軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オレリアとジョルダン家の関係

屋敷に戻って着替え、頭の中を整理した私は、落ち着いて美味しい夕食を食べるためにも、アンリエッタへの今日の報告は食後にしようと決意した。

それが正しい選択だったと、食後のお茶が冷めるのを黙って見つめて思う。

「ちょっと聞いているの、シャルロット? あなたってば、どんな危険なことをしたのかわかってないでしょう?」

フンフンッと鼻息荒く詰め寄ってくるアンリエッタの顔を手で押し返して、私は何十回と口にした謝罪の言葉をもう一度放った。

「悪かったわ。あそこでオレリアと会うとは思っていなかったの。ああ、学園の中で迷子になったことは散々注意されたから、今度から気をつけるわね」

「オレリアも要注意だけど、よりにもよって第二王子たちにも顔を知られるなんて!」

アンリエッタはこの世の終わりが来たかのような絶望顔をしてみせるけど、第二王子たちのことも不可抗力よ。

「しかも、シャルロットは第二王子のサロンに招待されたそうだよ」

かわいい妹を裏切ってさっきから優雅にお茶を口にする兄は、余計な燃料をアンリエッタに投下してしまう。

裏切者め。

「第二王子のサロンに招待だなんて! やめてやめて。そんなところに入り浸ったら第二王子派として第一王子殿下に排除されるわ」

ひゃあと小さく悲鳴を上げたあと、私の両肩を強い力で掴んで、前後にガクガクと揺さぶる。

「だ、大丈夫よ。近づかないから! 第二王子たちには近づかないわ」

叫ぶように言うと、アンリエッタがピタリと止まり、射抜く目つきでジロリと私を睨んだ。

「オレリアには? オレリアにも近づかないわよね?」

「…………」

そろーっと顔を背けると、じーっと見つめる兄が口をへの字に曲げてこちらを見つめていた。

「いいわ。オレリアとジョルダン伯爵について、今日わかったことを説明してあげる」

ボスンと腕を組んで勢いよくソファーに座ったアンリエッタは、何枚もの紙をテーブルに並べるのだった。

「ジョルダン伯爵家の事業って農業だけよね?」

そんなに広くない領地は農地が多く、それなりの実りを得ている。

交易に関しては自身が持つ船の積み荷と、投資している商会が持つ船で取引される品々。

ジョルダン伯爵家自体では商会を持っておらず、仕入れた商品は投資している商会に引き取ってもらうか、交流のある貴族たちへ融通しているらしい。

これらは伯爵の個人事業として運営されている。

「ジョルダン伯爵家の領地は農作が盛んだからね。鉱山も持っているし、領地経営は安泰だよ」

兄も次期子爵としての教育の賜物なのか、わざわざ調べたのか補足で説明してくれた。

「オレリアが孤児院の出身だったなんて……」

前の時間では兄と結婚したあとに彼女と顔を合わせたから、伯爵令嬢だと信じて疑わなかった。

死に戻って第二王子たちとは学園からの知り合いであったことや、平民だったことを知った。

「孤児院に引き取られる前はどうなの? どこか貴族の庶子とか?」

「親に捨てられた……それは孤児院の前に置き去りにされたからそうだと判断されただけよ。実際は何か別の理由で孤児院の前に置き去りにされたのかもしれないわ」

別の理由?

「小説の読みすぎかもしれないが、誰かから逃がすために身分を隠すとか、他国の人間を紛れこませるためとか。その場合オレリア嬢と接触している人物がいるはずだけどね」

兄は自分で口に出した推論があり得ないと肩を竦めて笑ってみせた。

「でも、その接触した人物がジョルダン伯爵だったら?」

平民から貴族の養女になれたのは、第二王子がお膳立てしたからだと勝手に思っていたけど、そうではなくてジョルダン伯爵からの申し出だったら?

オレリアとジョルダン伯爵は何かで繋がっているのでは?

それが第二王子たちの企みとどう繋がるの? もしかして……第二王子たちさえも彼女たちに操られていたのでは?

「シャルロット? 一人で抱え込むな」

「そうよ。今は私たちもいるんだから、ちゃんと考えを話して」

心配そうな二人の顔に、私は知らず詰めていた息を吐き、大きく息を吸った。

「ごめんなさい。つい……。私が今日オレリアと接して疑問を持ったのは、彼女は……もしかして高位貴族の教育を受けているのでは、と」

私は第二王子たちが図書室に入ってきたときの彼女の振る舞いについて話した。

「カーテシーは平民が見様見真似でできるものじゃないわ。じゃあ私も、このジョルダン伯爵家の船の航跡……おかしいと思わない?」

バサッと広げられた大きな地図には、赤い線でいくつもの国とジョルダン伯爵領地の港が結ばれていた。

ただ、近隣諸国で一か所だけ、不自然に繋がっていない国がある。

「そこはいいの。小さな国で周りの国とも最小限にしか交流しない変わった国なのよ」

「ふうん」

自慢ではないが、前の時間でも死に戻った今でも、私は外国に興味がなかった。

他国の言葉は近隣では大事な帝国語と共通語は嗜みとして学んでいるが、それ以外は気にも留めていない。

だから、この小さな国の存在も私は知らなかった。

「問題は、この国とこの国よ」

「ここは、ある鉱石が出土した国と、いわくつきの薬を裏で広めている国だね」

兄がトントンと指で差した国には、ジョルダン伯爵の船が何度も行き来している印があった。

「でも表向きには宝石と染料の植物を購入していることになっているわ。でもこんなに何回も船を出すかしら?」

「当然、密売だね」

このジョルダン伯爵家の悪事とオレリア、そして第二王子たちの暴挙とがどう繋がっていくのか私たちを悩ませることになる。