金は持ってましたね。」
「それで一緒に居る事があったと。」
「はい、ごくたまにご飯を食べたりしてました。」
なるほど、イショウキリヤはホウジョウマコの犠牲者って事か。
「エドハイラは?」
「私も一緒で良く知りません。」
うーん埒が明かない。もしかしたら魔法使いのキリヤとやらが知っている可能性もあるのだろうか?おそらく、あの地下に眠る巨大魔石に内包されているのはエドハイラのはずだ。それなのに誰もエドハイラの正体を知らないらしい。
「なるほどな。」
「なにか規則性があるような気がするのじゃがな。」
モーリス先生が言う。
「ですね…。」
どういう事だろう。そもそも一緒にこっちに来たというのだから何かあるはず。
「向こうでも一緒だったか?」
「はい。丁度クラブの入り口にハルトとリョウジがいつものように立っていて、私がお客として挨拶していたっす。」
「そうですね。私は同じ場所にそこに居て、キリヤも一緒に来ていたのですがクラブに入ろうとしてました。丁度カナデが入店の為にハルトとリョウジに話しかけていました。」
「と言う事は、5人は一緒の場所に居てこっちに来たと言う事か?」
「そうですね。お客が来たと思って応対して、こいつらが来て…そしてその後ここにいました。」
「いきなりでしたっすね。」
「本当にあれはびっくりしたわ。」
「ふむ。なるほどのう。という事はその時その場所にいた者がまとめて呼ばれたという事かの?」
「そうなります。」
ハルトが言う。
「その場所というのは?」
「店の前の歩道です。」
‥‥なるほど。
「と言う事は先生。残りの一人エドハイラは、巻き込まれてしまった可能性があるかもしれません。」
「巻き込まれたとな?」
「同じ時間に、たまたま通りかかった可能性です。」
「なるほど、そうじゃな。それなら皆が残りの一人を知らないのも分かるのう。」
「はい。」
それにしても日本人は本当に素直に答えてくれるようになった。
ただし…魂核を改変してかなり素直になったのは良い事だが、こいつらを野に放したら絶対に詐欺にひっかかる。
「とりあえずこっちに来てからのエドハイラはどうだったんだ?」
「ただおとなしかったっす。」
カナデが言う。
「そうですね。私たちが大神官について行こうと言ったのに、一緒に来なかったのがなぜか分からないんですが、とにかく私たちと打ち解ける事はありませんでした。
「俺もほとんど話せませんでした。なんとなく辛気臭い何かを含んだ目をしてたように思います。」
ハルトが言う。
「こっちに来て一緒に行動しなかったと?」
「はい。”私は従わない”とかなんとか言って動こうとしなかったっす。」
「わかった。」
唐突に側にいたケイシー神父が質問してくる。
「すいません!分からないのですが…クラブってなんです?」
うーん、いまそこ?
すると…ハルトが、
「しらねーのか?クラブっつーのは、踊って食べて飲んでの大人の社交場みたいなもんだ。」
ケイシーになめた口を利く。ケイシー神父が放つオーラが、ハルトのチンピラ時代の血に火をつけたらしい。
「おいハルト。こちらはファートリアの神父様だぞ!口の利き方にきをつけろよ。」
俺がぴしゃりという。
「は、はい。すみませんでした!ケイシー神父さん!無礼な口をきいてすみませんでした。」
「別に気にしてません。」
「は、はい。」
とにかくケイシーはなめられ体質だな。この日本人達は魂核をいじってるからいいけど、普通の日本人…いやこちらの一般人にすらやられそうだ。
「ケイシー神父も強く言っていいんだよ。」
「いえ、僕はいいんです。」
あっけらかんとしている。底抜けにいいヤツだから、俺以外になめた口をきいているのを見るとムカつく。
「あのー。」
聖女リシェルが手を上げる。
「どうしました?」
「パパ活って何ですか?」
今度はそれ??
「い、いや…パパ活って、なんというか…。」
俺が詰まる。
「あの。」
ホウジョウマコが言う。
「おっ教えてやってくれ。」
「はい。私達みたいに若くてお金をそんなに持っていない子が、経済的な支援や援助をしてくれる大人の男性を探す活動です。」
「旦那様をお探しに?」
「いえ、ダンナじゃないです。」
「皆知っている方ですか?救済をされている方達ですか?」
「お金が余っている人達です。」
「それを募金してもらう?」
「えーっと。」
ホウジョウマコが言葉に詰まる。
「聖女リシェル!そうです!だいたいそんなところです。そうだなマコ?」
「はい、だいたいそんなところです。」
「わかりました。」
リシェルが納得したような顔をしているが、本当に分かったのだろうか?
「ちょっと本筋から放れたので戻します。エドハイラの事は誰も知らないって事で当ってるね?」
「はいっす。」
「そうです。」
「はい。」
「先生すみません。結局彼らからの情報では地下の魔石に内包された人物の謎は解けません。」
「そうじゃろうか?」
逆に先生が言う。
「といいますと?」
「わしが思うに…まあ…本当にわしの推測の域を出んのじゃが。」
「はい。」
「呼ばれた者達は、対になって呼ばれたのでなかろうか?」
「対ですか?」
「すなわち、対極にいる者という意味じゃな。」
「どうしてです?」
「わからんか?」
「えっと。」
「おぬしら5大神の存在と敵の大神官の関係じゃよ。」
「あっ‥‥。」
本当だ。
俺達の敵も恐らくこっちに呼ばれた人間だが、それに合わせて俺達も呼ばれたような気がする。もしかしたら誰かがアヴドゥルかマルヴァズールの邪魔をしているか、いやがらせ的な行動をして阻止しようとしているのかもしれない。
「ラウルよ。」
今度はサイナス枢機卿が言う。
「はい。」
「恐らくじゃが、5大神のまだ見ぬ一柱が影響を与えているとは考えられんかの?」
「アトム神ですか…。」
「そうじゃ。ファートリアの崇める神じゃな。」
なるほど辻褄はあう。いや、恐らくはこれが答えだろう。アトム神が何とか敵の目論見を叩こうとしているのかもしれない。
「ですと、この魔石粒にも何らかの意味があると言う事でしょうか。」
「あるじゃろな。」
「あると思うのじゃ。」
サイナス枢機卿とモーリス先生の言葉が重なった。どうやら二人の推測が一緒だったらしい。
「お前ら3人もう行っていいぞ。魔人達の手伝いをしてくれ。」
俺が日本人達に指示を出す。
「わかったっす!」
「はい!」
「もちろんです。」
3人はテントを出て行った。
「ラウルよ。恐らく推測が正しいとは思うのじゃが、とりあえずあの光の柱に何らかの脅威があるのを調べねばならんな。」
「はい。」
「あの、ドローンというやつを突っ込ませてみたか?」
「いえ、反応するんじゃないかと思ってやってません。」
「ドローンというのはおぬしの魔力をまとっておるのじゃな?」
「はい。」
「ならば間違いなく何らかの反応をしてしまうじゃろ。」
モーリス先生が言う俺の魔力は異質らしい。先生たちが使う普通の魔力では光の柱は反応しないと考えている。
「なら、やめた方がいいですよね?」
「ラウルよ、魔法に実験はつきものじゃ。聖都のように大量に柱が生えてしまった場所なら危険もあろうが、はずれの村などにはまだ数本しかないところもあるのじゃろ?」
「もちろんあります。」
「魔人達の安全調査が終わるまでに、どこかの柱で実験できんかのお?」
「そうですね。とにかく安全を確保した状態を作ってやるべきだとは思っていますが。」
「なら決まりじゃな。」
うーん。本当に大丈夫だろうか?だがモーリス先生が言うのももっともだ。やらねばいつまでも不明のままでいる事になるし、そうしなければ、解明が不可能だという事なのかもしれない。
「わかりました。」
「ふむ。大きな犠牲が出る前に小さい犠牲で留められる可能性もある。とにかくこのまま指をくわえて見ているより、先に進むことを選ぶとよいじゃろ。」
「はい。」
《シャーミリア。エミルを連れて来てくれ。》
《かしこまりました。》
念話でシャーミリアに伝えると、すぐにエミルを連れて来るのだった。
「エミル。数名でちょっと光の柱を探しに行きたいんだ。ヘリを飛ばしてくれるか?」
「ああ、わかった。人数は?」
「10名ほど。」
「ならブラックホークでいいだろう。」
「わかった。」
俺達は単独で生える光の柱を見つけるために出発の準備をするのだった。
光の柱について踏み混んだ調査を開始した。