軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十三話 ハンドメイド!

「――以来、ガルドラット様は冒険者ギルドの訓練場に繋がれている」

墓守はそう締め括り、話を終えた。

あれほどの使い手が奴隷の身に甘んじている理由を聞き、リオはいろいろと合点がいった。

隣でシラハは興味なさそうに窓から庭を飛ぶ蝶を眺めている。

「復讐に走らないように監視してる?」

蝶を観察しながらも話だけは聞いていたらしいシラハがやはり興味なさそうに確認した。

あまり表情が動かないシラハの興味の度合いを測りかねたらしい墓守は複雑そうに頷いた。

「その通り。聞けば、訓練場で真剣試合とやらをしているとか。ガルドラット様なりにナック様の最期の剣を習得しようとされているのだろうが……。もしも習得前に剣を奪われたら自害する気で真剣試合などと銘打ったのではないかと気が気でない」

話を聞く限り、復讐心が邪魔をして守りの剣で攻撃を優先してしまっている。

リオの指摘でガルドラットがショックを受けていたのも、今日の瞑想も、自分の今までの在り方が的外れだと理解させられたからだろう。

その理解のキッカケとなったリオ達をナック・シュワーカーに紹介したいがために、今回の墓参りを頼んだのだ。

リオは事情を理解しつつ、気になったことを質問する。

「まだテロープのボスは生きてるんですよね?」

「討伐されたという話は聞かない。だが、当時すでに白髪が混ざっていたのだ。寿命が来ているかもしれん。しかし、ガルドラット様のおかげで冒険者の質は大幅に向上し、防衛隊も強化されているが、テロープが相手ではまだ心もとない」

墓守は不安そうな顔で窓の外を見る。

事件の現場にいたからこそ、テロープの脅威をいまも感じているのだろう。

「ガルドラット様が早く自由になってくれればと思う。君たちを墓参りに寄越すくらいだから、ご本人がいらっしゃるのも時間の問題だと思いたいが」

「伝えておきましょうか?」

「いいや。これはご本人の問題だ。部外者が口を挟むことではないし、ましてや急かすことなどできんよ」

そこは一線引くのかと意外に思いながら、リオは墓守の考えを尊重した。

視線を感じてシラハを見る。久しく見せてこなかった観察するような視線でリオをじっと見つめていた。

いまだにこの視線は苦手だなと思いながら、リオは立ち上がった。

「そろそろ帰ります。お話を聞かせてくれてありがとうございました」

「あぁ。あまり外では話さないように頼むよ。当時のことを思い出させてガルドラット様の復讐心をあおるようなことは本意ではないんだ」

「分かっています。でも、ガルドラットさんのことを色んな人が心配していることは伝えた方がいいと思いますよ」

部外者の自分がこれ以上出しゃばるとこじれた時に責任は取れないからと、リオは助言をするだけにとどめた。

墓守の家を出て、リオはシラハと並んで宿へと歩き出す。

「ガルドラットさんの話、どう思った?」

「うーん」

興味がなさそうに間延びした声を出したシラハは、最終的に考えることを放棄した。

「勝手にすればいい。私たちには何もできないから」

「最終的にはそこに行きつくよな。リヘーランの悪夢の時にいなかった俺たちが何を言っても響かないし」

「ショックを受けてた」

「あれは剣の話。これ以上踏み込んだら個人の事情の話だから、響かないよ」

「そういうもの?」

「そういうもの。というか、シラハはこの件にあんまり興味がないだろ」

「リオも興味を持ってない」

「まぁな」

言い当てられて、リオは苦笑する。

ガルドラットの剣には興味があるが、深入りしていい事情でもない。そもそも、リオには復讐心がピンとこなかった。

シラハの顔を見る。嫌な想定だが、シラハが誰かに殺されたとしたら自分はどうするだろうかと。

――やはり、ピンとこなかった。

「でも、ギルドの酒場で食べる気分じゃないなぁ」

あんな話を聞かされた後でガルドラットのテリトリーとも言えるギルドで食事する気分にはなれなかった。そこまで無神経になれない。

「そうなの?」

無神経が横にいたことに呆れる。

「シラハは食べたいのか? もしそうなら、俺も付き合うけど」

あまり気は進まないが、他で食べる予定もない。少々気まずいというだけでギルドの料理は中々美味しいのだから。

「リオと一緒ならいい」

「この流れで丸投げかよ」

自由奔放ぶりに苦笑して、リオは候補を思い浮かべる。

「宿のメニューはあまり多くないし、栄養がなぁ。適切に食べて体作りをしろってガルドラットさんに見せてもらった紙にも書いてあったし」

「……体作り」

呟いたシラハが何かを閃いたように表情を明るくする。

「私が作る」

「シラハが? わざわざ食材を買ってきて今から作る気かよ。厨房を借りられるかな」

夕食にはやや早い時間だが、宿の厨房はすでにフル稼働して客の夕食を準備し始める頃合いだ。

おそらく、借りられるとしても陽が落ちてからだろう。

「多分無理じゃないか?」

「……野営する?」

「いや、宿を取ってあるってば。夕食を作りたいから野営するって意味が分からないよ。どうしてそんなに作りたがるんだ?」

「私が作った料理でリオの身体が出来上がるの……なんかいい」

「怖っ。シラハは時々怖いんだよ!」

ズレた観点で料理をしようとしていたシラハに戦慄しつつ、リオは道を外れて市場への近道に入る。

不思議そうに後を追ってきたシラハを見て、リオは目を逸らす。

「森の奥に行く許可も出て、明日からはテロープが出る地域の調査をするんだ。食べ慣れないモノを食べるより、二人で作る料理の方がいいだろ」

「うん。リオの身体は私が育てる」

「だから怖いんだよ!」