軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第417話 盗賊の捕獲作戦

俺達が山を登り盗賊にからまれに行くと、案の定お約束通りに絡んできてくれる律儀な盗賊。

《ある意味、盗賊って絡むことに関しては几帳面だな。時には面倒くさくてスルーするって事はないんだろうか?まあ盗賊にとっては生きるための仕事なんだろうから手は抜けないか。》

「おい!!」

仲間たちの後ろから威圧感たっぷりに歩いて来る大柄な男。筋肉質で他の奴らよりはだいぶ強そうな感じだった。二人の男と山を下りてきたので、きっとこいつらが俺達の事を知らせに行ったのだろう。

《ご主人様、これです。》

シャーミリアが俺に念話で言う。

シャーミリアが言う【これ】とは盗賊グループの中で、一番強い個体の事を指している。俺も思った通りこいつが他の奴らより強いらしい。

《オッケー。とりあえずこいつらから手を出してくれたら直ぐに作業に取り掛かろう。》

《かしこまりました。》

シャーミリアに確認を取る。

「お前!俺より先に得物に手を出そうとしてなかったか?」

お頭と呼ばれたやつは、ぎろりと先頭で俺達と話していた男を睨みつける。

「ま、まさか!お頭に会わせろと言っていたので直ぐに連れて行くつもりでした。」

「ふん!適当なことぬかすんじゃねえぞ。」

「ほ、本当でさあ!」

「まあいい。ところで…。」

お頭がシャーミリアを頭の先から足の先まで眺め、胸のあたりで止まる。こいつらはだいたい同じ反応をするらしい。

「ほぉ‥‥。」

お頭が舌なめずりをする。口の周りに泥棒髭を生やして頭はぼさぼさだ、筋肉隆々の胸は胸毛が生えており、ズボンの太ももはミチミチと筋肉がはじけそうだった。目つきが蛇のようにねちっこい感じで、分厚い唇の間から黄ばんだ歯が見える。手には大柄なトマホークのような武器を持っていた。

「ね、お頭!結構な上玉でしょ?」

最初に絡んで来た男が言う。

「結構なんてもんじゃねえぞ、相当な上玉だ。お前らなんもしてねえよな?」

ギロリ!

「もちろんでさぁ。」

皆がビクビクとしていた。恐らくこいつはこの中では相当な強さなのだろう。

「ところで、お前らこんなところで何してんだ。」

髭のお頭が俺達に聞いて来る。

《シャーミリア、追われて逃げ延びて来たことにしようか。》

「はい、追われてここまで逃げてまいりました。」

シャーミリアが言う。

「逃げて来た?なにからだ?」

「僕たちは命を狙われて逃げたのです。相手はわかりません。」

俺が代わりに話す。

「おう、ガキ。どうやら訳ありって感じだな。」

「‥‥‥。」

「図星か。そして俺達に何をしてほしいって?」

「あなた達は冒険者ですか?」

「はぁ?」

「冒険者に言えば助けてくれると家の者が言っていました。」

「‥‥ま、まあそんなとこだな。」

「では助けてください。」

盗賊たちは冒険者と間違われたと思い、くっくっくっと笑っている。おそらくは飛んだ世間知らずが飛び込んで来たと思っている事だろう。

「ただで助けるとは言えねえなあ。」

泥棒髭のぼさぼさ頭のお頭が、トマホークを肩に担いで言う。

「お頭、そこのお坊ちゃんは金を持ってるって言ってましたぜ。」

「そうかいそうかい。なら有り金を全部渡せ。」

「金を渡したら助けてくれますか?」

「もちろんだとも。俺達はいい人だからなあ~。」

ものっすごい悪い顔で、にへらぁっと笑いながら言う。周りの男たちも合わせて笑った。

「わかりました!ではお金をお渡しします!北の村まで護衛をしてください!」

俺はカバンから金貨が入った袋を取り出して泥棒髭のお頭に渡す。お頭は袋を開けて中を見た。

「ん?すげえな。こんなにもってんのか?」

あれ?金貨を一袋渡しただけなんだけどな。

「とにかくそれで護衛をしてくれるんですよね?」

「んーどうしよっかなあ。ただもう一つこっちから頼みがあるがな。」

「それは何ですか?」

泥棒髭のお頭が、酷く下衆な笑いを浮かべてシャーミリアを見る。すると部下たちがひっひっひっともっと下衆な笑い声をあげて笑い出す。

「その女を置いていけ。」

「なにを!」

「お前は一人で次の村まで行って良し、俺達はこの金に免じてお前を殺さずにいてやろう。」

「守ってくれるんじゃなかったのか!」

「だから、お前の命は助けてやるって。この女を置いて行けば命は守ってやるって言ってんだ。」

ああ‥自分たちの攻撃から、俺達を守るって言ってんのね。

「ちょっと!お頭!このガキも案外キレイな顔をしているようだぜ。ちょっと白髪が気になるが、キリリとした表情に整った顔立ちがたまらねえぜ。」

えっ?それ俺の事言ってんの?

お頭の後ろの男が俺を舌なめずりをして睨みつける。

うわぁ…俺にそんな趣味ないよ。

ピキピキ

ん?なんか今、変な音が聞こえたぞ。

「ど、どういうことだ!僕が一体なんだっていうんだ!」

とりあえず怯えた表情で言ってみる。

「なぁに、おまえも可愛がってやろうって言ってんじゃねえか。」

ピキピキピキピキ

なにか変な音が聞こえるなあ。

「守る気が無いなら金を返せ!」

「はあ?金なんか受け取ってねえぜ。」

泥棒髭のお頭が言う。

《ご主人様。》

《ダメだシャーミリア。ちゃんと相手が手を出してからにしてくれ。》

《しかし。》

《命令だ。》

《かしこまりました。》

「ねえちゃんの方は俺がたーっぷり可愛がった後でお前らにやるからよ。このガキはお前らの好きなようにすればいい。ただこいつらは訳ありだ。じっくり舐って楽しんだ後はちゃんと始末をつけるんだ。」

「じゃあ遠慮なく白髪のガキをもらうぜ。俺がたっぷりと可愛がってやるから安心しろ!終わったら痛みもなく殺してやるからよお!」

「や、やめろ!お嬢様逃げましょう!」

俺が振り向きざまに走ろうとしたとき、男が俺の髪の毛を掴むように手を伸ばして来た。まあ、こんなゆっくりじゃあ避けるのは容易だが、それだと次に発展しないからな。

後ろの男が俺の髪の毛を掴んだ瞬間だった。

シュッ

俺は急に軽くなって前のめりになった。でも頭の上には男の手が髪を握りしめているようだ。

「えっ。」

俺の髪を掴もうとしていた男が、何が起きたのか分からずに素っ頓狂な声をあげた。

1,2,3,4,5

「うっうぎゃぁああああああ! 」

ボトリ

俺の髪の毛を掴んでいた手首から先の手が地面に落ちた。手首が取れた男は、なにが起こったのか分からず叫ぶまで5秒かかったらしい。

「手が、手ガァァァァ!」

男が腕を抱えてうずくまり、ゴロゴロと転がりまわる。

「ん?お前…」

あまりに急な事で、お頭も何が起きたのか理解していない。絶対的優位な立場にいたのだから、この男が何かをふざけているのかと思ったのかもしれない。

「お!おい!お前!手をどうしたんだ!」

他の男が、その転がっている男を見て叫んだ。その叫びでようやく周りにいたやつが男に何が起きたのか気づいたらしい。

「なんだてめえ!勝手に手を落としやがって。」

へっ?俺じゃないっす。

俺がくるりと振り向いて、男たちを見ると全員が全身の毛を立たせて怒鳴り始める。

「い、いや。僕は何もしてません。」

「どうなったらこんなことになるってんだぁ!」

「いや、だから…。」

どけ!

ドカッ

手首を押さえて転がっていた男を、泥棒髭のお頭が蹴っ飛ばしてどける。

「おめえいい度胸だな?なにをした。」

「だからなにも。」

「おもしれえ。凄くおもしれえな!この女をたーっぷり可愛がった後で、お前もしっぽりと可愛がってやろうじゃねえか。」

いやあ…俺にその趣味はないって。

「髪の毛も真っ白で薄気味悪いガキだ!お頭!こいつ絶対なに、あがががが、ぷしゅぴゅぅ」

また部下の一人に異変がおきた。

「な、何言ってやが…。」

お頭の後ろにいた男の口から上が無くなっている。ぴゅうぴゅうと血を噴き出して立っていた。

ドサッ

「な、なにが…」

そして泥棒髭のお頭が俺を振り向いて言う。

「てめえ!何かおかしな術を使いやがったな!承知しねえぞ!女をやる前に始末してやる!おまえら!このガキをとっ捕まえろ!」

女を犯す事だけはまだあきらめてないんだ…どんだけ…

「‥‥‥。」

そして泥棒髭のお頭の指示に誰も動かなかった。

「早くしろ!怖気づいたのか?」

髭のお頭が後ろを見ると、全員の首が無かった。

「く、首‥どう、くびがどう、どうなって‥おま」

ドガ!

泥棒髭のお頭がいきなり蹴っ飛ばされる。

「ぐえっ。」

お頭が転んだ先で、蹴ってきた相手を見上げる。

「次にご主人様に一言でも言葉を発してみろウジ虫。生きたまま少しずつ切り刻んでやろうか!」

「まて!シャーミリア!これは素体だ。」

「はっ!も、もちろんです。手加減して蹴りましたから死んではおりません。」

死んで無いって言っても…髭のおっさんの体が不自然にひしゃげて、どう考えても背骨がおかしな方向に曲がっているけど、シャーミリアが本気で蹴ったら爆散するだろうから、手加減したことは分かるけども!

「…なっ‥‥ヒュー…なっ…ヒューヒュー…お前‥ら‥ヒュー、げほっ」

お頭の口から血と泡が噴出して来た。

うーん、こりゃやべえな。

「おいお前。これを飲め。」

俺はバックからポーションを取り出してお頭に飲ませる。

ごく

ぱああああ

お頭の体が軽く光る。

「ふうふう。お、お前ら!一体何者だ!」

ポーションで一命をとりとめたお頭は、体を変な風に曲げながら叫ぶ。

「だから助けてほしかったのになあ。」

「ば、俺たちゃ盗賊だ!わかんねえのか!」

「ああ、よく見たらそうかもしれない。俺に変な事言うからお嬢様が怒っちゃったよ。」

「お、お前、ごぷ」

「ご主人様にそれ以上の暴言は許さん。」

髭のお頭の口の中に、ちぎれた他の奴の手がツッコまれる。

「よし。じゃあこいつを素体にしてやっちゃおうか。」

「かしこまりました。急ぎ対応します。」

部下の手を口に突っ込みながら筋肉隆々の髭のお頭は、恐怖のどん底に叩き落されたような顔で俺達を見た。

スパン

「汚れる。ご主人様を見るな。」

「うごっがっあ…」

口に部下の手を突っ込みながらも、盗賊のお頭がなにか叫ぼうとするが声にならなかった。両目がすっぱりと切り裂かれている。

「おいおい、素体として使うんだろ?」

「目は他の者のを移植すれば大丈夫です。」

「わ、かった。」

シャーミリアはおもむろに、前に倒れている盗賊のお頭の前にしゃがみ込んで何やら唱え始める。しばらくするとそのお頭はおかしな動きでのたうち始め、ブルブルと震え出した。

じゅるり

すると泥棒髭のお頭は、地面に散乱した部下の血を舐めだしたのである。既に口に加えられていた手がなくなっていた。

ざぶり

死体の一つに噛みつく。

ゴクリ

髭のお頭は部下の肉を飲み込んだ。

その間もシャーミリアはお頭に手をかざして何かを唱えている。

ごしゅっ

またかぶりついた。

ゴクリ。

お頭の体はいつの間にか元に戻っており、四つん這いになって勢いよく遺体を食べ始める。

ごきり、ごく、ばぐぅ、しゃびい、ぼぎぃ

ドンドン食べるスピードを上げているようだ。

「お前はしばらくそこで餌を喰らいなさい。」

シャーミリアが告げる。

俺はファントムで見慣れているとはいえ、あいつとは違う普通の人間がバクバクと仲間を食っている様子を見て少し青くなる。俺はそれを見ながら、さっき盗賊に差し出した金貨を手に拾い、またカバンに詰めるのだった。

「ではアジトに行こうか。」

「はい、ご主人様。」

俺とシャーミリアは死体を食い続ける、泥棒髭のお頭をそこに残して山を登りアジトへと向かうのだった。

《もしかしてファントムも最初はああやって?》

《はい。ですが今回は素体も餌の質も悪く量も無い為、出来栄えはそこまで良くないかもしれません。》

《はは、シャーミリアの謙遜は俺からしたら凄い物が出来るって聞こえるよ。》

《滅相もございません!》

俺達は念話で話しながら盗賊のアジトへと向かう。

すると相変わらず3人の間抜けがそこにいた。俺達が森のなかからその間抜けを眺める。

「なんかお頭たち遅くねえか?」

「お頭を呼びに行ったきり戻って来ねえな。」

「先に楽しんじゃってんじゃねえのか?」

「おいおい!殺す前に俺達にまわってくるよな?」

「そりゃそうだろ。相当な上玉だったらしいぜ、しばらくの間は楽しむにきまってんじゃねえか。」

「そうだよな。」

「どうやらガキもきれいな顔をしていたらしいぞ。」

「そのガキも殺さねえで連れて来るよな?」

「じゃねえか?」

そして俺達はその3人の前に無造作に現れる。

「!」

「おま!」

「なんだ!?」

「どうも。お頭に聞いたらここがアジトだっていわれて。」

俺が冷静に告げる。

「お、お頭が?」

「はい。建物の中にも人がいるんですよね?」

「なんだお前。」

「なんかお頭が可愛がってくれるとやらでここに来たんです。」

「お、おお!お頭も気が利くじゃねえか?まさか先に俺達下っ端に?」

「まあ俺達も頑張ってるからな。きっとお頭もそれを見てたんだろうぜ。」

「よしよし!お前達!一緒に建物の中に来い。中のやつも一緒にいいだろ?」

「可愛がるって事ですか?」

俺が言うと、盗賊3人が顔を見合わせて言う。

「そりゃそうだろ!お前みたいな綺麗な顔をした男なんて珍しいからな。俺達が体のすみずみまでよーく可愛がってやるからこい!」

男が一人近づいてきて俺の腕を取る。

シュバァ

ドサドサドサ

目の前に3人の死体が転がった。

そのままシャーミリアが静かに建物の中に入っていく。恐らく中でも惨劇が繰り広げられているだろう。

《ご主人様終わりました。》

《そろそろお頭も食い終わってるんじゃないのか?》

《それでしたら、まもなくここへ上がってきます。》

《既に使役を?》

《魂の髄まで。》

《わかった。》

するとシャーミリアの言う通り、泥棒髭のお頭がだいぶ変わった感じで下からあがってくる。目はうつろでどこを見ているのか分からない。お頭は俺の前を何事も無く通り過ぎていき、目の前に転がっている部下の死体にかぶりつくのだった。

先に手を出したのはこいつらだし、いいよな。

《はいご主人様への無礼。万死に値するところを、下僕にするのですから蛆虫には誉れです。》

俺の独り言にシャーミリアが反応した。

シャーミリアが建物から出てきても、泥棒髭のお頭は餌を与えられた猫のように、むしゃむしゃと部下の肉を喰らい続けるのだった。