軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第190話 バルギウス帝都戦、開戦

バルギウスに向けてスーパースタリオン(巨大ヘリ)が飛んでいた。異世界の広大な森の上に現代兵器がぽつんと浮かんでいる。時折、鳥型の魔獣が姿を現すが逃げて行ってしまう。

《巨大魔獣だとでも認識しているのだろうか?》

俺がそんなことを考えていると、エミルが話し出す。

「ラウル何ていうか・・風が見えるんだが・・」

「ん?風が見える?どゆこと?」

「文字通り風が見えるんだよ。どういう風に吹いてどちらに向かっていくか、どこから向かって来るのか分かるんだ。」

「そうなのか?」

「何ていうか・・水流の様に見える。」

「なるほど・・それでか。」

「何がなるほどなんだ?」

「気が付かないのか?」

「なにが?」

「機体が地上にでもいるかのように安定しているぞ。」

「そうなのか?無意識にやっていたが・・」

「とてもスムーズで揺れが極端に少ないように感じる。」

「そうか自然にやってたわ・・なんて言うか風が読めるんだ。風を読んで飛ぶと凄く飛びやすいんだ。」

「風を読むか・・不思議な力だな。」

「ああ・・」

おそらくエミルはそのうち巨大な蟲とも話し出すだろうな。どうやら風の精霊シルフの影響でひとつ能力が開花したらしかった。

燃料の都合で一度森に降りてスーパースタリオンをばらす。密林なので不時着する事しかできないが既に全員慣れたものだった。ケイナだけが面食らって青い顔をしていたが、エミルが彼女を落ち着かせるように話しかけていた。

さらに召喚した新しい機体で更に北へ北へと向かった。

《俺達のこれまでの行動は、この世界の常識から考えれば数年もかかるだろう。しかしトラックやヘリの活用のおかげで数ヶ月で出来てしまった。あとは魔人の力が大きいか・・いくら近代兵器を使ったとはいえ人間じゃこうはいかない。俺達の一番の武器は時間かもしれない。》

あっというまに常識を変えてしまった現代兵器の凄さを改めて感じる。

俺はユークリット王都付近に駐留している部隊に念話を飛ばした。

《ミノス隊》

《は!》

《すでにバルギウス帝国内の領の上を飛んでいる。二カルス大森林を視察した結果、南方の森方面からの敵襲は無いとみていい。》

《わかりました。》

《これからバルギウスで陽動作戦に入るから思う存分暴れてくれ。》

《はい。》

《我々の力を示さねばいけませんな。》

《落とし前はきっちりつけてやりましょう。》

《市民がいる場合は安全を確保しながらですわね。》

ミノス、ラーズ、ドラン、セイラが順番に答えてくる。

《こちらもバルギウスの巨大な都市が見えてきた。皆、時計を合わせろ。ひとごーまるまる(15:00)作戦開始だ。》

《了解!!!!!》

俺たちは数キロ先の1000メートル上空からバルギウスの巨大な都市を見ていた。こちらからは双眼鏡で確認をしているが向こうから確認する術はないはずだ。

「市民もいるんだろうな。」

「はいご主人様たくさんの人間の気配を感じますが、微弱な者が多数おります。」

「そうか・・ヘリからの強襲と思っていたが地上戦だな。」

「かしこまりました。」

「エミル!一度スーパースタリオンを分解し、再度ヘリを召喚する。一度郊外に着陸してくれ。」

「了解。」

ヘリは郊外の森に着陸した。

皆がヘリを出て地上に降りるが、やはり20メートルのセルマ熊はぎっちぎちでうまく降りられないため、カララがスーパースタリオンを分解して外に出してやる。

「エルフの二人には戦闘は危険なのでヘリを召喚する。エミルとケイナはそれで戦闘に参加してくれ。」

「わかった。」

俺が手を前に突き出して新たにヘリを召喚する。

そういえばこの手を前に突き出すしぐさ・・別にしなくても召喚できるんだけど、カッコよさそうだからやっている。なんか錬金術師みたいだし。一回パン!って胸の前で手を叩いてもカッコいいよな。

ドン!

めちゃくちゃカッコいいものが眼前に出てきた。

「おい!ラウル!ヴァイパーじゃないか!」

「初めて召喚するけど・・」

「「かぁーこいいよなぁ〜!!」」

俺とエミルは声が被ってしまった。

AH-1Z ヴァイパー戦闘ヘリ。

乗員はパイロットと射手の2名。ターボシャフトエンジンを2機登載し、標準装備のM197-3連式20mmガトリング砲に加えて、側面にはAIM-9Lサイドワインダー2発、M261ハイドラ70ロケットポッドを2基、AGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルを8発装備させている。

「エミルとケイナはこれで戦闘に参加してくれ。ただ俺達が攻撃するので出番はないかもしれない。二人は俺達とは丈夫さが違うから十分注意してほしい。」

「了解だ。ヘリに乗って下手はうたないよ。」

「エミル。長老様には怪我をさせないと約束したんだ。ケイナを頼むよ。」

「ああ。」

そして俺とシャーミリア、カララ、アナミス、ファントム、セルマ熊はバルギウス帝都及びユークリット王都同時作戦の為、バルギウスへの攻撃打ち合わせをするのだった。

時計の時間は14:20をさしていた。ユークリット王都攻略部隊が行動するまで40分の間に騒ぎを起こす予定だ。

そのため正面から堂々と近づく作戦にした。

俺達は森を抜けて普通に南門に向けて進んできた。人間の進行スピードとはわけが違うためほぼ数分で到着する。バルギウス帝都の城壁は恐ろしく頑丈そうだった。城壁の上には兵士たちが見張りをしている。

東西にのびる城壁はどこまでも続いていて十数キロはあるようだった。

「と、止まれ!」

門番に呼び止められ俺達は止まる。

「なぜバケモノがいる!なんだお前たちは!」

「旅の者にございます。」

「そんな旅人がいるか!!」

中から数十人の衛兵が出てきた。強い兵士もいるが・・今となっては大した事はない。

そして俺達が決定的におかしい点は巨大なレッドベアーを連れている事だ。人間に魔獣を使役する事は出来ない。そんなことが出来るのは俺と敵にいる正体不明の存在だけだ。

さらに恐ろしいのはファントムだ・・どう見ても人間じゃない。その異常さに拍車をかけているのが、3人のこの世の者とは思えない美しい美女だ。

「本当です。隣の領からきました。」

「はぁ!?その巨大なバケモノはなんだ?」

ぐるるるるるる

バケモノと呼ばれてセルマが大きく喉を鳴らす。

「ひっ!」

「バケモノだなんて。ペットですよ。エサを与えすぎて少し大きくなりすぎたんです。」

「ぺ、ペット?そんなことあるか!」

「本当です。」

ざわざわとしている。少し後ずさりながら・・様子を見ているがどうやって仕留めようか考えているようにも見える。

「そんな恰好で来たのか?」

相手はさらにおかしい事に気が付いたようだ。

俺が腹側にリュックと背に無線機を背負っているが、ほかのメンバーは誰も装備を身に着けていない。

シャーミリアは金の縦まきロールのお嬢ヘヤーにドレス姿。

カララは天女の羽衣のような薄い布1枚のような服装。

アナミスは黒い皮で作られたビスチェのようなものに皮のミニスカート。

ファントムは旧ドイツ兵のようなロングコート

俺は貴族のお坊ちゃんのようなフリフリのシャツにズボン。

そして・・巨大なクマのペット。

そんな一行が普通の旅人であるはずがない。

絶対にバケモノご一行だ。

「旅行の時はいつもこのような服装にて移動しておりますので。」

「そんなわけあるかぁ!」

「本当です。」

「この熊に矢を放て!槍をつけ!怪しい奴らをひっとらえろ!」

シュンシュン

城壁の上から槍が飛んできて、セルマ熊にぶつかるが刺さりもせずカランカランと地面に落ちた。6騎の騎兵部隊が門から出てきて槍を構えセルマに突進していく。

強い兵士もいるようだが・・

刺さらない。

ボキっと折れたり、はじき返されて落馬する者も出る始末だ。

「うぐぐ!!全軍かかれ!この者たちを殺せ!」

30名の兵達が剣を構えて突進してくる。

しかしその集団に横からセルマ熊が体当たりをぶちかました。

べぎょぎょぎょ

何人もの兵士がひしゃげ潰れ飛んでいく。4〜5人がその体当たりからよけしりもちをついた。

「くそ!敵襲だ!兵を呼べ!」

数名が騒いでいる。騎馬から落とされなかった人が帝都内に戻って行った。

「貴様ら!この帝都には50万のバルギウス兵がいるのだ!兵を殺して無事で住むと思うな!」

《えー50万人も兵隊がいるのー!面倒だな。》

「魔法使いはまだか!」

「来ました!」

「撃て!」

魔法使いたちが城壁の上に這い上がって来て呪文の詠唱を始めた。

「ゆっくり唱えさせてやりたいけどな。そうも言ってられないんだ。」

俺はSVDドラグノフ セミオートスナイパーライフルを召喚した。7.62㎜×54弾を15発連射する事が出来るスナイパーライフルだった。名機AKを元に開発されたこれも素晴らしい銃である。部品点数が少なく信頼性が高いものだった。

ズドン!

ズドン!

ズドン!

ズドン!

ズドン!

最初に上に上がって詠唱を始めていた魔法使いが、脳漿を飛び散らせながら城壁の向こう側に落ちていく。

「なんだ!魔法を使うぞ!岩弾か?気を付けろ!」

「結界をはれ!魔法を防げ!」

《いや・・結界を張れば魔法が使えなくなるよ。いいの?》

ワー!ワー!

ウォォォォー

「殺せー!」

門の中から大勢の兵士が出てきた。準備が出来てなかったものもいるらしく甲冑を着ていない者もいる。

ぞろぞろと出てくるな・・・

がぁぁぁぁああ

セルマ熊がその20メートルの巨体を俊敏に走らせ、爪で兵士を引き裂き始めた。

「ぐぁぁぁぁぁ」

「ガボォ」

上半身と下半身を分裂させたり、頭を吹き飛ばしてしまったり、上半身が消滅したりしてどんどん兵士たちが死んでいく。

「押せ!押せ!魔法使いは後方援護!」

既に詠唱を終わらせたものもいるらしく炎の玉が降り注いだ。

「カララ。」

「はい。」

カララはその魔法攻撃のことごとくを糸で切り裂いてしまった。

「よしセルマ!時間稼ぎをありがとう。兵がだいぶ集まって来たから後方に下がって」

くぉん!

セルマ熊が俺達の横を通り過ぎて後方にどかどかと走っていった。

すでにシャーミリアはM134ミニガンとバックパックを装着している。

ファントムはM61バルカン砲と弾丸タンクを装備している。

アナミスにはM240中機関銃とバックパックを装備していた。

俺とカララは3人の後方にいる。

カララにはまだ特に武器を持たせてはいない。

すでに門の中からと城壁の外側の東西から大量に兵士たちが湧き出て来ていた。

「アリの巣を壊したみたいだ。」

ワァァァァァ

ウォォォォォ

《よし!セルマ熊に食いついていっぱい出て来てくれた。じゃあやるとしますかぁー》

「よし。約束のひとごーまるまるだ。撃て。」

俺は命令を下した。