軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

販促SS 雪遊び

村に雪が降った。

いよいよ本格的な冬到来に、大人たちは不安そうな顔をする。邪獣騒ぎで冬支度が難しく、なにより町との連絡が寸断されて孤立した村で邪獣に怯えることになる。

そんな大人の不安もよそに、子供たちは家の外に駆けだした。

降り積もる雪に手を突っ込んでは「冷たい、寒い」と大騒ぎだ。

弟や妹に連れ出された兄や姉も、テンションが上がり切った子供たちが無茶しないように見張りつつ遊びに交ざる。

そんな子供たちの喧騒もどこ吹く風と、リオは自宅の庭で木剣を振っていた。

見張らないといけない弟妹もいない。門下生とのいざこざで同年代と遊ぶのも難しい。

なにより、リオ本人は木剣を振っている方が楽しかった。

「この寒空によくやるな。父さんは防壁の拡張に行ってくるから、母さんが起きたら伝えておいてくれ」

「行ってらっしゃい」

「風邪を引かないように汗はこまめに拭いて、ちゃんと水も飲めよ」

注意を飛ばしてから仕事に出かけていく父を見送って、リオは再び木剣を振り上げかけてやめた。

視界の端でシラハが興味深そうに雪をつついているのが見えたからだ。

ある意味、やんちゃ盛りの弟妹よりも手のかかる義妹がいたことを思い出し、リオは木剣を雪に突き立てた。

「シラハ、手袋をしておいで。素手だとかじかんだり、あかぎれになるから」

「かじかむ?」

「血が手先まで届かなくなって痺れて動かせなくなったりするんだよ。だから手がつめたくなりすぎないように手袋をする」

意義や目的を説明し、家を指さす。そんなリオの手にも手袋がはめられていることに気付き、シラハは素直に家に戻っていった。

そのまま家の中で大人しくしてほしいと願うリオだが、叶うはずもない。

再び外に出てきたシラハは二階の窓から遠目に子供たちの遊び方を見て学習したのか、庭に出るなり雪玉を作り始めた。

投げつけてくる気かと警戒するリオを余所に、シラハは雪玉を徐々に大きくしていく。

雪だるまを作るだけかと、リオは素振りに戻った。

振り方や脚の位置を確認しながら熱心に素振りをするリオの横に、シラハが作った巨大な雪玉が並べられていく。

何か様子が変だと気付いたのは、雪の降りが激しくなって家に戻る時だった。

どの雪玉も頭がない。円形に並べられた雪玉は互いにぴったりとくっついている。

何を作っているんだろうと思いつつ、大仕事になっていることだけは分かるので口を挟まない。手伝わされたくないからだ。

翌日、積もった雪を玄関前から取り除き、素振りをしに庭に出る。

ざくざくと雪を踏みしめながら、シラハが雪玉の元へと走った。

シラハは昨夜のうちに積もった雪を手早く除去して雪玉を掘りだすと、除去した雪を雪玉の上にのせて固めていく。

巨大な雪だるまの土台を作っているのかと思っていたが、形になっていくドーム状のそれはかまくらだった。

一仕事やり切った職人のような顔で、シラハはかまくらの安全点検をした後、リオを振り返る。

「リオ、はいって」

「えぇ……」

昨日から作っていただけあってかまくらは大きい。庭中の雪を集めてくれたおかげでリオもすこし小石を撒くだけで泥濘を気にせずに素振りもできた。

お礼といってはなんだが、シラハが望むなら応えるべきだろう。

なんとなく気が進まないが、リオはかまくらの入り口に立つ。

「がんばったなぁ」

一人でこれだけのモノを作ったのは素直に感心する。流石に一人で定員オーバーだと思うが、足を伸ばして座れるくらいのスペースがあった。

入ってみると、体感温度がわずかに上がった気がした。

一人で作ったとは思えない広さだが、別に何かをできる広さでもない。座るくらいしかやることがないのではすぐに飽きる。

入るだけ入ったのだし、素振りに戻ろうと入り口を見るとシラハが覗き込んでいた。

「……そこにいられると出られないんだけど」

「大切だから出さない」

「満足そうな顔をしてるけど、かまくらだと狭すぎて健康にも悪いし、大切ならなおのこと俺のことを出してよ」

「……うん」

リオの言葉に反論しようと何かを考えていたようだが、結局シラハは頷いた。

シラハが残念そうな顔で入り口から退き、リオは外に出る。

「かまくらには初めて入ったけど、本当に温かいんだな。面白かった。ありがとな」

貴重な体験をさせてくれたことを感謝して、リオはシラハに礼を言う。

残念そうな顔をしていたシラハは表情を一変させ、にこりと笑った。

「うん。今度はもっと大きく作る」

「一回体験すれば十分なんだよなぁ」

結局、家に勝るものはないとリオはシラハの意図に気付かずのんびり考えていた。