軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

327 説得スキルを所望する!

へいへいへーい!

Dさんや、タイミング悪すぎじゃないですかね?

まだろくに転生者たちにこっちの事情を説明できていない、不信感マシマシの状態での爆弾ぶっこみ。

そりゃ、誰だって疑う。

私だって逆の立場だったら「何こいつやべー」って思うわ!

「どういうことなんですか?」

先生が唇を震えさせながら問いかけてくる。

さっき倒れたこともあって、その唇は真っ青だ。

エルフの裏の顔を知った今の先生は足元がグラグラしていて、何を信じればいいのかわからない状況。

きっと見聞きしたこと全てが疑わしくなっちゃってるんじゃなかろうか。

ホントだったらそんな先生に、時間をかけてこっちを信用させて、救恤の支配者権限を譲渡してもらう予定だったのに。

ただでさえ難易度の高いコミュニケーション任務が、さらに達成困難になってるんですがそれは!?

そうなんだよねー。

先生、支配者スキルの一つ、救恤を持ってて、しかも支配者権限も握ってるんだよねー。

ある意味教皇よりもどうしたらいいのかわかんない。

ぶっちゃけよう!

先生に関してはノープランであると!

イヤ、だって、ねえ?

どうしたらいいかわかんないんだもん!

教皇はわかりやすくていいよ?

あの人絶対にぶれないもん。

その意志の強さは尊敬に値するけど、わかりあえないんだったらどんなに立派な人でもぶつからなきゃならない。

けど、先生は違う。

教皇のようにすべてを理解したうえで行動しているわけじゃなく、ポティマスの思惑や転生者の存在に流されて、今まで生きてきた。

もちろん転生者を保護するというのは先生の意志によるものだけど、そこに他の意志が介在していたのは言うまでもない。

ポティマスによっていろいろと歪められていた。

先生は支配者権限を持ちながら、この世界のことを詳しく知らず、ただ転生者のためだけに行動してきたわけだ。

だから、この世界の今後だとかなんだとか、そういう話になった時、先生がどういう反応をするのか正直読めない。

だからこそ、時間をかけてゆっくりと説得していって、穏便に支配者権限を譲渡してもらうつもりだったのだ。

それ以上のプランはない!

つまり、現状をどうにかするプランはない!

プランBだ! ああ!? ねえよそんなもん!

どうすっかー。

マジどうすっかー。

「先生落ち着いて。若葉さんも。慌てなくていいから事情を説明してほしいんだけど」

櫛谷さんが先生を宥め、ついでに私のことも落ち着かせる。

できる女、櫛谷さん!

そうだね。いったん落ち着こう。

まず、私が口で全部説明するのは、ムリ!

口下手な私が一から十まで全部説明できるはずがない。

しかも、こんな重要かつ超長ったらしい事情を。

ゆえに、口で説明するという案は却下!

できないもんはできない。

人間諦めが肝心だよ。

私人間じゃねーけど、そういう細かいことはいーんだよ。

できないことにいつまでもこだわっているよりも、別の方策に方針転換して事に当たったほうが効率的ってもんよ。

むぅ。

口で説明せずに、ちゃんと語弊なく現状を伝える方法。

あ、あるわ。

異空間で働く分体に追加案件を伝える。

すぐさま実行され、空間転移でその完成品が届けられた。

私の手に握られているのは、一冊の本。

糸づくりの応用で作り上げた紙をもとに作った本。

教皇とかアーグナーに指令を伝えるために始めた本作りだけど、今やその技術はこうして一瞬で一冊の本ができあがるまでに練られている。

今なら図書館を一日かからずに満杯にできる自信があるね。

無駄な技術ということなかれ。

こうして実際に役立ってるんだから!

いきなり私の手元に現れた本に驚く先生と櫛谷さん。

存在感を消しているフェルミナちゃんは慣れてるので驚かない。

先生に本を差し出すと、恐る恐る受け取った。

「これを読めばいいんですか?」

頷く。

急いで作ったその本には、禁忌にまつわる情報や、これから私がしようとしていることなど、包み隠さず書いてある。

ここで下手な誤魔化しをすると、後々面倒なことになりそうだと思ったからだ。

それで先生が協力してくれるのか、はたまた拒絶してくるのか。

それは蓋を開けて見ないことにはわからない。

けど、どっちになるにしろ、それは先生が選んだ道だ。

その選択を私は尊重する。

……そのうえで、私の前に立ちはだかるというのならば、私も覚悟を決めよう。

先生の視線が本と私とを行ったり来たりする。

が、私がそれ以上の反応を示さないと知るや、意を決するように本を開き、読み始めた。

先生が読み終わるまでに時間がかかるけど、その間ここで待ってよう。

ゴキャッ、という鈍い音が私の内側から響いた。

私の全身から力が抜け、けど首を掴んだ手が倒れることを許さない。

背後から唐突に現れたその手が、私の首を掴んで骨を粉砕した。

私はどこか他人事のように、それを認識した。

「この程度で貴様が死ぬとは思っていない」

声が背後から聞こえてくる。

聞いたことのある声。

ていうか、こんなことができるのは、この世界では私の知る限り一人しかいない。

掴まれた首が後ろに勢いよく引っ張られる。

首という、脳から体へと指令を送る部位が破壊されている今の私に、それに抵抗することはできない。

神とは言っても肉体を破壊されればそれだけのダメージがちゃんとある。

私は新人神様なんだから、それはより顕著だったりする。

意識が先生のほうに向いていたとはいえ、こんな奇襲を許すとは。

私も自分で気づかないうちになまっていたのかも。

引っ張られ、後ろに投げ捨てられる。

が、倒れた先はさっきまでいたエルフの里のツリーハウスではなく、どことも知れない近代的な街並みの道路の上だった。

空間転移。

イヤ、ここはたぶん現世ではなく、異空間内に作られたフィールドか。

急いで首の怪我を自己修復しつつ、見上げた先にいたのは、案の定黒い甲冑を着込んだかのような姿の男。

管理者、黒、ギュリエディストディエス。

「かつて、私が言ったことを覚えているか?」

黒が私を見下ろしながら言ってくる。

そんなことを言われても、どの時に言ったことなのかわからんて。

「君の為すことの先に、私と相容れない結末があるのであれば、私は君の前に立ちふさがるだろう」

私の思いが通じたわけではないだろうけど、黒は間を置かずにその時に言った言葉を口にした。

その言葉は、私がエルロー大迷宮から出た直後、黒が訪ねてきた時に言ったものだった。

「今がその時のようだ」

そう言って、黒は構える。

イヤイヤイヤ!

ちょっと展開早すぎやしませんかね!?

私の予定にこんな展開はないぞ!

それもこれも全部Dのせいだ!

おのれDめ!