軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第114話 伝説の薬師

目的の店に向かって4人で歩いて行く。

繁華街には人もいて4人で歩いていても目立たない、だれもが普通の冒険者だと思うだろう。

「意外だな。」

「そうですね。」

「前に来た時と変らない雰囲気だ。」

「本当です。戦争が起きて変わったかと思っていました。」

「だな。」

ルフラとアナミスは初めて見るグラドラム以外の人間の街に、すこし緊張しているようだった。

「大丈夫だよ。ルフラは間違いなくいまこの街で一番強い存在だ。何が起きても問題ない。」

「いえ・・わたしよりも、ラウル様をお守り通せるかが不安なのです。」

「俺も大丈夫だよ。」

今4人はバッグなどをもって拳銃を隠している。怪しまれないように剣を腰にさして弓矢を背中に背負っていたりする。俺も槍の先に布を巻きつけて肩に担いで歩いている。どこからどう見ても冒険者パーティーだ。まさか伝説級の魔人がこんなところを歩いているとは思うまい。

「あの店だ。」

「変わっていませんね。」

俺とマリアは一度だけニクルスさんに連れられてきたことがあった。

俺が訪ねる相手はこの店の店主だ。

ギィ

扉を開けて中に入る。煙たいような甘い匂いのする店内は前に来た時と変っていなかった。しかし特に陳列されている物はなく、薬草などがそのあたりに無造作に置いてある。

「すいません!」

誰もいなかったので店内の奥に向かって声をかけてみる。

「今日はもう店じまいだよ!」

聞き覚えのある声だった。

「あの?客じゃないんです。」

「ワシにゃ用はないよ!」

まったく出てくる気配がなかった。こまった・・このまま奥に入っていいんだろうか?また来るなんてことも出来ないのでどうしようか迷い、もう一度声をかけてみる。

「あの!ニクルスさんを知っておいでですか?」

タタタ バン!

「おまえさんは・・?」

奥の方からドアを開けて薬師のデイジーが出てきた。

「ああデイジーさんこんばんわ。」

「たしか・・そっちの女に見覚えがあるね・・。ニクルスと一緒に来たことがあるね?」

「はい、来たことがあります。お久しぶりです。」

「そっちは・・」

「俺も来たことがあるんです。」

「いや・・その時一緒に来たのは子供だったけどねぇ・・」

「それが俺です」

「こんなに成長するもんかい・・」

「それが・・したんです。」

デイジーは思い出すように俺をじっくりと見ていた。

「そうか・・生きていたんかい。よかったよ・・」

「それで、デイジーさん商人のニクルスさんに会いたいのですが、ここに来ることはありますか?」

「ニクルスはね・・殺されたよ。あいつらにね。」

「そんな・・殺された・・」

一つの情報の確認が取れた。あの時世話になったラシュタルの商人のニクルスさんの消息を追う為にここに来たのだが、ニクルスさんは死んでしまったようだった。

「だれに?」

「お前さんたちを逃がすためにね、拷問を受けてそして殺されてしまったのさ。」

「俺達を逃がすために?」

「あんたの母さん別嬪さんなんだってね。母上はシュラーデンの貴族と言っていたらしいが、ニクルスはユークリットの女神と見抜いていたのさ。」

《そうだったのか・・ニクルスさんはそれを承知で。だからあの時、馬車を俺達にくれたんだ。》

「殺したのはやはり」

「ああ、ファートリアとバルギウスの連合軍さ。」

そうか、俺達を助けたばかりに殺されてしまったんだな。やはりこの世界の秩序はおかしくなってしまった。

「ところで・・だれかにつけられなかったかい?」

「関門を通ってきておりません。」

「そうかい、じゃあ立ち話もなんだ・・奥にきな。」

俺達4人は奥に通された。デイジーは敵か味方かもわからなかった為、まだ包囲している魔人達に連絡は入れていない。

通路を通って奥に入っていく。

奥の部屋にはテーブルと6人掛けの椅子が置いてあった。古びたテーブルだが分厚くて頑丈そうだった。店の奥に入るとより一層薬の匂いが強くなったが・・嫌な感じの匂いじゃなかった。

「お座り」

「ありがとうございます。」

デイジーはまるっこくって小さい老婆で、鼻が大きくて鼻の脇にイボがある。ロウソクの灯りでその顔がゆらゆらと照らされている。

ハーブでお茶を入れてくれた。4人はありがたくそれを頂戴した。

「しかしよく生きていられたね?」

デイジーが声をかけてくる。

「ええ、グラドラムまで逃げ魔人に助けを求めました。」

「魔人にかい?食われなかったのかい?」

「はは、魔人は人を食いませんよ」

《実際は食うやつもいるけどね・・》

「そうなのかい?そいつはしらなかったよ・・森に入って薬草を取るのに冒険者は命がけで探すんだけどねえ。」

「それは・・魔人じゃなく魔獣ですね。」

「同じような物じゃないのかい?」

「全く違います。彼らは理性的でとても純粋な種族でした。」

「まああんたらがこうやって助かってるんだからねぇ。きっとそうなんだろうね。」

意外に簡単に理解してくれた。まあ年寄りのなのでそれほど面倒に考えていないのかもしれない。

「それでなんでわざわざ、ワシのところなんかに?」

「デイジーさんはファートリア神聖国で有名な薬師だったんですよね?ニクルスさんから聞いていました。」

「そんな昔の話は忘れたよ。」

「俺達はファートリア神聖国のある人を探しているんです。」

「人探しかい?」

「最近までラシュタルにいたサイナス・ケルジュ枢機卿という方を知っていますか?」

「知ってるなんてもんじゃない、あの爺さんのことは良ーくわかっておる。まあ・・腐れ縁のようなものでね、若い時は色ボケ魔法使いだったんじゃよ。ワシにも色目なんぞ使いおって・・」

《えーっと・・ええ!!神様の銭湯の女主人みたいな・・この・・》

「おや・・こんな婆さんを口説く奴なんかいるのか?って思ったねぇ・・今。」

「いえ・・そんなこと思いません。」

「若いころはワシも美人だったんじゃよ。」

《とにかく!ビンゴだ!やはり知っていた》

「ケルジュ枢機卿が今どこにいるか分かりますか?」

「そういうことかね、ならば協力させてもらうよ。」

「え?ではどこにいるか知っているんですか?」

「知らん」

《ガクッ!てっきり知ってるもんだと思ったじゃないか・・》

「ただしワシの古い知り合いに聞けばわかるかもしれん。」

「古い知り合いですか?」

「ああユークリットのサウエル・モーリスという魔導士に聞けばわかるやもしれん・・」

「モーリス先生ですか!」

「なんじゃ!大きい声をだして!知っとるのか?」

「はい、私の師です。」

「なんじゃと!それを早く言わんか!」

《と言われても、まさかここで話がつながるとも思っていなかったし、デイジーがいったいどんな人なのかも知らなかったから・・無理なんだけど》

「モーリス先生とケルジュ枢機卿とはどういう関係だったんですか?」

「一緒の冒険者パーティーじゃったわ。」

「えっ!デイジーさん冒険者だったんですか?」

「ワシャ今は薬師をしておるが、昔は天候を操るネイチャーマスターという職業じゃった。」

そうなのか。冒険者パーティーの一員だったんだ・・見かけによらない。

「デイジーさんも何かの活動をしているのですか?」

「みんなこっちへおいで。」

家の奥の方に歩いて行く。すると部屋があり石畳の通路にかわった。

全員がついて行くと通路は行き止まりになった。するとデイジーさんは床に手をあてて何やらつぶやく。すると床がずれて地下への階段が出てきた。

全員が下に下りていくとさらに通路が出てきて奥に進んでいく。

「ここじゃ。」

ガー

石でできたドアを開けると中は広い研究所のような場所になっていた。

「ワシャここで反乱の意志のある者たちのために薬をつくっておる。搬送役の密偵に定期的に渡すようにしておるのだ。」

「デイジーさんは反乱軍ですか?」

「反乱軍などという大それたものではないわ。ただワシに出来る事をしているのじゃよ。こんな老いぼれでは出来る事など少ない・・」

マリア、アナミス、ルフラが綺麗に輝く薬品を見ていた。

ひときわ綺麗に赤く光る薬がたくさん置いてあった。

「綺麗・・」

マリアがつぶやいた。するとデイジーが答えた。

「これはエリクサーじゃよ。」

「エリクサーとは?」

「ポーションを知っとるか?」

「ええ前にいただきましたから。」

「ポーションには種類がある。ローポーション、ミドルポーション、ハイポーションだが知っとるか?」

「はい以前ニクルスさんからデイジーさんが作った薬を分けてもらいました。ローポーションとミドルポーションを。」

そうあのミドルポーションのおかげで俺はたすかった。あれが無ければかなり危なかったかもしれない。

「ミドルポーションで傷が治ったじゃろう?」

「あれで死なずにすみました。」

「しかし体力までは戻らなかったじゃろうな。」

「はい」

「ハイポーションではある程度体力も回復してくれるのじゃ。」

そうだったのか。ハイポーションってのは凄い薬なんだな・・

「エリクサーはどんな薬なのですか?」

「体を治すという意味ではポーションと同じじゃが、全く違うものとも言えるかの」

「全く違うですか?」

「欠損も治して体力もほぼ回復してくれるものじゃ。」

「えっ!欠損が治るんですか?」

キター!凄い薬が・・これだエリクサー!

「ポーションは薬草からなる薬。エリクサーは霊薬じゃ。」

「霊薬ですか?」

「禁術の召喚をしっておるか?」

「はい知っています。」

「そうか・・知っておるのか。エリクサーは召喚術を元にした薬じゃ。」

そう言う事か・・欠損してしまった体の部分を召喚して補うということか。エネルギーも補給されるというのは魔力も召喚して体に入れるということなのかもしれない。

「だから欠損も治るんですね。」

「理解が早いのう。そうじゃ・・ワシはのこのおかしくなってしまった世の中のため封印していた禁術を解き放った。」

「凄い・・」

「そのエリクサーの文献はワシが持っておる。おそらく今の世ではワシだけがエリクサーを作れる人間じゃろうな。」

「これを反乱軍に?」

「そうじゃ密偵に渡して運んでもろうておる。」

召喚術の技術を使って作られた薬エリクサー。これを反乱軍に渡して助けているらしかった。

俺はデイジーに自分の能力を教えてもよさそうに思えた

「デイジーさん。実は・・俺も召喚術が使えるんです。もしかしたら何かの役に立つかもしれません。」

「禁断の召喚術を?」

「書物を読んだのではなく生まれつき使えたのです。」

「なんという・・」

その後、俺は待機しているであろう魔人達に無線機で通達した。

「アリスを捕まえた。くりかえすアリスを捕まえた。」

魔人達が突入する前にミッションクリアーしたのだった。