軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第416話 優秀な指揮官の知人

さてどうしたもんかな?

二つ目の村の少し先にある森の中で俺達一行は足止めを食う。敵が西部の拠点に調査隊を送ってきたことで情勢が変わったからだ。それを打開するための策を考えていたところに、グレースがゴーレムを使う事を提案してくれたのだった。しかし指揮官が居なければゴーレムは、ただのでくのぼうとなってしまう。それでこっそり念話でシャーミリアからアイデアを聞かされた。

《とりあえず。それで行こうと思うがちょっと工夫が必要だな。》

《はい。》

ここにいるのが魔人だけだったら、俺はあからさまにシャーミリアが言う作戦を遂行しただろう。しかしここには人道主義者のオージェや、真っすぐな性格の聖騎士カーライルがいる。トライトンもいまいちどんな奴か分からないし、あまり非人道的な事を言うのは憚られる。恐らくグレースは気にしないだろうが言う必要はない。オンジはグレースが良ければ何でもいいだろう。マリアとカトリーヌは俺の言う事に大賛成してくれるはずだ。

因って俺は彼らへの伝え方を工夫する。

「なるほど!シャーミリアそう言う事か!」

「はいご主人様、左様にございます!」

「それならすぐに動くことにしよう!」

「かしこまりました!」

俺達が話はじめると、なんだなんだとばかりに周りが俺とシャーミリアを見る。

「どうしたラウル?なんか名案があるのか?」

「ああ、オージェ。ここファートリア神聖国に、シャーミリアが信用できる古い友人がいるらしいんだよ。そいつらは強いらしいから、ゴーレムの指揮をして陽動をかって出てくれるかもしれないって言うんだ。」

「おお!そんな人がいるんですか?シャーミリアさん!」

オージェがシャーミリアに言う。

「ええ、私奴も古い人間ですので、そのような知り合いの一人や二人は。」

「さすがです!シャーミリア様!美しすぎる上に人望も厚くていらっしゃるのですね。」

カーライルが頬を赤くして言う。

「おまえは黙れ。ころ…」

《シャーミリア!カーライルはサイナス枢機卿から、無理言って借りた人間なんだから、「殺すぞ」は無いぞ。》

《申し訳ございません。》

俺は念話でシャーミリアの言葉を止める。

「ころ‥‥ころばぬ先の杖というやつだ。」

シャーミリアが先の言葉を言い換えた。

「うーむ。やはりシャーミリア様は先見の明があらせられるようですね。」

「ま、まあそうだな。」

やっぱりシャーミリアはカーライルが苦手で塩対応だった。カーライルもカーライルでちょっとシャーミリアにデレデレしすぎかもしれない。

どうして気が付かないかな?この男。

「指示をもらえるなら僕のゴーレムもある程度動くと思う。」

グレースが言う。

そうだろ!そうだろ!

「じゃあ作戦行動に移る前に、シャーミリアの古い知り合いを連れてくる事にするよ。」

「古い…と言うとやはりヴァンパイアなのか?」

「ああ、そうだオージェ。」

「それなら強いだろうな。シャーミリアさんの強さを俺は身に染みて知っている。」

「そ、その節は大変ご無礼を!」

「ははは!良いんですよ!そう言うつもりで言ったのではないです。」

オージェはシャーミリアとマキーナ、ファントムのトリオに怪我をさせられた経験がある。シャーミリアがその罰として次に暴走したら俺をビンタしなきゃいけないという、罰ゲームが待っているため、彼女はオージェには弱いのだった。

「…と言うわけだからみんなはまたここで待機を。」

「待っているよ。」

「そうですね。僕もゴーレムの準備をしておきます。」

「シャーミリア様の知人の協力が得られますように。」

オージェ、グレース、カーライルが言う。

「じゃ、マリア。皆の分の食事をまた頼むよ。カララは食材を取ってきてくれるとありがたい。」

「かしこまりました。」

「わかりました。」

もちろんカララは俺とシャーミリアが話した内容を知っている。少し時間がかかる事を分かってくれているだろう。

《そうは言っても悠長にはやってられないけどな。》

《はい。それでは急ぎましょう。》

《オッケー。》

「みんな、じゃあ行って来るよ。」

「お気をつけてラウル様。」

「ああ。」

「シャーミリア、ラウル様をお願いします。」

「ご安心をカトリーヌ様。わが身に変えてもお守りします。」

「はい。」

「とにかく直ぐにもどる。それほど遠くにはいないようだからな。」

皆が頷いた。

「じゃ。」

そして俺とシャーミリアは再びファートリア地内にある者を探しに出た。森を抜けて草原に出ると夜が明けて陽が昇り始める。

「さて、急ぐぞ!」

「かしこまりました。とにかく探し出す事が先決でございますね?」

「そうだ。」

俺達は街道沿いをひた走る。シャーミリアは俺の速度にあわせてくれているようだ。飛んでしまえばいいのだろうがそれでは意味が無かった。とにかく人気のない街道、もしくは人気のない村に行かなければならない。

「人間の反応があったらすぐに教えてくれ。」

「はい。」

それからしばらくあちこち動き回ったが、なかなか目当ての人間は見つからなかった。

「ラウル様。南西の方向に人の反応があります。」

「どんな感じだ?」

「普通の人間ですね。気配は強く無いようです。」

「とにかく向かってみよう。」

俺達は真っすぐに森に入って、直線的にその目的地まで突き進んでいく。しばらく進むと森の先に開けた風景があるようだった。

「あの先に。」

「森の木の上から監視してみるか?」

「はい。」

俺達が見つけた人間たちは、畑で農作業をしている村人だった。畑から朝積みの作物を掘り起こしている所らしい。涼しいうちに作業をしてしまおうという感じで忙しく働いていた。見た感じは先日見た村人達と変わらず普通の人たちのようだ。

「このあたりに村があるのかね?」

「はい、恐らくその先にもっと多くの人間の気配がします。」

「たくさんいるか?」

「はい。」

「見にいって見よう。」

「かしこまりました。」

ザッ

木の枝の上から俺たち二人は消えた。村にはすぐに到着し、村が見える距離の森の木の上から双眼鏡で監視してみる。

「どうやら普通に生活しているようだな。」

「はい。目立って気配の強い物はおらぬようです。」

「なら…次だな。」

「かしこまりました。」

俺達はさらに南へと動き出す。しばらく森を南に突き進んでいくと、ちらほらと魔獣も出て来た。どうやらオージェの威圧の圏外に出たらしい。

「オージェがいると本当に安心だな。」

「はい。龍神様のご威光はとても強く魔獣などは寄り付かないでしょうから。」

「すげえな龍神。」

「はい。」

魔獣は無視して森をさらに進んでいく。するとシャーミリアが反応した。

「人間です。」

「どこだ?」

「あの山の渓谷の道に数十名がいるようです。」

「気配はどうだ?」

「はい。普通の人間より強いかと、更に乱れておりますので騎士などでは無いようです。」

「冒険者か?とりあえず行って見よう。」

街道は森を抜けてそのまま山に向かって続いていた。シャーミリアが言うにはその山の渓谷に人がいるらしい。

「俺をつかんで飛べ。」

「は!」

シャーミリアに抱かれて俺は空に舞う。一気にその山の頂上へと降り立って周りを見渡した。

「なるほど、ここは見晴らしが良いな。この付近の様子が良く分かる。」

「そのようです。」

「待ち伏せにはもってこいって事だな。」

「そうなるかと思われます。」

「じゃ、いこか。」

「はい。」

俺とシャーミリアは人間の気配があった方角に山を下りていく。山肌は岩だらけでもちろん道などは無いが、俺もシャーミリアもスムーズに駆けおりる事が出来た。いつの間にか俺もだいぶレベルアップした事を実感する。

「そこにおります。」

シャーミリアの声に俺は止まる。

「ああ。」

俺にも人間の気配が薄っすらと感じられた。岩陰からのぞくと掘っ立て小屋のような物が立ててある。その周りには荒くれた人間達が数名座って話をしていた。

俺達はそいつらの話に耳を傾ける。

「そろそろ拠点を変えた方が良くねえか?」

荒くれの男の一人が言う。

「ばーか、お頭が決める事だよ。お前みたいな三下が何を言ってんだ。」

「だってよお。人は通らねえし、このあたりの村も何度も行ったから、おいしい思いも出来やしねえ。」

「お前の言うとおりだぜ。湿気た村に何度行ったって代わり映えしねえ。」

他のちょっと禿げ上がった腹の出た太い筋肉質の腕の男が同意する。

「まあ‥そうだな。お頭もそろそろとか思ってるかもしれねえ。」

最初に否定した男がポツリと言う。

「そう思うだろ?」

「まあな。」

「だけどよお…他の勢力があるからなあ。北の方の奴らはめっぽう強いって話だし、睨まれたら逆に俺達がやられるんじゃねーのか?」

「あいつらは村人を殺しまくっているらしいぜ。そんなことをしていたら次にとる物が無くなっちまうよな。」

「まあ俺達も歯向かえば殺すだろ!」

「ちげえねえ!」

「「「はっはっはっはっはっ!」」」

ビンゴ!

《シャーミリア!みーっけ!》

《はいご主人様。やはりこの国は腐っているようです。》

《犬も歩けば盗賊に当たるってやつか?》

《ご主人様のご冗談はとても面白いです!》

横を見るとシャーミリアが音をしないように、パチパチと手を叩くジェスチャーをする。普通なら馬鹿にされているようにしか感じないかもしれないが、この娘は本心で褒めてくれている。

まあ、とにかく俺達は盗賊団のアジトをみつけたのだった。

《こ、コホン。とにかくめぼしい奴がいないかじっくり見よう。》

《はい、あの建物の中にはおおよそ5名がおります。1名は他よりも強い気配がします。そして山をさらに下りたあたりには、数名がこちらに戻ってきているようです。》

《登ってきているやつらがいるのか?》

《そのようです。どうなさいます?》

《まあこいつらで丁度いいや。》

《かしこまりました。》

《だけど実際にこいつらの蛮行を見ていないからな。先に手を出させるとしようか?そうじゃなきゃ弱いものいじめしているみたいで夢見が悪い。》

《どのようにいたしましょう?》

《またアレやるぞ。お前がお嬢様な。》

《え、えっ!》

《えっじゃない!その方が絵面として自然なんだ。》

《か、かしこまりました。とにかく最善を尽くさせていただきます。》

《オッケー。》

そして俺達は盗賊団の拠点を離れて、いま山からあがって来た盗賊団のいるさらに先の道へと向かうのだった。山の麓に着くと街道は西と南に分かれていた。その先に村々があるのかもしれない。だが俺達はそのまま踵を返して山を登っていく。

「よし!それじゃあ行くぞ!お嬢様。」

「かしこまりました。」

「言葉遣い!」

「わ、わかったわ。それじゃあまいりましょう。」

そして俺とシャーミリアは盗賊団を追うような形で、その峠を上っていくのだった。

そうもちろん餌としてだ。

とにかく怪しまれてはいけない。普通に旅をする者のような雰囲気で山道を登っていくのだった。しばらく歩いているとシャーミリアが念話で伝えて来る。

《見られております。》

《かかったか。》

《かと思われます。》

《よし、本番スタート!》

《は、はい!》

俺たち二人は無防備に山を登っていく。もちろん武器は腰に下げた短剣風の物だけだ。バッグは持っているが他になにもない。しかしシャーミリアのドレスと俺の服装を見れば、貧しい者でない事だけは分かるだろう。

岩肌の道を過ぎて山の森を這う街道に入っていく。森の中は薄暗くて人通りもなさそうだった。普通なら冒険者の護衛をつけて登るべきところに、俺たち二人はただそのまま登って行くのだった。

ザッ

すると森からいきなり男達が数名出て来た。もちろん気づいていたけど。

「お!こんなところに人が通りかかるとは珍しいな。」

久しぶりの得物に目をギラギラと輝かせて、ガラの悪そうな男が俺達に向かって歩いて来る。

「おまえら、お上は村から出歩いちゃいけねえって言ってるんだぜ?なんでこんなところをノコノコと歩いてやがるんだ?」

これまたガラの悪そうな目に傷のある男が言う。

「こんなひとけのねえ所を護衛も無しでかい?」

俺達は立ち止まって黙って男たちを見ていた。すると男たちは全部で6人ほど、ぞろぞろと俺達に向かって近づいて来た。

俺達の数メートル前で立ち止まる。

「おほ!こりゃものすげえべっびんじゃねえか!」

「本当だな!こんな上玉みたことねえ。」

「どこぞの貴族のお嬢様だ?」

そして男たちは舌なめずりをしながら、シャーミリアの頭の先から足先まで目線をずらし、胸の谷間で視線を止めた。じろじろと穴のあくほど見つめている。

俺は念話でシャーミリアに言わせる。

「あのー、私達の仲間は悪い奴らに襲われて殺されちゃったの?もしよろしかったら助けてくださる?」

「お嬢様の言う通りです!どうか僕たちを助けてください!」

俺も合いの手を入れた。

すると盗賊たちは顔を見合わせた。

「わーはっはっはっはっ!」

「うひゃひゃひゃひゃ!」

「そいつはいい!」

「そうだな!そりゃ困ったな!俺達がなんとかしてやろう!」

男たちの下卑た笑いがこだまする。

「あなた方は強そうだわ。あなた達の一番偉い人に会わせて。」

「うーんどうしようかなあぁ」

「願いを聞いてやってもいいけどなあぁ。」

「もっとこう、お願いの仕方ってもんがなあ。」

「じゅるり。」

盗賊たちは一層いやらしい顔でシャーミリアを見つめて来る。

「お金!お金ならあるんです!」

俺が言うと、盗賊たちは「ほう!」と言う顔をする。

「そうかいそうかい!そりゃよかったねえ。」

「じゃあお嬢ちゃんと坊ちゃんをうちの頭に会わせてやるとするか。」

「そうですか!」

「その前に…。」

盗賊の一人が口を開こうとした時だった。

「おい!」

また森の方、さきほどシャーミリアと確認したアジトの方から、ひときわ大きなもっとガラの悪い男が現れたのだった。