軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第383話 ルピア神子の啓示

俺とシャーミリアは弾丸のスピードで、ユークリットから中央の村まで飛んできた。

やはり村は消滅し何も残っていないらしかった。魔人達が周りを囲んでそこに村人たちが横たえられている。子供や老人も含め100人以上いるようだが全員がぐっすり眠っているようだった。服装を見ると本当に貧しい田舎の村人の様な格好で、ボロボロと言ってもいいようなつぎはぎの服を着ている者が多かった。

「みんな、お疲れ様。」

「いやラウル。俺達は全く疲れてないよ。」

「まあオージェくらいの力があれば、デモンなぞ造作もなかっただろうしな。」

「いやいや俺は基本何もしてない。仕事をしたのはアナミスさんと防空壕を掘った魔人達かな。」

「デモンは?」

「ダークエルフの狙撃1発で終わった。」

「出現したのは1匹って事か?」

「そうだ。」

「やはり生贄がいないとまともな召喚は出来ないって事かね?」

「たぶんそうだと思うぞ。」

どうやら生贄を用意しないとデモンの召喚は失敗するらしい。呼び出したデモンがみすぼらしい恰好の1体だけだったことと、他の村でも同じようなものが召喚されたらしいのだ。

「転移罠はどうだったのかな?」

「発動させたが何も出現しなかったようだ。」

「そのあたりは想定通りだな。先に潰せば起動しなくなる。」

俺の周りにはオージェとエミル、グレースと、ギレザム、シャーミリアがいる。村ごと資産を失ってしまった村人の今後の処遇をみんなに話したのだった。

「まったくお前は。」

オージェが言う。

「だな。いつもの如くとんでもない事を考えるもんだ。」

エミルも言った。

「そうですかね?それほど突飛な感じもしませんけど。」

グレースが言う。

どうやらこの次の作戦に関しては、ぞれぞれに考えがあるようだった。だが俺は躊躇する事は無く次の行動に移る事にした。

「アナミス!」

「はい。」

アナミスが俺のそばにやってくる。

「ルピアは来ているか?」

「はい。」

すでに南の村からもルピアが来ていた。

「よし。」

そして俺は早速、村人の対応について二人に指示を出した。二人は俺の話を真剣に聞き頷いている。

「わかりました。」

「仰せの通りにします。」

「ルピア!このヘッドセットを着けろ。」

「はい。」

ルピアがヘッドセットを着ける。ふわふわした銀のショートボブ髪にヘッドセットを着けると、なんか俺のイメージする感じと違った。銀の長いまつ毛もとても神秘的な感じだが、ヘッドセットだけがなぜか無骨に見える。

「ルピア。羽出せる?」

「もちろんです。」

ルピアがバサッっと大きな白い羽を広げた。

「えっと羽ぬいていい?」

「どうぞ。すぐに生えます。」

俺はルピアの羽を2本抜いた。

ピッ

「あっ。」

ルピアがちょっとだけ声を上げる。

「ごめん。」

「いえ大丈夫です。」

そしてその羽をヘッドセットの耳の両脇につけてみる。羽を着けたら天使のように見えるかと思ったけどそれほど違いはない。

「うーん。まあいいや。じゃこの発信機をぶら下げてくれ。」

「はい。」

ショルダーバックのような形の発信機をぶら下げてもらう。次にLRAD長距離音響発生装置を召喚して草むらに設置した。ルピアが話したことがこのLRADを通じて爆音で鳴り響く事だろう。

「エミル!」

「あいよ。」

「チヌークを召喚するからスタンバってくれ。」

「了解。」

そして俺はCH-47チヌークヘリを村人たちの近くに出現させた。これで準備は出来た。

「よし!それじゃあギレザム!魔人とオージェ達は全て草原に隠れるようにしててくれ!」

「はい。」

オージェとトライトン、グレースとオンジ、そして魔人達がぞろぞろと草原に身を隠していく。

「ルピア!それじゃあ羽を目一杯広げて空中に待機!」

「はい!」

バサァー

ルピアの羽が広がり空中に舞う。

「エミル!ルピアの周りに光る精霊を飛ばしてくれ。」

「了解。」

ルピアの周りにフワフワと光り輝く下級精霊が舞い始める。

「じゃあエミルはチヌークの操縦席へいっててくれ。ケイナさんは後部ハッチで待機を。」

「了解。」

「はい。」

エミルとケイナがチヌークに乗り込んでいく。

「アナミス!村人の半分を起こせ!」

「わかりました。」

俺がアナミスに命じると、半分の村人が上半身を起こして周りを見る。自分たちに何が起こっているのかは分からないようだった。

《よしルピア、作戦を始めるぞ。》

《はい。》

《ヘッドセットに向けて俺の言う通り話してくれ。》

《はい。》

俺が念話で伝えた通りにルピアが話し始める。

「愛おしい人間達よ目覚めましたか。」

優しい声でルピアがLRADを通じて話す。

村人たちはきょろきょろと周りを見渡している。どうやら声の主が分からないようだった。

「空を見上げるのです。私はここにおります。」

村人たちが空を見上げてルピアを見つける。

「おお!」

「あれは天使様じゃねえっぺか?」

「んだ。」

「まちがいねえべ。」

村人たちが妖精で光り輝いている白い翼のルピアをキラキラした眼差しで見つめる。

「私はアトム神様から使わされた神子です。」

「は、ははぁー」

「これはこれは!」

「うう、ううう。」

ある者は驚き、ある者は腰をぬかし、ある者は泣き始める。

「アトム神様の可愛いお子たちよ、あなた方は選ばれたのです。」

「は、ははぁぁぁぁ!」

「お、恐れ多いですぅ。」

「ううううううう。」

村人たちは額を地面につけてひれ伏した。

「頭を上げなさい。主の可愛い民たちよ。」

ルピアの優しい声が響き渡る。どこをどう見ても天使そのものだった。彼女が戦場で殺戮の天使と呼ばれている事を、誰一人として知る由もないだろう。

「天使様!私達の罪をお許しください。」

「何卒その御心でお導きを。」

「魂を捧げます。」

村人は恍惚の表情を浮かべてルピアを見ている。どうやらかるーくトランス状態に入ってきたようだ。

「従順で高貴な魂を持ったそなたたちは神に選ばれました。既にあなた達の住んでいた村は神が不要と片づけてしまわれ、これから神のしもべがあなたたちを新天地へといざないます。」

「あの…。」

ひとりの女がルピアに話しかける。

「発言を許します。」

ルピアが言う。言ってるのは俺だけど。

「はい。ここに寝ている隣人たちは何故目覚めないのでしょう?」

うーん。それはCH-47チヌークヘリに乗れる人数が限られているからだけど…そんなことを言うわけにもいかない。

「今はまだ罪を償い眠っているのです。じきに目覚める事でしょう。」

「彼らも新天地へと旅立つことは出来るのでしょうか?」

「もちろんです。アトム神の名のもとにお連れしましょう。」

「安心しました。」

他の村人たちも安心したような表情になる。平和な村で平和に生きて来た純朴な村人の表情だった。誰もかれもが良い表情をしている。

「神は、あなた方がある国で生きる事を望まれております。神の御心のままに生きる事を望みますか?」

「もちろんです。」

優しそうな老人が立ち上がって言う。

《ラウル様。この者が村長の様です。》

アナミスが教えてくれた。

「村長よ。やはりそなたは賢い。それでは村人を連れて新たなる国に飛び立ちなさい。」

「はい。」

するとチヌークの横のハッチが開く。

「あれは神の乗り物です。あれに乗って幸せに暮らせる新天地へと向かいます。」

「おお!あのような巨大な…あれは龍?」

「そうじゃ!龍じゃ!」

「神の使いだ!」

そしてチヌークのハッチからケイナが出て来た。もちろんケイナの周りにも下級精霊が飛び回り神々しくなっている。そのハッチの両脇にどこからともなく現れた、オージェとトライトンが膝をついた。

「神のお使い様じゃ」

「おおおお、龍に乗ってやってきてくださった。」

「何という神々しい。」

ケイナがハッチから降りるとオージェがケイナを肩に乗せて村人の前までやってくる。

「かの者もアトム神の使いである。彼女についてあの龍の腹に入るがよい。」

ルピアが言う。

「それではみなさーん。私について来てください。」

ケイナが言うと村人たちが頷く。

「はい。」

「わかりました。」

「大変嬉しく思います。」

村人たちはぞろぞろとケイナについてチヌークに乗り込んでいく。オージェとトライトンが村人の後ろについてチヌークに乗り込みハッチが閉まった。

俺は無線でエミルに指示を出す。

「それじゃあ行き先はユークリット王都だ。とりあえず向こうにカララが待機しているはずだから、彼女に預けてまた戻ってきてくれ。」

「了解。」

ヒュンヒュンヒュンヒュン

チヌークはタンデムローターを回し空中に飛び去って行く。ヘリを見送って俺達は神様のフリをやめる。

「おーい、ルピアー降りてきていいぞー。」

バサバサバサ

「ラウル様。私は上手く出来ていましたでしょうか?」

「百二十点だ。」

「うれしいです!」

ルピアがキャピキャピとして嬉しがっている。さっきまでの神々しさはどこかに行ってしまった。エミルが残して行った下級精霊がまだ彼女の周りをクルクルと回っている。

「ラウルさん。良い作戦ですね。」

「だろ?グレースならわかってくれると思ったんだ。」

「もちろんです。でもオージェさんやエミルさんはちょっと抵抗があるようですが。」

「そうだろうな。あいつらの性格じゃあまり好まないかも。」

「ですね。」

「とにかく上手くいった。アナミス!ルピア!残りの半分も同じ要領でやるぞ!」

「かしこまりました。」

「はい。」

アナミスとルピアが俺に対して尊敬を含んだようなまなざしで見て来る。俺としては逆にこんなことして良いのかなー?と言う気持ちがあるのだが、彼女らはそんなことは思っていないようだ。

「で、ラウルさん。彼らをユークリット王都に連れて行って何をさせるんです?まさかルタン町に置いて来たファートリアバルギウスの兵みたいに強制労働ですかあ?」

「なにも悪い事してない人を強制労働?そんなことさせるわけないじゃん。」

「えっ?そうなんですか?一体何をさせるつもりなんです?」

「貴族だ。」

「えっ!!!貴族!?あんなボロボロの村人に?」

「なにいってんだよ。ボロは着てても心は宝石のような人たちだぞ!貴族をしてもらうにはピッタリだろ!」

「いやいやいや。だってお百姓さんですよ!政治なんて出来るわけないじゃないですか!」

「なにいってんの?わかんない時は俺達やモーリス先生にでも意見をもらって、アナミスが魂核に貴族としての指示を出すに決まってんじゃん。」

「そのためにあの術を?」

「あたりまえじゃん!何のために俺があんな死にそうな思いをしたと思ってんだ!」

「そんなことまで考えていたなんて。」

「だってさ、ファートリア神聖国に操られたバケモノに、ユークリット王都の民は皆殺しにあったんだぞ!足りなくなった民は返してもらわなきゃ割に合わないじゃないか。」

「割に…って。」

「とにかく性根の腐った人が貴族をやるより、心根の綺麗な人がやった方が絶対良いに決まってる。」

俺が勝手な持論を述べる。

「僕の想像する貴族像とはかけ離れていますけど。」

「新しい国を作るんだから、その基礎を作る民としてはこれ以上の逸材は無いってことさ。」

「ははは…なんていうか。僕はラウルさんがちょっと怖くなってきました。」

「なんでグレースが俺を怖がるんだよ。」

俺はグレースが冗談で言っているのかと思い顔を見るが、素で怖がっているようにも見える。まさか俺はそんな酷い事してるんだろうか?自分では良い事をしていると思っているけど。ちょっと不安になってくる。

「本当なんですね。」

グレースがポツリと言う。

「本当って?」

「ラウルさんは魔王のたまごって事ですよ。」

「そりゃそうだろ?俺は魔王の息子だぞ?」

「まあそうなんですけど、そう言う意味でも無くてですね。まあいいですけど。」

なんとなくグレースの言いたいことは分かる。

「でもな。」

「はい。」

「俺は人間の子供でもある。」

「分かってますよ、育ての親も人間ですしね。」

「ああ。人間の気持ちもしっかりと分かるんだよ。」

「確かに。なんていうか、本当に二つの血が流れてるんだなーって思います。」

「まあな。ハーフってやつだからね。」

「まあエミルさんもエルフと人間のハーフですしね。オージェさんの親はデカイ龍でしたけど、お父さんは何なんですかね?」

「謎だよな。」

「謎です。」

グレースと無駄話をしているうちにだんだんと腹が減って来た。

「ミリア!腹減ったよ。」

「ご主人様お任せください!腕に寄りをかけてお作りいたします。」

ドン!

シャーミリアが弾丸のように飛んで行ってしまった。恐らく巨大魔獣系を取ってバーベキューをしてくれるんだろう。

「よし。」

俺は水のペットボトルを大量召喚して魔人達に配った。

「みんな!次の作業まで何もすることはない!これから飯を取ってくるから休憩にしよう!」

「「「「「は!」」」」」

魔人達が俺に礼をする。

「ギレザム!他の拠点のガザムとゴーグにも隊を休ませるように伝えてくれ!」

「わかりました。」

グレースとオンジにも渡して自分のボトルのキャップを開ける。すっかり休憩ムードに入って魔人達もゆったりとくつろいでくれているようだ。

「プハぁ」

「これいつも冷えてますよね?」

「ラウル様のお水はとても美味しいです。」

オンジも喜んでいる。

「召喚前はどんな感じなんだろう?イメージで呼び出されるらしいんだけど。なんで冷えてるんだろうな?」

「ラウルさん。細かい事はいいんですよ。」

グレースが言う。

それから再びチヌークが帰ってくるまで、俺達はシャーミリアが焼いてくれたビッグホーンディアの肉を食い、暇なので俺とギレザムが模擬戦をしたりしていた。魔人達がやいのやいのと俺の応援をしてくる。

チヌークが再び戻って来たのは2刻(6時間)ほどたってから。

俺達は再び村人の前にルピア神を出現させるのだった。