軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第473話 アスモデウス

インフェルノが炸裂した部屋を抜けると奥にまた通路があった。インフェルノが燃えた部屋が本来何だったのかは分からないが、奥の通路の形状から考えて控室のような場所だったのかもしれない。

「このさきにデモンがいるようです。」

カララが言う。

「全員集中しろ。」

「了解。」

「「「は!」」」

「わ、わかりました。」

「は、はい。」

「ゴクリ。」

それぞれが自分の兵器を構える。日本人の女子2人には武器を持たせてはいないが、ナガセハルトは自前の剣を握っている。

「ハルト君。二人を守ってやることくらいはできるな?」

「は、はい!精一杯やります!」

「がんばれ。」

「はい!」

ナガセハルトは緊張気味ではあるが、腕に覚えがあるため震えたりはしていない。だが相手はこれまでに会った事のないようなデモンとしもべだ、ただの人間が女二人を守る事など難しいかもしれない。

「アナミス。3人をカバーしてくれ。」

「わかりました。」

「アナミス先輩!申し訳ねっす!使役する魔獣がいないと役に立たないもんで。」

「いいのよ。あなたは後方で私と居なさい。」

「あざっす!」

オージェとファントム、シャーミリアが先頭に立つ。

「俺とカララは3人がデモンに集中できるよう、500のしもべを殲滅する。」

「かしこまりました。」

「じゃあ、オージェ!ファントム!シャーミリア!デモンを頼む。」

「了解。」

「‥‥‥。」

「身命を賭して。」

「まあ命までかけるな。」

とはいってもシャーミリアは不死身だから死ぬことは無い。数千年生きた魔人の力は伊達ではないはずだ。

「開けます。」

シャーミリアが言うと、ファントムが一気に扉を押し開ける。

するとそこはとんでもなく広い地下空間が広がっていた。カララの言う通り中央には巨大な青く輝く魔石が浮かび上がっている。しかしその床一面に赤く光る点が大量に蠢いていた。

「うわあ…いるいる。」

「そのようですね。」

俺とカララはこれから相手するしもべを見て言う。

「あれがデモンにございます。」

シャーミリアが指さす。

巨大な青い魔石を守護するように、その前にデモンが立ちはだかっていた。その姿はスラリとした人間のようで、頭に牛のような角を生やしており、アナミスと似たコウモリのような羽を広げている。スッキリとした顔立ちで、まあまあイケメンと言われる部類の顔だった。

ただ…そのいでたちだ。どう見ても貴族のそれだ、とても身分の高い貴族のような服を着ている。

「オージェ。なんていうか…ダンジョンの…。」

「ああ、魔王だよな。」

「ああ。」

俺とオージェは前世のアニメなどに出て来る魔王をイメージしていた。

「魔王?ルゼミア様ですか?」

カララが聞く。

「いや、違う。俺達が想像する魔王の形をしているというだけだ。」

「なるほど、それは許し難いです。未来の魔王は、ご主人様以外にあり得ません。」

「ええシャーミリア、死んでもらうしかないわ。」

「魔王のような風体をしているなんておこがましいです。」

シャーミリアとカララとアナミスが声をそろえて言った。

「いやいや、違うって。俺達の勝手な想像だから。」

「許せません。」

「ええ。シャーミリア分かっていますね?」

「お願いねシャーミリア。」

まあええか。

すると…

「フフフフ、お前達!よくぞここまでたどり着いた。」

いきなり真ん中にいたデモンが話しかけてきた。遠いのにそばで話しているように声が届いて来る。

どうしようかな。

《ヴァルキリー、声を増幅できるか?》

《LRADのようにですか?》

《そうだ。》

《可能です。》

「まあな。お前はここで何をしているんだ?」

俺が返す。

「仕事だ。」

「仕事?」

「そうだ。」

「誰に頼まれた?」

「契約で言う事は出来ない。」

「なるほど。仕事だというなら放棄した方が良いぞ、もし何もしないならお前たちを見逃してやろう。」

まあこんな提案を飲むわけはないだろうけど。戦わなくて済むならそれに越したことはない。

「フフフフ。おもしろい、我を見逃すと?」

「そうだ。デモンとは言え無駄に死ぬこともないだろ?」

「そう言うわけにもいかんな。むしろお前たちはここから生きて出る事は出来ない。」

「ん?俺達がやられるとでも?やってみればいい。」

「大した自信だ。名前を聞いておこう。」

「お前が先に名乗れ。」

「我はアスモデウス。」

「ラウルだ。」

アスモデウス?なんか前世で聞いた事のあるような名前だけど思い出せない。そう言う小説とか読んでれば分かったかも。

「ラウルよ。我の威圧に負けぬとは大したものだな。」

「ん?威圧?」

してる?

俺が周りを見ると、シャーミリアとカララはかなり緊迫した顔をしている。オージェは…指をポキポキならして肩を回していた。

「アスモデウスとやら、いままでのデモン達のようにならなければいいがな?」

「フフフフ。我がこれまで会ったデモンと同じと?」

「まあ大差ない。」

「なら試して見よ。」

「オッケ。」

俺がカララに目配せをすると、カララがコクリと頷く。

キュィィィィィィィィィ

バババババババババババ

俺のミニガンが火を噴く。それに合わせカララが操るUZIが空を舞い、しもべたちに弾丸の雨を降り注いだ。銃声を合図にオージェとシャーミリアとファントムが銃を撃ちまくりながら、アスモデウスへと突進していくのだった。

だが…よく見れば、アスモデウスもしもべにも結界が張られているようで、ダメージを与える事が出来ていないようだった。

「ふはははは!なんだその魔法は、我にそのようなものが通用するとでも?」

アスモデウスが高笑いする。

《結界魔法を使うようだな。》

《そのようです。》

《ゼロ距離で当てろ。》

《は!》

シャーミリアに指示をするとアスモデウスに肉薄して撃ち込もうとする。しかしアスモデウスはさっと宙に舞って攻撃を避けた。

《すばしこいな。》

《当てます!》

シャーミリアも飛んで当てようとする。

が次の瞬間、アスモデウスがシャーミリアの眼前に現れて腹を思いっきり蹴り飛ばした。

ズドン!

シャーミリアが落ちて床をひび割れさせる。

「ぐっ。」

シャーミリアが呻いた。

アスモデウスが次の行動に移ろうかという瞬間、蹴り終えたアスモデウスにジャンプしたファントムが急接近し、至近距離から火炎放射器を照射した。

ゴオオオオオオ

あっというまに火炎に包まれるアスモデウス。その燃える体めがけてオージェがM61バルカンを撃ちこんだ。

ガガガガガガガガガガガガガガ

スッ

次の瞬間アスモデウスが炎の中から飛び出してきて、ファントムにショルダータックルをかます。

ズドン!

ファントムが手で受け止めようとするが、恐ろしいほどのスピードで吹っ飛んでいき壁にめり込むのだった。めり込んだファントムにしもべたちが群がろうとしている。落ちたシャーミリアにも群がろうとしたが飛びあがって逃げた。

「カララ、あの戦いにしもべを割り込ませるわけにはいかない。」

俺はミニガンを放棄して、カララの肩を抱くように手を触れる。

ガラガラガラ

カララの糸で浮いていた100丁のUZIサブマシンガンが床に落ちた。

「しもべを武器で一体一体はさみこむようにしてゼロ距離で撃つ。」

「は!」

カララの短い返事のすぐあと、500体のアスモデウスのしもべたちの至近距離にHEAA SMAWロケットランチャーが現れる。

ズドドドドドドドドドドドドドド

ゴゴオオオオオオン

1000本のSMAWロケットランチャーから放たれた弾頭は、ゼロ距離で対面から発射されたSMAWロケットランチャーの弾頭とぶつかって大爆発を起こした。体をはさまれてロケットランチャーの爆発に巻き込まれた、しもべたちはあっという間に粉砕されていく。

《やっぱゼロ距離なら効くようだ。カララと俺のコンボ最強説だな。》

《はい!ラウル様!》

俺とカララのテンションがアゲアゲになる。

そして、それとは逆なやつがいる。

「な?」

あまりにもの事にあっけにとられたのはアスモデウスだった。

ドゴン!

もちろんそんな隙を我らが龍神オージェが見逃すわけがない。バルカンを捨てて身軽になり、ジャンプしてアスモデウスの後ろに瞬時に現れて、両の拳をにぎって思いっきり叩きつけたのだ。

まさに一瞬。

バグン!

アスモデウスは床にたたきつけられバウンドする。

「くっ!」

アスモデウスが叫ぶ。

えっ?あれで死なないんだ?オージェのフルスイングだぞ?

起きあがろうとするアスモデウスに、オージェとファントムとシャーミリアのかかとが突き刺さった。

ズゴン!

「ぐえっ!」

死んだか?

しかしアスモデウスはシャーミリアの足首を掴んで、ブンと振り払った。

シャーミリアが吹き飛んでいくが、空中で体制を整えて再びアスモデウスに向かって行く。そしてしもべを全て消し飛ばしてしまった俺とカララも、フリーになったのでアスモデウスに向かって突撃する。

「オージェ!」

「ほい!」

空中で召喚したのはM777榴弾砲だった。

オージェは10メートル4トンもあるM777榴弾砲を受け止め、銃身を下に向けてアスモデウスを押さえつけていた。まさにゼロ距離射撃となる。

オージェが砲身を固定して俺が榴弾砲の引き金を引いた。

ズドゴーーーーーン!!!!!

M777榴弾砲と床に挟まれたアスモデウスに向けて、155㎜榴弾砲が発射された。

物凄い爆炎が上がった。

押さえつけて撃ったため、M777榴弾砲の砲身は破壊されて粉々になった。

ゴゴゴゴゴゴ

そして徐々に爆炎が落ち着いてくると、床には上半身と下半身が分かれてボロボロになっているアスモデウスがいた。

「ア、ギギギギギ」

ボロボロになったイケメンは飛び散るように粉々になっている。

「てか!まだ生きてんのか?」

ズズズ

ズズ

ッズズズ

さらに驚きなのは俺達が見ているそばから、ちぎれた体たちが集まり始め、元通りに修復しようとしているようだった。

「カララ!押さえろ。」

カララがちぎれた体が集まらないように、糸で括り付け動かないようにする。

「ファントム!足もってろ。」

ファントムがアスモデウスのちぎれてバタバタ騒ぐ足を持った。そしてオージェとシャーミリアから両腕をがっちり抑えられたアスモデウスが、信じられないものを見るように俺を見ている。

何て言うか…トカゲか?

「残念だったな。」

「な、お、お前!なんだ!なんなんだその力は!」

「お前?不敬な!ご主人様に向かって。」

シャーミリアはグイっとアスモデウスの髪を引っ張る。

「は、放せ!我はお前たちが触れていいような身分ではないのだぞ!」

「うるせえよ。とりあえずどうやって死にたい?いや…消去するって感じかな?どうせお前たちはあっちの世界に帰るだけだろ?」

「ぐ、ぐぎぎぎぎ。」

物凄く悔しそうな顔で俺を睨みつけた。

「ま、いっか。」

「ま、まて!我を屠る者の顔を、顔を見せろ!」

「鎧を脱げって事か?」

「そうだ。」

「黙れ。」

横のシャーミリアに黙らせられる。

「どうせ消えるんだし。見なくてもいいだろ。」

「‥‥。」

アスモデウスは黙り込んだ。そして俺達がアスモデウスを押さえたのを見て、アナミスと日本人3人も近づいて来た。

「パねえ…。」

「すっご。」

「マジか…。」

3人の日本人は驚きを通り越して声も無いようだった。

《ラウル様。このデモンの魂核をいじるのですか?》

アナミスが言う。

《いやいや。デモンの魂核なんて危ないだろ?》

《確かに得体がしれません。》

《アナミスにリスクを負わせるわけにはいかないよ。》

《では殺すのですね。》

《そうですご主人様。アナミスの言う通り、この不敬な者は消去してしまいましょう。》

シャーミリアはすぐに殺したいようだ。

《んー、まてシャーミリア。ちょっと試したいことがある。》

《ラウル様お急ぎください。この者の肉の抵抗は強く、いつまでも固定しておけないかもしれません。》

《わかったカララ。》

俺は日本人の方を振り返る。

「キチョウカナデさん、こいつを使役できるかな?」

「はい?私ですか?」

「そうだ。」

万が一があってもこの女なら痛手は少ない。

「や、やってみます。」

「ふふふふ。我を使役だと?やれるものならやってみせよ。」

アスモデウスが余裕ぶっかましてる。なんかムカつく。

「カナデさん。俺が魔力を大量に分けてやるから使ってくれ。」

「わ、わかりました。」

俺がキチョウカナデに手を触れて魔力を流す。キチョウカナデはアスモデウスに対して手をかざして話しかける。

「あなた、私のしもべになりなさい。」

キチョウカナデの手のひらが光はじめ、アスモデウスにその光が移りはじめる。

しばらくすると。

「うっ!」

キチョウカナデがうずくまった。

「どうした?」

俺がキチョウカナデから手を離そうとするが離れなかった。

「あれ?」

するとうずくまったキチョウカナデが笑い出した。

「フフフフフフ。」

「なに?」

「我を舐めるな。」

話しているのはキチョウカナデだった。口調はアスモデウスのままに。

「ぐっ。」

更にキチョウカナデから俺に向かって何かが逆流してくるのが分かる。

「ご主人様!」

「ラウル様!」

「いけない!」

「ラウル!!!」

部下とオージェの声が聞こえたのを最後に俺の意識は暗黒に落ちたのだった。

深く深く引きずり込まれるように沈んでいく。