軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

工房の職人さん

「鼻がおかしくなりそうです」

今日は工房にお邪魔していた。香水を作っているのは女性で色んな香りを嗅がせてもらった結果、鼻がおかしくなった。匂いが取れないと言うか……職人さんはすごいと思った。

同じバラでも種類が違えば香りは違うようでバランスや配合がとても複雑だった。科学者になった気分でした。

「職人は凄いよね。ほんの誤差で全く違うものができたりするんだよ。何かを一から作り出すと言うことはすごい事だよね」

「ジェイ様からも落ち着いた良い香りがします」

「……香りを嗅がれるとは恥ずかしいものだな。ルビナ嬢に落ち着く香りだと言われて嬉しいよ」

「……あ、余計な事を言ってしまいました」

(これは分かる。香りがするほど近くにいるとかそんな感じかもしれない……それに香水を贈るということは……! あ、あれ?

ジェイ様からプレゼントしてもらったあの香水の香りを嗅ぐとジェイ様を思い出してしまいます……香りに包まれて……ってバカな事を……男性に免疫がなさすぎて変な方向に……)

頬が熱くなってきて両手で顔を隠すルビナ。

「ルビナ嬢は顔に出るよね……すみれが好きだと聞いたからグッドタイミングだと思ったんだよね。新鮮に喜んでくれるルビナ嬢を可愛いと思っているのは本当だよ。初めて会った時は頼りない感じがしていたのに警戒心が強いところは子猫みたいだね」

あの元婚約者の子息は犬と例えたようだけど、ネコだよな……うん。いや人間だけど。手を出すとシャッーって毛を逆立てる感じがネコっぽい。手懐けたい……

「バカにしてますよね? 私は人間です」

ふん。と顔を背けるルビナ。動物に例えられてムッとしたようだ。

「例えが悪かったね、これは申し訳ない。私はもっとルビナ嬢の事を知りたいと思っているし、ナンパな男ではないと言う事も知ってほしい」

出会い方が悪かったのかも知れない。申し訳ないと言う気持ちと、一緒に出かけたくて誘った舞台だったがそれでナンパな男だと思われてしまったのか……

国を離れていた時間が長かったから、この国の令嬢に慣れていないのかもしれない……

いや……焦ったのかもしれない。

「……ジェイ様のお住まいは何処ですか? お手紙を出す時に悩みました。お店は仕事をするところなのにプライベートな手紙を送って良いのか……」

「あれ? 気になる? 私は西地区に住んでいるよ。元デュランド伯爵の家で実はデュランド伯爵家の城が気に入って父からもらう爵位なんだ」

本当に美しい城だから遊びにおいで。と言いにかかったが、それはよろしくないな。また軽い男だと勘違いされそうだ。

「ふふっ。お城が欲しくて選んだんですか?」

将来を考えると領地付きの方が落ち着いて生活はできるのかもしれない。

「そうだよ。おかしいかな? 事業で成功したいしこんな気持ちを持ったまま領地経営なんて出来ないよ。そんな領主の元では領民が可哀想だ」

「いろんな考え方があって良いと思いますよ。それはジェイ様が選んだ道ですもの」

ルビナ嬢は父と同じ事を言った。領地持ちになって欲しいと言ってきたが最終的には自分が選んだ道だから頑張れと言った。留学の時もそうだった。ルビナ嬢は頼りない感じなのかと思いきやちゃんと自分の意見を言える子なんじゃないか。

「ありがとう。ルビナ嬢にそう言われると頑張るしかないね。今のところは実家に甘えているところも多々あるんだけどね」

実家にルビナ嬢が気に入ったから婚約したいんだけど。と言うとたちまち婚約は成立するだろう。だけどルビナ嬢にそんな気持ちがないのに渋々婚約されるのは嫌だ……長丁場になるかもしれないけれどゆっくり距離を詰めていくことにしよう。気まずくなるのも嫌だし話題を変えよう。

「そういえばもうすぐ学園祭だったよね?」

実家は侯爵家で学園に寄付を続けていることから招待状が届いていた。父や兄に都合がつかないため“行ってこい”と言われていたのだが、保留にしていた。ルビナ嬢の学園生活が気になるから学園祭に行ってみようかな。

「はい。よくご存知ですね」

「実家は学園に寄付をしているから招待されているんだ。ルビナ嬢のクラスは何をするんだ? 私は学園生ではなかったからよくわからないんだけれど、兄達は劇をしたり絵画の出品をしたりしていたようだ」

留学先の学園では学園祭というか剣術大会や舞踏会といった感じだったな。パートナーがいなかったからただ眺めているだけだったな……懐かしくも寂しい思い出だ……

「私のクラスはカフェをします。全員でお揃いの衣装を身につけて給仕をするんです。学園の食堂をお借りしてお菓子も手作りするのでみんな気合が入ってます。私は当日お茶を淹れる係なんですよ」

揃いの衣装を身につけて……それはぜひ見てみたい。父に連絡を入れよう。“ぜひ行かせてください”と。

「ルビナ嬢が手ずからお茶を淹れてくれるんだ。必ず行くよ」

学園の話を聞くとルビナ嬢のクラスは全員女生徒だという。学園の敷地は広くルビナ嬢の教室は別棟にあり、安全確保の為不審者が入れないようになっていると聞いた。

昼も食堂は混むからあまり行きたくないと言い友人達と家から持ってきたランチを食べている。学園生活は楽しそうだな。

「私はお茶を淹れるだけですよ? 大したことはできませんが売上は孤児院に寄付されるのでお客さまが来てくださると嬉しいです」

そして学園祭に行くことにした。