軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第189話 森林基地設置交渉

議事堂前には長老達と数名のエルフそしてルカルが待っていた。

くぉん。

のしのしとセルマ熊がエルフの後ろから歩いてくる。

セルマ熊も一晩ここで待っていたので、俺に近づいて来てぺろぺろと舐める。

「本当にこんな化物を使役しているんだな。」

ルカルが言う。

「おい!バケモノなどと失礼であろう!ラウル殿のペットであるぞ!」

「ペットって親父殿・・こんな・・20メードもあるのがですか?」

その疑問に俺が答える。

「はい。ルカルさん俺の屋敷で働いていたキッチンメイドで今は熊なんです。おとなしくしていました?粗相はしていませんか?」

「ああ、ずっと寝ていた。しかし・・キッチンメイド?」

「そうなんですよ。」

「もう・・なにがなにやら・・」

ルカルは目を回した。

そして俺達は旅立つ準備をしケイナを連れて精霊の広場に来た。

精霊の広場には出立する俺達の他に、ラッシュを含む長老三名と息子のルカルそして世話係をしてくれた女性と数名のエルフがいた。

「ケイナぁ・・本当に行くのか?」

「ええ。ルカルお元気で。」

「おい!エミル!ケイナに何かあったら承知しないぞ!」

「出来る限り頑張って守ります。」

「絶対だ!」

あらら、また始まりそうだ。長老さんがちょっとおっかない顔してるけど・・

「ルカルさん大丈夫です。俺達が傷ひとつ付けさせませんよ。」

俺が言うと、ルカルが親父の顔をちらちらと見ながら答える。

「わかった・・とりあえず信じる事にしよう。だがケイナ!ダメならすぐに帰ってこいよ!」

「心配いりませんから。あなたに言われたくないし。」

「そんなぁ・・」

いやあ・・こんなに邪険にされたら俺なら既にノックダウンだな。逆にルカルはメンタルが強いやつだ。

「コホン!別れの挨拶はそれでいいのか?」

「あ、ああ。ケイナ・・ェミル・・元気でな。」

「はいありがとうございます。」

「ルカルもね。」

ルカルの目にはおもいっきり涙が溜まっているのに、ケイナとエミルの瞳は・・カラッとしている・・

長老3人が広場にある祭壇に向かって唱えだす。

すると昨日と同じように光の点が生まれ、それが輪になり広がっていく。

「開きました。」

「ありがとうございます長老。ひとまず私たちが先に出て安全を確かめます。」

「分かりました。」

「シャーミリア、カララ。」

「かしこまりました。」

「はい。」

シャーミリアとカララが先に光の輪をくぐって外の状況を確認する。

《シャーミリアどう?》

《はいご主人様。魔獣の反応はあれど警戒すべき敵は存在していません。》

《カララは?》

《ラウル様。こちらも問題ないようです。念のため糸で警戒網をはっておきます。》

《了解。》

「長老様。外は安全なようです。」

「わかりました。」

俺とファントムとアナミスに続いてエミルとケイナとラッシュ長老が外に出る。ほかの長老とエルフは森には出て来なかった。ルカルは最後までケイナに未練たらたらのようだったが、森に出ると光の輪が閉じてルカルも見えなくなった。

「さて・・二カルス大森林の主ですが・・」

「そこにおられます。」

ラッシュ長老が言うと、目の前にあの驚くほど太い大木があった。

「あ、これ?」

「はい。光の輪の出口は主様の所に開きますので・・」

「そうなんですね。」

しかしその大木は特に動くことなく雄大にそそり立っていた。

ラッシュ長老が木に語り掛ける。

「主様!主様がお認めになられました、エルフの光とご一行がお話したいことがあるそうです。」

・・・・・・・・・・・・・・・・

シーンとしている。

「あれ?本当にこれですか?」

「ええ・・主様。主様。」

長老が話しかけても反応はなかった。

「すみません。主様はお目覚めになるまで少々お時間がかかるのです。」

「そうなんですね。」

「はい。主様。主様。」

俺は人数分のバトルプラグ/戦闘用耳栓を召喚した。爆撃や銃撃の音から鼓膜を守り、人の声だけは通すという高性能の耳栓だ。

「すみません。皆さん・・これを耳にはめ込んでください。こういう風に。」

俺のはめるのを見本にして皆がそれを耳にはめ込むのを確認する。

そしてさらに俺は長距離音響発生装置LRADを召喚した。指向性あるスピーカーで一定方向に角度を絞って音を出す事が出来る。これは9km先まで音が届く高性能スピーカーだ。デモなどを鎮圧するための音響兵器でもある。

「皆さんバトルプラグをつけてはいますが念のため耳を塞いでくださいね。」

《まあ方向をかなり絞っているので周りには影響ないだろうけど。

長老とケイナがなぜかは分からずに耳を塞いだ。エミルと部下たちは何が行われるかを察して耳を塞ぐ。ファントムだけは何もしないでそこに突っ立っているだけだった。

「えっと、音の放射する方向を一定にと・・」

二カルスの主様にスピーカーを向ける。

「ボリュームを最大にしてと・・」

これなら9キロ先まで声が届くだろう。

コホン

「ぬしさまぁぁぁー!!!!」

「うわぁぁぁあ!!!うっさいわぁぁぁ!!!!」

「起きられましたかぁぁぁー!!!!」

「だから!!!!うっさいっと言っとるじゃろうが!!!!」

俺はLRADのスイッチを切った。主は何が起きたのか全く分かっていない様子だった。

「お目覚めでしょうか?」

「なんじゃぁぁぁ!」

主はパニクって周りをきょろきょろしているようだった。

「こっちです。」

主が足元にいる俺に気が付いた。

「お・・・お前は・・エルフの光と一緒に来た・・」

「ラウルです。」

「魔人の坊主じゃな。もう里から出てきよったのか?用事はすんだのか!?えらい早いの!」

「ええ、すぐに出立しますので・・それでは・・長老様お願いします。」

ラッシュ長老とケイナは跪いて首を垂れていた。

「二カルスの主様。ラッシュでございます。」

「お、おう!ラッシュか!いまの!もんのすごい音聞いた?何か知ってる?」

「いえ存じ上げません。」

高性能耳栓をして耳を塞いでいたため、ラッシュ長老も何が起こったのか知らない。

「そ、そうか・・びっくりしたわい。」

二カルスの主がきょろきょろビクビクしている。

「それでラッシュよ何用じゃ?」

「はい。ラウル殿から願いがあるそうなのです。主様がお認めになられましたエルフの光からの願いならば、一考に値するのではないかと。」

「ふむ。ラッシュの頼みとあらば聞かねばならんな。ラウルとやらなんじゃ?言うてみい。」

木から話をふられたので話す事にする。

「偉大なる主様よ!エルフの里ならびに二カルスの森は私の親友であるエミル、そして私の配下となった獣人たちの故郷です。」

「ふむ。」

「この森は太古からこの地上を見守って来た、世界の母であると思うのです。」

「そうじゃな。間違いない。」

「数年前にエルフや獣人そしてトレントが、無情にも焼き殺されたと聞いております。私は生命の故郷とも言えるこの森を脅かす者達から、全てを守りたいと考えております。我々魔人は今、北方で力をつけ着々と防衛の基礎を築いているところです。森を守るため、東西南北4方の森の端に防衛基地の設置を許可いただきたく思います。」

「いいよ。」

「は?」

「基地作ってもいいよ。」

「は、はい!ありがとうございます!主様の寛大な心に感謝します。」

あまりにもあっさりと認められたので流石に面食らってしまった。こんなに簡単でいいものなのだろうか?

「だってあいつら、いきなり燃やすんじゃもん。怖いじゃろが!それをお主は守ってくれるというんじゃろ?」

「そのとおりです。全力で。」

「じゃおねがいね。」

「わかりました。すぐに行動に移りたいと思います。我々が基地の設立をするにあたり、トレント全てに話を通していただけますと助かります。」

「あ、もう伝えた。」

このじいさん見かけによらず判断が早いし仕事も早い。

「そ・・そうですか。では、北東南西の順で基地を配置いたします。武器や魔人なども多数配備しますのでご了承いただければ幸いです。」

「早くやってくれ。安心したいんじゃ。」

「了解しました。」

話はあっさり片付いた。

「それともう一つよろしいでしょうか?」

「なんじゃ?いうてみい。」

「このエルフの里と言う空間をお作りになったのは・・もしや神という存在では?」

「いやちがうよ。」

「ではどういった方が?」

「わし。」

「え!主様がお作りになったのですか?」

「そうじゃ。作ったばっかりの頃のエルフは知ってたかもしれんが、伝えていなかったからのう・・ラッシュも知らんかったか?」

「は・・はい!存じ上げませんでした。」

凄いな木のじいさん。こんな空間作れちゃうほどの偉大な人だったのね。

「という事は主様がいなくなるとここは?」

「消えるのう。」

「中にいる人たちは?」

「外に吐き出されてしまうじゃろな。」

「もう作れなくなると?」

「いや・・次に二カルスの森を引き継ぐ主が作れるようになるじゃろ。時間はかかるかもしれんがの。」

「これは他の地に作れるのですか?」

「無理じゃな。側にワシがおらんといかんし、エルフの賢者が3人いないと作れんのじゃ。」

なるほど。という事は二カルスの森以外には異空間を作る事は出来ないという事か・・

「あ、じゃがな。」

「はい。」

「わしは世界中のトレントがいる森ならば、これに出入りする門を作る事ができるんじゃが。」

「えっ!?」

えっと・・

「入るだけなら、世界のトレントがいる森のどこからでも入れるという事ですか?」

「そうじゃ。」

「でも主様が認証しなければ入れないんですよね?」

「そうじゃ。」

「そして入れてほしいと伝えなければならないというわけですよね。」

「そこそこの森にいるトレントに伝えればわかるわい。」

ふむ。トレントがいる森ならどこからでも入れるという事か。ただしカギになるものがあるだろうな。

「門を開けるために必要な物は?」

「そこのエルフの光じゃな」

「エミルですか?」

「そうじゃ。」

なるほどエミルがそこにいる事が必須と言うわけか。

「あの!例えば森に基地を作った後、この空間を通して兵を森に送り込むという事はできますか?」

「容易いじゃろ。エルフの里を出る時に、わしの側に出てくるがそれでよければの。」

「ええ問題ありません。この森にうちの兵が恐れるような魔獣はおりませんので。」

「なるほどの。懐かしいのう・・昔はこの森にも魔人がおったのじゃ。あの時の様に、魔人が守護者として森に入るというのであれば願ったりかなったりじゃよ。」

「え!?魔人が森の守護を?」

「人魔の戦いで大陸を追われるまではの。」

「ではどちらかと言うと、昔に戻るといった内容なのでしょうか?」

「そういう事じゃな。」

なるほど。あっさり納得した理由がわかった・・この主さんは魔人の事を知っているんだ。大陸にいる魔人は人に討伐されほとんどいなくなったから、二カルスの森は魔獣とトレントが守っていたという事になる。魔獣を使役されてしまい裸同然になってしまっていたのだ。

「WINWINだったか。」

「そうだな。」

エミルだけが答える。ほかの者は全員俺達が何を言ったのかも分からないようだった。

「なんじゃ?うぃんうぃんとか言う響きが聞こえたが・・なんかカッコいいのう。何という意味じゃ?」

「お互いが良い事になる関係という事です。」

「うぃんうぃんか・・いいな!わしもこれから使おう。」

きっと意味は分かっていないと思うが響きが気に入ったらしかった。

「それでは!まずは我々はバルギウスに飛びます!広い土地が欲しいのですが・・」

「ああそれなら、わしがよけて地ならしをしてやろう。」

ズッズズズズッズズ

主の巨大な根っこが地面から全部抜けた。

地震がおきたようだ。

ズンズンズンズン

歩くたびに地震が起きる。

ズーンズーン

根っこの抜けたところをバンバン叩いてかためてくれた。

「これでどうじゃ?」

「ありがとうございます!十分です!」

俺は再び、スーパースタリオン巨大ヘリを召喚する。

ズゥゥゥン

「うわ!」

「きゃっ!」

長老とケイナが驚いていた。そりゃそうだ。

「じゃあこれに乗り込みます。」

エミルが長老に深く頭を下げて挨拶をする。

「これからもお世話になります。」

「こちらこそ・・エルフの未来に一筋の光がさしたようだ。ケイナをよろしくな。」

「わかりました。」

「では長老いってまいります。」

エミルがケイナの手を引きヘリの中に連れていく。魔人達も主と長老に挨拶をしてヘリに乗り込んだ。セルマ熊はキッと二カルスの主を睨んでヘリに入っていく・・やっぱりトレントが邪魔なようだ。一瞬、主がビクゥとした気がした。

「では主よ!長老様も!ありがとうございました。また日を改めまして来ます。」

「はい。ケイナをよろしくお願いします。」

「わかりました。」

「あの・・ペット・・あれ、ちゃんと躾けてくれるようにのう。あれ怖いんじゃが・・」

「もちろんです。大変失礼をいたしました。」

そして俺は深く礼をしてスーパースタリオンに乗り込んだ。

「エミル。だしてくれ。」

「了解!隊長。」

シュンシュンと音を立ててヘリは二カルスの森を飛び立つのだった。