軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第22話 美少女(景品表示法違反)はまだ法では取り締まることができない

『那滝ケイ』が女装が似合う顔だちだと思ってはいた。

前世でもイカれた奴らにメス堕ちイラストなどを書かれていたし、序盤のかませとしてはまあまあ愛されている扱いだった。

が、これ程までとは思わなかった。

どうも、男装美少女(女装)です。

気が付いたら性癖のマトリョーシカみたいになってました。

「那滝ケイは男であるという先入観をうまく利用したみたいですけど、私には通じませんよ。その学籍でさえ偽装なのでしょう?」

「……よくわかっているじゃない」

通じる通じないを通り越してもう予測ぐっちゃぐちゃだろ。

いや、女装してあんな事をしていると思い至る方が異常ではあるか。

「それで、私に何か用? 手短にお願いするわ」

「そうですね。なら単刀直入にお願いします。――騎双学園を潰すのを手伝って下さい」

「嫌よ」

原作破壊に加担するわけねえだろ馬鹿。

「……騎双学園の非合法な実験は知っているでしょう。貴女が追っているデモンズギアもその一つな筈です」

「そうね」

そうなの?

俺、デモンズギア追ってるの?

そういう事になってるの?

「騎双学園は六波羅を使って新たにデモンズギアを入手しました。フェクトムの実験施設にいた個体です」

あ、そういえば六波羅さんが探してたね。

あの人なら見つけられるだろとは思ってたけどそうか、見つかったのか。

良かったね、いや良くはねえか。

「……これで、騎双学園はデモンズギアを二つ所持している事になる」

「そうです。二つ目の適合者が見つかってしまえば、騎双学園は他校に向けて戦争を仕掛けるでしょう。そうなる前に止めないと」

言いたいことはわかった。

が、その辺はトウラク君が何とかしてくれるし平気平気!

それに、六波羅さんもトウラク君の事を気に入って裏切ってくれるし(ネタバレ)

実質、騎双学園にあるデモンズギアは一つだよ一つ。

たかが一つでエイナとルトラに勝てる訳ないじゃん。

と、原作を知っているが故に俺は楽観的に考える事ができる。

けれど、浄化ちゃんから見れば滅茶苦茶ヤバい事態なんだろうなぁ。

どうにか、安心させたい所だが。

「私は今は動かないわ」

「何故ですか。デモンズギアの怖ろしさは知っているでしょう!?」

うーん、とりあえず適当な言動で誤魔化しとくか。

「……まだ、その時ではないからよ」

「ソルシエラ、貴女は何を知っているんですか」

「貴女の知らない全て、そしてこれから起こる厄災についてよ」

俺はそこで意味もなく空に視線を向ける。

こういう動作が美少女なんだよ。

「まだ、動く時ではない。全ては星のめぐり合わせ。機会が来れば、自ずと理解するわ」

「……そんな言葉で納得しろと?」

「しなくてもいい。けれど、理解はして。今、貴女が動いた所で奴らには勝てない」

特に六波羅さんはヤバイぞぉ。

トウラク君の所に寝返るまで待たないと、マジで怪我するぞぉ。

あの人を敵に回してはいけない。経験済みの俺が言うんだから間違いないよ。

「でも、貴女がいれば」

ソルシエラに対して評価高すぎない?

確かにミステリアス完全無欠絶対最強頂上無双美少女ではあるけど、六波羅さんと戦うとなるとたぶん実力は同じくらいかちょっと下よ?

騎双学園の生徒会長とかと運悪くエンカウントしたら負ける自信すらある。

「本当に、脅威がそれだけだと思っているのかしら。……目の前の事にとらわれ過ぎて大局を見ていないのね、貴女って」

「……っ」

浄化ちゃんは押し黙って唇をかみしめている。

どうしてそんなに憎いんだよ、アンチもここまで来ると怖ろしいわ。

でもこのままだと勝手に動きそうだなぁ。

「……その時が来たら、貴女も呼んであげる。それでいいかしら」

俺の言葉に、浄化ちゃんは顔を上げる。

はーい、行動をこっちで制限しましょうねー。

「本当ですか」

「ええ。別に、ずっと先の話でもないもの。騎双学園を崩壊させるのは」

原作でも序盤の大ボスなので、割とすぐに倒される。

それまで浄化ちゃんも我慢してくれ。

「まさか、既に騎双学園を潰す計画が……!?」

「そうよ」

そういう事にしておいてあげるわもう。

だからこっちの趣味にも付き合ってくれ。

「彼等はデモンズギアを本来の目的から逸脱した使い方をしようとしている。あれは人類の生存のためのもの。武器は正しく使われてこそ真価を発揮するわ」

「貴女はデモンズギアについてどれだけの事を知っているんですか……!?」

浄化ちゃんの問いに、俺は渾身のキメ顔で答える。

「全てよ」

「……っ」

俺の言葉に、浄化ちゃんは驚いたように固まる。

あっはははは、この人マジで良いな。

俺の言う事一つ一つにリアクションしてくれるじゃん。

よぉし、もう少しミステリアス美少女ムーブしちゃうぞー!

「あれらは元々、一つの現象に対抗するために作られた人造神話の具現。この世界が生み出した、最初の希望」

原作知識がミステリアス美少女ムーブとあまりにも相性が良すぎる。

俺はただクソデカネタバレをしているだけなのだが、それでもこの世界においてそれは全智に等しい効力を発揮するのだ。

俺は、浄化ちゃんの眼をじっと見つめる。

「故に、私《《たち》》はずっとデモンズギアを監視してきた」

「私、たち?」

「そうよ。私たち――いえ、止めておきましょうか。貴女は騎双学園を潰したいだけ。そうでしょう?」

浄化ちゃんの髪をそっと撫でる。

美少女だと思われてるからセーフ!

美少女だと思われてるからギリギリセーフ!

それから、ふっと微笑んでみせた。

「これ以上深淵を覗き込む必要はない」

Perfect……。

ふつくしい……。

冷静に見れば、聞いてもねえのに勝手に大事っぽい情報ベラベラ喋って踏み込むな宣言する頭のおかしい奴なのだが、雰囲気に呑まれた浄化ちゃんは気が付いていない。

ミステリアス美少女ごっこって楽しいね!

「ソルシエラ、貴女は……貴女たちは一体何を考えているんですか」

「私たちの目的は最初からただ一つ――人類の救済よ」

そう言って、俺は《《自身の長髪》》をふわりと手で払ってポーズを取った。

……ん!?!?!?!?!?!

髪伸びてる!?!?!?!

「その姿……」

浄化ちゃんが驚いている。

「あら、何を驚いているの?」

俺も驚いている。

制服こそ変わらないものの、完全に俺がソルシエラしている時の見た目になっていた。

なんで???

『■■■い!』

お前か!

……え、マジでなにしてくれてんの?

演出?

気を使ってくれたのはわかるけどさぁ、トアちゃんになんて説明するんだよ。

目を離している間に、一緒に来てた男子生徒がロン毛になってたらどうするよお前。

困惑するだろ。

『■■■■』

あ、戻せるの?

伸縮自在なんだ。

……じゃあ、カツラいらないな。

君、たまには役に立つじゃん。

『■■■■■!』

でも怖いんだよなぁ。

俺の身体に干渉してるってことでしょ?

ヤバくない?

『…………』

あ、黙るな。

おい!

「はぁ」

思わず、ため息ついちゃったよ。

というか、髪伸ばすならせっかくだからちゃんとした美少女にしてくれ。

……いや、やっぱいいわ。お前使って美少女になるとなんかヤバそうだし。

「――私は」

ん?

「それでも、構いません。例え、深淵だろうが騎双学園を潰せるなら。……いえ、私の復讐を果たせるならそれでいい」

浄化ちゃんが覚悟を決めた顔でそう言っている。

なんの話だ。

俺の内側と外側で理解できない事を同時に進行させるな。

「そう。多少は期待できそうね、貴女」

でもミステリアス美少女はやっちゃう。

楽しいから。

俺は、ダイブギアで自身の連絡先を浄化ちゃんへと送信する。

「……これは」

「時が来たら知らせるわ」

お前、面白いから時々呼んで揶揄ってやるわ。

後、俺の正体をバラした時に口封じ出来るように繋がりは欲しい。

と、その時俺達の方に声が掛かった。

「ビーコンの、設定、お、おわりましたぁ!」

その言葉よりも少し早く俺の髪が震える。うわぁ、一瞬ぞわっとした!

髪を撫でてみれば、元の長さにまで髪が戻っている。

うーん、これは便利!

『■■■■■』

だが、売らねえと決めた訳じゃねえからな。

『■!?』

俺は、トアちゃんの方に気をとられた浄化ちゃんに近づきボソッと呟く。

「これで話は終わりよ」

「……はい」

浄化ちゃんは僅かに頷いて見せた。

「すすみません! ダンジョンなんて見つけるの初めてだったから、ビーコンの設定に戸惑っちゃって……!」

「いえ、大丈夫です。本当は俺が出来たら良かったんですけどね、こっちこそすみません」

「そんな、ケイ君が謝ることなんて……! そっそれで、2人で配信に付いて話し合っていたみたいですけど」

トアちゃんの言葉に俺達は顔を見合わせる。

「……やっぱり生徒会長さんと打ち合わせをした方が良いということで、特には決まってないんですよねー。いやぁ、単なる雑談で終わっちゃいまして」

「そうですねー」

「あっ、そ、そうですか」

浄化ちゃんは、トアちゃんに近づくとペコリと頭を下げる。

「それじゃ、私はそろそろ行きますね! ダンジョン攻略、頑張ってください」

「あ、ありがとうございました!」

「助かりました浄化ちゃんさん」

手を振る俺達に、浄化ちゃんは小さく手を振り返す。

俺の方を見て、小さくうなずいて見せた気がしたがたぶん気のせいだろう。

「さて、それじゃあダンジョン攻略しましょうか」

「うぅ、緊張します……」

「俺もです。まさか、こんな事になるなんて」

そう言って、二人で顔を見合わせる。

それからお互い覚悟を決めてダンジョンへと向かった。

雑魚でありますように雑魚でありますように――。