軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結婚式前夜

「おがあさまっ」

そう言ってお母様に抱きつきました。

「あら、喜んでくれたみたいね?」

えーん、えーん。と子供のように泣く私をお母様は優しく受け止めて頭を撫でてくれました。

「あら。小さな子供みたいね。明日お嫁に行く子とは思えないわね」

「ぐずっ、だって……」

「ほら、旦那様からもあるでしょう?」

「え! このタイミングで?」

出しづらそうに懐から何かを出してきた。

「……ルビナ、これは通帳だ」

「……? はい」

「ルビナの為に貯めていたんだ。このお金はルビナの好きなように使うといいが、何かあった時の為にと頭の片隅にでも覚えておいてくれれば良い」

通帳を見ても良いそうで開いてみた。驚いて涙が引っ込むような、そんな感覚……そんな金額。

「お父さまっ! こんなに!!」

お父様もお母様も贅沢は好まず、良いものを長く使うようなそんな生活をしていて、ケチではなくとも先祖代々のものを大事にしていて、領民の税収は領民に恥じないように使うものだと言って、領民の意見もちゃんと聞いてお金を使うタイプで、こんな大金を!

「これはルビナの為のお金と……例の慰謝料も含まれている。それはルビナの為の慰謝料だからそのまま通帳に入れた。詳細は言わないが、そういうことだ。金は邪魔にならないから持っていきなさい」

「え、でも、」

戸惑うような金額……結婚するにあたってもお金をたくさん使ってくれて……これ以上は。と思っていました。

「嫁に行くルビナにやってあげられる最後だと思え。これから家はルークとシンシアさんに任せるんだし、私達はこれから隠居生活だ」

お父様はお母様と笑った。

「貰っておきなさいな、ルビナ」

お母様はそう言いお父様も頷いた。

「……はい、では。お言葉に甘えて……何から何までありがとうございます。私はお二人に何か返せる事がありますでしょうか……」

親孝行なんてした事がなかったように思えました。いつも助けて貰ってばかり。

「ははっ、バカだなルビナ」

「お父様?」

「ルビナがこれからもずっと笑って暮らす。と言うだけでもう返ってきたみたいなものだ。なぁそうだろう?」

お父様がお母様を見る。

「えぇ。その通りね。ジェイ様は誠実な方だから大丈夫よ! 明日の式では笑っていなさいね。わたくし達はしんみりするのは好きじゃないの。ルビナ笑いなさい」

明るいお母様らしい意見で、お父様も一緒に笑っていました。二人が笑っているのをみて私も。

「はい」

笑ってみた。

「そうと決まったら、目を冷やして寝ちゃいなさいな! 寝不足は美容に良くないわ。明日はとびきり美しいルビナを皆に披露しましょう!」

そして私はメイド達により部屋に連行され目を冷やされる。そしてパックとマッサージをされ、落ち着いたのでした。

******

「ルビナちゃん綺麗になったな。女の子は数年で変わるんだな。まぁ元々可愛らしかったけど」

レオナルドが言った。

「ルビナは原石だったんだ。磨けば磨くほど美しくなる。中身の美しさも相乗効果で、優しくて癒されるんだ。この前は手料理まで振舞ってくれてさ、本当に私はラッキーだ!」

レオナルドと酒を飲み交わす。今日は王宮で泊まる予定で、現在レオナルドが滞在している貴賓室にいる。

「そうか、そりゃ良かった。俺もお膳立てをしたんだ。感謝しろよー」

ぐびっと酒を飲み干すレオナルド。

「そうだな。感謝する」

「やけに素直だな。それにしても俺はお前がこんなにこの国に留まるとは思わなかったし結婚して落ち着くとも思わなかった。お前は爵位を貰い外国を転々とするものだと思っていた」

外国のことを知るのが好きだ。知らないことを知りたいという欲求があった。だから留学をした。国を出て個人として認めてもらいたかった。

「まだ子供だったんだ。留学していろんな国に行っていろんなものを見てさ。しかし国へ帰ると逆に国のことを知らなすぎた。そしてルビナと出会って一緒にいたいと思った。安心するんだ」

国を出た時まだ私は若かった。家族と離れ留学をすると決めたのは自分で後悔はなかったが、たまに辛い時はあった。そういう時必ずレオナルドが『訓練しようぜ!』と言い連れ出してくれた。

そしてレオナルドは『体を動かして、腹をすかして飯を食って寝れば余計なことを考えない。筋肉は裏切らないぞ』と言った。

『さすが脳筋だ……』と答えたら、レオナルドは笑っていた。平民貴族問わず、レオナルドの周りに人が集まるのはこういうところだろう。大胆に見えて繊細。友を大事にする。その中の一人に私もいるのだろう?

「へぇ。そりゃいい事だな。俺はお前は女性が恋愛対象ではないのかと思っていた」

「やめてくれよ……それはない」

私は友にもそういう風に見られていたのか……

「何はともあれ良かったな! 親友の結婚式に出席出来るなんてこんな喜ばしい事はない」

親友か。そうだな、そう思う。

「私もレオナルドの結婚式は思い出深い。それに結婚式の前日に酒を飲む相手がレオナルドで良かった。これからも頼む」

握手を求めるように手を出した。

「おぅ。任せとけ。お前は外交にまで口を出しているからな。またいつでも遊びに来いよ」

パンっと手を叩きながらぎゅっと手を握るジェイとレオナルド。

「まさかほぼ毎日レオナルドと飲むことになるとはな……」

「明日からはルビナちゃんとの生活が待っているんだからそれくらい付き合えよ。わざわざ来たんだぞ」

ルビナとの生活か……やっとだな。明日は挙式だ。朝は早く屋敷に帰らないとメイド長や執事に怒られるだろうな。

「あと一時間付き合ってやるよ。明日は早いんでな」

「りょーかい」

それから一時間が過ぎても、話は尽きなかった。