軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第378話 危険書庫

秘密の書庫にあるのは書物だけではなく、剣や槍や盾などの武具や防具もおいてあるようだ。書庫と言うよりもどこまでも続く巨大な倉庫といった雰囲気だ。長い歴史の中で世界中から集められた武器などが置いてあるのかもしれない。

モーリス先生が先を歩いて俺達が後ろを付いて行く。そして先生が一つの棚の前に立って書物を手に取った。

「これがラウルが持っておった魔導書に似た文字が書いてある書物じゃ。」

「はい。」

モーリス先生に渡される。

本を開くと、確かにあのアラビア文字のようなものが記されていた。

「わしも読めはせんがの、おぬしの持っとった本に似た文字であったのでな。」

「このあたりにあるのはそうなんですか?」

「そうじゃがこっちにあるのは、また違うようなんじゃ。」

モーリス先生がまた違う列の棚に移る。俺達はぞろぞろと後をついていくのだった。

「これなんかどうかの?」

「と言いますと?」

「おぬしたちの世界にあった文字とは違うか?」

モーリス先生がまた本を取って渡してくる。中を見てみるが読めない字だった、前世にも似た文字は無いように思える。

俺が首を横に振る。

「そうか。」

「この世界の文字ではないのですか?」

「違うような気がするが、もしかしたら古代文字なのかもしれんのう。」

「古代文字ですか?」

「うーむ。」

古代文字にしては理路整然と書かれているような気がする。きちんと文法もある感じだし古代文字と言う感じはしない。

「読めるものもあったのじゃがのう、こんなふうに読めないものもちらほらと置いてあるのじゃ。読めるものはわしが知らん歴史に関する物や、おそらくは大陸南部の伝記もしくはその土地の情報などが記されておった。もしかしたら作り話や物語の類かもしれん。」

「先生が知らない歴史ですか…どうしてこんな場所にあるんでしょう?」

「王城にも書物庫はあったのじゃが、あちらは王宮魔導士などであれば立ち入る事が出来た。じゃがこちらの書庫の存在は知らなかったのじゃ。この地に来て自由に城内に住みこんでいるうちにおかしな反応をひろってのう。」

「この結界、と言うわけですね。」

「そうじゃ。魔力持ちも王城には入り込んでおらなかったからのう。微量の結界に気が付けたのは僥倖じゃったの。」

なるほど。モーリス先生はあんな半壊した廃墟の城に寝泊まりしていたんだ。周りに魔力反応が皆無の状態になってようやく気付いたというわけか。偶然と言うにはいささか無理を感じる。

「先生がここを見つけて結界の解除にまで至ったのは、きっと何かの導きだったのでしょう。」

「わしゃあまりそういうのは分からんが、とにかくラウルに見せてもらった魔導書を一番に思い出したのは確かじゃ。」

「なるほどです。」

《どうやらモーリス先生はあまりスピリチュアルな事は信じてないみたいだ。どっちかつーと考古学者みたいなもんだしな。前の虹蛇が言うならば、やはりこれは偶然ではないはずだ。ならばここに俺が求める何かがあると考えた方が良いのかもしれない。》

モーリス先生が振り向く。

「もっと先に進んでみるかのう?」

「まだ進めてはいないのですか?」

「何度やっても入り口の結界の解除で魔力を使い果たしてしまっていたのじゃ。」

「なるほどです。」

「また魔力をくれるとありがたいわい。」

「わかりました。」

「ラウルの魔力は強すぎるでな、ほんのわずかで良いぞ。」

「はい。」

モーリス先生が一旦棚から戻り、ぞろぞろと壁伝いに部屋の端迄歩いて行く。左に曲がって10メートルほどの所に、光り輝く台座のようなものが置いてあった。

「あれじゃ。」

モーリス先生が台座の前に立つ。俺はまたモーリス先生の背中辺りに手を置いて微量の魔力を注ぐイメージをする。

「ふむ。やはりおぬしの魔法は強力じゃな。」

「すみません。最大限に加減をしているのですが、これ以上出力を低くできません。」

「大丈夫じゃ。この魔導着と杖にも魔力をこめる事が出来るから、わしの容量がいっぱいになる事はない。」

「とにかく気をつけたいと思います。」

「ふふっ。まあ適当でええぞ。」

モーリス先生が優しく笑う。

「はい。」

台座がより一層輝くと魔法陣のようなものが浮かび上がる。そして間もなく光が落ちて薄暗くなった。

「解けた。」

「はい。」

「ここからはわしも初めてじゃ。」

「わかりました。ではモーリス先生は中ごろをお歩きください。ファントムを先行させます。」

「すまぬのう。」

これだけ厳重に守られているとなると罠が仕掛けてある可能性がある。

パシュ

っと思った矢先に、ファントムの右手には矢が握られていた。壁から飛んできた矢を反射的につかんだらしい。

「やはり。」

「ラウルよ。罠の存在を知っとったのか?」

「いえ。最近はめっきり罠とかに敏感になりまして、なんとなくと思ったらやはり仕掛けてありました。」

「助かったわい。」

「シャーミリア、カララ、ラーズ!次の結界迄の間に他に罠が仕掛けられていないかを調べてこい。」

「かしこまりました。」

「はい。」

「は!」

3人はそれぞれの方向に飛び去って行く。シャーミリアは天井を確認するために飛び、カララは反対側の右奥の壁を確認しにいった。ラーズは矢が出てきた場所をくまなく調べている。

《ご主人様。他には無いようです。》

《こちらにも。》

《こちらも先ほどの穴だけです。》

《了解だ。》

どうやら先ほどの矢の罠しかなかったようだった。

「先生。次の結界までの間は罠が無いようです。」

「わ、わかったのじゃ。」

「ファントム、先生を全力で護衛しろ。」

ファントムがモーリス先生の後ろをのっそりとついて周る。

「この区画には武器も置いてあるようじゃのう。」

「そのようですね。」

「どれも魔道具のような武器に思えるのじゃが。」

「魔石のようなものがついてますね。」

棚に丁寧に置いてあった剣には魔石がくっついていたり、文字が刻まれたりしているようだった。モーリス先生はその場所にある書物を手に取ってみる。

「これは…。」

「なんです?」

「恐らく何じゃが…取扱説明書のようじゃ。ほれ。」

モーリス先生が俺に本を渡してくるので中を見ると、そこに置いてある剣の絵と何かしらの説明書きが書いてあるようだった。

「読めますか?」

「残念ながら時間を要するわい。しかしながらこの書庫に自由に出入りが出来るのなら、文字や文章の解析は出来るじゃろうな。」

流石は大賢者。こんな見たこともない文字を解析できそうだという。俺だったら何から手をつけていいのか皆目見当がつかない。

「時間がいると言う事ですか。」

「ふむ。すまんのう、すぐに分かれば良いのじゃが。」

「いえいえ!先生が分からないのであれば、今大陸に生きている人たち全てが分かりませんよ。」

「そんなことはないと思うがのう。とにかく今は戦時じゃから緊急で使える物を選ぶしかあるまい。」

「はい。」

この膨大な書物や武器の中から、今の戦争に使える物を探すか…はたして見つけることが出来るのだろうか?今の俺にはそれほど時間は無さそうだった。

「本を読まずに武器に魔力を注いでみるというのはどうでしょう?」

マリアが言う。

「それはいかん。どんな反応をするか分からない上に、使用者本人にもどのような影響があるのか分からない。せめてこのあたりの書籍を解析してからするべきじゃろう。」

「すみません。考え無しに思いつきで言ってしまいました。」

「いやマリアよ、もしラウルにあのような武器召喚能力が無ければ、マリアが言っているような事にも手を出していたであろう。しかしそれには及ばんほど強力すぎる兵器が使えておるのじゃ、しかもかなり安全にのう、わざわざ危険を冒す必要が無いというたまでじゃ。」

「かしこまりました。」

マリアが頷く。

「先生。私が解析してほしいのは、今ファントムに収納してある魔導書ですね。」

「わしもそのつもりじゃ。とにかくこのあたりのものを片っ端から開いて行く。しかし一気にするわけにはいかんのじゃ。その本の位置を変えてしまってはいかん気がするのじゃよ。」

「私もそんな気がします。」

モーリス先生が棚の端に行って、一冊出しては目を通して戻す作業を始めた。俺はモーリス先生に声をかけられた時に、すぐに目を通せるように側にいる。マリアは先生がチェックした本を受け取って本棚にそっと戻す。魔人があたりを警戒して、ヴァルキリーは俺の後ろにいる。

モーリス先生が何十冊か目の本を手にした時だった。

カチッ

「うっ!」

モーリス先生が声を上げる。

ガギン

ファントムがモーリス先生の前に手をかざした。その手に当たった金属の杭のようなものが下に落ちた。

「なんと!棚にもしかけかの!」

本が置いてあった台に小さな穴が開いていて、そこから太さ1センチ長さ20センチくらいの鋭い杭が飛び出てきたのだった。

パカン

次の瞬間いきなり床が無くなった。その区画にはモーリス先生と俺とマリアが立っていたが空中に浮いている。カララが糸で俺達を受け止めていたようだった。

ガラン

床が閉まる。

「あっぶな!カララありがとう!」

「いえ。ご無事で何よりです。」

「なるほどの、どおりで死体などがないわけじゃな。」

「ああ、杭が刺さって死んだ人の死体を捨てるために。」

「そのようじゃな。もしかしたらどこかに罠を解除するものがあるのかもしれん。」

「確かに。そうでなければここを閲覧するたびに人が死にますね。」

「そうじゃ。」

「一度罠を解除したほうがよろしいのでは?」

「そうじゃの。」

俺達は一旦書庫の入り口まで戻る。

「よし!シャーミリアとカララとラーズ!手分けして罠の解除装置か魔法陣などが無いか調べてくれ。マリア!持ってきた鏡面薬を彼らに渡してやれ。」

「はい。」

マリアが3人に鏡面薬を渡す。

3人はそれをもって3方向に散って行った。

《我が主。》

ヴァルキリーが話しかけてきた。

《なんだヴァルキリー。》

《このからくりは意外に単純なものかと。》

《どういうことだ?》

《入って来た結界を戻せばよいと思います。》

《入り口と一つ目の結界をか?》

《はい。》

《わかった。》

ヴァルキリーが俺に教えてくれたのでそのまま先生に伝える。

「モーリス先生。入り口の結界を中から戻せますか?」

「可能じゃが。」

「やってみてください。」

「うむ。」

モーリス先生が扉の前に立つ。

「じゃあラウルよ魔力を頼む。」

「はい。」

俺が微弱な魔力を注いでモーリス先生が結界に魔力を注ぐ。すると結界は再び光だし入り口をふさぐように出現する。

「それでは二つ目の結界を塞ぎにいきましょう。」

「わかったのじゃ。」

《みんな!罠の解除はいい。一旦俺達の元へ来い。》

《かしこまりました。》

《はい。》

《は!》

シャーミリアとカララとラーズが俺達の元へと戻ってくる。

「ファントム!もう一度行くから先生を全力で護衛しろ!」

「‥‥‥」

ファントムを前にして、その後ろをモーリス先生、そしてシャーミリア、その後ろにマリア、そしてカララに俺とヴァルキリーが1列になって進んでいく。

「止まって!」

みんなが止まる。

「ファントム!一度先行しろ!」

ファントムが前に歩いて行くと、先ほど矢が飛んできたところから再び矢が飛び出した。しかしファントムに刺さる事は無くまた受け止められている。

「先生。この結界を復活させてみてください。」

「うむ。」

先生が杖をかざして俺が魔力を注ぐ。

再び結界が光り出した。ここより後ろには解除しなければ戻れなくなった。

「ファントム。もう一度試してみろ。」

ファントムが一度、俺達の元へと戻ってきて再び歩いて行く。

次は矢は飛ばなかった。

「先生。先ほど罠を発動させた本の場所を覚えていますか?」

「もちろんじゃとも。」

凄い。俺ならすっかり忘れてしまいそうだ。

俺達が先生について先ほどの棚の前に付いた。

「どれですか?」

「これじゃ。」

「では先生離れてください。」

「うむ。」

「ファントム!取れ!」

するとファントムが先ほど罠を発動させた本を取った。

シーン

今度は罠が作動しなかった。

「なるほどのう!どうやら結界が引き金になっておったようじゃのう。」

「そのようです。」

「ラウルは何故に気が付いたのじゃ?」

「ああ、この魔導鎧が教えてくれました。」

「鎧が?」

「はい。」

「不思議な鎧じゃの。」

「そう思います。とにかく作業を再開しましょう。」

「うむ。」

「ファントムは引き続きモーリス先生を守れ。」

ファントムがモーリス先生の脇に立った。少し邪魔くさいがとりあえず仕方がない。

《ヴァルキリーはなんでからくりがわかった?》

《はい我が主。この鎧の記憶でございます。》

《鎧の記憶?》

《ここの場所ではないのですが、似たような場所を知っているようです。》

《そうか。そう言えばこの鎧はドワーフがカスタマイズしただけで、いつからあったのかよくわからないんだった。何代も前の魔王から使われていたらしいし、その期間に似たような場所を見たことがあるのかもしれないな。》

《私も宿していただいたおかげで知る事ができました。》

《とりあえず、サンキュ。》

《いえ。》

ヴァルキリーが心なしかうれしそうだ。コイツに感情なんか無さそうなんだけど。

「ラウルよ。」

「はい。」

「先ほどの罠の上にあった本じゃがのう。」

俺に手渡される。

「どうやら魔法陣が記されておるようじゃ。」

「魔導書ですか。」

「うむ。」

いきなり魔導書にぶち当たった。

「みな!魔力を発動させるなよ。」

「はい。」

「かしこまりました。」

「わかりました。」

「御意。」

マリア、シャーミリア、カララ、ラーズが答える。

この書庫危険なり。

とにかく慎重にやらねば何が起きるか分からない。不用意に魔力を行使すれば暴発してしまう可能性がある。俺達は更に慎重に棚を調べ始めるのだった。