軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第207話 復活の魔人たち

しゅぅぅぅぅぅ

息を吐いた。

暗黒の中に獣がうずくまっている。

逆立った長い後ろ髪がその体を覆い隠している。背中に生えた恐ろしく尖がった角が数本不自然に伸びていた。獣は以前より大きくなったようだ・・両脇から伸びた手は4本になり長い爪が鋭く伸びている。耳まで裂けた顎からぼたぼたと涎がたれている。口から垂れ下がった舌が蛇のように伸びてのたうち回っており、舌の先には鋭い牙の生えた顎があった。

気を狂わせず正視できる人間は地上にはいないだろう。

地獄からの使者ならあるいは・・

ぐりゅりゅりゅりゅりゅ

獣の喉が激しく鳴った。

ジャバジャバ

どうやら獣は何か水のようなものの中に体を半分鎮めていた。しかし真っ暗で何もわからない。

その獣には気高さがあった。もの凄くおぞましくグロテスクな”それ”に気品が備わっている。凛とした旋律が奏でられるようにそこにいる。

腹が減っていた・・とにかく喰いたい。

「だいぶ成長したようだな。」

なにかが声をかけてきた。

「ダレダ!」

獣はバサッと自分の体の何倍もの翼を広げて吠えた。

「つれないな・・これで何度目だと思ってんだ?」

「シラン!」

「いったい・・お前の核は・・なんなんだ。」

「オマエクウ!」

バッ

獣は羽を広げて声のする方に飛びかかってみたが・・何もいない。

「まったく我の思う通りにならん。」

「ウルサイ!」

「お前は不思議だな。」

「ナニガダ!」

「我を喰いたいのか?」

「ソウダ!」

「ふはははははは。まあそれもいいだろう・・しかし今はまだだ。」

「ナゼダ!」

「お前はまだ成長していない。そしてまだまだ喰らい尽くしていない。」

”それ”への怒りと共に、全身を虫が這いまわる様な飢餓が襲ってきた。全身を喰らいつくすようなその飢えに・・自分を喰らいたくなってきた。

「グギャルゥ」

獣が自分の腕を千切り喰う

「はっはっはっはっ!痛いだろう!自分を喰ってみたのか?」

獣がぐちぐちと噛む。するとみるみるちぎれた腕が生えてきた。

「無理よな。自分は喰えぬぞ。」

「ガァァァァア」

「まだまだ喰い足りぬだろうな。」

何が足りないのだろう?獣にはそれが何なのか分からなかった。とにかく虫の様に体を走る飢えに気が狂いそうだ。

しかし狂う事も許されない。

「まあ・・喰うことだな。」

「ニゲルナ!」

「逃げも隠れもせんわ。お前の中にいる・・」

「マテ!」

・・・・・・・・・・・

どうやら謎の者はいなくなってしまったようだ。

静かになった。

暗闇が濃くなり意識を沈ませていく・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

光・・?

少しずつ意識が覚醒していくと、どうやら夜空に月が輝いているようだった。

「ん・・」

「ご主人様・・」

「シャーミリア!大丈夫だったか?」

シャーミリアの左腕は完全に復活していた。

「黒炎により傷の修復が遅く時間がかかりましたが復活いたしました。どうやらご主人様が上位のデモンを殺したことで体が再生したようです。」

「そうか・・よかった!カララは?」

「私も無事です。ファントムが連れて逃げてくれました。」

俺は上半身を起こした。そこにはセルマ熊、ファントム、カララ、シャーミリアが居た。皆が俺を心配そうにみていた・・ファントム以外は。

ファントムはあれだけの激戦だったにも関わらず、全くの無傷でそこに突っ立って遠くを見ている。

「セルマ!おまえも無事か!」

くおん。

セルマが俺に寄り添って座っていた。

あとは・・他の魔人もヘリもいなかった。

「アナミスは!?」

「ご主人様が意識を閉じておりましたので、まだ念話が通じておりません。」

「そうか・・」

俺はどうやら完全シャットダウンしてしまっていたようだ。おかげで共有が切れ念話が通じなくなっていたらしい。

俺は早速、魔人達に念話を繋げた。

《みんな聞こえるか?》

するとアナミスが最初に答えた。

《はい・・今は王都の西の森に潜んでおりました。》

《大丈夫だったか。》

《飛行中に意識を失いましたが、木にひっかかって魔獣に襲われる事もなく無事でした。》

《よかった。》

すると違う念話が繋がって来た。

《ラウル様!》

《ミノスおまえも復活か?》

《はいエミル様達も一緒です。》

《そうか全員無事だったかな?》

《はい。ラウル様のおかげで全員復活しております。》

《よし。》

・・という事は俺とアナミスがミノス達のいるところに合流したほうが早いな。

《ミノスそこに待機していろ。俺達がそちらに集合する。》

《わかりました。》

《アナミス!》

《はい!》

《北の集合地点には飛ばずに行け。カースドラゴンがまだ飛んでいるかもしれない。森を縫うように目立たないようにいくんだ。》

《わかりました。》

そして俺は念話をやめる。

俺達が眠っていた周りをよく見ると、シルバーウルフの群れが大量に死んでいた。俺達が寝ている所を襲いに来たのだろう。死んでいる様子をみると豪快に引き裂かれており、セルマ熊とファントムが守ってくれていたのがわかる。

「守ってくれたのか?ありがとうな。」

くるるるるる

セルマ熊がどういたしましてと言っているような気がした。

「さてと。」

既にここに居る魔人に情報は共有されている。セルマ熊だけが伝わっていないので俺がセルマに話す。

「よし!じゃあ西に向かうか。」

くぉおぉん。

セルマが俺に背中に乗れと言っているようだ。

「・・分かった乗るよ。」

セルマは満足そうに俺を背中に乗せてのっしのっしと歩き出す。

セルマ熊に乗りながらシャーミリアとカララを眺める。基本変わっていないが美しさの中に可愛さのようなものが混ざっており、より人間に近い・・いや絶世の美女であることに変わりがないんだが・・肌の感じなど完全人間そのものだ。しかしその内包する魔力が異常だった。

「都市の東側を迂回して静かに歩いて進もう。」

カースドラゴンがどこにいるか分からない以上目立たないように歩いて行く

俺達は最初に東側に進んでいった。都市の東側は広大な荒野だった・・なにもない。枯れ草が転がっていくくらいで特に何もなかった。月が俺達の影を色濃く作りだす。

「風がでてきたな。」

「はい。」

先ほどまでは無風状態だったが荒野に風がふいていた。

「カララあのドラゴン・・なんなんだ?」

「私も言い伝えくらいにしか聞き及んでないのでございますが、黄泉の国から呼び寄せたドラゴンだと聞いております。」

カララが答える。

「シャーミリアは知ってるか?」

「いえ、ドラゴンすなわち龍族なら見た事がありますが、もっと気高い意志を持っておりました。龍族の言葉を話すのを覚えております。」

「ドラゴンの成れの果てと言ったところかな?」

「魂を失ったドラゴンの亡霊と言ったところでしょうか?」

「そうかもしれないな。」

「あの黒炎が忌々しいですわ。」

カララが悔しそうに言う。

「そうだな・・カララの糸を焼いたぞ。」

「思わず手を焼いてしまいました。」

「まったくだ。」

俺達は話ながら北進し始める。

「ご主人様。あの骨の扇・・あれを突破せねば攻撃は当たりません。」

「そうだな。爆発物は突破できない。1000トンのTNT火薬では半分吹っ飛んだけどな。」

「ファントムのバルカンも効きませんでしたわ。」

「そうだな。扇を貫通突破して体に当たっても、大して打撃を与えられなかった。」

「どうしたものでしょう。」

「うん・・試せる事はいろいろあるけど。なんていうか・・事後処理が大変なのも避けたいんだよね。」

「それは?」

「人間たちが戻ってきた時に大変な事をしたくないって言うか・・まあそんな感じだ。」

「かしこまりました。」

シャーミリアもカララも特に深くは聞かなかった。

急ピッチで歩いて都市の側面を北上し王都の北側に向かう。こちらには昔グラムとイオナとマリアで一緒にピクニックに行った場所があった。昔見た事があるはずの風景だったが・・夜のため違う風景のように見える。

「父さんは・・どこで死んだのかな・・」

誰も何も答えられなかった。魔人達からすれば人間の育ての親であるグラムに面識はない。しかし俺の父という事を誰もが知っている・・俺の気持ちを察してか誰も言葉を発せないでいた。

俺はしみじみともの思いにふけっていたが、そろそろ急がなければならない。

「走ろう。」

都市から完全に離れたのでみんなに走るよう伝える。俺だけセルマの背中に乗っているのが申し訳ない・・

風が気持ちよかった。幼少の頃に感じた風と何も変わらないような気がした。

心地良いなあっと思っていたのだが・・・

だんだんとスピードが上がって来た。

はっはやいいいいい!!

セルマ熊が滅茶苦茶なスピードで走り出した。

ビュウウウウウウ

風が顔を叩きつける。俺はセルマの毛をがっしりと掴んで振り落とされないようにした。

轟轟と風きり音がなる。

月明かりの下を物凄い暴走族が走り始めた。間違いなく慣性ドリフトが決められそうなスピードだ。おそらくコーナがあればインをデッドに攻めるんだろう。コーナーがあれば・・だが・・

「シャーミリア!仲間の位置は分かるか?」

「お任せください。」

俺達はシャーミリアを先頭にしてついて行く。それから30分ほど進むと森の中に不時着したチヌークが見えた。高い木々の中に上手く落として隠している。そして魔人とエミル達の姿も見えてきた。

「さすがはエミルだ。」

「特に難しいことはしてないよ。」

「ラウルさん・・これ・・もったいないですね。」

「グレース。仕方ないんだよこうやって使うしか方法が無くて。まあどんどん新品が呼び出せるんだし良いんじゃね?」

「まあそうですね。」

グレースが尊敬のまなざしで俺を見る。

「ラウル。そんなに凄かったのか?そのドラゴンは?」

エミルが聞いて来た。

「そうなんだよ。カースドラゴンとか言う黄泉の国から来たやつらしい。」

「今はどうしたんだ?」

「逃げるので精一杯で確認していない。1体は半分吹っ飛ばしたんだが・・もしかすると復活してるかもしれない。」

ラウルの読みは正しかった。半壊させたカースドラゴンは屍人や進化型グールを全て吸収しすでに復活を遂げていたからだ。

「黒炎だっけ?どんな感じだった?」

「あれは・・炎と言う概念じゃないと思う。燃えるには燃えるんだが何かが違う気がした。ヘリは危険じゃないかと思うよ。」

「逃げて正解ってことか・・」

「ああ。」

ヘリなどあんなものを喰らったらひとたまりもない。あっという間に消されてしまうだろう・・

「遅くなりました。」

するとアナミスが森の奥から遅れて合流する。遅れてきたアナミスも進化を遂げていた・・

色気が・・いろっぺぇ!!ムンムンとしている。美人すぎるし、そのてかてかの唇!吸いてぇぇぇぇ

「よろしければ今夜にでも!」

あ・・念話で通じちゃった・・

「アナミス!」

「あなたは!」

アナミスはシャーミリアとカララにたしなめられる。

「冗談ですけど。」

「まったくいつもご主人様に色目を・・」

「本当よ!抜け駆けはご法度!いいわね。」

「わかってるわ。」

なんだなんだ!俺の知らないところで何か順番が決められているのか?どういうことだ?と思いながらも冷静にアナミスに答える。

「アナミスご苦労様。俺達も今来たばかりだ。」

「はい。飛ばないと少々時間がかかりまして・・」

「だな。」

そして俺はミノス達の元に行く。

ミノスとラーズとドランも雰囲気が更に変わっている。ミノスは確実に究極奥義が使えるだろう風貌になっていて角が無くなった。ラーズは下あごが完全にひっこみ気のいい筋肉隆々の普通のおじさんになった。ドランは完全にヤ〇ザの幹部に成長した。そしてセイラが・・完全に女神になったようで後光が差している。ティラが南国の美少女に磨きをかけ、マカ、ナタがショタとして可愛く生まれ変わった。

だがしかし。各人・・物凄い魔力を内包していた。

「ラウル様・・どうやら敵のデモンの主を倒したようですな。」

「ああ。ギリギリだったけど何とかな。」

「あれがあの大量の屍人を呼んだのですね?」

「そのようだ。ネビロスとか言ったよ。ネクロマンサーの王なんだとか。」

「ネビロス!!伝承にて聞き及んだことがあります。デモンでも高位にあたると。」

「そうなんだな・・あんなのがいるとなると今後の作戦も変えていかないと危険だな。」

「はい。そのように思いました。」

ミノスが答える。

「して・・ラウル様カースドラゴンはどうするおつもりですか?」

ラーズが聞いてくる。

「もちろん討伐する。あんなのが大陸にいたら・・人間が居なくなってしまう。」

「わかりました。」

「腕がなりますなあ!」

「ああドラン・・お前の先祖かもしれんが既に魂は無い!思う存分にやってやろうぜ!」

「はい!」

俺達はカースドラゴンの討伐を誓うのだった。

あんなもの地上にいてはいけない。