軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

800年前の悪女は毎日がとても楽しい②

さて、私が目を開ければ。

そこには見慣れない豪華な天井。なかなか豪華な寝室である。ベッドの寝心地も最高だね。

だけど乙女が目覚めた早々、年若き男女がいるのは否めないかな?

片や金髪の眩しい好青年。片や桃色髪を三つ編みした素朴な少女。二人は仲良く腕を絡ませているが……おや、男の子のほうには顎に怪我があるぞ?

「その顎の怪我痛そうだね。大丈夫?」

「そんなことはどうでもいいんだ‼」

そうかな、せっかくの美貌に傷は勿体ないと思うけど。

これでも、元は天才魔法使いだったからね。魔法で治してあげようかな、と思ったけど……どうやらこの『ルルーシェちゃん』の身体には、めっきり魔力がない様子だ。

まぁ、見たところ彼は十八歳くらい。多少のやんちゃもするお年頃だろう。

私が身を起そうとすると、少しばかり眩暈がした。すると女の子のほうが「無理をしないで!」と背中を支えてくれようとしてくれる。

優しい子……ではあるのかな。お礼は大事だよね。

「ありがとう。でも大したことないから大丈夫だよ」

「し、しかし、階段から落ちたって……」

「あら、それは面白そうな体験だね」

言われてみれば、痛みなんてこの800年体験していない感覚である。どうせならぜひそのタイミングから入れ替わりたかったと残念に思っていると、少女が「え、面白そう……?」と一歩後ずさっていた。

さすがに失言だったか。この『ルルーシェちゃん』に変人のレッテルが貼られたら可哀想だからね。誤魔化さないと。

「心配はいらないよ。えーと、レミーエちゃん?」

「レミーエの気遣いに、そんな言い方はないだろう⁉」

あらら、今度は男の子のほうに怒られちゃった。

そういや、神様情報によれば、この男の子は王子様で婚約者なんだっけ?

ふーむ……ちょっと言わせてもらってもいいかな?

「ところで金色王子君。婚約者の寝室に、他の女の子を連れてくるってどういう良識なのかな?」

「お、俺はきみのお見舞いに――」

「お見舞いはありがたいけれど、いくら婚約者とてモラルに欠けると思うんだけど?」

一応、いきなり睨みつけるのも可哀想なのでニコニコと問いかければ、王子君が眉根をしかめる。

「ル、ルルーシェ、どうしたんだ? どうやら言葉遣いもいつもと違うようだが……」

あぁ、それは私の落ち度だね。

ご令嬢……一応、800年前はそれなりの爵位持ちの貴族をしていたから、それっぽい振る舞いもできないこともないよ。

「あら、それはごめんあそばせ。でも、浮気相手を連れてくる殿方には言われたくないですわね」

「レミーエは浮気相手ではない! ただの友人だ!」

あはは、この王子君も面白いなー。

普通、他の女とお見舞いに来る彼氏なんていないと思うんだけど。それとも、世界が変わると常識も変わるものなのかな?

それに王子君の『友人』発言に、女の子のほうがあからさまにショックを受けている様子。あらあら、失恋しちゃったのか。可哀想だね?

でも、どのみち、この王子君はやめておいたほうがいいと思うよ。

だって、どう考えてもこの数分で、頭が足りていないことばかりなんだもの。

「もしこの言葉は本当だとして……わざわざ病み上がりの私に誤解されるような行動をした理由は?」

私がまっすぐに問いかければ、王子君の口調が急におどおどし始める。

「それは……ザフィルドが、レミーエとの交流に邪な気持ちがないなら、堂々とルルーシェと対面させたほうがいいと……」

「そのザフィルドって人は、あなたのことが嫌いなのかな?」

「そ、そんなわけ……⁉」

めちゃくちゃ目が泳いでいるけど、心当たりがあるのかな?

まぁ、ザフィルドって人が誰だか知らないけど、存分にぶつかるがいいさ! 殴り合うならぜひ観戦させていただきたい。青春だもんね。

それはそうとして、どうせなら私も私も青春を体験したい。

「とりあえず……レミーエちゃん、だっけ? 明日時間ある?」

「で、でも、ルルーシェ様はお体が……」

「私なら大丈夫! ね、王子様、レミーエちゃんをお借りしてもいいでしょう?」

一応、王子様に確認してみれば、彼は渋々ながら了承してくれるらしい。

「あぁ、無理を させる(・・・) なよ?」

「もちろん!」

ちょっと王子君の言葉尻がおかしい気がしたけどね。

些末な問題と、私はにっこり流しておいてあげた。