軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結婚式の前日から

「ルビナお嬢様、湯浴みの時間です」

「湯浴み? だってまだお昼前で、」

「何を呑気なことを! 湯浴みをしてトリートメントをして、パックをして、全身マッサージをしますよ」

ここ一週間毎日マッサージをされたせいか全身がピカピカです。香油だの、マッサージの器具などが気がつけば増えていました。

なんでもムパス国は美容大国なのだそう。カイール様の奥様から友好の証にとたくさん美容グッズをいただきました。

私はお礼に伯父様のワインをお返ししました。ムパス国ではワインは作られていませんので、喜んでもらえました。

あ、今回はきちんと伯父様にお支払いをしましたのでご心配なく。

「ルビナお嬢様! もう全身ツヤッツヤですよ!」

メイド達はやり切ったという感じで、チームワークが芽生えている。

家族と過ごす大事な時間ということもあり、大体の家は結婚式の一週間はお互いに会うのを控えています。

一週間も会わないなんてジェイ様が出張に行った時だけです。近くにいるのに会えないなんて、なんだか寂しいような気もしますが、手紙が届いてきて、こういうやりとりもする事がなくなるのかと思うと、それもまた楽しかったり、寂しく思ったり……

「ジェイ様、元気かなぁ」

ぽつり呟くルビナ。

「元気に決まっています。毎日お手紙とお花が届くんですもの」

くすくすと笑うメイド達。新婚生活でもお世話になるメイド達です。

子爵家からもメイドが三人着いて来てくれます。既にジェイ様のお屋敷で、屋敷の皆とも仲良く働いてくれています。

「手紙を見る限りは元気そうよね。今頃何をしていらっしゃるかしら」

ご家族と過ごす……と言うことはなさそうですよね。レオナルド様やご友人の方とはお酒を飲んだ。と手紙に書いてありましたし、レオナルド様を囲んで王宮で会談をされたとも聞いているので、忙しくされているに間違いはありませんね。

ジェイ様にお返事を書いて届けてもらいました。それから庭の散歩をして、お気に入りのベンチでお茶をして屋敷に戻りました。

夕方になると家族が全員揃い晩餐となりました。

独身最後の夜です。しんみりするかと思いながらも楽しく過ごしました。

晩餐の後は、お父様とお母様とお茶をしました。

「今日でルビナがこの家で過ごす最後の日だと思うと……感慨深い。ジェイ殿と幸せになるんだぞ、もしジェイ殿が許せないことをしたら、その時は帰って、」

「旦那様っ! そこまでっ」

お父様……ジェイ様と何かあったら家に帰ってきて良いって言いたかったのですね……お母様も縁起ではないこと言わないの! と怒っています。

「ルビナ、ジェイ様を信じて共に幸せになるのよ」

「はい。色々とありましたがお父様とお母様のおかげでジェイ様という素敵な人と結婚する事ができました。お嫁に行ってもルビナはお父様とお母様の子です……から、ずっとお元気で、いてください。ずっと見守っていてください」

大好きなお父様とお母様にきちんと挨拶をしたかったのに……色々と考えていたのに。こんな事しか言えなくて、ごめんなさい。

みんな晩餐ではしんみりしてなくて明るく食事をしてくれたのに……気がついたら涙が溢れていました。

「まぁ! 大変。目が腫れてしまうわ。せっかく綺麗にして貰ったのに。ルビナは小さい頃は人見知りでずっとルークの後ろや、わたくしの後ろに隠れていたわよねぇ。懐かしいわ。あのルビナが好きな人と並んで歩くようになるなんて、わたくしはそれがとても嬉しいのよ。ルビナは可愛くて、素直で自慢の娘よ。明日はジェイ様のお嫁さんになるんだから、笑っていなさいね! ルビナは笑っていた方が素敵なんだからね」

「ばいっ。おがあさまっ」

涙が止まりませんでした。

「こんな時に言うことではないが……モリソンの息子と破談になった時ははらわたが煮え繰り返って、ルビナを嫁に出したくなかったものだ。可愛い娘が傷つく姿をもう見たくない、親のエゴだ。ジェイ殿ならルビナを幸せにしてくれると私はそう思っている。ルビナ、幸せになれ」

「ばい、おどうざまっ、ありがどうございばす」

「あれを持ってきてくれる?」

お母様が執事長に声を掛ける。

すると箱が運ばれる。

「開けてみて?」

お母様に言われた通りに、箱を開ける。

「? レース?」

「そう。私が編んだのよ。ルビナのベールよ。わたくしが結婚する時もわたくしの母がレースを編んでくれたの。だからわたくしも娘の結婚式にはベールを編むと決めていたの。ジェイ様ったらなんでも自分でやりたがる方だけど、これだけは譲れなくてね。明日娘がこのベールを付けて、愛する人と一緒になると思うとわたくしは嬉しくて堪らないのよ。貰ってくれる?」

手に取りレースを見た。心がこもっていると言う事がよく分かる繊細な編み目。どれだけの時間をかけて編んでくれたのだろうか…… どれだけ私のことを思って編んでくれたのだろうか……

胸が熱くなりました。