軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第166話 異世界人

俺たち魔人軍はフォレスト邸跡にてテントを設置し焚火を焚いている。

夜の帳が下りてあたりは暗く、街の中の家々には明かりが灯っていた。

サナリア内に残留している民がそれぞれの家に戻っていき、今頃は皆が屋根の下で話し合っている頃だろう。

「どうなるのでしょう?」

「うん・・たぶん意見が割れるだろうね。」

「良い選択をしてくれるといいのですが。」

「だな。特にハリスという傷のある男。彼が説得にまわってくれるといいんだが・・」

「そうですね・・」

俺とカトリーヌが話しているのを皆が黙って聞いていた。焚火の炎がメラメラと燃え上がっている。その炎を見つめながら今日の事を思い出していた。

《ラウル様!ラウル様と直接お話したいという人間が来ております。》

見張りに立っていたミノスから唐突に念話が入ってくる。

《どんなやつだ?》

《頬に傷がある者と、背の高い人間ですが、いえ・・人間ではない?ようです。》

《通せ。》

《は!》

おそらく広場で話していたハリスと・・もう一人は誰だ?

門を3人の人影がくぐってくるのが見える。ラーズが連れて来てくれたようだ。

「ラウル様。人間を連れてまいりました。」

「ラーズ!ご苦労様。見張りに戻ってくれ。」

「は!」

ラーズは俺に一礼をしてまた門の方に戻っていく。フォレスト邸の門と四方にはそれぞれ見張りを立たせている。ラーズはミノスと一緒に門を見張っていた。

人間二人はそのまま焚火をはさんで俺の向かい側に立っていた。このままでは話しづらいので、俺が立ち上がって彼らのもとに近づこうとすると、シャーミリアが俺の後ろについて来ようとする。

「シャーミリア。大丈夫だ護衛は不要だ。」

「はい・・」

シャーミリアはスッと暗闇に消える。彼らが怖がるといけないのでファントムもついてくるのをやめさせた。

「こんばんは。どうしました?」

俺の方から声をかける。俺の前に立っていたのは昼間に広場で話をしたハリスと、長身の美形の男だった・・いや・・女?美形すぎて分からん。

「こんばんは・・夜分にすみません。ご無礼をお許しください。」

ハリスが恐縮しながら、もう一人の男と一緒に俺に礼をする。

「無礼とか思ってないです。まあ誰か来るかもしれないと交代で起きていましたしね。」

「そうなんですか、なんというか貴族にしては気さくな方ですね・・。」

「俺はそんな偉くないですし。」

「そんなことは・・」

「で?」

なかなか本題に入らないので促してやる。

「はい。実はですね・・ちょっとお話がございまして・・」

「話?」

「私ではないのです。私の息子がです。」

「息子さん?こちらの?・・えっと彼は人間じゃない?」

「よくお分かりになりますね。でも人間じゃないというのは違います。」

「というと?」

「わたしとエルフの子です。」

「エルフとの・・・」

「はい。」

ひょろっとしていて身長が190センチくらいありそうだ。ハリスより20センチくらい高い、子供と言っていたが一体何歳なんだろう?

「君はいくつなんだい?」

「12才です。」

12才!!デカイ!!こんな12才いるのか?

「大きいね。」

「母がエルフなもので。」

なんと彼は俺と同じ歳だった。背が高いのはエルフの血のせいか?俺は彼を見上げた。

「話って何だい?」

「あの・・・今日の戦いで使っていた兵器ですが・・」

「俺達の部隊が使っていたやつか?」

「はい・・あれは。機関銃ではないですか?」

!?!?!?!?!?

機関銃を知っている!

どういうことだ!?

俺は少し身構えてしまった。が、相手に敵意などが無いためすぐに緊張を解く。周りにいた魔人達が俺の警戒に反応して、剣を握っていた。

「ああすまん。みんな鞘を納めてくれ問題ない。」

ガシャ

ガチャン

俺の掛け声に魔人の皆が静かになる。

「君は・・あれを知っているのか?」

「・・・あの・・出来れば二人だけで話せますか?」

「いいよ。」

スッ!

「ご主人様!?」

一瞬でシャーミリアが俺の前に出現したので、ハリスも少年も驚いて尻もちをついた。

さっきのピリついた気配にプラスして、2人きりになろうなんて言うからシャーミリアが出てきちゃった。

「驚かせてすまない。魔人達は俺に連動してて俺が驚いたりすると、すぐに防御行動や戦闘行動にうつるんだよ。」

ハリスがガチガチと震えている。そりゃあ無理もない・・軽くでもこいつら魔人の殺気に触れたら人間は立ってなどいられない。だが息子のほうは・・そうでもないな。

「シャーミリア・・大丈夫だよ。」

「しかし。」

「問題ない。」

「かしこまりました。」

俺と少年は二人で空いているテントに向かう。

「父さん・・ここで待っててね。」

「あ、ああ。」

どうやらハリスも不安そうだったが、俺達は二人でテントの方に歩いて行く。

俺達はすぐにテントに潜り込んだ。

「どうしてあれを知ってる?」

俺はテントに入って早々に慌てて少年に聞いた。

「私もびっくりしているのです。どうして私の生まれた故郷の兵器があるのか。」

「故郷?」

「まあ・・故郷と言っても広い意味です。私の星・・と言った方が正しいでしょうか?」

「地球・・?」

「はい!私は地球で死んでこっちの世界に来たんです。」

「え!!転生したんですか?」

「はい。あなたもなんですね?」

「ええ。」

そうか・・そうだよな。この世界には俺しか転生者はいないと思っていた。でも・・俺が転生するなら、ほかにも転生者がいたっておかしくない。

「凄い・・まさか転生者がいたなんて・・」

少年が呟いた。

「俺も驚いてますよ。転生者なんて俺しかいないと思っていたから。」

「本当に!こちらの世界で12年間生きてきて、いきなり向こうの文明の利器を目にすることになるとは!」

「はは・・武器や車ですよね。」

「ええ、見た時は鳥肌がたちました。」

兵器を見てこんなに興奮するなんて・・この人前世でどういう人だったんだろう?

「えっと。君はどこの国の人だったんですか?」

「日本人です。」

マジか!?

「あの・・俺も日本人なんです。」

「え!?マジですか?」

「マジです。」

「あんな武器を持っているので海外の軍関係者だと思ってました。」

「自分でも・・なんであんなのが出せるのか不思議でした。」

「あれ出してるんですか?」

「そうなんです。」

「凄い・・かっこいい!」

「かっこいいですよね!俺が向こうの世界の銃弾と一緒に転生したのが原因みたいなんです!」

「銃弾と一緒に転生?そんなことがあるんですか?」

「変ですよね。でもそんなことあるんです・・・」

俺はこのハーフエルフとやたら意気投合しそうになる。まてよ・・いきなり信用してべらべら話し過ぎただろうか?慌てて冷静さを取り戻して聞く。

「向こうで死んでこちらに来たんですか?」

「はい・・飛行機がハイジャックされて、そして墜ちました。」

「飛行機が・・ハイジャックに?」

「はい。」

「パイロットだったとか?」

「いえ客です旅行といいますか・・」

「そうなんですね。それは痛ましい事ですね・・」

壮絶な死に方をしたらしい。そんな死に方するのは日本人じゃ珍しいと思う。

「あなたも死んだんですか?」

「はい。私は遊びで死にました。」

「遊びで死んだ!?そんな・・動画配信者とか?」

「動画配信者!こっちに来てその言葉を聞くなんて!でも違います。配信者ではありません。」

「えっと、ではどんな遊びで?」

「あの、マニアックすぎてひいちゃうかもしれないんですが・・サバゲ―です」

「えええ!!マジですか?サバゲーは俺もやるんです!サバゲ―で死んだんですか!!」

ハーフエルフが大声を出してしまう。

「しー!!」

「ああ・・すみません。」

「実は・・俺、アメリカの大会で実弾で撃たれまして・・」

「アメリカの大会で・・え・・ちょっと、ちょっとまって!」

「ん?どうしたんですか?」

「まさか、日本人チームで参加してました?」

「はい・・」

「まさか君は・・淳弥か?」

「えっ・・・」

「じゅ・・淳弥・・おまえ・・淳弥なのか?」

「えっ?なんで俺を?」

「俺だよ。田中敦史だよ。」

ポロポロポロポロ

いきなりハーフエルフの目から大粒の涙がこぼれ落ちてくる。

ツーッ

俺の目からも涙がこぼれ始める。

「あっちゃんか!?」

「すげえ・・まさか淳弥も転生してたんだ!」

「あっちゃん!ホント・・ごめん。あの時せっかく楽しいアメリカでの大会を、俺がぶち壊しちゃって。」

「なにいってんだ!お前のせいじゃないよ!」

「あっちゃんは飛行機事故で死んだんだって?」

「そうなんだよ!あの後すぐだ!帰りの飛行機がハイジャックされて堕ちたんだよ。」

「あの後すぐ!?」

「ああ、皆川と林田も乗っていた。生死はわからないがおそらく絶望的だと思う。」

「なんてこった、まさかあの後の帰国の飛行機でか。」

3人は日本に帰る事が出来なかったというのか。そして、あっちゃんが同じ世界に転生して来ただなんて・・

「でもあっちゃん・・それならさ、もしかしたら大介と 理(おさむ) もこっちの世界に来てるかもしれないな・・」

「ああ、俺達が来ているのならそうかもしれない・・」

「あっちゃんは、どこで生まれたんだ?」

「この世界でか?」

「ああ。」

「二カルス大森林のエルフの里だ。」

「おお!これから行こうと思っていた場所だ。」

「そうなのか?エルフがいっぱいいるぞ。」

「うわぁすげえなあ・・エルフかあ。」

エルフ。うちにもダークエルフはいるがエルフは見た事が無い。魔人に負けず劣らず長寿なんだよなたしか・・

「淳弥はこのサナリアの生まれなのか?」

「いや・・俺は人間と魔族のハーフらしくてさ、訳ありでフォレスト家に拾われたんだ。貴族として育ってきたんだが、いきなり国が滅ぼされて今に至るのさ。」

「魔人と人間のハーフって、お互い・・ハードだな。俺、平和なエルフの里にずっといたかったけど、母親が死んでしまってな・・」

「死んだ?エルフって長寿じゃないのか?」

「それが・・殺されちゃったんだよ。」

「悪いこと聞いたな・・」

「いやいいんだ。」

「それでバルギウスに?」

「親父が一人になっちまってな・・ついてきたんだよ。」

なんかあっちゃんもずいぶんハードな人生を送ってるな。それでバルギウスから強制的に連れてこられて労働を強いられてるのか・・

「あっちゃんのこっちの名前は?」

「エミル・ディアノーゼだよ。淳弥は?」

「人間名はラウル・フォレストで、魔人名はアルガルド・サラスさ。」

「二つも名前があるのか?大変だな。」

「ああ、全くだ。しかも・・魔王の息子で、王子なんだよ。」

「うわ!王子様!全然見えない。」

「だよな!見えないよな!」

「だから・・みんなラウル様と呼んでいるのか、臣下の人たちは。」

「そうらしいんだが、もう一つ訳があってな・・俺は元始の魔人とやらに関係があって、魔人全員と繋がっているんだよ。だから俺に何かあると魔人達が大変なことになる。」

「おっかねえな。」

「ああ。」

「とりあえず俺も表面上は淳弥に従うように話すよ。」

「その方がいいかもな。」

「まあ・・淳弥は前世でもサバゲの隊長だしな。」

「はははは。」

「あははは。」

久しぶりに友達と話せてうれしかった。あっちゃんとまた会えるとは夢にも思わなかったし、今度はあんな悲しい思いをさせたくない。

「あ・・ところでさ。あっちゃんヘリコプターの免許あったよね。」

「ライセンス持ってたから。本職だし。」

「ドクターヘリのパイロットだもんな。」

「マジですっごい大変な仕事だったから・・こっちに来てのんびりしちゃってる。」

「そうなんだ。でも今は自由が無いよね。」

「そう、生存権も国に握られているからね・・最悪さ。」

「あっちゃん・・いや・・エミル。一緒に世界を変えないか?」

「世界・・ラウル様ずいぶん大それたことを。」

「いや・・超マジだよ。」

「面白そうだ。乗った。」

俺とあっちゃんは腕をがっちり組んで約束を交わすのだった。