軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118.

聖王国軍事演習責任者である、ワルイマンは、額から滝のような汗をかいていた。

「き、聞いてない……! 帝国軍のやつらが、こんな強いなんて、聞いてないぞぉ!」

眼前に広がるのは、見上げるほどの巨大な 魔導人形(ゴーレム) だ。

魔導人形(ゴーレム) 。

魔(魔法や魔道具)で作られた、意識を持って動く人形のことだ。

どんなに凄腕の土魔法使いだったとしても、人間の子供サイズを1体、生成・動かすのが精一杯。

しかし、聖国軍の前に広がっているのは、五〇メートルはあろう、土塊の巨人だ。

魔導人形を魔法で生成するのも一苦労だが、形を維持する、そして動かすのにも魔力が必要となる。

しかも魔導人形は、本人の魔力でのみ動く。

作った人間と、動かす人間は別にできない……はずなのだが。

「ちくしょう! なんだあの化物はぁ!」

ゴーレムが巨大な腕を振るうと、聖王国兵たちは、まるで突風に吹かれた木の葉のように、宙を舞う。

歩く都度、こちらの戦力が大幅に削られていく。

……ゴーレムを指揮しているのは、金髪の若い男だ。

「このマルコーのゴーレムの威力、とくと味わうといい!」

マルコーと名乗った少年が杖を振ると、ゴーレムは天高く飛び上がる。

……ワルイマンは、直ぐに気づいた。

「に、にげろぉおおお! デカ物がふってくるぞおぉお!」

五〇メートルの巨人が高所から落下すれば、その衝撃波はとんでもないことになる。

質量爆弾。

それが、マルコーの取った手だ。

あの巨体で、ジャンプするのは本来不可能。

そもそも巨体を支えるだけで、使い手は手一杯のはずなのだ。

かがんで、勢いよく飛ぶ。

その衝撃で本来は足が崩れてしまう……はずだ。

だが、マルコーはグレース仕込みの、魔力コントロールによって、そんな不可能を可能にしてみせた。

魔力を素早く足に集中させ、下半身を強化してみせたのだ。

魔力操作は、体の外に出た途端難易度が跳ね上がる。

体の中に流れる魔力の方が、操りやすいのだ。

魔力はいわば血液。

体内を巡らせるほうが容易く、体外に流出した血液を動かす方が難しいといえば、想像しやすいだろう。

魔力も血液同様、体外に出ると、外気等、外的要因によって形を変えてしまうのだ。

血が固まってしまうように、魔力もまた同様の変性を見せる。

体外魔力コントロールは、かなり高度なテクニックだ。

だが、グレースは、少年兵士たち全員に、この技術をマスターさせたのだ。

かつて師にして、英雄アレク・デッドエンドから習った、アレク式魔力コントロールを、皆に惜しみなく教えたのである。

……飛び上がった五〇メートル巨人は、セイファート平原に、巨大なクレーターを作った。

落下による衝撃は凄まじく、その場にいた敵兵士たちが皆、大空へと吹き飛ばされる。

落下した彼らは、手足を折る、折れた肋骨が肺に刺さるなどの重傷を負った。

「なんて……化物を……帝国は生み出してやがるのだ……」

まだかろうじて、戦意の残っていたワルイマンが、敵を見つめてつぶやく。

だが……その瞳から、戦意が完全に失われる。

……マルコーが、易々と、また五〇メートル巨人を生成してみせたからだ。