作品タイトル不明
120.
軍事演習を終え、ギデオンは意気揚々と帰還。
真っ先にミシェルの元へ向かう。
「聖王国の連中をぶっ倒してきたぞ! 褒めろ! ミシェル!」
「座れ、ギデオン」
執務室の前で、書類仕事をしていたミシェルが、冷たいまなざしを向けてくる。
一緒にやってきたティルは、その迫力に気圧される。
が、そんなの気にせず、ギデオンはミシェルの前に座る。
(おかんむりですぅ~……。賢いてぃるは、クールにさるぜえ……)
そぉ……とティルだけ逃げようとするも、「おまえも残りなさい」とミシェルに釘を刺される。
二人そろって、ミシェルの前に正座をする。
「まずは演習お疲れ様でした」
「ふっ……! もっと褒めるが良い!」
今回の指揮はグレースがとっており、さらに実働したのは新兵達だ。
ギデオンは現場責任者としてその場に君臨していただけ。
「部下の邪魔をしなかったことは、褒めてあげます」
「ふっ……!」
(それ褒めてるんでしょうかねえ……)
ギデオンはご満悦の様子。
ミシェルはハァ……とため息をついた。
「グレースからの報告を聞きました。ギデオン、おまえ……訓練開始前に、グレースの恋心を、マルコーに明かしたようですね」
(あー……そこかー……。アレはよくなかったですよぉ……)
ギデオンは「ん? そうだが?」とまるで悪気がなさそうに、首をかしげる。
「……今回は上手くいったからよかったものの、一歩間違えれば、全体の士気を下げることになっていたのですよ?」
(ひぃい! あ、悪鬼~……)
ティルはミシェルから発する怒りのオーラに、思わず体を震わせる。
眉間にしわを寄せ、こちらを視線だけで殺そうとするほどの、迫力。
まさに悪鬼羅刹のごとしだった。
しかしギデオンは「ん……?」と首をかしげる。
「なぜだ? 明らかに、マルコーもグレースの奴も、好き合っていたではないか。明白だったろう? 間違えるもなにもないじゃあないか」
「「…………」」
(こ、この無能帝……そんなことがわかるんですぅ~? テキトー言ってるだけではぁ……?)
ティルが疑いのまなざしを向けていると、ギデオンが気づいて、不満そうに鼻を鳴らす。
「グレースはいつもマルコーを視線で追っていた。一方で、マルコーも何度も、同じようにしていた。目線が合った時に、二人とも照れくさそうに目をそらしていた。これは、好き合っているからではないのか?」
「……!?」
(い、意外と……人を見てやがるですぅ! この無能!)
ミシェルも目を丸くすると、小さく息をつく。
「根拠があったうえでの発言だったんですね」
「無論だ。なぜ俺が、士気をさげ、ミシェルの国を潰すようなマネをする?」
(いやミシェル様の国じゃ無くて、あんたの国ですけどぉ……。まあ、確かに言いたいことはわかるですぅ)
ギデオンにとっては、今回の作戦は、失敗できないものだった。
作戦の成功確率を高めるために、取った方策の一つだったのだろう。
「わかりました。では、おとがめなしということで」
そんなギデオンを、ティルは感心したように見る。
(この無能帝、馬鹿にしかみえなかったんだけど、でも意外と人を見る目があるんですねぇ。野生の勘が鋭いってかんじなんでしょうかぁ)
「ギデオン。すみませんでした。意外と、頼りになるんですね」
(お、おー! こ、これは! ミシェル様の好感度があがっている! 仕事のできる人好きだもんね、ミシェル様は! 良かったですぅギデオン陛下!)
するとギデオンは、「む……!」と眉にしわを寄せる。
「意外とは心外だな。俺は前から頼りになるだろう?」
「…………………………はぁ」
(ああぁ……! 好感度が! せっかくあがった好感度が! 今の発言で落ちていくぅ! おまえぇ! なんで他人の心の機微はわかるのに、ミシェル様からの好意には気づかないんですぅ!)